Re:ゼロ RTA エミリア陣営・なんでもありチャート 《完》   作:青煉瓦

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第三章幕間 『浅慮の代償』

 王都に向かって帰還していたレムやクルシュたちは、かつてない危機に陥っていた。

 油断していたのだろうか。あるいは白鯨戦があまりにもあっさり終わってしまったことに気が緩んでいたのかもしれない。

 だがそれ以上に、このタイミングで奴らが来るなどと予想していなかったのだ。こいつらは所在不明、神出鬼没だなんてことはわかりきっていたはずなのに。

 

「ペットがやられた気配を感じて来てみれば――こりゃ豊作じゃないか。やっぱり食べるなら気骨に満ちた奴が一番ッ! 久々に喰らい甲斐のある奴を食べられそうで、俺たちの飢餓が満たされていくのを感じるッ」

 

 一人は大罪司教『暴食』担当、ライ・バテンカイトス。

 

「そういうところ、僕には理解できないなぁ、バテンカイトス。満たされるといってもそれは自分のものでもないじゃないか。どうして今の自分に満足できないのかね。人間を噛みしめる前に、自分がここに生きているという細やかな幸せを噛みしめるべきだよ」

 

 もう一人は大罪司教『強欲』担当、レグルス・コルニアス。レムたちは『暴食』と『強欲』の二人による襲撃にあっていた。

 

 白鯨戦を無傷で突破できたおかげで力が有り余っており、彼らの初撃には何とか対応することができた。現在、レムとクルシュの両名に怪我はない。

 

 だが、万全の状態を以てしてなお勝てる未来が見えない。大罪司教二人がどのような能力を秘めているのかは分からないが、『暴食』は先ほど歴戦の仲間たちをたった一人で薙ぎ倒した実力者。『強欲』にいたっては、たった一人で都市を滅ぼした噂のある化け物なのだ。

 

 この場で特に戦闘力が高いレムとクルシュが連携しても倒すことがかなわない相手である。不思議な発想で道を切り開くスバルや単純に力のある大精霊パックがいればあるいは、とは思うが、それは無い物ねだりに過ぎない。

 

 せめてもの足掻きとして時間稼ぎをしようとしたその時―――飛来した剣圧がバテンカイトスとレグルスに襲い掛かった。それをバテンカイトスは曲芸じみた動きで回避し、レグルスは棒立ちのまま受け止める。

 

「どうやら、最悪の事態は防げたようだね」

 

 その場にいた全員が声の方に向くと……そこには燃えるような赤い髪に青い瞳の男が立っていた。そう、『剣聖』ラインハルト・ヴァン・アストレアである。

 

「あのさぁ、不意打ちして他人を殺そうだなんてどういうつもりなの? とてもじゃないけど人間のやることとは思えないよね。騎士でございますって格好してるけどさ、騎士道精神とかないわけ? 立っているだけで何もしていない僕を切り殺そうとするなんて、王国も腐ってるんじゃないかなぁ」

 

 ラインハルトがとてつもない威圧感を放っているにもかかわらず、レグルスは揺らがず日常のワンシーンであるかのように喋り続ける。

 一方で彼我の実力差を感じとり、下手に動けないことを察したバテンカイトスは打開策を虎視眈々と模索する。

 

 そして、あまりに目まぐるしい展開に、レムたちは困惑していた。

 

「どうして『剣聖』がここに……?」

 

 出てきて当然の疑問、それに対し、

 

「――それはアタシが連れてきたからだぜ。あの頭のおかしい兄ちゃんの功績を聞いたとき、ピーンと来たんだ。こいつの後をつければデカイ案件が見つかるってな。んで、後をつけてみれば大当たりってわけさ! アンタらには悪いがアタシの王道の踏み台になって貰うぜ」

 

 返答をしたのは、いつの間にか隣に立っていたフェルトだ。走者がオリチャーを発動したせいで、王選会議にて『色欲』討伐がフェルトに伝わってしまい、そのことが彼女の盗賊としての嗅覚を刺激してしまった。その結果、ラインハルトを引き連れて大罪司教二人との対面に至ったというわけである。

 

 そして、フェルトの発言を耳にしたバテンカイトスは、こいつは馬鹿だと思った。今の話が本当ならこいつはラインハルトの主、つまりは弱点である。しかも見たところ大した実力もない小娘だ。この場に打開策があるとすれば、それはこいつを捕らえることだ。

 

 そうと分かればすぐ行動、バテンカイトスはジグザグとした軌道を描いてフェルトに向かっていく。当然ラインハルトがそれを阻止しようとするが、レグルスの妨害によってかなわない。レムやクルシュではバテンカイトスの動きを止めるに至らない。

 

 ついにフェルトに手が届くと思ったその瞬間――空から炎弾が降り注ぐ。

 

「あーららぁ、外しちゃったぁ」

 

 バテンカイトスが咄嗟に回避して声のする方向……空を見上げると、そこには道化師の恰好をした奇妙な男が浮かんでいた。

 

「あと少しってところだったのにさァ。やるね、やるなぁ、やるじゃん、やるかも、やってくれる、やってくれたよ! あァ、でもこんなに嬉しいことはない。次から次へと食べ甲斐のある奴が来てくれるんだからさァ! そこの美味しそうなお前、せっかくだから名前を教えて欲しいなァ」

 

「私の名前かい? そうだね、速度を考慮して……名前は『ホモ』だーぁよ。しっかり覚えておいてくれたまえ」

 

 それを聞いてバテンカイトスはニヤリと嗤う。馬鹿だらけで大助かりだ。これで『暴食』の権能の条件を一つ満たせた。あとは奴の掌さえ舐めれば。

 だがもちろん、それは彼のぬか喜びである。

 

「なーんてね、私の名前は『ホモ』じゃないよ。あれぇ、その反応。もしかして名前を起点に発動する呪術でもあったのかーぁな? ごめんねぇ」

 

 なぜなら、道化師姿の男、ロズワールの名前はホモではないから。

 

「さーて、討伐するのはスバルくんの役目だから……大罪司教撃退戦はぁじまぁるよぉー!」

 

 そう、ロズワールがここに来た目的は大罪司教の『討伐』ではなく『撃退』にある。ラインハルトの手で討伐されることだけは避けたい。

 ロズワールがここに来られたのは、王選会議室にてフェルトが野獣の眼光でスバルを眺めていることに気付いたからだ。よからぬことを企んでいると察したものの、国の最強戦力であるラインハルトを止めることはできない。だからこうやって尾行してきて、手助けするフリをしながら大罪司教が逃げる隙を作り、ガバを修正しようとしていた。

 

 本来ならバテンカイトスにレムを食べさせておきたかったが、あの場で動いてなければレムの前にフェルトが落ちていた。王選候補者の予期せぬ脱落が未来に与える影響は計り知れない。ゆえにやむを得ずバテンカイトスを阻止。

 その隙にレムたちが撤退したため、そこからバテンカイトスをレムの方へ誘導するとなると、さすがにラインハルトの不信感を高めすぎてしまう。

 

 結果――ロズワールの目論見通り、『暴食』と『強欲』の撃退には成功。一方でレムとクルシュが権能の影響を受けないままイベントが終わってしまったのである。

 

 

 斯くして、オリチャーという名の浅慮、その代償が形となって現れたのであった。

 

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