今回はオリ主(ユズル)よりもノーチラスやユナが目立っています。
またきりのいい所もあり戦闘前で切り上げました。(下)の方では戦闘描写を入れますのでお楽しみください。
「へぇ ノーチラスは血盟騎士団に所属しているんだ。かなり有名なギルドじゃない?」
「…まあな。ちょっと、色々あって…いまは曖昧だけどな」
ユズルとユナは合流したノーチラスと一緒に食事を楽しんでいた。しかし話をしている最中のノーチラスはどこか上の空だった。むしろ、覇気のない声で答える辺りかなり思い詰めている。ユナは気にしているか、浮かない表情で困り顔だ。僕も何かあったのではないかと気になって仕方がない。
【血盟騎士団】は浮遊城アインクラッド第百層到達を目的とした攻略組のギルドで構成人数は五十人ほどの少数精鋭部隊だ。一人一人は実力者揃いであり、プレイヤーのトップを集めたギルドといえる。他の攻略組は新興の侍ギルド【風林火山】やプレイヤー最大ギルド【ドラゴンナイツ・ブリゲード】、それに次ぐ勢力の【アインクラッド解放軍】等は有名だ。
中でも血盟騎士団は「最強」と名高く、その強さと見た目で子ども達には人気のあるギルドでもある。実はユズルも最強と言われる所以を直に味わったこともあり、実力は本物と認めてはいた。
ユズルはサバイバル生活で血盟騎士団のギルドのメンバーに襲われたことがあった。少人数でも退路を断つ部隊、攻撃部隊、誘導部隊に分かれて統率された動きをする。もしあの場に指揮をするプレイヤーもいたならば、生きてはいなかった。二度と相手にはしたくない反面、味方であれば頼もしい存在ではある。僕は『そんなこともあったな』と頭を掻きつつ、笑みを浮かべながらノーチラスに話しかけた。
「…何かあったの?なんだか明日の風も吹かない声をしているよ」
「その風は何か分からないけど…悪いけど言えない…自分の問題だから」
暗い表情の裏に強い決意も含めた言い方にユズルは「そうかぁ」としか言えなかった。ノーチラス自身も言いたいことが沢山あった。しかし、目の前に現実世界では幼馴染で一年以上も好意を寄せているユナに弱音を吐きたくはない。そのプライドを守りたい一心で悩みを言いたくはなかった。ユナはノーチラスを労おうと口を開きかけた時――
――その直前、一人のプレイヤーは大声で叫びながら店内に駆け込んできた。そのプレイヤーの様子は尋常ではない。背中には折れた槍が突き刺さったままだ。そして、体力ゲージは赤色にも関わらず回復する余裕は見られない。ただならない雰囲気に周囲は静まる。
「だ、誰か……!頼む、誰か助けてくれ!」
「おいおい、大丈夫か!?」
「な…仲間が五人、フィールド・ダンジョンに閉じ込められてモンスターの大群に追っかけ回されているんだ!もう長くは持たない…誰か、一緒に助けに行ってくれ!!」
飛び込んできた男は荒い呼吸を絞り出して叫んだ。その言葉に周囲のプレイヤーは息を飲む。その言葉を聞き、二階にいたノーチラスとユズルに緊張が走った。
「あの武器には見覚えがあるな…確か四十層に出没する≪
「見たところ…あの男の装備は最前線でも通用する高級品の鎧だね。破損一歩手前な辺りを考えれば相当激しい戦闘から離脱したみたいだな」
野郎二人で状況分析をしている様子に、ユナは「そんなことをしている場合でないでしょ」と怒ってむっとした顔をしていた。
ノーチラスによればあの男は四十層のダンジョンから撤退してきたという。【牢獄】をテーマとしている四十層のダンジュンには、厄介な閉じ込めトラップ、つまりモンスターハウスのだ。大抵は閉じ込められた空間に解除手段はある。しかし、トラップと同時に湧き出るモンスターの対処で精一杯な場合が多い。あの男はその解除手段を見つけて脱出してきたと予想していた。
別のプレイヤーは男に駆け寄り、アイテムストレージのハイポーションを手渡しながら訊ねた。
「回路結晶はどうした!最前線で戦えるなら一つくらいは持っているだろ!?」
「そ…それが、ダメなんだ。沸いたモンスターの中に沈黙デバブをかけてくるヤツがいて、クリスタルが使えなくなっちまっていたんだ!」
