Fate/Serment de victoire 作:マルシュバレー
「詰んでいる、か・・・・・・それはこっちのセリフだ!」
全長80cmはあるだろう刀を右手に、アヴェンジャーは血まみれの地面を蹴った。
一瞬にして距離が詰められると判断し、俺は彼女と向き合ったまま後ろ向きに走り出す。
「
脚力を強化し一度プラザの上まで跳ぶ。
マンドリカルドも視線はこっちに向いていないが俺の挙動を察知してか此方まで跳んできてくれた。
「っしゃ行くぞ!」
「お前どうせ跳べる脚力もねえだろ悔しかったら追いかけてこいよザーコ!!」
海に言われたせいもあるのか、珍しく煽りを入れていくマンドリカルド。効果はかなりあるらしく、アヴェンジャーの顔が返り血と似たような色に変化した直後に跳躍してきた。
『今の煽り単純だけどいいぞその調子だ』
『いやもう俺今のでMP全部使ったんで克親に任せるっす、俺みたいなタイプの陰キャに煽りは無理っした』
仮面で顔は見えないはずなのに半ば涙目となったマンドリカルドの表情がいとも簡単に想像できる。
勢いに乗って言っちゃったけどやっぱり後悔、みたいな感じなのだろうけども。
「すまん、これ以上無理はさせん」
「殺すぞ貴様ぁ!」
こちらが思っていた以上にアヴェンジャーはブチ切れのご様子。
結構速いので俺の全力疾走では追いつかれそうな気さえしてくるのだがどうしたもんか。
「ちょっと克親を頼む!!」
「え、あ、ブリリアドーロ!?」
突如として現れ併走するブリリアドーロ。マンドリカルドが俺の首根っこを掴んだかと思うといきなり放り投げ、ブリリアドーロの背中に腹ばいの状態で乗せられてしまった。
嘶きが風に乗って響き渡り、そのまま俺を裏山へと連れて行ってくれるらしい。
「お前どうすんだよひとりでやるのか!?」
「ちゃんとあとで追いつくっすから安心してくれっす・・・・・・って危なっ!?」
背後から飛んでくる突きをすんでのところで避けながら、マンドリカルドはブリリアドーロと俺を見送るように手を振った。
「・・・・・・大丈夫なのかこれ」
ブリリアドーロの鳴き声が俺の声に呼応するかのごときタイミングで放たれる・・・・・・まるで『大丈夫だ』と俺を安心させたいのかと言わんばかりの反応だった。
もしかしてだが、ブリリアドーロって人間の言葉理解してたりするのか??
「あぁああああそこは勘弁してくれっすぅおああああああ!!!」
向こうからマンドリカルドの悲鳴が聞こえたのだが果たして無事なのか・・・・・・
「お前セラヴィはどうした!?」
裏山へ連れて行かれる途中、海の声がいきなり聞こえてきた。
霧が晴れるようにその姿は表され、俺たちの前へと立ちはだかる。ブリリアドーロは利口な馬なのでちゃんと急ブレーキをかけて体当たりしないように止まってくれた。
「後から追いつくっつって俺をこの子に乗っけた後アヴェンジャーと・・・・・・」
「死んではねえな?」
「ちゃんと反応はある。じわじわこっちに来るよう誘導してるっぽいんだが、向こうの攻撃がきついんだろ」
海はあからさまな舌打ちをして、貧乏揺すりをしまくっている。
流れを狂わされたことにこれだけ苛ついているところを見るのは初めてかってくらい珍しい・・・・・・命が関わってくるとなるとこうも必死になるものか。
「今のうちに不破へ連絡しといた方がいいよな、数人殺されてたし」
「しといた方がいいだろうな、殺人っつうことなら誰かに擦り付けるとかでやりやすいだろ」
それで解決するのか、という疑問はあるがこの際仕方ないのかもしれん。
