Fate/Serment de victoire 作:マルシュバレー
それにしても当初のプロットから大幅にずれてるから予定通りの畳み方にできるか不安になってきためう!!
「・・・・・・では」
「いざ、尋常に」
勝負!という叫びを皮切りに、両者は一斉に飛びかかった。
俺がそういうのに疎いせいでこれは何流のなんという技なのか全くわからないが、兎にも角にもこれは異常と言っていい程の技の応酬。
「・・・・・・速すぎる」
「こんなん目で追うだけで手一杯っすよ」
金属音が連続して響き、地面を擦る靴の音も途切れることはない。
時折双方傷を負うためか細い血痕がどんどん民家の塀などに飛んでいく・・・・・・とれなくなる前に洗いたいがそんなこと出来る余裕なんてものはない。
「さすが東軍流といったところ。随分手ごわい」
「それが天然理心流とやらか・・・・・・噂通り、殺し特化というところだな!」
試合じゃないこの場面では殺したもん勝ち、どんな非道も厭わないであろうその勢いは凄まじい。
必要とあらば足払いやらもお構いなし、相手の攻撃を防いでとにかく数を叩き込む。
「これが貴様の剣術か!恐ろしいかもしれんが、やはり技術としてはまだまだよな!」
「・・・・・・”勝てば官軍”ってぇ話だ」
敢えてその言葉を口にし、にやりと笑うアサシン。
「そうか。そういうことならば・・・・・・こちらも本気を出さなければいけないな」
強い魔力の波を感じた。
もはやアヴェンジャーに残っているであろう力はかなり少ないはずなのに、自爆覚悟の宝具か────!
「こんな場所で宝具とか駄目だって!!」
「そっすよ、対人とか固有結界じゃなきゃここらへん焦土になるっす!」
「・・・・・・宝具解放」
みしみしと、世界が何かに塗りつぶされる。
目に映るものは全て上書きされ、現れたのは大きな武家屋敷。
何人もの浪士たちがアヴェンジャーの背後についていて、その数はざっと50人近くか。
マンドリカルド曰わくその一人一人からも低ランク相当のサーヴァント反応があるらしい・・・・・・さすが、必殺技たる宝具なだけはある。
「・・・・・・我が主の無念を果たす。それがどんな悪であれ、我らはただ進むのみぞ!!」
吹き飛ばされてしまいそうな音圧の叫び。覚悟を決めた男たちとアヴェンジャーの絶叫が結界の中で跳ね返る。
ゆっくりと刀を振り下ろすアヴェンジャー。その先には無論、アサシンがいる。
「俺ら逃げたほうがよいのでは?」
「・・・・・・大丈夫だ。奴が負けるわけあるか」
絶大な信頼を寄せる海だが、この状況でどうしてそこまで言えるのだろう。
アサシン当人もかなり自信のあるような顔つきだが・・・・・・
「例えどんな地獄が待ち受けようと、歩みを止めることなかれ」
噴き上がる熱。まるで此方が焼かれているのかとさえ錯覚するような力。
必ず復讐はすると誓った彼女たちの目はもう揺らがない。
『極楽の 道はひとすぢ 君ともに 阿弥陀をそへて 四十八人』
アヴェンジャーが静かに重心を下げ、アサシンを見据えた。
「『
数の暴力が襲う。
もとよりひとりを狙って四十七人が攻めいったのだから、もうこんなこと卑怯と避けはしないだろう。
・・・・・・彼女の真名は、おそらく『大石内蔵助』。どういった理由で女性の姿を取っているのかはわからないが、間違いないとは思える。
「まさか英霊となった後にこう戦えるとは至極光栄!!」
焦る様子もなく、アサシンは再び構える。
ただの浪人四十七人相手ならまだしも、後世に名を残すような腕の立つ集団だというのに・・・・・・一切遅れをとっていない。
大人数相手の戦闘も慣れているおかげ・・・・・・とはいえさすがに異常だ。
「ど、どういう理屈で成り立ってんだありゃ」
「あの羽織だ。あれが強力な解除不可のバフを仕掛けてるおかげで・・・・・・まあ軽くステ1ずつ上昇って感じかね」
世間一般でそれはチートと呼ばれること間違いなしの宝具だ。
アサシンは確か筋力C耐久A敏捷A魔力C幸運B・・・・・・全部一個ずつ上がったとしたらステータス上ではギルガメッシュも簡単にぶちのめせるような化け物の出来上がりだ。
「ふんッ!」
かなり腕などに傷を負っているが、動きは殆ど鈍っていない。
アサシンの刀・・・・・・おそらく虎徹(真贋はよくわからん)についた血を遠心力でふるい落とし、更に浪士たちを斬りまくる。普通の日本刀は適切な斬り方をしないと劣化がかなり早いと聞くが、サーヴァントの持つ武器だから耐久はかなり高いらしい。マンドリカルドの使うものは基本現地調達だったりするのと宝具自体の性質も相まってかかなり脆いが・・・・・・
「よもや、ここまでかッ────!!」
かなり押されているアヴェンジャー・・・・・・口ではそう言っているが、何か最終手段を出そうとしているようにしか見えない。