男の「クリスタルを使えない」言葉に周囲の緊張はより一相高まる。¨沈黙¨はプレイヤー同士の声掛けを一定時間使えなくさせる妨害ステータスだ。ソードアート・オンラインは治療結晶や解毒結晶、そして転移結晶は手に持ってボイスを発しなければ使えない。つまり、¨沈黙¨は対クリスタルアンチのデバブと言える。しかし――
「咳止めポーションは!?最前線なら予備はあるだろ!」
「……咳止めポーションは誰も持っていなかった。まさか、沈黙をかけてくる敵がいるとは思っても見なくて…」
攻略組にしては無知すぎるプレイヤーにユズルとノーチラスとユナは絶句していた。要はこの事態は情報収集を怠っていた故に起きたのだ。既に中盤の四十層まで差し掛かっていても未だにゲーム感覚で考えるプレイヤーは多い。彼の認識の甘さにユズルは怒りを覚えていた。ユナは左手を口元に寄せて目を瞑る。数秒後に目を開きゆっくりと口を開いた。
「…ねぇ。四十層はトラップの巣窟でもあの人のマップデータを借りれば迷わずに行けるはずだよね」
「…僕もそれを考えていた。周りの人もあの人に感化されて救援部隊に名乗り出ているみたい」
「…アイテムも十分だな…よし」
三人は椅子から立ち上がる。レベルは安全マージンの50近くに達しているから十分だ。現時点ではノーチラスはレベル48、ユナは41、ユズルは55であり、フィールドモンスターに後れを取ることは考えにくい。ちなみに僕は二人にレベルを伝えたときはひどく驚かれた。しかし僕にとってはそうなるしか生き残れない環境も裏打ちしてあまり誇れるものではない。
ユズル自身は『レベルは他の人より高いから強い』という自覚は無かった。なぜならアクティブスキルを使えない彼は、己のプレイヤースキルとパッシブスキルを信じて戦い抜くしか生きる術を知らない。昼夜に関係なく襲ってくるプレイヤーを追い返しながらレベルを上げる生活。【天国と地獄の扉】のクリア後は、ひたすらレベルと幻影スキルの熟練度を上げる日々を過ごすうちに、今に至る。自慢にもならないし、言えば虚しいだけだった。
「「「僕(私)も志願します!!」」」
こうして僕達は三人揃って救援部隊に志願した。周りに集まったプレイヤーは十人にのぼる。その内の二人は赤基調の和風アーマーを装備している男がいた。ユズルには見覚えがあり、義兄弟の契りを結んだクラインを頭とする攻略組の風林火山とすぐに分かった。しかし「大丈夫か」「無理じゃないか」という声もちらほら聞こえる。本来であれば上位プレイヤーに声をかけて戦力を増やしたい。しかし攻略組のプレイヤーは第四十層攻略戦の作戦中だ。当然、救援部隊の援軍の要請は受理されない。この十人のプレイヤーで殿戦を成功するしかない状況にメンバーの士気は下がっていた。
「…よし」
ノーチラスは意を決したようにアイテムストレージを操作した。すると白地に赤の差し色鮮やかな血盟騎士団の正式装備に変化した。また、ユナも同じくアイテムストレージを操作する。鮮やかなロイヤルブルーのワンピースに黄金の緑飾りやバックルを装備した布防具に変化した。更に、左手に白いリュート、右腰のダガーに頭には純白の羽根つき帽子を身に着けた姿となる。
同伴したプレイヤーは「血盟騎士団だ!」「これならいける!」という歓喜、「噂の歌チャンか!?」という歓声で沸き上がった。ユナは≪
ユズルは周囲に怯えて幻影のローブを装備したままだ。二人ほど目立っておらず、注目もされていない。ユズルは注目されている二人との自分と住む世界の違いに寂しさを感じていた。それに合わせて、救出戦が成功した暁にはある決意を固めていた…
一
五人ずつ二組のパーティに編成し、救援隊の十人は西門から圏内にでた。四十層のフィールドは荒れた大地に切り立った岩壁で先は見通せない。足場も大小の岩で敷き詰められた道を踏みしめて進み、進行を遅らせる。さらに焦る気持ちも合間みて駆け足ぎみで何度も躓いていた。やがて、行く手に、半ば崩れかけた遺跡を見つけた。ユナは男に借りたマップデータをみても場所は一致した。
「もう少しだ!」
「急ぎましょう!」