取りあえず教会の固定電話にかけてみるとしよう。
ちょうど電話のある部屋にいたのか、すぐに受話器が取られる音がした。
『もしもーし、聖堂教会の唐川どぅえーす』
「戦争がらみの殺人だ、さっさと不破にかわれ」
呑気そうな声を出して応対してくる唐川を一回どころか五回くらいぶっ殺したいななんちゅう思いは胸にそっとしまい、不破の呼び出しを申しつけた。
せっかくの着信やったのにいけず~と不満そうな声を漏らし、一度受話器をどこかに置いた音がした。
『不破ちゃーん平尾クンから電話ー』
『要件はなんだ、つまんねえ話だったら殺すぞ』
随分不機嫌そうな不破の声が小さいが聞こえてくる。
もっちゃもっちゃとなにかしらを食っているようだが、食事中ということでの怒りなのだろうか。
『アレ関係の殺人だとよ。口振りからするに目撃証言的な感じやろなー』
『・・・・・・それなら出るしかねえな』
ばん、とドアが開く音。
どかどかといった荒い足音の後に受話器の取られる音がした。
『もしもし、不破だが・・・・・・どこで殺人があった?』
「場尾プラザのど真ん中で五人ほどやられてた。犯人はアヴェンジャーで今ライダーが交戦してる。んで俺らのほかにもみた奴がいるし警察も来てるっぽいんだわ」
かなりサイレンの音もでかくなってきた。
おそらくSNSで少しは拡散されているであろうことも考えると隠蔽はかなり厄介なのかもしれない。
『・・・・・・アヴェンジャーか。人を襲って魔力供給してるっつう話だったが、まさかそこまでやるたあ許せねえな。取りあえずテメェらはそいつぶち殺せ、そうしたら被疑者死亡扱いでなんとか誤魔化しといてやるよ』
「そうしてくれると助かる、んじゃ頼んだぞ!」
そうやって通話を切った。あまり長々としていても隙を見せるだけになるだろうし。
唐川の仕事しなさっぷりがひどかったせいで、不破の姿勢が物凄く高得点に見える現象が発生している。
ちゃんとこちらの言ってることを信じた上で行動してくれるってのはこれほどありがたいものだったかと価値観すらぶっ壊れたような気がするのは気のせい・・・・・・ではないだろう。
「取りあえず隠蔽にハンドル切ってくれるのはわかった。あとはアヴェンジャーを始末するだけだ」
「打倒できるのが確定事項かっつうと微妙だがまあ奴を消したらとりま一件落着ってのは間違いねえ。つかセラヴィの奴遅くねえか?」
確かに、と俺は後ろを向いてみる。
彼とアヴェンジャーの姿は未だに見えない・・・・・・場所を探ってみると不破に電話する前からさほど変化していないようだ。
「膠着してるっぽいなこれ・・・・・・アヴェンジャーは人を襲って魔力を奪わないといけない境遇的にしばらく戦ってりゃジリ貧になるはず・・・・・・だが」
「あのあたり住宅密集地だろ。今の時間帯だったらそこらの適当な家に上がり込んで家族数人ぶっ殺せるんじゃねえの」
軽々と恐ろしいことを言ってのける海だが、それは紛れもない事実だろう。
県外まで通勤するような社会人ならもっと早くに家を出ているだろうが、このあたりに住んでいる人間の市内勤務率はまあまあ高かったはず。
つまり危険度がかーなーり高い。
「もう行った方がいいんじゃねえのか、いくら俺の魔力があったとしてもセラヴィひとりで戦い続けるってのはアレだろ」
「・・・・・・仕方ねえ、プラン変更だ。現場行くから連れていけ!」
「お、おう!ブリリアドーロ、2ケツいけるか?」
問題ないという意味にも捉えられる嘶きを聞いて、海が俺の後ろ側に乗る。
篠塚は海の反応を追って来てくれるそうなので、まずはマンドリカルドの元に行かねば。