Fate/Serment de victoire 作:マルシュバレー
4人で押し掛けるというのも迷惑な話だな、とか思いつつ目的地へと到着した。
門扉の方についているインターホンを押し、カメラを覗き込んでみる。
「来栖さん?」
「は、はっひゃあああ平尾さん!?ああああ、開いてます!!」
アポなし訪問だったせいもあって彼女はえげつないほどに取り乱している。
やはり連絡先を交換しておいて事前に言っておくべきだったというのは痛感しているが、時すでに遅し。
「好きな人の訪問にびっくりしてら」
「なに言ってるんですかセイバーすぉあん!!??」
どがらしゃあと盛大に雪崩っぽい音が向こうから流れたが、セイバーは無事なのだろうか。
ああいや、サーヴァントなら大丈夫だなと独り合点して俺はお邪魔させてもらうことにした。
海たちは彼女の行動を全く心配していなさそうなあたり、既にその情報を取得済みらしい。
マンドリカルドも困惑を顔面に貼り付けているが、その表情には『またか』という呆れにも近い感情が漂っているように見えた。
「すいませんね、連絡先わかんなかったからアポなしになっちゃって」
「い、いえいえいえいえいえ教えてなかった私が悪いんです!セイバーさんのことで相談したい時に連絡したいなって思ってたのに言い出せなくって・・・・・・!」
リビングは外で聞いた音から想定したとおりのひどいありさまである。
慌てて片付けを始める彼女を手伝い、なんとか六人が腰を下ろせる場所に作り替えた。円卓を取り囲むように俺達は座り、みんなして来栖さんの顔を見る。
「ま、所々ある壁の傷が気になるがけっこういい家じゃねえか。一人暮らしでこれたあ実家は相当儲けてんな?」
テーブルに肘をつき、もごもごと舌の上で飴を転がしつつ海が言った。
お前がそれを言ったらいくら本心からの発言だろうと見下してるようにしか見えないんだが。
「・・・・・・い、一応・・・・・・母方の家はずっと昔、銀部の領主ではありました。今じゃなんの権力もありませんけど」
「銀部市っつったら舞綱の3つ隣くらいにあるとこか。なかなかいいところの嬢ちゃんてわけだ」
言い草がいつにもましてうざ絡みするおじさんみたいなのがなんかむかつく。
「あの、人違いだったら申し訳ないんですが・・・・・・司馬田さんですよね?エーデルシュタイン・グランツの社長で・・・・・・」
「人違いなんかじゃねえよ。俺は司馬田海、お察しの通り宝石屋の社長だ」
小さくなった飴を噛んで棒から分離し、そのまま棒を口から抜いてゴミ箱にノールックピッチ。案の定そんなものが入るわけもないので、それとなく俺が魔術を使ってゴミ箱へと導いてやった。
「そそそそんなすごい人が」
「別に俺は凄くねえよ。親の七光りで会社継いで部下を飼い慣らしてふんぞり返ってるだけさ」
ばりぼりと残ったものを粉砕して飲み込んだ海。にやりと笑って決め顔のつもりなのだろうが、全くかっこよくない。
ツッコミを入れるべきか入れざるべきかと迷っていたのだが、ちょうどそのタイミングで昨日聞いた着信音が鳴る。
どうやら海に電話が来ているらしい・・・・・・出ていいかと質問が来たのでいいぞとだけ口に出したが、それを言い切る前に奴は出て行ってしまった。
安定した『○○するけどいい?答えは聞いてない』のパターンである。どこのイマジンだてめえは。
「・・・・・・えーどうも、司馬田のサーヴァントでございます・・・・・・クラスはアサシンで、今までずっと潜伏しておりました」
訪れた沈黙をそう長く続かせるわけにもいくまいと、アサシンがいの一番に口を開いた。
「そうかいそうかい。おまえさんが今までずっと尻尾見せなかったアサシンか・・・・・・んで、マスターがいないところで話するのも何だが・・・・・・アンタは味方か?」
セイバーの呑気そうな雰囲気が一瞬にて張り詰める。やはりこいつ相当切り替えがうまい・・・・・・アサシンのように中で人間が入れ替わっている訳でもないのに感じるオーラは変化の前と後で全く違う。
「味方ですよ・・・・・・少なくとも、アーチャーを倒すまでは」
負けじとアサシンも凄む。視線の中点で火花が散りそうな睨み合いが始まったが、それはすぐに中断された。
なぜならば、海が戻ってきたからである。スマホをコートのポケットにしまい込み、どかりと乱暴にさっきの位置で座る。
「なんの話だったんだ?」
「うちの金ちょろまかしてたやつの処刑が終わったって話だが」
処刑とかあらぬ誤解しか生まない言い方はやめろよと言ったが覆水盆に返らず。来栖さんが舞綱のスターリンを前にして、完全に怯えている。
処刑って言ってますけどただの更迭ですから!となぜか俺がフォローしなければいけないとかいう訳わからん状況・・・・・・こいつとまともに会話できるせいでこんな役を担う羽目に・・・・・・
「そ・・・・・・そうなんですか、社長さんも大変なんですね」
「まあ社長としての業務は全部副社長に投げてるがな。俺がやってるのは処刑の最終決定やらだけだ」
「だから処刑って言うな懲戒処分か更迭にしろ」
こんなんじゃ一向に話が進まない。
周りに出来るだけ被害を与えない場所選び、あの性格の英雄王をそこへ誘導する行動パターン、そして討伐への流れ。
まだぼんやりとしかできていない作戦の構築、少しでもいいから現実味を帯びることが出来るように・・・・・・
「ライダーのマスターさんや、今日ここまで来たのはアサシンとそのマスターの紹介ってだけじゃないだろ?なんか話すことがあるんじゃねえかってオジサン思うんだけどさぁ」
こんなところで思わぬ助け船。さすがセイバーだ、頭が回る。
ちゃっちゃと本題に入って話を済ませよう、あまり長居しても来栖さんの迷惑だし。
「じゃあ、今日話したいことについてなんだが・・・・・・たぶん察しはついていると思う。アーチャー・ギルガメッシュを仕留めるための作戦についてだ」
まだ謎が多いアヴェンジャーと、おそらく生き延びて反撃の機会をうかがっているバーサーカーのことは一応脇に置いといて、兎にも角にも最大の脅威を潰す事に重きを置こう。
アサシンの言う通り、基本的にヤツを倒すまでの協力関係。セイバー陣営とライダー陣営(つまり俺達)は最後の二騎になるまで協力するということで話をつけているが、アサシンとはそういった約束を取り付けていない。
ギルガメッシュを倒したとして、その直後俺の頭と胴体がサヨウナラなんてこともあり得るわけだ。
海のことだから一度踏ん切りがつきゃ容赦なく襲ってくるだろうし、一応対策自体は考えてあるが効くか微妙・・・・・・いや、今はそんなことを考えるべき時間ではない。
「お前さんがほのめかしていたこともあって一応アサシンを加えての作戦は立案してるが・・・・・・どうする?」
「どうするも何も言ってくださいっすよ、出せる作戦があるってんなら」
マンドリカルドの言葉を待っていた、と言わんばかりの表情でセイバーは模造紙のような紙のロールを取り出してきた。
結構な量の文章であり、先日共有した情報とあれからさらに得たらしいものを元にギルガメッシュの分析もかなりされている・・・・・・俺達がぐだぐだしていた間にここまでやるとはなかなか有能だ。