現状存在を保つことすらままならないレベル、死に際の一手をここらへんで打ってきそうだ。
「・・・・・・せめて、貴様だけ・・・・・・でもッ!あ”ぁ”あ”ぁ”あ”ぁ”あ”!!!!」
崩れそうな膝に鞭を打って無理やり立ち上がり、アヴェンジャーは屋敷の壁を蹴る。
死を覚悟し全てをこの一撃につぎ込むと決意した、彼女の一踏ん張りは・・・・・・アサシンに届く。
「っと・・・・・・これは、随分と痛い一撃だ」
心臓を一突きする寸前で少し下がられたせいで、刀が深々と刺さったのはアサシンの下腹部。
羽織までしっかりとその刀身が貫通しているというのに、アサシンは痛みに吼えることもなく静かに佇んでいた。
「くそ、叶わなかっ・・・・・・た、か!」
ぐしゃりとその場でアヴェンジャーは崩れ落ちた。
その瞬間固有結界も鏡が割れるような音を立てて砕け、先ほどまで俺達のいた景色が戻ってくる。
次第に彼女の像は消滅を始めて薄くなってゆく。アサシンに刺さっていた刀も一緒に姿を消し、2分ほどで全ては消え去ってしまった。
「・・・・・・う、くっ・・・・・・」
ぱたた、と地面に血がこぼれてゆく。腹に刺さっていたものがなくなったせいで切れた血管をふさいでいたものも消え、出血が始まってしまったのだろう。
まだ少し慣れないせいで気分が悪くなるが、ここで戦ってくれたアサシンを助けなければ示しがつかない。
そう思って俺はマンドリカルドと一緒に介抱へ向かおうとした・・・・・・のだが。
「平尾さん、処方したお薬・・・・・・ちゃんとお飲みになりましたか?」
唐突に、上の方からそんな声がした。
二階建て住宅の屋根に立つのは、八月朔日しのぶ・・・・・・この状況を見て、なぜ最初にそれを問うのだろうか?いろいろ訳が分からないと首を傾けつつ俺は答える。さっさとお前がアヴェンジャーのマスターかと聞いてやりたい、あと一応海魔を仕掛けた犯人なのかも。
「・・・・・・最近忙しくて、頭痛があっても全然飲んでないです」
「駄目じゃないですか。言いつけを守らない患者さんは嫌いですよ・・・・・・けど、そんなのはどうでもいいんです」
まるでショーの司会がごとくポーズを決め、八月朔日は一度指を鳴らす。
だが何も起こらない。
「・・・・・・なんだよ、急に気取って。なんか強制薬飲ませ機とかでも来るのかと思った」
「そんな生ぬるいもんじゃあございませんよ?う・し・ろ!」
俺が振り返った時にはもう遅い。
瞬時に縄のようなものが俺の体に巻きつけられ、拘束されてしまう。
「克親!!離せっ、アンタらなにしてんのかわかってるっすか!?」
マンドリカルドが不意を突かれたせいでアサシンにがっちり組み敷かれ、抵抗むなしく地面に押しつけられている。
俺は俺で海に丁寧な緊縛をくらい、地面に座らされている。
「・・・・・・お前ら、最初っからそのつもりだったのか」
こいつはいざという時簡単に俺を突き飛ばすだろうと思っていたから、今の心には焦燥感すら生まれない。
こういう形で殺されるっつうのはなんかロマンがねえなとか考えるだけ考えて、ちょっとため息をつくだけ。
「いや、途中で気が変わったんだよ。こっちの方がやりやすいってな」
「あっそ。こんだけ丁寧に縛ったんならきっちり介錯してくれや、首は適当に俺んちの門にでも置いといてくれ」
「残念ですがそう言うわけにもいきません。こちらも製品の処分にはマニュアルがありますんで」
人間を製品扱いとは随分と立派なサイコパスだこと。まるで俺が八月朔日のところでできたロボットかなんかみたいな言いようだ。
遠くから無駄にうるさい音を上げエンジンをふかす車がやってきて、俺は荷物入れのところにねじ込まれる。
もれなくマンドリカルドも仮面やらを引っ剥がされたあと、同じように荷物入れへ縛り上げられ詰められた。
後部座席の背後=荷物入れでない車種だから、こちらを監視するのも難しいはず・・・・・・隙を見て逃げ出したいところだ。
『・・・・・・縄抜けできるか?無理なら引きちぎってでも・・・・・・』
『無理っす、こいつ・・・・・・どうやら対サーヴァント拘束に突出してるっぽくて全然体に力がこもらぬぇーっす。霊体化も出来ないし』
マンドリカルドははちきれんばかりの焦りをどうにか押さえ込んで、冷静に事実を伝えてくれた。正直よほどメンタルが強くないとパニックに陥って暴走してもおかしくはないのだが、ありがたいことにそんな症状は現れていないようだ。
それにしても、物理的な破壊で逃走されると厄介だからか向こうはきっちり手を打ってきたらしい。
どれだけよわっちい紐であろうと、拘束される者に力を出させなければ破壊されないのだから。
『・・・・・・こりゃ、本格的にやべえぞ』
『ここにきて最大のピンチ、っすね・・・・・・』
車は何処かへ移動を始めた。
真っ暗な中から外の様子は見えないので目的地は見当もつかないが、おそらくついたときが俺たちの終わりに違いない。