Fate/Serment de victoire   作:マルシュバレー

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バレバレの伏線をばらまいていくスタイル(回収できるかはわからないもよう)


43話 Interlude:君の守護者になりたい

「術式展開、これより治療を開始する」

 

布団の上に血などをタオルで拭かれたマスターが横たわり、その上を司馬田の手が行き来する。目に見えるのではと錯覚するほどに濃い魔力が放出され、マスターの体へと染み込んでいく。

 

「・・・・・・よし、術式変換」

 

一瞬で傷がじゅぶじゅぶと元の素肌に戻っていく。まるで映像を巻き戻してみているかのような不思議な感覚だ。

1分もしないうちに、一部を除いてマスターの負った傷は全て治ってしまった・・・・・・やはり、司馬田家も相当な魔術師の血統、ということだろう。

 

「脈拍、呼吸、体温共に問題なし。意識レベルはまだ改善されてませんが、このまま安静にしているだけで大丈夫でしょう」

 

「・・・・・・さすがに真名解放とまではいってなかったからよかったものの、やっぱりあの宝具の傷は簡単にゃ治らないか」

 

肩口だけ、血こそ止まってはいるがいまだに傷が残っている。

不治の傷痕を残す宝具だなんて、凶悪にもほどがある。俺なんかの宝具はただの紛い物に過ぎないという自覚も相まってなんだか惨めに思えてきた。

 

「まあこれで死ぬことはねえだろ。はー疲れた疲れたぁ・・・・・・俺は寝るぜ、あとよろしく~」

 

大あくびをかまして司馬田は隣の部屋へ行ってしまった。

残った俺と篠塚の目線がバッティングする・・・・・・俺こういう状況マジで無理なんだがどうにかならんか。

 

「・・・・・・セラヴィさん」

 

話しかけられてしまった。どう返せば一番自然になるのだろうこの場合。

迷惑かけてごめんなさい?助けてくれてありがとう?答えの候補がぽんぽんと湧き上がってきて選べない。

やっぱコミュ障陰キャはきつい。

 

「俺、聖杯戦争ってのよくわからないんですけど・・・・・・あなた、サーヴァントっていう存在だそうですね」

 

「・・・・・・あ、ああ・・・・・・そう、っすけど」

 

戦争中できるだけ神秘の秘匿をしなければならないという決まりがあったのだが、状況からして篠塚は司馬田と一緒に俺の宝具まで見てしまった。

もうあれまで見せてしまえばもう隠し通せるわけもなく・・・・・・仕方ないなと俺は口を開いた。

 

「過去の英霊なんですよね?すごいな・・・・・・俺なんかよりずっとすごい、存在で・・・・・・」

 

「・・・・・・そんなことないっすよ。英霊とはいっても俺は雑魚中の雑魚、物語の主人公ですらないただの悪役。あの金髪・・・・・・ギルガメッシュなんかよりずっと低いランクっす」

 

ギルガメッシュといえば最古の叙事詩に登場する王。とんでもない偉業をたくさん成し遂げた王の中の王。

即位し適当に圧政をしておいて、ローランをぶっ殺したいがために黙って国を捨てた俺みたいな愚の骨頂を体現した王様なんかとは比べものにならないレベルの奴だ。

今考えればあんなのと戦い、ぶっ殺してやるなんて鼻息荒く言っていた自分が恐ろしい。バーサーカーの宝具か何かで精神が狂わされていたとしても、だ。

 

「それでも、歴史に名を残せた人物なんでしょ」

 

「・・・・・・まあ、あんなのが残ったって言っていいかわからぬぇーんすけど。俺は、たいしたこともできていない無名の男っすよ」

 

