Fate/Serment de victoire   作:マルシュバレー

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42話 Interlude:忿怒

俺が間違っていたのかもしれない。

 

「・・・・・・あぁ」

 

俺のために命を差し出すことのできる人。生前の俺にはいなかった存在。

・・・・・・友と、彼は言ってくれた。こんな俺のことを、友達と呼んでくれた。

なぜか霊核が震え上がり、血管が燃えているような錯覚まで覚えるほどに血液が沸騰する・・・・・・激情が俺の思考回路を支配する。こんなに大きい感情の波、目の前でカンドリマンドが殺されたとき以来・・・・・・いや、初めてにも等しい。

 

「・・・・・・貴様も、人の子か」

 

「ああそうさ、俺は人だ。神様の類()でもない、伝説の存在()でもない、人類に希望を与えた存在()でもない。そこらへんにいる有象無象()だ」

 

善にも悪にも染まりきれない存在(中庸)で、あり方に明確な秩序はなくかといって混沌としたものでもない存在(中立)

中途半端な人だからこそ、感じることがあるというものだ。

 

「でもお前は殺してやる、何があろうと殺す!!」

 

「ふはははははははははははははははははははははははは!!愚蒙も甚だしいな!」

 

「うるせえ黙れ!!!」

 

今回だけは強くあろうとした俺自身と意見が一致した。

俺を守ろうとしてくれた奴のことを無駄にはしたくない。例え彼が息絶えようとも、俺が消滅するまでには猶予がある。

だから、その間にギルガメッシュをぶっ飛ばす。

 

「・・・・・・ぐ、が・・・・・・あぁああああああああああ!!!」

 

俺の手を縛っていた鎖を握りしめ、今の自分自身に出せる最大の力を持って引っ張ってやる。

引きちぎる、粉々にしてやる、絶対に!!

 

「・・・・・・よもや、そこまでの力を持つとはな。ペテン師(スウィンドラー)から・・・・・・改竄者(フォールサフィケイショナー)に変わったか」

 

視界に火花のような光が散る。

今の俺の限界をあからさまに超越し、神経は焼き切れる一歩手前。ちっぽけな体だって、今にも霧散してしまいそうだ。

それでもいい、それでもいいから・・・・・・俺に力をよこせ。

あいつに一矢報いることができる、何かを────────。

 

「ぁあ”あ”あ”あ”あ”ア”あ”ア”ア”ア”ア”あ”あ”あ”あ”あ”ア”ッ!?!?」

 

声帯が麻痺しそうなほどに、絶叫する。

ばきり、と一気にこもっていた力がはじけて・・・・・・鎖が切れた。

 

「・・・・・・気を違えたか。全く・・・・・・弱い霊基に負荷をかけるからだ」

 

「はぁ・・・・・・っがっは、ああ・・・・・・殺す、殺す殺す殺すっ!・・・・・・ギルガメッシュ、あんたは絶対にぶっ殺す!!」

 

この鎖は俺のものだ、俺の剣だ。だからもうあいつには操れない。

 

「忌憚なく・・・・・・手にありし剣を振るう」

 

千切れたそれへ、魔力を通し表層に展開する。

血を纏って赤かった金色の鎖が、青白い光に包まれその本体は隠れていった。

そう、これは俺の求めた剣である。それが、誰になんと言われても変わることはない。

 

「虚構を纏え、栄光を騙れ。どんな煤とて神器とて、我が手の中では絶世なり」

 

足の鎖も力づくで破壊し、自由を取り戻す。

はやる気持ちをある程度抑えつけ、持ったものへさらに力を注ぎ込む。

 

「切り裂け、謳え・・・・・・我が剣は、奇跡を起こす!」

 

地を蹴った。襲ってくる有象無象の剣を全て弾き飛ばして、閃光帯びた刀身をあのいけ好かない野郎に向かって振るう。

 

不帯剣の誓い(セルマン・デ・デュランダル)ッ!!!!」

 

轟!!!

