Fate/Serment de victoire 作:マルシュバレー
製作に取りかかるのはいいが、ここで重要な問題点が一つ。
ベルトから装備を展開し肉体へ着装する、所謂パワードスーツ系という設定をした故に起こるもの・・・・・・そう、『その装備どこに格納してるんだよ問題』である。
生体機能を内部から強化し、ついでに外装を作り替える・・・・・・所謂初代あたりのタイプならまだしも、完全な一般人が強化アーマーで戦えるようになるという話だと体内から出てくるようなやり方が使えない。
等価交換を原則とする魔術師としても、番組のような演出(ベルトからとんでもない量のパーツが出てくる)というのは難しいし、今の俺が使える体積変更の魔術を使えばなんとかなるかもしれんが・・・・・・それだとどんな技術で大きさを変えているのかと不審がられる。
「・・・・・・となると、使える手はこいつしかないな」
トランク型のスーツモジュールを開発し、ベルトからの信号にて起動・・・・・・一度トランクのままマンドリカルドの元へ飛んで行って展開、着装。これを俺が初級動魔術などの駆使で担当する。マンドリカルド自身はそれっぽいポーズさえ取っていればそれでいい・・・・・・分割思考の数にも限度があるため、あまり細々としたパーツには分けられないが。
目撃してしまうであろう一般人相手には、それぞれに微小飛行ユニットを搭載しているとでも言えば誤魔化せるはずだ。
「さりとてそう簡単には行かないだろうな」
サーヴァントの攻撃を受けてもわかりやすい損傷を見せない金属パーツと、それを体積操作なく持ち運び可能なまでに納めるような収納のしかた。などなど課題はまだまだ存在する。
「どれだけ俺の強化をかけてもサーヴァントの攻撃を食らえば損傷はするだろうし、場合によっては熱で溶けるかもしれないんだよな・・・・・・」
心臓や首、そして死因からくる弱点の脇腹、んで人間誰しも攻撃を食らえばのた打ちまわる股間。ここらへんの防御が甘いと命取りだ。
ああ、確かマンドリカルドの鎧は九偉人の一人ヘクトールのもの。スキルによって防御力の向上も見込めるのだから、重要箇所は本人の装備を利用させてもらう形にするのが最善である。彼の敏捷を活かせるように外装も軽量化しておきたいところだし。
そうと決まればデザインの構築だ。幸いなことに彼の鎧(特に胸部プレート)はスーツの一部として使えなくもない。
あの白銀色を綺麗に溶け込ませるとなるとかなり小難しいが、不可能ではない話だ。
「燃えてきたな、こいつは面白い・・・・・・!」
またスイッチが入ってしまったが、この際洪水のように流れるエネルギーを使い果たす勢いでやってしまおう。
明日にでも実装できるように、最速で仕上げるつもりだ。
「買ってきたぞ、800円前後のアレ」
「冷凍庫の空いてるところにほりこんどいてくれ、俺は今忙しい!」
やっとこさ食ったアイスの補填を買ってきた海が俺の研究室に勝手に踏みこんでじろじろ見てくる。機密事項だと言って追い返そうとしても頑なに動かない。
「リビング戻れよ。それともなんか話したいことあるのか?」
「・・・・・・いや、ただ何をそんな躍起になって作ってるのか気になってな。お前そんな目に見えてやる気出す奴じゃねえし」
確かに、俺は意図的に本気というかやる気を見せないようにはしていた。
平尾家における暗黙の了解みたいなものが理由の一つだ・・・・・・どんなときも、常に冷静であるべし。例え家が存続の危機に瀕しようと、他人に泣きつくことは許されない。
正直言ってどうでもいいし、血統が無くなるのは駄目な話なのでいざという時は地に額を擦り付けることも辞さないつもりだ。
