Fate/Serment de victoire 作:マルシュバレー
単位取らないといけないので・・・()
なにか、とんでもなく嫌な夢を見た気がする。
マンドリカルドの首を締めて、殺そうとしていた夢。
「・・・・・・ん、あ・・・・・・?」
目を開くと、見たこともない家の天井が視界を覆い尽くしていた。
ほんのり桜色をたたえたそこの中心には大きな円盤状の電灯がひとつ。電気はついておらず、まだあたりが明るいということを示している。
「大丈夫っすか、マスター?」
「あ、うん。あんま調子いいわけじゃないが・・・・・・一応は」
頭をぼりぼりと掻きながら起き上がる。
・・・・・・ここはどこだ。大学生くらいの女の子が住んでそうな部屋だが・・・・・・もしかして俺たち捕まった?
「セラヴィ、ここ・・・・・・どこだ?」
「説明しなきゃいけないっすよね。ここは・・・・・・セイバーのマスターの家っす」
マンドリカルドが指し示した先にいたのはひとりの女性。ものすごく見覚えがあるのは気のせいでしょうか、いやそんなはずはない、俺の目は確かだ。
「・・・・・・人事の、来栖さん?」
「は、はひ!?そ、そそそそうです来栖です!」
あの長くて綺麗な黒髪と、華奢な身体。そんでもって慌ただしい振る舞い・・・・・・間違いない、俺の勤めている会社にいる来栖榛奈さんだ。
彼女の家は魔術と全く関係ないはずであったが・・・・・・なぜ聖杯戦争に参加しているのだろうか。
まさかどこぞの家にかけあって魔術回路を持つ子を作ったわけでもあるまい。そんなことをすれば大概俺の方まで情報が飛んでくるはずだ。
「あなた、魔術師じゃない・・・・・・ですよね?」
「は、はい・・・・・・私は、そういうの全然知らないんです」
やっぱり。
となると可能性はほぼ一つに絞られる・・・・・・何らかの事情により、巻き込まれた一般人というわけだ。
マスターであった誰かに権利を譲渡されたか、強奪したか、あと誤って召喚の手続きを完成させてしまったか。彼女は魔術師でもないので譲渡はほぼあり得ない。となると強奪か事故。
「どういった経緯でセイバーを?」
「まーそこらへんはオジサンが説明しますかねえ」
話に割って入ったセイバー。来栖に任せていれば時間がかかると判断したのだろう、こちらとしても手短に済ませられるのはありがたい。
彼が言うに、今回彼女が聖杯戦争に参加している理由はある種のマスター権強奪を行ったせいらしい。
召喚を見てしまい、その直後に神秘の秘匿云々を危惧した魔術師が殺しにきて、事故により死亡。
セイバーはその場に他の魔術師がおらず、再契約するまでに探し当てられる目がなかったため来栖と仕方なしに再契約したそうな。
後になって、マスターになるということは命を狙われると同義であったのを思い出し棄権を勧めるが拒否、魔術回路もないマスターのもとで毎日消えないよう節約して生き延びていたようだ。
その割には随分と動きが活発だったような気もするが。
「・・・・・・で、魔力のためにこちらと協力関係を結びたいと。人を殺して供給するのは嫌なんだな」
「そ、そうです・・・・・・戦争と関係ない人をエネルギーの為だけに殺めるのは・・・・・・」
俺もそれには完全に同意だ。まあ魔術師でない人間からしたらその考えは普通なのだが。
セイバーの現界維持ができるだけでよいと向こうは言うけども、それだけだといざという時魔力放出によるブーストがきかず戦闘では不利になりがち。彼の技術力というものは断片を見ただけでもひしひしと感じるが、それだけではうまくいかないのがこの戦争・・・・・・
「魔力供給のパスだけを繋げて、マスター権だけを来栖さんに残す。というのも可能っちゃ可能だが・・・・・・セラヴィはそれでもいいか?」
「構わないっすよ。克親の意志に従うつもりっす」
異存はないようなので、その方向で話を進めよう。
供給のパスと令呪による束縛のパスを分割して二人が管理する場合、供給される魔力に対しての知覚が難しくなる。
俺が生きているか死んでいるかくらいはわかっても、どこらへんから流れ込んでくるかは完全にわからない。
流れを感じ取らないといけないというサーヴァントもいたりするそうだが、セイバーはそういうわけでもないようなので問題なし。
「供給のパスを繋ぐ以上生殺与奪権はこっちにあるようなものだが・・・・・・構わないな?」
「わかりました・・・・・・それで、大丈夫です」
「オジサンは令呪を持ってるほうのマスターが死ななきゃなんでもいいや。というわけでよろしくお願いできるかな?」
相手方の了承も得たところでパスを繋ぎ変える術式を作り出す。
そもそも来栖とセイバーの間に魔力供給のパスは通っていないも同然なので、接続自体は結構楽だ。
「サブ回路の一つを使う。ここに手を」
本数が25本なので最大出力は並の魔術師程度に過ぎないが、メイン回路で起こした魔力により強化をかけることで瞬間的には50本相当の力を出すこともできる。
なおそれを使うと一週間は足が筋肉痛的なやつを起こして地獄を見るので使いたくはない。
セイバーが俺の太ももに手を置いた。
「・・・・・・
それを確認してから回路を起動し、静かに魔力を生み出していく。
彼の腕に俺の手を添えて力を注ぎ込み、解析魔術のような指向性を持たない純粋な力として浸透させてやる。
「
基本の魔術であるが故に応用も聞かせやすいこの強化。
魔術師の間ではこいつを極めようとする奴は馬鹿か無能かイかれた天才みたいな認識がある・・・・・・まあ、事実俺は馬鹿なのだが。
馬鹿なりに考えを巡らし、覚えている訳もないパスの繋ぎ直し術をその場で構築する。
「
本来は体液を通すことでより簡単に繋げる、という話があるけれども生憎俺は自分をオジサンと称するのが苦痛じゃない年齢の男と絡む勇気がない。
というわけでわざわざめんどくさい手順を踏んでやっているのだ。
「
「・・・・・・ああ」
彼が頷いたので、俺は最後の仕上げを始める。
接続した部分に防護膜をかけるのだ・・・・・・例えるならば、繋いだ二本の銅線に絶縁テープを巻いてやる感じか。
「よし、いけた・・・・・・セラヴィ、そっちはなにもないか?」
「何の支障もないっす」
珍しくサムズアップまでして無事を示すマンドリカルドに少し和ませられながら、俺はセイバーの方を見る。
魔力不足でのしんどさはかなり軽減されたらしく、今まで顔に少なからずあった疲労感が薄くだが消えていた。
「異常は?」
「全くなし・・・・・・それにしても、こりゃ生き返るねえ。これでサブ回路だって言うんだろ、すごいじゃないか。オジサンもびっくり。なんっつってな」
着崩した服の襟を指先で直しつつ、セイバーは呑気そうに笑って見せた。
兎にも角にも、これでセイバー陣営は俺の仲間になった。一応裏切りを阻止するための手綱はあるし、警戒も完全に解くわけじゃあないが緩和してよいだろう。
「・・・・・・ありがとうございます、平尾さん」
「どういたしまして。んで、まだ話すことはいっぱいあるんだが・・・・・・一気に進めるか」
せっかくなので情報を纏めておきたい。
基本偵察に徹していた向こうとその都度戦い得たものから推測するのみだったこっち・・・・・・量の差は大きいだろうが、少しでも有益な情報をあげられればいい。
今回の魔力供給だけ違う人からってのは四次ランサーみたいなやつです。
つなぎ方は平尾式(オリジナル)っていう・・・・・・