Fate/Serment de victoire 作:マルシュバレー
「魔術師じゃないって・・・・・・じゃあ、どうして聖杯戦争に?」
一般人なら戦争の存在すら知らないはずだし、もし知っていたとしても参加するってのはわざわざ死ににいくような沙汰だ・・・・・・俺は彼女がそんな常軌を逸した人間とは思えない。
「信じてもらえるかわからないんですけど・・・・・・巻き込まれたんです、いろいろあって。12日くらい前の夜遅くにマリンタワーへ行ってたんですけど、そこである魔術師さんぽい人が何かしてるのを見て・・・・・・それだけだったら良かったんですけど」
彼女が言うに、召喚の場面を見たということで殺されかけたのだが半ば事故に近い形で逆に殺してしまったそうな。
そんでもって呼ばれた直後にマスターを失ったセイバーは単独行動スキルを保有していないためなし崩し的にその場で再契約、そのまま今日まで偵察と軽い交戦をしては撤退というのを繰り返していたらしい。
「ほんとはこんな戦い嫌だし逃げたいと思うんですけど・・・・・・このマスターの権利ってのを放棄したところで殺される可能性は消えないってセイバーさんから聞いて、ずっと」
「・・・・・・そういうことっすか」
一般人が意図せずして巻き込まれるというパターンはちょくちょくあるというのは知っている。
そしてかなりの確率で犠牲になっていることも。
「俺は棄権を一応薦めたんだがね。やっぱどっちにしろ狙われるんだったら守ってくれる人がいてほしいんだとよ」
そうは言っても彼女はまともな魔術回路すらない完全な一般人。
消滅しないようギリギリの出力でセイバーを現界させ続け、食事や睡眠などで時間を稼ぎなんとかつないでいたそうだ。
しかしそれにも限界はある。あと一日二日も経てば、実体化ができなくなるレベルまで消費してしまう域に来ているらしい・・・・・・
「というわけで、セイバーさんが集めてきてくれた情報を元に・・・・・・私と面識があって、協力してくれそうな人へ」
そのために何度も俺たちと接触していたそうだ。これなら辻褄も合うし納得ができる。
俺としても最優と名高いセイバーと協力できるのならば喜んでしたいところであるが、マスターである克親の意向がどうなることか。
嫌だと言われたならばやはり戦闘になるのだろうか。もしくは、仕方ないと諦めてくれるか。
どっちにしろ後味のいい話ではあるまい。
「俺は協力したいっすけど、克親がどう言うか・・・・・・いや、賛成してくれるとは思うんすけどね?」
確証がとれない以上明言は出来ないので、なんだかぼやけた表現で伝えてしまう。
正直なところを言うと、セイバーという戦力がなければこちらにとって彼女は足手まといに過ぎなくなる。それを防ぐため解決せねばならないという彼らの魔力不足問題なぞどうすりゃいいのだ。
奇跡的ながら来栖に魔術回路があったとしても、今から開くなんてのは難しいにもほどがある。
開けたとしても十全に稼働させられるまで時間がかかるだろうし、その間にセイバーは消えてしまう可能性が高い。
「俺、へなちょこサーヴァントなんで・・・・・・今までなんとか克親を守れてきてはいるんすけど、正直勝てるような力は持ち合わせてないんすよ」
限界を一時的に破壊するエクシード状態、そしてデルニの存在。そういったものがあるとはいえ、戦力的には随分と不安が残る。
ギルガメッシュにはいいようにやられたし、バーサーカーも俺単体では対処のしようがなかった。
そんな自分にいざという時二人以上の人間を守れるのか?アサシンやアヴェンジャーなどに奇襲を食らってもいけるのか?
答えはほぼノー。例え一騎打ちであったとしても、俺は二人を庇いきれる自信がない。
「そうかぁ?お前さんの能力は結構高いとオジサンは思うんだけどなぁ。擬似的な投影魔術?いやあの場合は降霊か・・・・・・そんなことまで出来てるんだし」
「・・・・・・どこまで、見たんすか」
いくら俺がマイナーな五流英霊だからって、宝具まで見られたら真名がバレている可能性だってある。
少し癪ではあるが俺のことをロジェロやローランと誤認していてほしい。
「さあ、どうだろうねえライダーくん。もしかしたら宝具まで見て真名までわかってるかもしれないし、ただの斬り合いくらいしか見ていないかもしれない」
はぐらかされてしまった。
別に見ていないけども一応ブラフを張ったという形にもとれるが、最悪の事態を想定するとなると向こうは俺の真名を知っているという話になる。
同盟を断れば、他の陣営にその情報を売り渡して同盟を結びにいくだろう・・・・・・その相手がギルガメッシュのような、すでに俺の宝具を把握済みの奴とは決して限らない。
ライダークラスの特性もあいまって、俺は宝具を使わねばとにもかくにも相手に勝てない・・・・・・その切り札をバラされたらやはり辛いのではないか?俺は訝しんだ。
「オジサン、今はこんなんだけど・・・・・・やろうと思えば一応やれるんですよ~?」
その気になればいつでも俺を殺せる、という宣言だろうか。
やばい罠にはまってしまったような気がする・・・・・・これは断れば最後、生きて家に帰れなくなってしまいかねない。
「ちょ、ちょっとすごい汗かいてるじゃないですか!暖房切りますね!?」
「あ、いや大丈夫っす」
冷や汗なんで、とまでは言えない。
それにしてもきつい状況だ・・・・・・克親が起きない限りは決定もできない。不興を買えば、俺を殺して克親に脅迫をかけ、魔力炉の代わりにしてしまうかもしれない。そんな技術を持ち合わせているのかという点については少々無理があるのだが、可能性としては無きにしもあらず。どうすりゃいいんだ助けてマスター頭が沸騰して蒸発しそう。
「こっちとしてはライダーくんとこと協力したいんだがねえ。バーサーカーはいつ内ゲバに発展するかわかったもんじゃあないし、アヴェンジャーも方針が合わん。アーチャーはそもそも協力すら必要としてなさそう、んでアサシンは今まで気配すら感知できなかった。前にランサーが倒されて以来、小競り合いはあれど事態は膠着し始めている。このまま放っておいてもいいこたないだろうよ」
「・・・・・・だからここで手を組み、一気に攻勢へ出るっつうことっすか?」
「そういうこと。何日か前に言ってた仮の不可侵条約を更新したい。理想の展開は他の勢力を全部墜として、最後の最後にオジサンとライダーくんでマスター殺し禁止の一騎打ちって感じかね?今の状況そのままで1対1の戦いとなると、さすがにこっちの分が悪いが」
へへへ、と臆面もなくセイバーが笑いながら言った。
緊張などという感覚は彼にないのだろうか、とすら思えるほど堂々とした振る舞いに戦慄を覚える。
「わ、わわ私死ぬのが嫌ってだけなんで・・・・・・あの、えっと・・・・・・」
「つまるところ、うちのマスターが聖杯にかける願いはない。そういうわけで、お前さんとオジサン・・・・・・願いを叶えられるサーヴァント一騎の枠を取り合うってことになる。まー捕らぬ狸の皮算用ってやつだがな」
いくらマスターが一般人で弱体化しているとはいえ、セイバーの脅威度は高い。
そのセイバーとの戦いを最後の方まで先延ばしにできる上、マスターの命は守れるという・・・・・・俺にとってはこの上なく嬉しい話だ。
・・・・・・だが、克親は前に言っていた。
何でも願いを叶える力を、俺に全部譲りたいと。
最善がなにになるか、全然わからなくなってきた。
評価つけてくれるとウレシイ・・・ウレシイ・・・(露骨な態度)