Fate/Serment de victoire   作:マルシュバレー

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もうどこに伏線張ったか自分でもわからなくなるべ・・・・・・


95話 八日目:へいきだから

「う、あ・・・・・・ぁ!」

 

まるで磔のように、腕を拘束されたマンドリカルド・・・・・・真名を知らないとはいえ、まさかキリストの真似をするだなんて随分と八月朔日は意地が悪いようだ。

小さな呻き声を上げて、何本もの串が刺さった指先から血を垂らす。

俺から絶えず魔力は供給され続けるため、その場ですぐに回復してしまうのが逆にたち悪い。

何個もつけられた裂傷は即座にじゅぶじゅぶと塞がり、その上からまた傷を入れられる。

肉体的な痛みだけならまだしも、精神的にも相当追い詰められているに違いない。

窓を叩いて声をいくらかけても向こうには伝わっていないようで、俺も胸が痛くなってきた。

 

「なんで、あいつが痛めつけられなきゃなんねえんだ・・・・・・くそっ!」

 

感情にまかせて、握った手を窓に叩きつけた。だがどういうわけか、こちらの声どころか窓を叩く衝撃音すら、彼には伝わっていないらしい。

無意識のうちに魔術をかけようとしていたのか、半身がじりじりと痺れてしまう。

この壁を吹き飛ばしたくても、吹き飛ばせない。俺の力じゃ何もできない、誰も助けられないのか。

 

「・・・・・・早く言った方がいいんじゃないですか」

 

アサシンはさすがに可哀想だと思ってきたのか、動きが鈍くなっている。

新撰組は拷問もそれなりにやっていたという話だが、”芯”の彼はそこまで得意じゃないのだろうか。

 

「何があっても、言うつもりはないっすよ・・・・・・好きなだけ、やってくれればいいっす」

 

荒い息を上げつつ、彼はそう言って笑った。

心臓が握りつぶされるような苦しさが、俺の息を詰まらせる。

思わず目を背けてしまう。分かっていても怖い、辛いから・・・・・・目の前の事実からなにもかもが逃げたがっている。

 

「・・・・・・マスターのこと、そうまでして守りたいんですか?」

 

「そうに・・・・・・決まってるっすよ。克親は、俺の・・・・・・大切な友達っすから」

 

やめてくれ。

俺なんかを友達と呼ばないでくれ。

お前を幾度となく傷つけてきた俺に、そんな資格はない。

 

「頑なですねー。仕方ないなぁせっかくだからあなたの口から聞かせてあげたかったけど、先に始末しちゃいましょーっと」

 

「アンタまさか────あ”ぁ”あ”ッ!?」

 

テスラコイルとかで見るようなものと比べて約5倍ほど太い稲妻が彼のいる部屋に走った。

サーヴァントだからこれで死ぬようなことはないが、肌とかの一部が黒く焦げている・・・・・・

 

「やっぱ人間用のは効き目が薄いしつまんないわね」

 

「あ”ぁ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!」

 

目を剥いて、腕を括り付けられていた木がみしみしと音を立てる。

拘束を容易く破壊し、勢いよく前のめりになって転がるマンドリカルド。

 

「・・・・・・っ!」

 

「クソ・・・・・・いってえ・・・・・・なぁ」

 

俺からは見えないところで、どさりと何かが落ちるような音がした。

 

「・・・・・・あら、壊したのはすごいけどもうくたばっちゃうの。か弱い男の子は嫌いじゃないわよ」

 

「・・・・・・ざっ、けんなよ」

 

膝に手をつくような形で彼は無理矢理立ち上がり、再び椅子へと座る。

 

「俺は克親がいてくれる限り絶対に消えねえ、んで口も割らねえ!」

 

断固としてそう言い放った彼だが、どこか恐怖が透けて見える。

虚勢を張っていなければ自分が保てない、というのは俺にもわかるが・・・・・・どちらにしろ、辛いことに変わりはないだろう。

 

「・・・・・・それなら仕方ないわねー。じゃ、さっさとバラしちゃいましょ」

 

バラす・・・・・・?

それは、マンドリカルドの体を解体するということか?

