Fate/Serment de victoire 作:マルシュバレー
オーロラと塵と伝承結晶さえあれば凍える吹雪が10になって影の国の女王様がスキルマになるのになあ・・・・・・
投稿頑張ってますが春休み終わったら高専という日本のラーゲリに行かなければならないのでスピードが落ちる可能性があります(そもそもコロナニキがいつ収束するかわからないけど)
「ま、一応監督役にゃ媚び売っとこうかなと思ってね」
「どういう風の吹き回しやねんな、俺みたいなタイプがいっちゃん嫌いなんとちゃうかったっけ?」
訝しげにこっちを観察してくる唐川。
視線に注目してみると、しきりに扉の奥・・・・・・つまり外の方を見ているのがわかる。
『扉に隠れてろ、あいつは無駄に勘がいいからな』
魔力のパスを通してマンドリカルドにそう伝える。
ブリリアドーロもデュランダルもないとはいえ、真名を見破られないとは限らない。
了解という彼の返答が同様に伝わったところで、俺は再び口を開く。
「もう7騎はすでに揃ってんだろ?」
「・・・・・・せやなぁ。今からでも開戦はできるで?」
霊器盤を持ってにやにや笑いを浮かべる唐川。こいつがこういう顔をしているときは大概ろくでもない企みをしているときだと経験が知っている。
だが、ここに来た理由の一つを達成しなくば意味がない。少々の危険を承知で聞いてみるとするか。
「・・・・・・召喚された奴らのクラスと召喚順は?」
「最初が10日前のアーチャー。んでそっからアサシン、セイバー、バーサーカー、ランサー、アヴェンジャー、ライダーだ。ライダーが今日の深夜頃やったしそれがお前のサーヴァントやな?左手の白手袋も令呪隠しか」
俺が最後まで参加を渋っていたことと、魔力の好調時間帯を鑑みればその結論へたどり着くのは当然であろう。
まあどうせ俺が来ようが来まいがバレていたことだ、まずいとも思わん。
「にしてもアヴェンジャーか。キャスターに洗脳系統の魔術でも食らったらどうしようかと思ってたが来ないとは僥倖僥倖」
「あーそういうこと言ったら俺がしたくなるじゃーん」
また面白いこと大好き生命体である唐川の本能が剥き出しにされる。この外道神父め。
そこはかとなくこいつとの付き合いが嫌になった俺はこれ見よがしにでかい溜め息をついてやった。
「白犬のおいど倶楽部は活動休止しとけ、ただでさえマスターとの戦いにビクビクしなきゃならんてのによ」
「なーんやつまらん。これやからお前は黒犬のおいどなんじゃい、おもろないな」
「自分の命と根源到達への希望がかかってんのにおもしろいことなんてやってられっか。もう俺は帰る、サーヴァント揃ってんだからさっさと開戦しな」
俺はそういって回れ右をしようとした。
瞬間、鋭利な物体が俺の心臓目掛けて一直線飛んでくる。
やはりかと思い俺は即発動型の防御壁を展開しようとしたが、それは間一髪のところで防がれた。マンドリカルドの木剣によって。
素材のせいで剣に飛行物体は垂直に突き立っている・・・・・・貫通したのか、反対側にまで鈍色の棘が生えていた。
「なかなか疾い子やないか。これは仕留めるんに難儀しそうやな」
「・・・・・・貴様、監督役の癖にそれはねえんじゃねえか」
掲げた剣を下ろし、唐川を睨めつけるマンドリカルド。
その背中を見るだけで察せるが、一瞬にしてもうブチ切れ寸前だ。今は剣だけを出しているが唐川が挑発を重ねれば鎧まで出して殺しにかかりそうでずいぶんと危なっかしい。
「ライダー止めろ。俺もこいつは阿鼻地獄に落としてやりたいくらいだが今殺したところで意味はねえ」
「阿鼻地獄とか宗教違いなんやけどなあ?ちょけただけやろがこまいことでえっらい怒んなぁ・・・・・・犬の躾はちゃんとせえよ、飼い主さんよ」
「じゃあゲヘンナに頭から落ちろ、つか死ね。戻るぞ、ライダー」
不服そうなマンドリカルドの左手首を掴んで教会から出て行く。もう戦争が終わるまで二度と行ってやるもんかんなとこ。
心の中で唾を吐き捨て扉を乱暴に閉めた。
「・・・・・・克親」
今のは殺すべきだったと、口に出さなくても目が言っていた。
そりゃ自分がこの世界にとどまっているための依代へ危害を加えられかけたのだし怒るのも当然だ。
「あいつはいつもあんな風さ。今のは大概、お前の実力を見てみたかったからだろうよ」
マンドリカルドの剣に刺さった物体(教会の連中がよく使う黒鍵というものだろう)を抜いた。
これは物理的な剣としての能力は低いが、その代わりに霊体への干渉力が高い。
よってサーヴァントへダメージを与えられる武器なので不用意に触らせる訳にはいかないのだ。おまけに謎の刻印もついてるし。
「・・・・・・でも、許せない」
ふつふつと煮える怒りの熔岩。
その気持ちはありがたいのだが、あまり簡単に激昂してもらっても困るというものだ。
「お前の思いは十分にわかるがな、あんま怒るな。なに、戦争が終わったら聖杯で願いを叶える前に祝勝祭としてばっちりあいつを血祭りにあげっから準備しとけ」
彼奴の対人戦闘力はかなり高いが、俺と戦って勝てるほどではない。
いざという時には一発で頸動脈引き裂いて始末してやるつもりだ。んな時はまだきてないけど。
