Fate/Serment de victoire   作:マルシュバレー

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好きなサーヴァントなのに全然宝具レベルが上がらない悲しみってありますよね
スキルとかなら頑張りゃいけますけど宝具はどうしてもね!!
全部フレポでも石でも出てこないマイフレンドが悪いんだよ!!
金枠のランサーおじさんと記念撮影させてあげるから来てください(錯乱)


7話 一日目:レトリックしか言えない表現力

「あいよ。アメリカーノとカフェラテ」

 

ソーサーの上に鎮座するかわいらしい陶器のカップ。真っ黒で香ばしい薫りと、表面が葉っぱ模様でほんのり甘い薫りが混ざり合って鼻腔に届く。

マスターは料理に関しちゃその場のノリでみたいな人だが、コーヒーに関しては超がつくほど丁寧な仕入れや焙煎抽出をしているのだ。

店内にはなかなか取得が難しい資格だというコーヒー鑑定士とQグレーダーなる資格の認定証が自慢気に飾られてあるし。

 

「俺日本のコーヒー初めて飲むんすよね。住んでても飲むのはジュースとかばっかりでしたから」

 

マンドリカルドがあ両手で丁寧にカップを持ち薫りを楽しんでから、ゆっくりと唇を触れさせ液体を口へと含ませた。

舌先で転がしてみて味を楽しんでいるらしい。初めてっぽかったからマイルド系統から触れさせてよかったのかという今更の考えが頭を巡るが、彼が幸せそうな顔をしていたのでよかったとしよう。

 

「お待たせしました、エビグラタンとミートパイです。こちらお皿のほう熱くなっておりますので十分に気をつけて召し上がってくださいませ」

 

湯気と食欲をかき立てるにおいを発し、カウンターの向こう側からこちらへ運ばれてくる料理。

最近仕入れ先をちょこちょこ変えているらしく、エビの大きさと弾力感とかほんのりにじむ肉汁がもう見てるだけでおいしいとよくわからせてくれる。

 

「やっぱ篠塚くん来てからレベル上がったな。もう料理メインで売り出してってもいいんじゃねえか?」

 

「ダメに決まってんでしょ。うちはコーヒーが主体であって初めて成立する店なんだから」

 

カップを丁寧に拭きながらマスターがふてくされている。年に見合わぬ嫉妬はダサいぞなんて言ったら持ってるもの投げられて怪我しそうなのでお口チャック。

 

「・・・・・・つかどした、セラヴィ」

 

なにも言わないなと気になって隣を見たら、そこには目を煌めかせて今にも口からよだれを垂らしそうな我が友が。

俺の作った雑な飯よりよっぽど惹かれたのかなんなのか知らんが、まるで小学生みたいだなと思っちゃったりする。

自己評価が基本的に低いとはいえ人類史に名を刻んだ英霊様にそんなこと考えてていいのか、なんてことも思ったり・・・・・・

 

「これが日本のペレメシっすか」

 

「・・・・・・揚げてはないけどな」

 

記憶が定かじゃあないがペレメシとはタタール料理の一種で、ハンバーグのような肉だねを包んで揚げたパイ的なサムシングなのだ。

危険さえ感じる程の美味、不味いわけがないだなんて料理研究家が断言していたのを見たことがある。

 

「んじゃま、いただきますか」

 

「いただきます」

 

マンドリカルドはその言葉を号令に、豪快にパイへナイフを突き立て引き裂いた。

パイを8分の1サイズにまでカットしたところでフォークでぶっ刺し、一口でばくん。

これが約12世紀前くらいの人間なのかと思うとなんだかとても親近感がわく。俺だって初めて食べる馳走だとか初めて見る現象には興奮して我を失いかけるのだから。

 

「あっふ!!」

 

さすがに熱かったのかお冷やを勢いよく嚥下するマンドリカルド。

焼きたてなので至極当然。急いで食べるからそんなことになるのだ。

俺は優雅に休日の昼飯を・・・・・・

 

「あっつ!!」

 

スプーンで掬った量がちょっと多かったせいで舌と硬口蓋(もなか食ったときに皮がよくくっつくあそこ)をやけどしたっぽい。

昔とろとろ系たこ焼きを一口で食ってやらかした時以来のダメージ・・・・・・人は急ぐとろくなことがないらしい。

 

「友達同士だとやることも仲良しだね」

 

「うっさいわい」

 

あくまで飄々とついでもらったおかわりの水を飲むが、これでかっこがついている訳もない。恥ずかしい。

 

