Re:ゼロ RTA エミリア陣営・なんでもありチャート 《完》 作:青煉瓦
聖域の木陰で一人の少年……スバルが休んでいた。怒涛のボスラッシュに加え、ネクトによる試練介入で大きな疲れがたまっていたのだ。
「ぬわあああああああん疲れたもおおおおおおおおおん! ……ん、あの人は」
そこに薄赤の長い髪の少女が一人、トコトコ歩いて来る。
「おーい、スー坊! ようやく見つけたぞい。ここにおったのか」
「あんたは確かガーフィールの婆ちゃんの……リューズさん、でしたっけ。俺に何か用が?」
リューズというのはガーフィールの祖母のような存在で、聖域のまとめ役である。見た目は少女だが口調は婆さんというロリババア属性の持ち主だ。
「儂からスー坊にどうしても礼を言いたくてのう。聖域を開放してくれて、ありがとう」
そう言って少女は恭しく頭を下げ、手を差し出してくる。
「あー、どういたしまして? でもこっちにも利益があったから開放したわけで……それに開放したのはエミリアですし、俺なんかにそんな畏まらないでください」
それに対してスバルは照れながら言葉を返し、少女の握手に応じる。その瞬間――
少女がスバルの手を口元に引き寄せ、ペロペロと舐めた。
「リュッ、リューズさん、何を――いや、お前リューズさんじゃないな?」
「当たりだよ、ナツキ・スバル。これで意趣返し成功といったところかな」
見破られた途端、少女はリューズの真似をやめ、普段の口調に戻った。スバルの手を舐めることが意趣返しとなる存在など一人しかいない。
「エキドナか……!? でもお前は死んでて……だけどその身体で動いてるってことはもしかして」
「安心したまえ、ボクはリューズの複製体の一つに宿っているに過ぎない。ガーフィールの祖母役に迷惑はかけてないよ。こうして蘇って出歩くことができたのは、君が結界を剥がしてくれたお陰だ。だから感謝を伝えようと思ってね」
そう、エキドナは複製体に魂を定着させる蘇生の術式を完成させていたが、聖域の結界に阻まれて外に出ることができずにいたのだ。だから最初に述べた聖域開放に対するお礼は本心からの発言である。
「そうかよ。でも強欲の魔女って肩書きのお前が、お礼だけ言いに来るような殊勝な奴には思えないんだけどな」
「察しがいいね。単純な話さ、こうやって君のところに来たのは、君についていこうと思ったからだよ」
「はぁ!? 何で俺に? 自分で言うのもなんだが、お前にあんな無礼なことをやらかしたんだぜ」
エキドナの唐突なストーカー宣言にたまげるスバル。次いで出てくるのは疑問である。
「君にも人間らしい感性が残ってたんだね。あの程度のことで、未知と予想外を好むボクが、君のような存在を諦めるわけがないだろう。あとアレは君のボケに乗っただけだよ」
「それは負け惜しみっぽくね? でも正直ついて来られても困るっつーか」
「おや、恩人であるボクにそんなつれない態度をとってもいいのかい?」
「は? 恩ってーと……」
試練の資格を授けてくれたことだろうか。エキドナの好意で何かをしてもらった記憶はそれぐらいしかない。
「資格のことじゃないさ。――シリウスが気絶したとき、意外と早く落ちたなと思っただろう。でも、墓所の罰の威力が凄まじいとはいえ、あの大罪司教がすぐに気絶するのはおかしいと感じなかったかい?」
「それは……いや、まさか……!」
「そのまさかだよ。墓所に踏み入ったシリウスがすぐに気絶したのは、ボクが彼女を意識だけが滞在できるあの空間に招いたから。君も初めて墓所に入ったときに体験しただろう」
今明かされる真実。またしてもオリチャーのガバの尻拭いをNPCにしてもらっていた。
「マジ、かよ……」
「まぁ安心したまえ。これだけを理由に何か強請ろうって魂胆じゃないからね。これは君に対するパフォーマンスの一つさ」
「パフォーマンス?」
「そうだよ。君がボクと契約を結ばないと考えてるから、その考えを改めさせて契約するためのパフォーマンス。言わば『ナツキ・スバル攻略RTA』の第一歩といったところかな」
「は――」
既にセーブポイントは更新されている。ああ、逃れられない。
「良い機会だ。新しい身体になったことだし、名を改めようか。エキドナの名で暮らすのは都合が悪い。そうだね……君の知識で魂を意味する『アニマ』と名乗ることにしよう」
「―――」
新たなるタイマーが今、時を刻み始めた。
「欲深いボクから逃げ切れるとは思わないことだ。覚悟したまえ、未来の共犯者クン」
▼ 強欲の魔女エキドナに付きまとわれた!