抜いた黒鍵を強化魔術の応用で無力化し草むらに打ち捨てる。
「まあなんにせよ助かった。俺も反応が遅れたからな・・・・・・お前が間に入ってなかったら真皮くらいまでは刺さってたかも知らなんだ。ありがとよ」
最高に俺っぽくない台詞を吐いて、マンドリカルドの頭を撫でてやる。
白いメッシュの入った独特の髪型が滅茶苦茶に崩れるが、手を離した途端にびよーんと元に戻った。
「いきなりそういうのやめてくれよ・・・・・・びっくりすんじゃん」
「け、形状記憶ヘアー・・・・・・?」
サーヴァントの体には謎が多いと研究日誌の端っこに書いておこうと決めた。
降霊系統は門外漢だけど。
危ない事案もあるにはあったが今日の用事は無事に終われた。
後は本格的な開戦に備えての準備・・・・・・だが、その前に最後の(安寧が確約された)昼餐といこう。
教会前の広場を出て左に曲がり、100mちょい歩いたところに俺の行きつけはあった。
喫茶「プレイヤード・ダン・ル・ヴァン」。名前を直訳すると「風の中のすばる」である。プロジェクトなんたらが始まりそうな店名だがそこのマスターいわく偶然だそうだ。
ドアチャイムをからから鳴らして店内に入る。そんでもってまず目に入るのは店内備え付けのテレビをだらだら見ながらアンティークもののサイフォンにコーヒーの粉を入れている男の姿。ちょうどコーヒーの注文があったところらしい。
「お、いらっしゃい平尾くん」
呑気そうに笑うのがここのマスターである八木澤康助。俺が気さくに話せる数少ない存在である。
今まででも暇そうに働いてたってのにバイト雇ってからさらにゆるゆるになっているのが気になるが俺は文句を言えるような立場でもない。
「どーもマスター。取りあえずいつものやつ一つくれ」
「アメリカーノな。そこのお友達は?」
俺の後ろにいたマンドリカルドを見て八木澤は聞いた。当たり前のことなのだが少しマンドリカルドは困っているようで・・・・・・こういう場所に慣れてないみたいだし、ここは俺が勝手に注文するか。
「ああこいつは・・・・・・ラテでいいや」
「あいよ。飯はどうすんだ」
「俺は安定のエビグラタンと・・・・・・ん、ミートパイ?」
なんか知らん間にメニューが増えていた。具体的には肉料理関係と和食が滅茶苦茶増えている。
おそらく料理上手なバイトくんをこき使っているのだろう。おかげで売上は好調ぽいし悪いやっちゃ。
「いやあ篠塚くん料理うまくってね・・・・・・毎日のように新メニュー出しませんかって試作出されちゃうともうつい・・・・・・」
「マスターなあ、いくらフリーターだからって使いすぎんなよ?フットワーク軽いんだから出るときはすぐだぞ」
なんて俺が喋っている最中に音もなく差し出されたおしぼりとお冷や。
振り返るとそこにはにこやかに笑う黒エプロン姿の男子。
「出ませんから安心してください。で、エビグラタンとミートパイですね?すぐ作りますから」
「毎回気配消して来るのやめろって怖いからさ」
「すいません治らない癖で」
お盆を小脇に抱え戻っていく彼は篠塚周平。
9日前程にここへバイトとして雇われたフリーターで、料理の腕がとてもよくついでに顔が可愛いとのことで常連の女性客に人気らしい。ついでに人柄も温順で篤実と非の打ち所が行方不明となっている。
「・・・・・・克親」
「どったの?」
マンドリカルドがなにかを察したのか、ほんのり警戒色を強める。
双眸が辺りをきょろきょろと見回して俺の方へと視線を戻したところで、彼は首を横に振った。
「いや、何でもない。俺の勘違いだったわ」
ただの気のせいだったようで、それに安心したマンドリカルドはコーヒーの抽出工程を興味深そうに見つめだす。
まあ原典の時代設定がだいたい8世紀かそこらなので、コーヒーの起源説のうち一番昔な奴でも時期がギリかぶるかかぶらんかくらい。
つまり彼がコーヒーというものを知っている可能性は限りなく0に近いはずだった。まあ聖杯が押しつけてきたであろう知識にそれがきっちり入っているはずだけど。
「そういや気になってたんだが、その子は誰だい?初めて見るけど」
まあそりゃ知らない人が俺と一緒に来てたら聞かれるよな・・・・・・設定はそこまで練ってないけどこの際ごまかせればなんでもいいや。
「ああ、こいつはセラヴィっつって俺の友達。東京の方面から俺んちへちょっとだけ旅行に来た奴。一応外国人だけど日本にずっと住んでたから普通に日本語しゃべれるし日常生活もできんだ。まあちょこちょこ世間知らずぽい物言いすっけどまあそこが愛嬌ってことでよろしく」
簡単な設定だけ言った後でマンドリカルドに合わせろと少々難易度の高い命令を念話で押し付け、俺はお冷やをぐいと飲み干した。
自分勝手で申し訳ないが今を生き延びるためには必要なことなのだ。
「そうか。こんな地味なとこに観光だなんてご苦労様だね。まあ楽しんでいきなさい、派手じゃないけどいいところだから」
「わかりました。短い間ですが、よろしくお願いします」
ひとつお辞儀をして笑ってみせるマンドリカルド。
陰キャと自称していた割にはそういう挨拶がきちんとできるあたり、偉いとあとで褒めてやろう。