一
クラインが叫ぶと同時に、耳を塞ぎたくなるような、鈍い鐘の音が響き、三人は強制的に青い光に包まれた。目を開けると、はじまりの街にいた。どうやら強制的に転移させられたらしい。ゲームでは単純な出来事なのに¨転移した¨と気づくにキリトは数秒かかった。
周りに何千人ものプレイヤーが次々と強制的に転移させられていた。
中央広場の上空中央が赤く点滅し、いきなり増殖するかのように空に広がり〔Warning〕と〔System Announcement〕の文字列が交互に並んでいた。
その文字から次第に液体が流れていき、最終的に赤い液体が滴り人型の大きなローブを羽織る形に仕上がった。
この街に集められた全ての人々が呆然と上空を見上げる中、得体のしれない者は声を発した。
『プレイヤー諸君、我の世界へようこそ。私はこの世界のGMであり、コントロールできる唯一の王である。プレイヤー諸君は、すでにメインメニューからログアウトボタンが消滅していることに気付いていると思う。しかしこれはゲームの不具合では無く、このゲーム本来の仕様である』
キリトの頭は、花火のように次々と疑問が浮かび上がった。何をどう整理したらよいか分からない。取りあえず、目の前にいる得体のしれない者は『自称GM』と認識させた。
そんな様子を気にせず、自称GMは機械的に話し続ける。
『諸君は自発的にログアウトすることはできない。また、外部の人間の手による、ナーヴギア停止あるいは解除も有り得ない。もしそれが試みられた場合はナーヴギアの信号素子が発する光学粒子が諸君の脳の神経インパルスを吸収し、脳の活動を停止させる。」
「嘘だ、はったりだ、そんなことあるわけがねぇ!」
怒りのあまり、クラインは、出せない声を振り絞って言う。
「ナーヴ_何なの、それ?」気になってユズルは聞いた。
「すまん、後にしてくれ」とキリトは自称GMの話を聞くことにした。
『無慈悲にも、現時点でプレイヤーや家族、友人などが警告を無視し、ナーヴギアを強制的に解除しようと試みた例が少なからず有り、その結果、213名がアインクラッドから消滅し、現実世界では植物人間及び廃人と化している』
GMの右手が上がり、テレビ映像が中継された。呼吸をするだけで動けない者や喃語を話すばかりの人に家族と思われる人の泣き叫ぶ声などが映り、とても直視して見る映像ではなかった。
『この状況はあらゆるメディアが繰り返し報道している。すでにナーヴギアが強制的に解除される危険は低くなっている。諸君らは、安心してゲーム攻略に励んでほしい。繰り返し言おう。今後ゲームにおいて、体力がゼロになった瞬間、諸君らのアバターは、永久に消滅すると同時に諸君らの脳の記憶はナーヴギアに保管され、肉体は生きる屍となる。』
周りのプレイヤーはGMを見上げながら悪態を付いていた。キリトは声には出さないようにしているが、グツグツと煮える怒りは収まず、胃がひっくり返ったような感じがした。
『諸君らの解放される条件は、2つだけだ。このゲームをクリアするかGMである我を見つけ出せば良いだけだ。各フロアの迷宮区を攻略し、フロアボスを倒せば上の階に進める。第100層にいる、最終ボスを倒せば、クリアだ』
・・・どこか愉悦感を含めた余裕のある機械音の響きにまた胃が逆流しそうになった。
「それでは、最後に諸君のアイテムストレージに、ささやかなプレゼントを用意してある。確認してくれたまえ』
自称GMの言われたとおりにストレージを開くと手鏡のアイテムがあった。突然目を開いていることすら厳しい強烈な光に襲われたが、すぐに収まる。
目を開くと手鏡には現実世界の自分の顔が映っていた。隣にいたクラインは爽やかな顔立ちから顎に無精ひげを生やした顔つきに変わり、互いに「お前さん、キリトか?」「え、クラインか?」と確認しあった。ユズルの顔つきは全く変わっておらず、すぐに分かった。
『以上で《ソードアート・オンライン》正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君の健闘を祈ろう』
