Fate/Serment de victoire 作:マルシュバレー
別にバルカンしゅきしゅきだからってその名前にしたわけじゃないんだからね(見え透いた嘘)
「おし、今日のところはひとまずこれくらいにすっか。いきなりこんなの連れて押し掛けたことについては謝罪する、申し訳ない」
「こんなので悪かったな」
背後であからさまに不機嫌そうな口調でそう言い放った海のことは無視して、俺は精一杯の謝罪・・・・・・腰90度のお辞儀を繰り出した。
これ以上を求められたらもう土下座か土下寝くらいしかない。
「えあいやいやいや全然気にしてませんって!なんなら平尾さんのほうから来てくれたのがなんかうれしっ・・・・・・って違う違う!ああああのとにかく大丈夫ですから、頭下げないでくださいって!」
「ボロが出たなマスター」
セイバーがいつも通り彼女をおちょくった直後緩い風が吹き、俺の隣くらいの場所で鈍い音が響く。
なんとなく展開を察しつつも首を横に傾けると、そこにはハードカバーの本を鳩尾に食らったマンドリカルドがいた。
「ぐぇ」
「セラヴィイイイイイイイイ!!」
サーヴァントである故体にダメージこそないものの、それなりの質量を持った物体が飛んできたせいでマンドリカルドの体は軽く吹っ飛んだ。
ソファがちょうど後ろにあったからよかったものの、これでずっこけ頭とかを打っていたらどうなったことか・・・・・・
「ぎゃああああすいませんセラヴィさん悪気は、悪気はないんです!」
「・・・・・・わかってるっす、避けられなかった俺の能力が・・・・・・悪いっす」
本をテーブルの上に戻して、ゆっくりと立ち上がる。
こんな茶番につきあってられないと海たちはお先に帰ってしまったらしく、4人から出る微妙な雰囲気が部屋に充満した。
「・・・・・・連絡先だけ交換しましょっか」
「わ、わかりました・・・・・・電話がいいですか」
「ええ、一応電話にしときましょう」
なんとも言い難いムードになってしまったが、一応目的は果たせた。
あと今日やることといえば、昨日急ぎ足で作り上げたなんちゃってライダーシステムの試運転と調整くらいか。
現在午後にさしかかり1時・・・・・・昼休憩をとっている人もいるだろうし公園ではあまり出せる代物ではない。
「・・・・・・じゃ、また今度」
「はい、また・・・・・・」
スマホを両手で包むように握り、彼女は深いお辞儀をした。
頬が真っ赤っかだったというのは見なかったことにしよう、言ったらまた何かが飛んでくるだろうし。
「セラヴィ行くぞー」
「うーっす」
とりあえず山名でも不審者出没地帯と恐れられ真っ昼間でも人が寄り付かん祟公園にでも行こう。
名前からして見るからに怪しい箇所だが、別に霊的な類は何にもないので大丈夫・・・・・・なはず。
「誰もいないな?」
「いなかったっすよ、ほんと誰も」
鬱蒼とした公園の雑木林を抜け、少しだけ日当たりのいい場所へと俺達は出る。このあたりならば外にいる人間に見られる心配も少なく、ちょっとくらい騒音を立てても怒られやしない。
俺は持ってきたケースを開け、ベルトだけをマンドリカルドに手渡した。
「すっげぇ・・・・・・」
「急造品ですまんが、取りあえずそれがベルトっつーかドライバーな。ライダーとしての名前はスプロンドゥ、知ってると思うがフランス語で『栄光』の意味だ」
マンドリカルドが元より持っている装備の銀と、服装などに多くあしらわれているダイヤ柄をうまいこと組み合わせたつもりだ。
トランプモチーフのライダーは既に存在するのだが、そんなことを気にしていてはどうしようもないのであんま考えないことにした。あくまでダイヤは意匠なので、今回のモチーフとは少し違う・・・・・・まあどっちにしろゲーム関連であることに変わりはないのだが。
名前に関してはあまり良い案が思いつかなかったのでかっこいい意味の言葉をあしらったのみである。どうせならもうちょい凝りたかったのだが。
「バックル部分を腰に当てるとベルト部分が飛び出して自動で巻き付いてくれる。んでキーを・・・・・・こうして、こう」
かなり難しい話なのだが、言葉で表現するとしたらこうだ。
外装モジュールとの接続を開始する剣型のキー(無論手のひらサイズ)のスイッチを押し起動。
バックル部分側面についている2つの穴のうち右側にこれをセットして、上部にある接続ボタンに接触といった感じか。
「一回試すぞ、まずドライバーをセット」
「こうっすか?」
マンドリカルドがバックル部分をわしづかみにして腰に当てると、がしゃがしゃと音を立てて鈍色のベルト部分が現れ彼の腰を囲って落ちないよう固定した。
苦しくない程度の巻き付きであることを確認するため、背中から指を数本かませてみたが問題なし。