 

光は伸び、三方の壁を紙のように破った。

がらんがらんと支えを失ったものは落ち、窓は硝子の粉になる。

ばい煙にも近い土埃が巻き上がって視界を塞ぐが、ギルガメッシュは何もしてこない。

 

「・・・・・・う、くっ」

 

自己を保てるギリギリのところまで魔力を使ったせいか、体に巨人でも乗せられたかというほど強い重力を感じる。

耐えきれず俺は膝をついて、眼前を見やった。

 

「・・・・・・服に埃がついた。我はもう帰るぞ雑種・・・・・・その永らえた命、またいつか我の前で無様に散らすがいい」

 

不機嫌そうに黒いライダースーツの埃を手で払い、ギルガメッシュは踵を返した。地面に刺さっていたり落ちていた武器がまた溶けるように消えていく。

ああ、俺の限界を超えた一撃をもってしても・・・・・・奴には傷一つつけられないのか。

・・・・・・でも、これでマスターを死の運命から守れたのなら。

少しだけ、自分に自信が持てるかもしれない。

 

 

「大丈夫かお前ら。あんなめちゃくちゃなことされてよく死んでねえな。異能生存体か、アーマードコアのエイリーク的なアレなのか」

 

ギルガメッシュが去った後のことだ。

倉庫の横からひょこっと出てきたのは司馬田とかいうマスターの友人であった。

横に篠塚を連れて、マスターのところに近づいていったかと思うと人差し指で頬を突っついている。

 

「・・・・・・セラヴィ、お前が消えてないんならこいつはまだ生きてるっちゅう話だがこりゃ結構な危篤状態だぞ。とりあえずうちに連れて行く。いいな?」

 

「・・・・・・はい」

 

俺に治癒魔術の心得などないし、ここは任せた方が得策であろう。

なんとか立ち上がって、マスターの体を抱きかかえる・・・・・・身長は俺とさほど変わらないはずなのに、随分と軽く感じた。

 

「さすがにバイクへくくりつけて運ぶわけにもいかねえから俺んちの車呼んだ。乗れ」

 

「ありがとうございます。俺たちの為に」

 

「いいってことよ。俺も目の前で人が死なれるのは嫌なだけだがな」

 

あからさまに高そうな車がやってきて、後部座席のドアが自動で開く。

こんな豪奢な内装の車内を汚すのは少し躊躇してしまうが、今はそんなことも言ってられない。

俺はマスターを抱えたまま、席へと座った。

ここでようやっと緊張の紐が緩んだか体の力が抜ける・・・・・・マスターの魔力が枯渇しないためにも俺は消費量を最低限に抑えるだけ抑えて、一息ついた。

反対側の扉から篠塚が乗り込んできて、マスターの状態をチェックしてくれている。医療の心得か何かがあるのだろうか。

 

「脈拍危険域にかなり近いですがOK、呼吸数問題なし、血圧は不明、体温は少し低いです。覚醒はしないですが刺激に少し反応するので意識レベルⅢの200・・・・・・」

 

「了解、その様子じゃ即お陀仏って感じじゃねえだろう。出るぞ、ベルトちゃんとつけてるな?」

 

「つけてます」

 

よっしゃ行くぞと、司馬田がエンジンをふかす。

勢いよく発進した車は彼女(?)の家へと向けて走行しだした。

性能がいいのか、揺れはほとんど感じない。

 

「まあ平尾のバカはそう簡単にゃ死なねえから安心しろ。昔酔って『俺を殺すんならポロニウム茶かツァーリ・ボンバでもよこせ』なんてほざいてたからな」

 

俺を安心させる為なのか、変なことを言って笑わせてくる司馬田。

・・・・・・有り難いが、それでも俺の中では不安が渦巻いている。

さっき感情に任せて宝具まで撃ってしまったし、もしかしたら俺のせいでマスターが傷ついてしまったかもしれない。そもそも俺を守るために、彼は立ち向かってくれたのだ。お前なんかいらないと、狂わされていたとはいえそう言い放ってしまった俺のために。

 

「男だろ、仮にも女のいるとこで泣くな」

 

「・・・・・・泣いて、ないっす」

 

嘘を言った。

目尻からだらだらこぼれて俺の手のひらを濡らす、熱い液体は紛れもなく涙。

もう止めようにも止められない、漏れてしまいそうな嗚咽を抑え込むので精一杯だ。

 

「・・・・・・死ななきゃ全部大丈夫。平尾ってのはそういう奴だよ、適切な処置さえすれば翌日にゃしれっと復活してくるもんさ」

 

無責任そうな物言いだが、その言葉には確かに信頼が含まれていた。




マイフレンドの持つ性質をすごい拡大解釈をしていますね
神性がないからって鎖ぶち破るとかもうお前叙事詩に出てくるちょっと強い悪役どころじゃねえだろ問題
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