Fate/Serment de victoire   作:マルシュバレー

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幕間もなにもきていないので完全な予想で書いてます()


46話 四日目:Un rêve

「皇子、あなたはこの国を治める者として自覚を持ちなさい」

 

俺は、弱い人間だ。

お父さんのように、このタタールという国を治めるなんてできっこないと最初っから思っていて、ちょっと血の気が強いカンドリマンドの方がずっと向いてるんじゃないかとも思っていた。

立派な王になるために毎日勉強勉強勉強、いかにして相手の国を倒して土地を奪い取るかみたいな話ばっかりで辟易していたのだ。

こんな生活になるんだったら正直言って平民に生まれたかった。平凡な生活を続けて特に大したことも為さないまま死んだ方がマシだ。

 

「兄貴~勉強終わった~?」

 

「・・・・・・うん、今日の分はな。それにしても、どうして俺が長男に生まれたんだろ・・・・・・おまえの方が王の器って感じなのに」

 

湧いた不満を脳内で別の言葉に変え、カンドリマンドに放り投げた。

意味もなく目をむいむいと擦りつつ寝床へと転がり、意味もなくため息をつく。

これが『隣の芝生は青い』というやつなのだろうか。

 

「最近そればっかだな。そんなに嫌なら俺が将来、兄貴が即位してすぐに王権簒奪してやるぜ?」

 

「どうぞしてくれ俺を殺さない手法で。俺はもう疲れた、死にたい」

 

精一杯の励ましも空回りしたとカンドリマンドは困った顔をして笑う。

困った兄貴を持ったもんだぜと軽口を飛ばして俺のすぐ隣に寝転がり、どういう意図をもってか知らんが俺の顔を興味深そうにのぞきこんできた。

 

「なんだよ、顔になんかついてるか」

 

「いや別に。ただ・・・・・・兄貴の夢って、結局なんなのか気になってさ」

 

唐突にそう問われ、俺は考えるとともに天井を見上げた。

夢や、叶えたい自分の願い・・・・・・

 

「・・・・・・ない、な」

 

なんにも、思いつかなかった。

頭の中ではただただ空虚が渦巻いているままだ。強いて言うのなら、今の立場を誰かに押し付けたいくらいか。

額に手の甲を当ててまたため息をつく。

 

「ほんとにないのかよ。美人な妃を娶って子作りしたいとかそういうのはねえのか?兄貴だって男だろうが」

 

「ねえよ。みんながみんな、性欲に忠実に生きてると思うんじゃねえよ馬鹿」

 

まったく、よくも悪くもカンドリマンドは自分にそう嘘をつかない。

思ったことを悪びれもせず言い放つんだからこっちも心配でたまらんのだ。

 

「そうかー・・・・・・兄貴のが本気出したとこ見たことないのってそういうわけかー」

 

「なにいらねえ考察してんだお前、馬糞溜めに顔面から放り込むぞ」

 

「めっずらし。そんな風に怒るの」

 

けっけっけと心底面白そうに笑うカンドリマンドの鳩尾に俺はうるせえと言いつつ一発膝蹴りを入れて、2回転ほど寝返りを打つ。

 

「お兄ちゃん、先生が」

 

さっさと寝ようなんて思っていたところにセラウラの声が響く。なんとまあタイミングの悪いことか・・・・・・

でもこれについてはセラウラに非などないので、行き場のない苛立ちを胸中で燃やしつつ俺は起き上がった。

 

「・・・・・・んだよこんな時分に」

 

「急を要するって言ってたから早く行った方がいいんじゃない?」

 

そう言われたらちんたらできねえじゃねえかと軽く悪態をつきつつも俺はとある部屋へと走った。

すでに空は月夜へと変わり、明かりとなる火もたかれだす。

 

「先生、何のご用ですか」

 

「・・・・・・マンドリカルド皇子。ついに、即位する時が来ました」

 

「・・・・・・え」

 

まさか先王が死んだのかと聞くと、どうやらそうではないらしい。

話を要約すれば先王は、これから大国カタイへと進むつもりで、タタールにいない期間がかなり長期に渡る予定。

その間に指導者を交代しておく必要があるとのこと。王位継承が最優先される長男の俺に、たすきが回ってきたということだ。

 

「強き王になるのです、皇子・・・・・・否、新たなる王」

 

実感がわかない。

祝福されることなのだろうが、俺にはちっとも嬉しく思えない。

 

「わかりました。立派な、王になります」

 

嘘をついた。嫌だと言ったら怒られると知っていたからだ。

・・・・・・俺がもっと強ければ、強ければこんな考えなんて抱かなかったのだろう。

自分が嫌いだ。

俺は強くなりたい。

こんな弱い自分は───────。

 

 

いらないとそう思っていたから、俺は変わったのだ。

けれど、結局はその甲斐もなく命を徒花と散らす。

久方ぶりに感じた激痛と、脇腹から突き刺さり心筋を引き裂く冷たい剣・・・・・・気管まで切れて出血しだしたのか、満足な呼吸すらできずに口から赤い液体をごぽりと吐いた。

 

「魔剣ベリサルダの前には、どんな鎧や鎖帷子の効き目もない。貴様の負けだ、マンドリカルド」

 

嫌だ、こんなのが俺の人生だってのか。

俺は何のために王であることを捨てた、何のためになにもかもを擲って歩いてきた。

ここで終わるのなら、生きていた意味などない。ローランを殺さなければいけないというのに、俺は・・・・・・俺は!

 

「──────────ッ!!」

 

最後の力を振り絞って、デュランダルでロジェロの頭を打つ。

向こうは勢いよく落馬していったが、俺はもう助からないほどの傷を負ってしまった・・・・・・向こうが死んだとしても意味はなく、賭けたものやこの鎧、そしてブリリアドーロは皆奪われるのだろう。

そう。かつての俺が、ローランの友を殺してデュランダルとブリリアドーロを奪取した時のように。

 

ヘクトールの武具達はもう集められない。

哀しさとともに、諦めの感情が去来する。

所詮自分の人生の主人公にすらなれなかった俺なのだ、死ぬときもどうせ情けない感じになるんだと思ってたさ。

俺は無力だ、なにもできなかった人間に過ぎないのだ。

弱さを吹っ切ろうとして嘘をついた。自分を守りたいという虚栄心から殻を作った。

それでもなお、俺は弱いまま死にゆくのか。誰にも理解されないで、誰もこの手で救えないで。

 

「かなしい、なぁ」

 

ああ、もし夢が叶うのなら・・・・・・力が欲しい。今の俺を大きく上回るような力が、なんだって成し遂げられるような力をこの腕に宿してほしい。

次に命を貰えるのならば、”誰かのために”生きてみたいのだ。

 

「─────ひか、り・・・・・・が」

 

こんな俺でもいいのなら。

どうか、どうか・・・・・・その場所に、いさせてください。

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