だがやはり意識は刷り込まれているもので、少し気どってしまう性質があるというのは自認している。
「ま、何にせよいいことじゃねえか。人のこと気にせず勝手にやるってのも悪かねえぞ?」
「まあ悪かないっつかいいんだが・・・・・・いかんせんお前は勝手すぎるんだよ」
会社の製造ライン一部私有化して魔術に利用してるし、そのプラント担当者たちに金を渡して口封じしてるし。
万が一外に漏らされるようなことがあればご自慢の魔眼で隠蔽の犯人を消去(島流し的な意味で)、なんなら人様の記憶までいじり出すのだからたちが悪い。
「いつ逮捕されても知らねえからな」
「印象改変でいつでも逃亡可能だが?」
だめだこいつ、生粋の”バレなきゃなんとでもなる”って思考の輩だ。知ってたけど。
もはや溜め息しか出ない。
「お前は人間としての倫理観どうにかしろよ。これまで何人社長の座狙ったやつ闇に葬ってきた」
「今日の朝食った米粒の数くらいは」
「うっわ凶悪」
茶碗一杯150gとして算出するとおおよそ3000粒は軽く超える。いや確かにこんなポンコツ自由人社長がトップだと苦言を呈したくなる気持ちもわかるけど、そこまで挑戦しては轟沈した奴がいるとは思わなかった。
「言うて恩情はある方よ?自主退職か、今後はこのことを金輪際画策しないと約束するか、海のもずくになるか。優しい優しい三択」
「最後殺してるじゃねえか。あと藻屑だそれを言うなら」
魔術師というのものはだいたい道徳が終わってる奴らの集まりであるが、さすがにここまでひどいというのは見たことがない。
俺は協会に所属していないからわからんが、時計塔やらではそういった教育はしていないのだろうか?
「さすがに殺されるのは嫌な奴ばっかだしだいたい前者二つを選ぶもんさ。それでもなお抵抗するつもりの奴は強制記憶消去しちゃってるし」
「お前さあ」
やはりこいつはここで殺しておいた方が世のためではないだろうかとさえ思えてきた。
基本的にメディア露出を担当する副社長の勅使河原という男の方がよっぽどできた人間だし(あくまでテレビなどの媒体で見ただけの判断だが)、それに比べてこいつときたらなんという自由奔放っぷりか。華麗奔放ならばよかったのにその美しさなんて地上に存在する反物質並みにない。
「勅使河原さんに任せっきりってのもどうかと思うぜ?代表取締役なんだしさあ」
「その役はヤツにも与えてるわ。外部との契約締結に関する権限も、情報を他の取締役へ完全に公開するという条件付きであるし・・・・・・」
じゃあもうお前いらないじゃん、という簡素な結論をぶつけてみたが本人にはダメージ0。
「カンちゃんは俺のかわいいペットなんで。何から何までずぶずぶよずぶずぶ」
「いつかそのペットに頸動脈を噛み切られろ」
一回まともな人間として更生する機会があってほしい、という俺の勝手な願望である。
これ以上こいつを野放しにしていると危険だ、どうにかして純粋無垢な25歳の女の子にしなければならない。
「はいはい、俺のごっきごきに固まった首がほぐされる日が来るのを待ってるわ・・・・・・んじゃ、そろそろ戻るわ。研究の邪魔したな」
研究室の扉から雑に出て行った海。
直後に電話がかかってきたらしく応対の声が聞こえて来るのだが・・・・・・いや俺が聞き耳立ててる訳ではない、決してだ。
『カン、あと最低でも四日は我慢しろ。そん時が来たらちゃんとやってやるよ、今回は嘘じゃねえ』
何やら重要な話らしい。聖杯戦争終結後の話をしているのだろうか・・・・・・海は一応生存前提で話をしているようだが、もしかしてやっとまともな社長になろうとしているのでは?
『わかったな、我慢できたらそれなりに褒めてやるよ。それまでにしっかりと縄毛羽は炙ってろ』
・・・・・・聞かなきゃよかった。