「セットOK。んで次にこれを・・・・・・ポケットから出す感じでいくか」
彼の着ている濃藍色のジャケットをベルトから引っ張り出し、右側のポケットにキーを入れた。
ここから取り出して変身までの流れをスムーズに行えるようにならなければいけないので、ここらへんは練習を重ねておいたほうがいい。
「キーをポケットから出して・・・・・・なんかやりたいポーズとかある?」
「・・・・・・ぬぇーっす」
いきなり振られたせいもあってかマンドリカルドは困惑顔でキーを握りしめた。
まあ完全にパターン化しなければいけないという決まりはないので、今回は俺が考えよう。
「じゃあこうするか。ポケットから出したら一度勢いよく右に突き出せ、そんで円を描くように右手を回しつつ・・・・・・こう右手が顔の半分を越えたところで勢いよく肩へ向かって振り下ろしつつ左手をクロスするように前へ突き出す。このとき右足が前になるよう斜めに開いて、重心を一気に下げる」
頭上に10個程のクエスチョンマークを浮かべつつ彼は俺のした動きを模倣する。できるだけシンプルな動きにしているつもりだがやはり説明するのは難しいものだ。
「ここで止まって変身!って叫ぶ。まあ言い方はお前に任すけど・・・・・・で、叫んだ直後に手をこう広げるようにばっと開いて・・・・・・左手を体の横らへんで自由にしつつキーをここの穴にぶち込む。あとは右手もこうフラットな状態にして・・・・・・部品がやってくるのを待つ」
「・・・・・・な、なんとなくっすけどわかったっす・・・・・・」
「そうか、なら一回やってみるか」
ベルトを外してジャケットの左手ポケットにねじ込み、キーを右手ポケットに入れた。
さて、それっぽくなっていればよいのだが・・・・・・
「んじゃ行くっすよ・・・・・・」
まず左手でバックルを取り出し腰に巻きつける。
右手でキーを持って勢いよく横に突き出し、柄の部分についたスイッチを人差し指で押す。
『Pawn』
キーの音声が鳴る。
そう、今回メインで使用したのはチェスだ。あまり俺は強くないが、一応ルールくらいは理解していてゲームも可能である・・・・・・まあその道の人からしたら雑魚と罵られるレベルではあるんだけども。
俺が思っていた以上に滑らかな動きで所定の位置に手を持って行き、マンドリカルドはすっと瞼を下ろす。
「変・・・・・・身!」
目を開き、そのままドライバーにキーを差し込む。
『Opening』
危うく忘れていたところであった。ケースに残されていた外装をまとめてひとかたまりにしたものを取り出し、個別に動魔術で操作する。細かい部品もあるが、そこらへんは分割思考でごり押しである。
「俺が装備で視界を塞ぐからそこで装備出してくれ!出たところで装着に入る、痛かったら言えよ!」
部品たちで一度ドームのようにマンドリカルドを取り囲み、周囲からは完全に中を観測できないようにする。
内部から魔力の波を感じたので準備は完了したと認識し、部品を彼の肉体にはめていく。
できるだけリズムとタイミングよく、足から頭に向かって装備をくっつけ・・・・・・最後に、仮面。
「視界は」
「良好っす。体も軽いし戦闘に一切の支障なしでいけるっすよ!」
装備には無論質量軽減とある程度の柔軟性、仮面部分はマジックミラーの原理に近い物質(というか普通の金属に魔術強化をかけただけだが)を使用。少し間接周りが動かしにくい点はあるだろうが、できるだけフルスペックで戦えるように努力したのだ。
「よし、デザインも悪くない」
初期モデルがポーンということもありそこまで華美な装飾はしていないが、それでも仮面ライダーとして出られるくらいの完成度・・・・・・ここからフォームチェンジをどう行うかは未定(今日考える)なので、また明日の朝飯は食えないかもしれない。
「・・・・・・随分と悠長なことをしているな。D-273・・・・・・いや、ライダーのマスター」
「アンタ・・・・・・誰だ」
声に反応して即座にマンドリカルドは俺を守るべく前に立つ。
林の向こう・・・・・・俺たちの入ってきたところと真逆の方角から現れたのは、ひとりの男であった。
少し破れたりしていて一瞬わからなかったが、着ているのは黒いキャソック・・・・・・唐川の同業者だろうか?
「俺は不破・・・・・・バカ舌サボり魔の代わりって言えば伝わるか?」
「唐川の代わり・・・・・・?」
こないだ海と話していたことが現実になったらしい。あまりにも働かない唐川のことだからどっかで捨てられるだろうと思っていたが本当に捨てられるとは・・・・・・
「ああそうだ。んでいきなりだが・・・・・・その命、徒花と散らせ」
唐突に、柄から刀身までのなにもかもを漆黒に包まれた黒鍵が投擲された。