想像しただけで鳥肌が全身に現れる・・・・・・そんなもの見た日にはもう、まともな人でいられる気がしない。

 

「アンタ、最初から知ってて俺にこうしたのか」

 

「そりゃそうでしょ。大切な子をめちゃくちゃにいじめて絶望させて・・・・・・って、ついでにやることって考えればコスパいいじゃない?」

 

コスパを見た結果だけで簡単に拷問ができるとかいう神経がわからない。

良心の呵責など全くない、完全なる悪人。

自分の欲を果たすためならば、どんな行為も厭わないのか。

 

 

「平尾克親さん・・・・・・いえ、八月朔喪。なぜ、あなたがデュランダルと思しき剣を具現化できるのか。なぜ人を殺めたことを忘れていたのか。なぜその記憶に触れた途端雷鳴頭痛に襲われるのか・・・・・・!!」

 

「・・・・・・やめろ」

 

マンドリカルドの声が、これまでになく低い。

 

「簡単な話ですよ」

 

「もうそれ以上言うんじゃねえ!!」

 

もう、八月朔日の言葉は止まらない。

 

「喪兄様、あなたは・・・・・・生体兵器なのですよ。壊れるということを知らない、聖剣デュランダルそのものを体に埋めた、戦争で人をただただ切り刻むだけの最高に美しい機構!!それにもうすぐ完璧な空想具現化が叶う、これさえできれば核分裂なんて旧世代の遺物なぞどうでもいい、最高の抑止力になるッ!!!!」

 

・・・・・・俺が、生体兵器か。

どうしてだろう。驚くべきことなんだろうけども、心は何も訴えない。

 

「・・・・・・やっぱ、人間じゃなかったのか」

 

「いいえ、あなたはちゃんとした人間ですよ?喪兄様の遺伝子を複製した体と、お父様が手術に失敗して死んじゃったほんとの平尾克親さんのエッセンスを無理矢理まぜこぜにしただけのふっつうううううの、人間です!」

 

どこが普通だよと突っ込みを入れることすらできない。

俺は、八月朔日家の喪という人間を基礎にして作られたクローンなんだろう・・・・・・顔を元々の俺そっくりにしたとかそんくらいで、言ってしまえば別人。

 

「・・・・・・克親」

 

「なんだろうな。ショック、なのかなこれ」

 

足から力が抜けて、部屋の中でくずおれる。意味もなくただ天井を見つめて、煌々と輝く電灯で目を軽く焼かれた。

不破がやけに俺のことを人類の敵だなんだと言っていたのもこのせいか。そりゃ人の複製や偽装なんて人倫を完全に無視しているし、悪用してしまえばいくらでも奴隷にだってできる。

そして人体を利用した生体兵器ともなれば、彼は激怒して当然だろう。あの時の俺には自覚がなかったし意図して無辜の民を攻撃することもなかったとはいえ、完璧に兵器として起動してしまえばという想像に至るのは当然だ。八月朔日を始末するのは後回しにして、取りあえず不発弾のような俺をこの世界から撤去するべきとでも考えていたのだろう。

 

「・・・・・・んで、10年ほど前に暴走して父さんたちを殺しちまったのか」

 

「それ嘘」

 

「・・・・・・は?」

 

嘘ってなんだ、あれほどまでのものが全部嘘だと言うのか?

じゃあなぜ今の俺にマンドリカルド以外の家族がいないんだ、まさか八月朔日に捕まって・・・・・・

 

「あなたの体が本物じゃないってケチつけてきたからぶっ殺したの。そこにいたあなたは激昂して暴れ回ったけどたかが15歳だからね、何の損害もなかった。んで親を殺しちゃったことチクられたらやばいから脳いじいじしてあげて、自分が殺したって認識に書き換えておいたってわーけー。そんでもってもれなくその記憶もかったいかったい引き出しの中にしまっといて、開けた瞬間いかにもな頭痛がどどーんという安心設計」

 

もう何を言っていいのかわからない。

この感情は何だろう。

目から涙がぼろぼろ出ているあたり、悲しいのだろうか。

 

「克親、克親しっかりしてくれっす!」

 

「・・・・・・なんかもう、無理だ」

 

大丈夫だと思っていたが、知らないうちに心は砕けてしまったらしい。

胸の奥で何かが脈を打つが、これは興奮由来のものでも何でもないことだけはわかる。

 

「・・・・・・兵器に心なんていらないから都合はいいわ」

 

「・・・・・・貴様!!」

 

「”感情は効率低下一番の原因”・・・・・・ってね」

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