Fate/Serment de victoire 作:マルシュバレー
基本終着点だけ考えてあとは思いつきで書いてるからカオスになりがち(物書きとして致命的)
聖杯戦争の記録を付け終え、俺は金庫からマンドリカルド専用ノートを取り出した。
最初の数ページ以降全く文も何も書かれていないそれを机の上に置き、まっさらのページを開く。よくよく考えれば最初に彼専用記録帳を作ると決めてから一度しかこいつを更新していない。いやそれは普通の聖杯戦争記録にも言えることだが。
バーサーカーに精神を壊されかけたり、アーチャーに腹をぶち抜かれたりと散々な目にあったが・・・・・・生きてこれを更新できることに少し嬉しさを感じた。
「さてさて、忘れないうちにと」
シャーペン片手にドカドカと内容を書き込んでいく。
彼の夢、言葉、秘密・・・・・・脳内にある彼の記憶全てを書き記して、万一なにがあっても無くさないように。
「・・・・・・これが、起源の力ってことか」
何かを生み出すのが、表現するのがとても心地よくて・・・・・・ついやってしまう。
自覚してしまうともう止まらない。ここ数日の思い出を私情たっぷりで綴って簡素ながら絵もつける。
さっきの電話、相手は誰だったのだろう。最近接した覚えのある女子だと海と来栖くらいしかいないのだが・・・・・・
海みたいなタイプはマンドリカルドからみればクセが強すぎるし、さすがにないだろう。
ならば答えは一つというものだ。
セイバー曰わく来栖は俺のことが好きだっちゅう話だが、俺はマンドリカルドの恋路を邪魔するわけにもいかん。
ああは言ったが別に結婚に関しちゃ急ぐことでもない。聖杯戦争に負けて死んだらそれが平尾家の終わりというわけだし。
「やっぱ引っ張られるもんだよなあ」
あらかた書き終えたところでノートを金庫に戻したあと俺は背もたれに背中を投げ出し、机の上で足を組んだ。
例の剣(デュランダルのパチモン)を再び強くイメージして・・・・・・魔力にて具現化させる。
先ほどよりも剣らしさが増したのか、実体化して落ちたそれはさくっとフローリングの上に突き立った。
「・・・・・・切れ味が再現されてきてる的な?」
剣を抜いてまじまじと見つめてみるが、最初よりも鋭利さが増している。起源を知った影響が如実に現れたのだろう・・・・・・
「マンドリカルドはこいつをまともに使えねえしなあ・・・・・・自己防衛のためくらいにしか使えんよな」
いざという時は誓約での麻痺を我慢してでも戦って貰いたいところだが、そこまで追いつめられてちゃどっちにしろ死の危機に瀕しているだろう。
なぜこんなイメージが俺の中にあるのかもわからないままやられるのは嫌だが、まあその時はその時だと腹をくくるしかあるまい。
「起源が具現だったのは助かった感じだな・・・・・・あからさまにヤバい奴じゃなくてよかった」
人づてでの話しか聞いたことは無いのだが、起源が禁忌である(とされる)女はするなと言われたことを無性にしてしまいたくなる性分が強くなって最終的には破滅しまったとかなんとか。
俺がもしそれだったとしたらマンドリカルドに恋しちゃうとかいう、あからさまに敗北フラグな展開しか見えない。
とは言ってもあくまで噂話レベルなので、どこからが無駄なおびれなのかはわからんが、とにかく起源によっては厄介な人格になるということだ。
その点具現というのは基本的な人の欲求に近しい。自分の中にあるイメージを現実に引っ張り出すという解釈をすれば、魔術そのものとほぼ同義でもあるし。
よっぽどこじらせでもしない限り、人に危害を加えたい衝動などは起きない・・・・・・はず。
だが人間いつ壊れるかはわからないので安心するべきではないともわかっている。
「・・・・・・か、克親いるか?」
珍しくマンドリカルドが研究室までやってきたようだ。
何か話したいことでもあるのだろう、と思い俺は扉を開けた。
「なんかあったか?」
「・・・・・・い、いや・・・・・・その、えぁ・・・・・・う、あの」
いつもより各段に話し始めが遅い。これはよっぽど言い出しづらい話なのだろう・・・・・・こういうときマスターとして、友達としてきっちり聞き出さないといけない。
この場合どうするのが最善なんだろうか。
「ゆっくりでいいから言ってみ?別になに言ったって怒らねえからさ」
「・・・・・・か、かか克親は・・・・・・来栖さんのこと、どう思ってるんすか?」
あくまでマスターを尊重するべくそんな話をし出したのだろう。正直言っていいなとは思っているが、それを開けっぴろげにすればマンドリカルドの思いを無碍にしてしまう。
さあどうしたもんか。
本心を言うか、それとなくごまかすか・・・・・・
「まー・・・・・・どっちかってえと好きの部類なのかね。つっても俺の基準だからさ、マンドリカルドの意志を尊重するけど」
「え、あいや俺は別に・・・・・・別に俺そういう訳で言ったんじゃなくて、えっと・・・・・・」
完全に照れてやがる。
これは応援するべきなのか否か・・・・・・サーヴァントという存在は戦争が終結すれば消える運命。これを回避するには聖杯へ受肉を願うくらいしか方法がない。
俺たちが勝利出来ればそれも可能なのだが、実現するかどうかは未知数。その上来栖もマスターなので、どこかで他のサーヴァントにやられる可能性だってある。
あまりに障壁の多い道だが、友としてここは全力を尽くしてやるべきであろう。
「安心しろ、俺はお前の恋路を邪魔するこたしねえ。つか応援するぞ」
「いいいいいやあの!俺好意寄せてるわけじゃないんすよ!ただただただただマスターのために」
またこいつはそうやって自分を優先しない。少しは自己中になれよと言っても反応は変わりない。
「本当に俺は来栖さんに恋してるってわけじゃぬぇーんすよ!マスターのことを思って、ね!?」
見たこともない表情をして力説するマンドリカルド。意外と強情な奴だ。
「ぬぁーもうどうすりゃ伝わるんすか!俺は!別に恋なんてしてないんすよ!!」
「わかったわかった・・・・・・そういうことな」
そうは言っても全くわかってはいない。
じゃあ彼は何のために連絡らしきことを行っていたのだろう。電話越しでの作戦会議かなにかだったのだろうか。
頭上に山ほどクエスチョンマークが浮かび上がったのが向こうにも見えたのか、更に彼は話を続けてくる。
「俺はこんな1ヵ月も持たないような命で恋できるほどの勇気はないっすよ。ただ、マスターにも・・・・・・家族ができてほしいなって、いうか・・・・・・なんて言えばいいんすかね」
「・・・・・・優しいのな、お前」
確かに500年近く(時計塔設立に携わったような家と比べると到底短いが)続く平尾家の当主としても、後継ぎは欲しいところ。
多少は魔術に造詣のある人間がいいかと思っていたが・・・・・・まあそんなのは親に刷り込まれただけの考えなんで別に気にすることではないし。
「まあ、この戦争が終わってオレと来栖さん、どっちも無事だったら考えるか」
「・・・・・・そうしてくださいっす」
「それまではお前が俺の家族な。友達と家族の兼業」
俺の唐突な言い分にもマンドリカルドは黙って頷いてくれた。それほど気にしていたんなら、こっちもそれなりの姿勢を見せるべきだろうな。