Fate/Serment de victoire 作:マルシュバレー
というわけで俺の寝室に木を運び込み、小刀片手にとにかくがしゅがしゅと削り出し作業中。
マンドリカルドの持っていた剣の形を思い起こしつつ丁寧に形を整えていく・・・・・・のだが、謎のイメージが邪魔して時折失敗しそうになる。
たぶん、四日前ほどにも顕れた謎の剣・・・・・・あれが、未だに俺の脳から離れていないのだろう。
考え出したらよりイメージが色濃くなって、それのことしか考えられなくなってしまう。ああ今手を止める訳にはいかないのに、どうして邪魔をするんだか。
「・・・・・・はぁ」
「どうしたんすか」
いっそマンドリカルドに相談でもしてみようか。解決できるかは不明だが、そこらへんの人間より信用もできるし魔術の知識はある。
心に決めた俺は一度回路を起こして、一度投影もどきを行う。
黄金の刀身を持つ剣が空中でぽんと生まれ、ベッドの上に落ちた。
「・・・・・・え?」
「なんかさ、俺の中で・・・・・・ずっとこんな剣のイメージが渦巻いてんだよな。なんかこれ見て思うことないか、マンドリカルド」
形成された剣を試しに振って木にぶつけてみる。
この間よりもイメージが固まってきたのか、丸太には浅い傷がついた・・・・・・刃ができているらしい。
「・・・・・・そ、それ・・・・・・デュランダルじゃないっすか」
「は?」
これがデュランダル?
マンドリカルドがその半生を懸けて求めたあの剣が、これ?
彼と契約したことで俺の中にあったイメージが変化したわけでもない(前々からこんな形だった)のだが、どういう理屈なのだ。
「見間違えるはずもないっすよ。この剣は・・・・・・俺が夢見た、デュランダルっす」
なんでそんなものをと聞くことはなく、マンドリカルドは木を削っていた手を止めて呟いた。顔には驚愕一色である。
これが本当のことならば、マンドリカルドに使わせることでなんらかの変化があるかもしれない。もしかしたら全くと言っていいほど情報のない、”空白の第二宝具”についても・・・・・・
そう考えた俺は彼にその剣を渡してやった。
「っぐぁう!?」
ばちん、と電気回路がショートしたときのような音が鳴る。
マンドリカルドは手から剣を落とし、痙攣する右腕を掴んでその場に倒れ込んだ。
「ど、どうした!?」
「誓約に引っかかったっぽいっす・・・・・・デュランダルの贋作的な判定だったらしくて、最大のペナルティは食らってないっすけど・・・・・・腕が痺れ・・・・・・いででででで!」
よほどきついショックを食らったのか、腕を押さえてのたうち回るマンドリカルド。
誓約破りの罰に関しては余計な干渉をすると悪化しかねないので、俺は取りあえず痺れによって軽く暴れる彼を抑え込みベッドに寝かせた。正座で足をやってしまったときと同じような例なのかはわからないが、こういうときは不用意に動かないことが大事だ。いや俺が偉そうに言う権利は全くないけれども。
「・・・・・・なんか、すまん」
「い、いや・・・・・・見た目がデュランダルだったらいけるっしょって思っちまった俺のミスっす。克親は悪くないっす」
あくまで本物でないといけないってことがわかったし収穫っすね、と右腕を震わせながら笑う彼。絶対強がってるだろと言ってみてもその表情は崩されず。
「・・・・・・贋作、ねえ」
放り出された剣を手に取ると、一瞬のうちに溶けてただの魔力に戻ってしまった。
それと同時にマンドリカルドを襲っていたペナルティも効果時間が切れたのか、右腕の震えは収まり、マットレスの上にぼふんと音を立てて落ちた。
虚空を見据えるマンドリカルドの目には、少しだけ悔しさが宿っているように見える。
「もしかしたら、もしかしたらだが・・・・・・俺とお前は、出逢うべくして出逢ったのかもな」
「・・・・・・俺も、そう思ってたところっすよ」
俺とマンドリカルドの間にある確かな繋がり。
あのとき触媒に用いたもの以外でデュランダルに関係する因子が、二人を引き合わせたのかもしれない。
ローランやロジェロ、シャルルマーニュが来なかったのもそのせいか。
「お前との繋がりが強くなったから、あの剣には刃がついたのかもしれない。この前よりも各段に剣としてのあり方が強くなってる」
「・・・・・・て、ことは」
二人の声が揃う。
『今よりもっと強固な関係を築き上げられたら、いつかはほぼ本物のデュランダルになるんじゃないか』と。
「つっても、どうすりゃ完成形になるかはわからねえよな」
「まあそりゃそうっすよね。一人の人間になるくらいまで近づかないと完成しないとかだったらどうしようもないっすもん」
そうなってしまえば聖杯戦争に勝てたとしても事後がめんどくさい。分離しなければいけないとしたらそれなりの負荷になるだろうし、そもそも実現できるかすらわからない与太話だ。
あの模倣剣で戦えれば便利だと思っていたのだが、誓約に引っかかって厄介なことになるしこの考えは封印だろう。
「自分の起源って、なんだかわかるっすか」
唐突に問われた、俺の起源。
俺には知る由もないことだ。魔術師として、起源を自覚してしまったらある意味終わりなのだから。
知ってしまったが最後、生き方も魔術もすべてそれに影響されて変化する。最初から知っていたのならそれを利用した術式を編むのも簡単だが、俺のような年齢になるときつい。
「なんだいきなり。そんなこと聞いたって俺は知らんぞ」
「そうっすか・・・・・・すまん、今のは忘れてくれ」
「なんだよ気になるじゃんか、言ってみろよ」
俺が要求するも、マンドリカルドの気は進まないらしい。
まあ下手したら俺の根幹すら揺らぐような事柄だ、是非もなしか。
「・・・・・・具現」
彼が呟いた熟語は、妙に俺の芯に馴染む。
その瞬間悟ってしまった。これが俺の起源なのだと。
どういう言葉を吐けばいいのかわからない。不用意に喋らせてしまった自分への怒りも、それで簡単に言ってしまったマンドリカルドへの怒りも湧かない。悲しみも嬉しさもない。
「そう、か」
「・・・・・・克親、言わない方がよかったっすか」
「いや、いいんだ。どうせ根源に到達することを目指すんだったら避けて通れん道だったろうさ・・・・・・」
それだけ言って、俺はふらつきながらも立ち上がる。
少し別のことを考えよう、記録もつけなければならないのだし。