Fate/Serment de victoire 作:マルシュバレー
「いやあまさかおまえらがそういう関係だったなんてなー」
「一部分だけ切り取って物事をみないでくれますかね」
食卓でめちゃくちゃ弁解しなきゃいけなくなったせいで、せっかくの旨い飯も味を感じられない。
黙って食いたいのに海の奴はどんどん追求してくるから喋るしかないのだ。口を閉ざしたら『はい認めた~』ってすぐ言ってくるからだ。
「でもセラヴィのこと好きなんだろ?」
「・・・・・・大好きだけどさ、不純なことはしねえよ」
好きじゃないときっぱり否定したかったが本人がいる前でそんなことを口走ったら、それこそ関係が崩壊する。
だから恥ずかしいけども認めるしかない。
「やっぱ好きなんじゃん」
「友を好きでいてなにが悪い」
毅然とした態度の方が効果的なのかもと一瞬思ってしまったせいで開き直ったみたいになっている。
もうこの際自棄になってもいいんじゃなかろうか。
「俺に初めてできたまともな友達だぞ、人のことちゃんと考えてくれる優しい奴なんだし嫌いになる理由がねえよ。それに比べてお前はさ」
「悪かったなまともじゃなくて。嫌なら俺と縁切ってもいいんだぞ」
珍しくすねたように唇を突き出し、海はそう言った。
こいつのことだからどれほどのことを言ってもダメージなんてないと思っていたが、意外と傷ついているのだろうか。
「これまで何回縁切る縁切る言ってなあなあにしてきたと思ってるんだよ、どうせ俺たちには無理な話だ」
初めて出会った時から、こいつとは相容れないと互いに思っていた。衝突する度に離れることを決意しても、いつの間にか元の状態に戻っている。不思議な話だ、どれだけ嫌っても・・・・・・結局その気持ちは消えてしまうのだから。
鮭のフレークを山ほどぶっかけた白米をかきこみつつ、俺は目の前の海を見る。
「・・・・・・なんだよ」
「別になんでもねえよ・・・・・・ごっそさん」
食べ終わった食器を食卓の上に残し、海は席を立ってしまう。
もうこれ以上は何もいわない方が良いのだろうか。
「・・・・・・はぁ」
「旦那。隣、見て」
篠塚にそう言われて俺は首を回し、隣のマンドリカルドを見る。
顔が風呂場で見たときと同じくらい赤い。
どうしてこうなったか理由が全くわからないため、困惑するしか俺にはない。
「好きだっていわれるたんびに赤くなってましたよ」
「なんで克親が気づいてないことをわざわざ言うんすか!やめてくださいっすよ!!」
耳まで真っ赤っかにしながらマンドリカルドは慌てて叫ぶ。
もう手遅れだぞと言っても意味はなさそうだ。
「好きだって言われるのがそんなに恥ずかしいことかよ」
「ははははは恥ずかしいに決まってるじゃないすか!言われ慣れてぬぇーんすよこっちは!!」
首をぶんぶん振りまくるその様はなかなか滑稽に見えた・・・・・・が、吹き出してしまったらそれこそ信頼ががた落ちしそうなので全力で我慢するほかない。
「なんかものすごい笑い堪えてるのわかるんすよそういうの!」
かなりお怒りのご様子なので一旦冷静にさせた方がいいか。
なお、そんな方法は知らないため対処しようがない。
「笑って受け入れとけそういうのは」
「簡単に飲み込めたら苦労しないんすけど!」
恐らく中身が入れ替わったであろう篠塚がこれまたそういうことを言い出しマンドリカルドがぷんすかと怒る。
こういった平和な争いばかりであれば楽しいものだが、何日か後には必ず殺し合わなければならないと思うと少し胸が痛い。
「すいませんね、あの人色恋沙汰には事欠かなかったもんでそういうところがはちゃめちゃにイかれてるんですよ」
「・・・・・・お、おう」
謎のフォローをしてくれたのはいいがそれで解決したかと言うとそうでもない。
マンドリカルドの表情は未だに戻らず、頸椎痛めるぞと言わんばかりの角度をもって全力で下を向いている。
「・・・・・・なんか、ごめん」
「克親が謝る必要なんて・・・・・・ないっすよ」
彼は無理やり表情を元に戻して顔をあげた。
「ただ俺が慣れてないだけなんだし、克親は遠慮なく言ってくれればそれでいい。いつか、ちゃんと返事できるくらいになったら・・・・・・俺も」
胸の奥が締め上げられたかのような感覚を覚えた。
頑張って俺の言葉を受け入れてくれようとしている、その健気とも言える様を見てしまったせいだろう。
「ありがとな」
「・・・・・・っす」
それ以上言うことなど、何もなかった。
飯も食べ終わり、時刻は現在22時。
不破にどさくさ紛れで破損させられたライダー装備を修復したいところだがどうも気力が沸かん。
研究室の椅子でぐるぐる回りながら無心で天井を見てばかりなのだ「
「なんだかなあ」
つぶやきつつぐるぐるぐるぐる。
三半規管がそろそろ発狂するという寸前で回転を止め、背もたれにどかりと背中をのっけて虚空を見つめるばかり。
「克親、いるっすか」
唐突に研究室のドアがノックされる。そして相手はマンドリカルド。
なにか体に不調でもあったのかと思い急いでドアを開けると、そこには何やらもじもじしながら俯く彼がいた。
手にマリンタワー最上階にあるお土産屋の取っ手がない紙袋を持って(強く握ったのかかなりくしゃくしゃになっている)、何を話すでもなく佇んでいた。
「どうした、なんか・・・・・・あったか」
「こ、こここれ!受け取ってくださいっす!!」
俺に渡してきたのは手に持っていた袋。
いきなりどうしたんだよと内心訝しみつつ、俺はそいつに貼られていたシールを取って中身を取り出す。
土産物屋ならどこにでもありそうな少し高いボールペンと、好きな文字を入れられるメダル型キーホルダーだった。
『Син миңа бик ошыйсың』と記されたそのキーホルダー・・・・・・キリル文字に対応してるのかよという謎の感心は置いといて、恐らくタタール語で書かれただろうそれを見てなんだか感慨深くなる。
タタール語に関しては全然と言って良いほどわからないので、意味ははかれないがとにかくいい言葉であることは間違いない。
「ありがとう。お前からこんなもの貰えるとか思ってなかったから予想外だ・・・・・・嬉しいよ」
「・・・・・・そ、っすか。よかった・・・・・・」
胸を撫で下ろして安堵の声を漏らすマンドリカルド。口には流石に出せないがかわいい。
「・・・・・・つかどうやって買った?お前に金持たせてなかったと思うんだが」
「タワーの上でちょっとどんなのがあるのかなってお土産見てたら不破さんが、『なんだ、マスターにプレゼントでも送りつけたいのか?』とか言ってなぜかお金渡してくれて。断りはしたんすけどいいからいいからって・・・・・・成り行きで」
見かけによらず案外気が利くというかなんというか。
取りあえず後日返済出来るように小銭の準備位はしておこう。流石に返さないと社会人的にもまずいし。
「それならいいんだが・・・・・・そもそも、なんでマリンタワーなんかに行ったんだ?行きたければ俺に言ってくれりゃよかったのに」
「・・・・・・理由については・・・・・・秘密、っつーことで許してくれないっすかね?」
「・・・・・・しゃーねーな」
残念なことに今の俺は気分がいい。
だから問い詰める気は全く起きやしなかったのだ。