Fate/Serment de victoire 作:マルシュバレー
前々から考えてたネタでしたけどこんなにも唐突な話になるとは思わなんだ
「大丈夫かセラヴィ」
「あ、克親・・・・・・いかんせん不透明なところが多くて俺にはうまく説明できねぇっす・・・・・・」
確かに後半のマンドリカルドは客と八木澤を運び出して集まる野次馬をそれとなーく追っ払っていただけなので内部でのことをあまり見ていない。海たちは出る気がなさそうだし、ここは俺が行くか。
「じゃあ彼に代わって俺が話して大丈夫ですか?」
向こうからも許可が出たので俺はことのあらましをかくかくしかじかと概要を述べた。篠塚がサーヴァントであるだのマスターがどうだのまではそりゃ神秘の秘匿もあるので話さず(話したとしても信じてもらえる訳がない)、ただ剣道をやっている篠塚が木刀で輩を全部なぎ倒したということにしておいた。
一応それで納得してもらえたのか今日のところはひとまず解放らしい。犯人もきっちり捕縛してあるので今後こちらに来るであろう調査もそこまでめんどくさいものではないはずだ。
「とりま人が無事で良かったわ、よくやったセラヴィ」
「いや俺は何もやってないっす・・・・・・よ?」
濃密な魔力の波動を店内から感じた。海のやつ、印象改変をここで使うってのか・・・・・・
「いやーほんとセラヴィくんはすげえよなぁ。俺らが出る幕もなく強盗どもをなぎ倒したんだからねぇ??」
「そうですね。街の英雄ですよヒーローですよ」
魔眼殺しに阻まれているせいでよく見えないのだが、確実に海の眼は魔術を行使している。
十中八九というか十中十くらいの確率で、行った改変は『マンドリカルドこそが強盗を返り討ちにした英雄である』という内容だろう。
これからもアサシンとしては潜伏を貫いていたいのだろうがこちらへ全部押しつけてくるとはなんたる雑さ。
「・・・・・・セラヴィ、新聞の記者とかが来たら逃げるぞ」
「・・・・・・全くの同意見っす」
一般人に追い回されたらさすがに聖杯戦争へ支障が出る。神秘なんて隠すもクソもなくなってしまうし、なんなら戦いの途中で消し炭にしてしまう可能性があるのだ。
「あのすいません舞綱放送局の──────」
「すいません用があるので!ほんとにすいませんねって行くぞ!俺らは名無しの権兵衛でーーーーす!」
「いぇっさぁー!俺はジョン・ドゥっすそこんとこよろしくお願いしますっすーーーー!」
強行突破である。
人に注目されるのが嫌な陰気野郎二人は、それとなく足に強化魔術をかけ逃走した。
唐川があとでうまい具合にごまかしてくれないものかと俺にあるまじき幻想を抱いてしまう・・・・・・やっかいごとを背負うのはもうごめんだ。
「・・・・・・振り切れたか」
「そう・・・・・・っすかね。はひー疲れたぁ」
精神的にも参っていたであろうマンドリカルドは俺のすぐとなりで崩れるように座り込んだ。
メンタルケアがちょっと難しいタイプだというのに奴らはなんてことをやってくれたんだか。
「おもろいことやっとったなあ。Tmitterで拡散されててマジ草生え過ぎてパンパできるわ」
完全にSNSというものを失念していた。今更投稿を消せとか言えないし、俺はアカウントを持っていないので作成して声をかけてもあらぬ誤解を招くだけだろう。
唐川のクソボケナスは隠蔽する気全くなし。事態の展開を面白そうに追っているようだ。
「今日だけはお前に頼む。Tmitter破壊するでもなんでもいいから隠蔽してくれ」
「一応ひとりの人間相手にそういうこと頼むもんか普通?」
嬉々としてスマホを弄くっている唐川である。やる気は全くなし。
「お前のお友だちもかなーりでかい術使ったぽいし、その操作はこっちまで及んどる。ライダーくんがヒーローに祭り上げられてもう戻るのは不可能やね」
「・・・・・・なんてこった」
「パンナコッタ?」
新喜劇違うわと俺は叫んで奴の脇腹を一蹴してやった(物理)。
それにしても厄介なことになった。このまま情報が広がればあらぬ尾鰭も付属するだろうしテレビにも取り上げられる可能性が高くなる。
静かに感謝状だけもらって終わりにできればよかったのだがもうこうなりゃそうもいかん。
「・・・・・・セラヴィ。お前は今日から仮面ライダーだ」
「何ほざいてるんすかマスター」
困惑のあまりマンドリカルドの物言いが過去最高の直球さを見せてくれた。さすがに俺も今の発言は突飛すぎたなと遅すぎる後悔をしている。
「魔力でそれっぽい装備編めるか?出来なきゃ俺が出来合いで作るが」
「いやなんでやるていで話進めてるんすか!いや一応イメージさえ出来れば魔力で編めなくもないっすけど嫌っすよ俺!そういう正義の味方とか無理に決まってるでしょ!?」
とんでもない無茶ぶりに早口で文句を言い出すマンドリカルド。そりゃ生前俺が正義だってスタンスのシンプル悪役だったしそういう存在になるのは気が引けるもんだろう。
「なにそれおもろそう!撮影するんやったら協力するで!?」
お前は首突っ込むんじゃねえ!と俺たちの声がぴったり揃う。ただでさえ厄介な話なのに唐川に介入させたらもっと話がこじれる。
「まあ人前で事件に巻き込まれたりサーヴァントとの戦いになった時だけでいい、それとなくごまかせれば十分だ。大人に通用するかはわからんが、とりあえず子供たちは本当にヒーローがいると思ってくれる・・・・・・はず」
希望的観測の並べ立てでしかない。
こちらの目的は正体がバレることを防ぐため。そして神秘を可能な限り隠すためである。
少々無理があっても目的を達成できればそれでよい話なのだ。
「・・・・・・わかったっすよ、演技とかあんま得意じゃないタチなんで、そこらへんのフォローは全部任せるっすけどいいんすか」
「ああ、俺もそれとなくサポートする。炎とかのエフェクトも任せろ」
不承不承にマンドリカルドは頷いた。さて、そうと決まればイメージの構築だ。それなりの世界観がないとキャラクターの薄っぺらさが透けて出るし、安っぽくなる。
中学生時代まで番組を見ていた覚えがあるが、これを機に一回見直してみるのも一興。
「でけたら放送日時教えてな~」
「誰が放送するか」
久々にぶっ飛んだ話が出てきたおかげか、唐川はいつになく上機嫌で俺とマンドリカルドのもとを去っていった。
あの様子だといらん手出しはそうそうしてこない(介入するとつまらなくなりそうとか思っている)はずなので、気が変わられるうちにやることだけやっておきたい。
「・・・・・・いきなり変なこと言ってすまんかった」
「・・・・・・いいっすよ。仮面被ればいくらか相手へ強く当たれるし、宝具さえ出さなければ真名もそうバレんでしょ」
そう言う彼の目は死んでいた。ほんとにすまん。