ユナはかけ声と同時に、走るスピードを上げる。ダンジュンは平地で走りを邪魔する物は無い。速さに追いつこうとノーチラスは慌てて彼女を追いかけた。移動中もノーチラスは幼馴染の様子を気にしていた。デスゲームを知らされた日は宿場で泣いていた弱い彼女からは想像のつかない言動。あの日から『僕が絶対に守る、必ず現実世界に返す』と誓い、ソードスキルの訓練に励み、血盟騎士団に加入した。最近は失敗続きで落ち込んでいたがユナはいつも励ましてくれるから戦えていた。
自分はユナを守っていたつもりだった。だがいつの間にか自分も守られていた。情けない話と思う。しかし、不思議と不快な気持ちでなく身体の中に新しい力をノーチラスは感じていた。
二
仲間が閉じ込められているというフィールド・ダンジュンは監獄によく似た遺跡だ。道中にコボルト種とスライム種に出会うもノーチラスの指揮とユズル達の活躍で無傷で撃破できた。マップデータを頼りに走ればプレイヤーの叫び声やモンスターの咆哮に不気味な金属音を響かせる、いわば戦闘音が届いてくる。
「まだ、生きている…」
ホッとする間もなく、ノーチラスは状況を分析する。広場の一番奥に全長二メートルの巨体な影を確認できる。幸いにもボスはまだ動く気配はない。戦っているプレイヤーはレベル四十前後でも小さいを倒し切れていない理由は、一匹倒してもすぐに蘇る≪無限増殖≫なのだろう。しかしこのままでは疲労と回復ポーション不足で全滅は時間の問題だ――
「――鉄格子の開閉スイッチはどこにあるんだ!!」
「あのボスの後ろにそれらしいレバーがある!でも、近づけばボスが動き出す…!手の打ちようがないんだ!!」
戦っているプレイヤーは叫びながらモンスターに切りかかる。その言葉を聞いて、風林火山のねじり鉢巻きをした巨漢が唸った。
「つまり、オレらが救援に入るには、ボスに近づいてレバーを操作しなきゃならねぇワケか…」
「それは随分な博打だぜ。レバーを操作しても空き時間は短い。パーティ全員で撤退は相当難しいぜ。」
二人の冷静な分析にノーチラスはハッとした。誰かがレバーを操作しなければ鉄格子を開けることはできない。全員を撤退させようとすれば、閉じ込められて全滅も考えられる。
であれば――
「「…ボスを倒すしかないな」」
ノーチラスとユズルは同じ言葉を同時に言う。後方のプレイヤーはざわめいた。攻略組ではない五人はボス討伐が初めての経験である。命を懸ける戦いになる可能性に戦意を失っていた。その成り行きを見守っていたユナは、大声で今も戦闘をしているプレイヤーに呼びかける。
「あのー!助けに来ました!こっちに近寄れますか!?」
すると閉じ込められている五人は、少しずつ後退し始めた。その途中にユナはユズルとノーチラスに近くまでくるように言う。真剣な表情でノーチラスとユズルに話しかけた。
「私の勘なんだけどね…何か嫌な予感がするの…凄く嫌な感じがね。だから――」
ユナは自分の髪を二本抜き取り、二人の小指に結ぶ。
「――だからこれは約束の印」
ユズルとノーチラスは何も言わず、ユナに合わせてお互いに二本の髪を抜き取り、相手の小指に結んだ。
「これは――三人で生き残るって約束だよ!」
「――あぁ約束だ!」
「…うん」
三人は互いに小指を合わせる。互いに決心を固めるまでに約三十秒の時間の出来事だった。やがて後退してきたプレイヤーは鉄格子に戦いの場を移す。プレイヤーが鉄格子の近くにくればユナはゆっくりと歌いだした。アイテムストレージから出した小ぶりの
ユナが小ぶりの
「
「おう!」
声に応じた五人はフロア内に侵入し、ソードスキルを発動させて、拷問史モンスターを殲滅していく。広場の一番奥にいたボスモンスターはプレイヤーに反応し、吼えながら巨大な斧を振り回す。
――本当の救出作戦が満を期して、火蓋を切った。
お読みいただきありがとうございます。
(下)を投稿した後のことをここに記載します。
最初に感想をいただき、『キャラの説明をしっかりした方が読者は楽しみやすいかもしれない』と感じました。そこで、アンケートで投稿の優先順位を決めたいと思います。
物語の展開を見て投稿しますのでこれからもよろしくお願いします。
エピソードゼロ:投稿優先の期待値調査
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