自称GMの演説が終わり、アバターが消えたと同時に広場は大混乱に包まれた。
泣いてうずくまる者や悪態をつく者や女性の服をきた男がアバターを戻せと言う者もいればプレイヤーに切りかかり、衝撃で吹き飛ばされる者が連鎖で広まる。剣と剣が夕日の中で火花を散らして交差する姿は、血腥い戦場に見え、広場の中心にいたキリトとユズキは、思わず、動くことができなかった。
「こっちだ!」
そんな中、キリトとユズキはクラインに引っ張られ、路地へと入った。
二
クラインに引導され、二人は人通りの少ない黒レンガ住居の裏口に入った。幸いにも他のプレイヤーはおらず、知り合いしかいない空間は、徐々に気持ちを落ち着けることができた。
キリトは、一呼吸つき、ある提案をした。
「二人ともよく聞いてくれ。この世界で生き残るには自分を強化しなくちゃいけない。
だけど、この辺りの狩り場はすぐに借り尽されてしまうだろう。俺は次の村に拠点を移そうかと思っている。もしよかったら、二人とも俺と来ないか?」
キリトは右手を差し出して誘った。
「すまねぇ。俺、他のゲームでギルメンだった奴らと、徹夜で並んでソフトを買ってな。そ、そいつらも多分ログインしてて、さっきの広場にいるはずなんだ。見捨ててはいけねぇ」
キリトの表情が曇ったのを見て、クラインは慌てて言葉を続けた。
「まぁ俺のことは気にするな。お前にこれ以上、世話になるわけにはいかねぇよ。一応このゲームやる前は、ギルドの頭をやっていたしな。気にするな、今まで教わったテクで何とかしてみせらぁ!」
クラインは声を高々とあげて答えた。
「俺は広場が落ち着いたら、中央広場に行くが、ユズルはどうするんだ」
「うーん、僕はちょっと別行動をしようかな」
クラインに尋ねられ、ユズルはここを離れることにした。彼はこの近辺の情報がほしかった。
βテスター段階での変更点や武器のスキルとかの調整誤差の確認をしておきたかった。
デスゲームとなった以上、情報収集は必要、と考えていた。
「そうか、ならここでお別れだな。次会った時は強くなった姿を見せてやるよ!」
「おぅ、何かあったらメッセージを飛ばしてくれ。」
三人がフレンド登録し、メッセージを送れるようになった時に、ユズルは「そうだ!」と声を張った。
「クラインの武将衣装を見てたら、男三人でやりたくなったことがあったよ」
ユズルは二人の肩を持つように手を広げてヒソヒソ声でやりたいことを伝えた。
クラインの身長は高く、彼には屈んでもらわなければ手をまわせなかったが、うまく、合わせてくれた。どうやら三国志の有名な名シーンに三銃士の誓いを合わせた儀式をしたい、というものだった。キリトとクラインはこの話を聞き、幼いと思いつつも、やってみよう、という気になった。
三人は剣を上に掲げ、刃を交差させる。金属音が聞こえたが、中央広場で聞こえる金属音と比べれば不思議と不快な感じはしなかった。
「「「我らはここに義兄弟の契りを結ぶ」」」
キリト「互いに困ったときは助け合い」
ユズル「悩みがあれば話し合い」
クライン「三人で重荷を分かち合おうぜ!」
「「「我ら三人、同年同月同日にこの地に立つことはなくとも」」」
「「「同年同月同日に生還することを願わん!」」」
掛け声と共に交差した剣を引き、それぞれが別々の道に駆け出して行った。
ようやく一区切りがつきました。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
第1話から第3話までは原作沿いの展開で進めてきましたが、
次回からはここまで目立っていないオリ主を添えて物語を進めていきます。
エピソードゼロの第1話を投稿するまでですが、アンケートを実施します。
のんびり投稿となりますが、よろしくお願いします。
エピソードゼロ:投稿優先の期待値調査
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