そう言ってから、マスターに言われた言葉を思い出した。

『自分の成し遂げたことに誇りを持て。同等の武勇を得たって言われてるんだ、自信持たなきゃ憧れた英雄に失礼だろう』

胸を張らなきゃ、ヘクトール様にも失礼だと・・・・・・そう言われて、俺は何も言い返せなかった。

自分自身がいつの間にかぼろぼろに壊れていくような。俺は俺をいつまでも殴り続けないといけないという強迫観念が暴れ出す。

自信を持ちたくない、それは絶対に慢心へ繋がるから。

 

「たいしたこと・・・・・・ですか。英霊になれたのだから、あなたが認めていないだけでほんとはすごいことしてるんじゃないですか?」

 

「・・・・・・それは」

 

それだけ言って止まった言葉は、一向にその続きを紡ぐことはできなかった。

 

 

「それにしても戦争って名前がつくくらいだから、あんな戦いがずっと続くんですか?」

 

「・・・・・・まあ、小休止と戦闘を繰り返す・・・・・・ってところっすね。俺も戦っては休戦したり相手を倒したりして」

 

正直言って昨夜からの記憶がとても曖昧だ。

なにせ俺自身はよくわからない場所でふわふわ浮いていただけで、その間に起こった出来事は先ほどギルガメッシュとの戦いで主導権を取り戻した時にまとめて補完された。どうやらあの期間俺の体を操っていた何かは俺の方へと統合されたらしい・・・・・・というか、そもそもあれは『生きていた頃の俺自身』。

バーサーカーの力により、俺が無理やり押し留めていたものを解き放たれた。そして奴は散々暴れ倒した挙げ句俺と言い合いみたいなことになったが最終的にはマスターを・・・・・・否、友を傷つけたやつを許さんという方向で意気投合しそのまま溶け合った。

多分こんなことだったんだろうとは思う。なにしろあの時は我を忘れていたもんで・・・・・・

 

「セラヴィさんも大変なんですね。いや大変って言葉で済ましちゃいけないと思うんですけど・・・・・・マスターってのを守らなきゃいけないし」

 

「・・・・・・そうっすね。マスターを・・・・・・克親を守らなきゃいけないのに、自分が弱いせいで庇わせちゃって。克親もおかしいんすよ、なんで俺なんかを助けようと」

 

俺はそう、未だに眠る彼の顔へ視線を合わせながら呟いた。

 

「友達だから、じゃないですか?あの時俺にも聞こえましたよ。”友達だから、大切な奴だから”って」

 

「・・・・・・友達」

 

その言葉を聞く度に、胸の奥がきゅっと詰まるような感じがする。

俺がずっと知らないままでいた友達。誰にも大切にされてこなかった俺を、大事に扱ってくれようとしている人。

差し出された手を握りたくてしょうがない。それほど俺は、なにかに飢えている。

 

「俺、そろそろ行きますね。ご飯の用意しなきゃなので。ああそうだ、今日はお二人とも食べてってください・・・・・・栄養を取って万全の体制をとらなきゃですよ!だから今日はたくあん茶漬・・・・・・いえ何でもございません失礼しました」

 

なぜか顔を赤らめて出て行った篠塚だが、まああえて触れてやるまい。

向こうも俺の気持ちを汲み取って席を外してくれたのだろうし、追いかけるのも無粋だろう。

扉の方に目をやるのをやめて、俺はマスターの方へと視線を移す。

 

「・・・・・・克親。俺とあんたは・・・・・・と、とっととと・・・・・・友達、なんだよな」

 

手に触れてみると、当然だがそこは温かくて。

少しだけ握ってみたら、ほんの少しだけ握り返してくれた。

たったこれだけのことなのに、嬉しくて嬉しくて・・・・・・彼が生きているということに、自分が消えなくて済むという自己愛的な安心ではない感情が溢れ出す。

 

「・・・・・・よかった」

 

目の周りがまた熱くなって、頬を液体が伝っていく。

次こそこんなことにはならないように・・・・・・俺は少しだけ、強くなってみようと決めた。

大切なものを守りたいと、今際の際に自分の無力さを嘆き持ったもの以上の力を求めた・・・・・・あのときの俺を、裏切らないために。

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