Fate/Serment de victoire 作:マルシュバレー
ゴリラスペシャルたのしかったです
きっちり二人を買い出しに行かせたので、しばしの静寂が俺の家へ訪れる。
さあ、奴らには言えないような話を始めよう・・・・・・鬼のいぬ間になんとやら、だ。
「・・・・・・んで、例の話なんだが。本当にいいんだな?」
「いいっすよ。俺も腹はくくったっす」
読みかけのイリアスへスピンを挟み込み、机の上に置いたところで俺を見やるマンドリカルド。その目には未だに迷いが透けて見えるのだが、ここは指摘しておいたほうがいいのだろうか。
「やっぱやめとくか?」
「気とか遣わないでくれて大丈夫っす。あんま心配されたらかえってやりにくいじゃないっすか」
にへらと笑う彼の顔を見て、この状況から止めるのは無粋だと感じた。
せっかくやる気があるのだから、ここは一つ利用させてもらうとしよう。
「仮面ライダーと言えばまずはバイクだな。倉庫の肥やしになってる子がいるし、この際ちょいと改造して使うぞ」
「免許は」
「・・・・・・そうだった」
マンドリカルドは免許どころか戸籍すら存在しない。そして俺は免許を4年前に失効してから更新していない。
つまり運転できるやつがいない。
他のサーヴァントも無理だし、来栖さんは確か二輪は持ってないとどっかで聞いた。免許持ちは海だけだが、相談しても鼻で笑われるに違いない。
「ブリリアドーロ出して乗り回すって訳にもいかんだろ?」
「そうっすね。一応馬は自転車扱いなんで免許無くても走れるっすけど・・・・・・さすがにそれは無理があるっすよ。第一ブリリアドーロはごく短時間しか呼べないんで、移動とか相手の追跡はできぬぇーっす」
となると、自分の足もしくは自転車で移動しなければならないというのか。
ずいぶんかっこのつかない光景しか想像できないが、まあこの際仕方がない。
「まあそれは置いといてだ。設定練るぞ設定!いかにもそれっぽく、周りの大人にも納得いってもらえるような内容で」
「最終的に何がしたいんすか克親は」
彼の言葉で目が覚めた。柄にもなく気分が高揚していたのか、顔が熱い。
なにかしらを作るという行為が今まで以上に楽しく思えてきて、そういうことをすると決まった瞬間からいろんな空想が頭の中で渦巻くのだ。例えるならばそう、蟲毒の壺のように混沌としている状況。
「・・・・・・すまん。先走っちまったな」
自分自身の奥底から間欠泉が如く噴き上がる創作意欲。礼装製作などでそれを発散してはいるのだが、それでも収まる気配はない。
「いやいいんすけど・・・・・・ただ俺頭よくないんで、設定とかそういうの全然思いつかないっすよ」
「そうか・・・・・・まあ細かい話はほっといていい、取りあえずコンセプトとモチーフだけ決めるぞ。ベルトとかそういうのは俺が全部礼装として作るから」
アイス事件の前に調べていたのだが、最近のドライバーというものは結構自由らしい。
めちゃくちゃな蛍光色だったりベルトとは別に腕の装備が必要だったりする上に、大きさもかなり作品差がある。
取りあえず変身用アイテムの装填→ベルトに何らかのアクション→装備展開という基本の流れのみを考えるとしよう。デザインとかは後でいいし、重要なポージングもベルトを作ってから考えればよい。
「・・・・・・それにしても随分と作ったっすね」
いつの間にか一面文字だらけになったメモ帳を見て、マンドリカルドが簡単の声を上げる。
約30分の会議で一応コンセプトとモチーフ、あとマンドリカルドの演じる役割についてかなり練りまくった。戦闘中にそう喋れないと思うので、一応寡黙設定。必要に応じて俺が情報を補完するので彼はそこらへんあんま気にせず戦えるというわけだ。
「まず剣・・・・・・というか真剣は誓約で使用不可。銃とか弓の飛び道具はマンドリカルドの宝具による恩恵を受けられない。つーわけで今回の主武装はご多分に漏れず槍だ。戦闘を行う場所とかも考えるとそこまで長さは取れないとこ覚えといてくれ」
彼の持つ能力及び性質を出来るだけ活かすためにはやっぱり槍しか使えない。分厚いナックルや腕装甲による格闘一本というのも考えたが、やはり彼には武器を持った状態で戦って頂きたいのだ。
武装イメージ図をメモ帳に描き、何回か修正を加えていく。
やはり付け加えて削ってを繰り返すという行為は楽しいことこの上ない。自らの脳内にあるイメージを具現化するという快感に溺死してしまいそうだ。
「克親、表情やばいことになってるっすよ」
「・・・・・・マジで?」
「マジで」
だめだ、マンドリカルドに指摘されるってことは相当にヤバい状態である。頬に手のひらを当て無理やり元に戻し、一度心を落ち着ける。
起源を知ったからって引っ張られ過ぎな自分に喝を入れ、湧き上がる欲求に打ち勝っていく。
冷静にならねば、この戦いは勝てないのだから。
「取りあえずこんくらい設定がありゃ十分だ。俺は研究室で装備一式造ってくるから、今日のところはここらへんで」
「うっす、あざっした」
俺が部屋を出ようとしたところで、彼は律儀にお辞儀をひとつ。
生前の粗暴でやんちゃな王とかいうイメージは(バーサーカーのせいで暴走していた期間を除いて)今日までほとんど沸いてこない。
どこからどういっても、『ちょっと根暗な礼儀正しい青年』でしかない。
サーヴァントという人に仕える存在となったこともあるだろうし、このまま普通に接していれば今の態度から少し軟化してくれるだけで終わるだろう。それがいいことなのかと言われると、少しだけ歯がゆい気持ちもあるのが実情。
彼の王らしい一面を見てみたいだのもっと仲良くなりたいだのエゴまみれな欲があるだけなので、そうおいそれと彼には言い出せない。
自然と引き出せれば一番なのだが、俺の能力じゃ機嫌を損ねて終わりになるだろうし・・・・・・という予想も、言い出すことを抑制しているが、欲望は消えてくれるわけもない。
・・・・・・『具現』という起源は何よりも厄介なのかもしれない。と俺は一つの考察を放り投げて椅子に沈み込んだ。