 

「んで、セラヴィくんは何日くらいここにいるつもりなんだい?」

 

ランチの時間帯をそろそろ抜け出し、人の数も少しだけ減ったところでマスターがふとそんなことを聞いてきた。

マンドリカルドは戦が終われば理に従い消える運命なので、いつまでここにいられるかは聖杯戦争期間によるのだが・・・・・・

俺に未来を見通す千里眼なんてものはないのでわかるはずがない。

 

「まあ・・・・・・2週間くらいだろうな。事情によって増減はするだろうけど」

 

「2週間か・・・・・・2日くらい職業体験でうち入ってみない?」

 

「駄目に決まってんだろうが、妄言もいい加減にしろ」

 

俺とマンドリカルドは一緒にいなければならない存在、家以外で離れたらとんでもないことになる。

まず魔力のパスがどうしても弱くなるし、緊急の呼び出しも令呪を用いなければいけない。

こんなところでサーヴァントに働かせていればいきなり会社に敵対するマスターがやってきて『サーヴァントを連れてこないなんてお間抜けさん』と笑われこの世からサヨナラ間違いなしだ。

と言うわけで八木澤の言うことは聞けないなと今の段階で突っぱねる。

 

「残念だな。篠塚くんとセラヴィくんならイケメンコンビで売り出せるのに」

 

「長いこと喫茶店やってる奴が言うことかそれ」

 

俺はホストクラブに入り浸りたくてきてる訳じゃねえっつの、とた俺はめ息をついて竹を斬ったみたいな形の伝票立てに入ったものを取って立ち上がる。

 

「マスター勘定」

 

「あいよ。1730円ね」

 

俺が2000円を出すと八木澤は手際よくいかにも高価そうな装飾が成された古いレジスターを開きおつりを返してくる。

ここらへん20年やってる人だから動きに無駄がなく見ていて面白い。

 

「んじゃ、ごっそさん。セラヴィ行くぞー」

 

「お、おう」

 

会計を済ませ、入ってきたとき同様にからからドアチャイムを鳴らして外へ出る。

この季節特有のほんのり暖かい風が肌を撫でていき、そのまま駆け抜けていった。

 

「んじゃあ晩飯の材料買いにいくついでで服も増やしとくか」

 

「そんな・・・・・・俺はすぐいなくなるのに、服買わなくたって」

 

金の無駄だと言いたいのだろうが、生憎と俺はそんな単純な損得勘定で動いているわけじゃない。

その旨を伝えたいのだが、いい言葉が見つからず悶々とする。店の隣にあるベンチに座って、少しだけ考えてみた。

俺とマンドリカルドの関係は言わば便宜的な主従かつ同盟関係。聖杯を求めるために俺はサーヴァントとしての彼の力を借り、マンドリカルドは俺をボラードとして・・・・・・自分自身が現世という岸にとどまるための柱として利用している。

主従というのもサーヴァントの高い破壊力、殺傷能力などを抑えるために与えられた制約があるだけのこと。本当に忠誠を誓っているかなどは知ったこっちゃなし。

相互利用の業務的な関係以外はなく、愛情を注いだところで戦争に勝利できるわけでもない。

・・・・・・だからとて、ただの兵器のように扱うのは違うという話だ。

 

「・・・・・・別にいいじゃねえか。友達にゃそうしたいだけ、全部俺の勝手。後で全部燃やそうが捨てようが怒らないから今は黙って押しつけられてろ」

 

今まで一人もいなかった癖してなに偉そうに語ってんだか、という心の中の冷ややかな目で見る自分が嘲笑う。

胸の中で渦巻く考えは全く明確な言葉にはならず、空を切るようにどこかへ抜けていく。

俺ってほんと馬鹿だ。こんな言い方するくらいなら押し黙ってた方がよっぽどよかったじゃないか。

向こうからは自分勝手にサーヴァントを友達だと勘違いしてるだけの愚か者にしか見えないだろう。ああまた失敗した、記憶を消してやり直したい。

 

「克親、俺は──────」

 

「ほら行くぞ、これはれっきとした命令だかんな!」

 

有無を言わせず彼を引きずるように連行する。

一週間後くらいに関係悪化で殺されたり裏切られることだけは回避したいななんて、呑気な自分が鼻をほじりながらそう呟いていた。

・・・・・・もうそんな頭お花畑なことも、戦いが始まりゃ言ってられなさそうだが。

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