幻影戦記~氷と炎の鎮魂歌~   作:ロバート・こうじ

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第1話から第3話までのアンケートにお答えいただき、
 ありがとうございます(^-^) これを参考にしていきますので
よろしくお願いします。

エピソードゼロ2話にもかきましたが、
 今回から文章を分かりやすく見やすくするために変更しました。
ご了承ください<(_ _)>


4話 第一層攻略会議

2022年12月2日

 

――砂漠フィールドの砂を踏みしめつつ、身体を前へと進ませていく。

 

 太陽のギラギラとした熱さが汗を増やし、歩くたびに吹き荒れる風があたり、表面に砂がくっつく感触を無視していく。

 

 目の前に一度倒したモンスターが再び戦闘可能な状態で出現すれば、同じ様に倒していく。同じフィールド内を歩き回り、同じ行為を何度も繰り返した。

 

「―――くっ!」

 

 熱の暑さで注意が散漫になり、後ろに出現したモンスターの敵意に気付くことができず、天地がひっくり返った。

 頭から砂を被ってしまい顔中が砂だらけになったが、敵は待ってはくれない。手で目を擦る余裕すらない。敵の位置は砂が巻き上がるか砂を踏む音で予想することにした。

 

「―――ふぅ」

 

 呼吸を整えて意識を集中すれば風が砂を巻き上げる音しか聞こえなくなってきた。他は大きく砂を踏み鳴らす音が混じって聞こえる。イレギュラーな感じに身の危険を感じた…

 

「そこだ!」

 

 敵の攻撃を目の前で受け止め、その途上のモンスターの側部を剣で振り回して切り付けた。モンスターは攻撃に耐えきれず、そのままポリゴンとなって消える。

 

「……まだまだあまいなぁ」

 

 巨大な石で日陰になっている所に腰かけ、ユズルは溜息をつきながら呟いた。

 

 キリトとクラインと別れて、一か月が過ぎて死者は2000人に及んだ。現状は一層のボスも確認されていない。βテスター時点での変更点を情報屋やプレイヤーに聞き込み、モンスターの再登場率が早い狩場を探す日々を過ごしていた。中でも一番の変更点は経験値や武器の熟練度が上がりにくくなっている所だった。他は、モンスターのレベルとプレイヤーのレベル±10の差があればコル(ここでの通貨)やアイテムのドロップ率は半分になる。おまけに経験値の取得も半分になるときた。自然と強いプレイヤーは上層に上がり、弱いプレイヤーは下層で留まるようになれば、お互いに死のリスクを軽減することはできない仕様に変更されていた。

しかしながら、ユズルの一番気になっているのは―――

 

「ソードスキルを覚えないのは、なんでだ?」

 

――自分自身だった。

 キリトに教えてもらった場所でモンスターを狩り尽くした後は情報屋で聞いた場所を狩場にしてレベル上げに励んでいた。現時点でレベル10となり、パッシブスキルでダメージ量を増やして倒せているのに…。肝心の攻撃スキルは覚えられず、プレイヤーの中ではかなり弱い部類であった。ユズルは情報屋からもらったガイドブックを開き、読みながら考えることにした。

だんだん汗で冷えた身体が寒く感じてきた時に¨ピロン¨と鳴り、メニュー画面を開けばキリトからの連絡だった。

 

『今日の16時にトールバーナーで第一層の攻略会議が始まる。ユズルは来るか?』

 

結局ガイドブックを読んでも自分の問題は解決のしようがない。もう僕は開き直ることにした。さっきの戦闘のようにある程度はプレイヤースキルで補助すればなんとかなるだろう。ユズルはそう言い聞かせていた。

 

『もちろん行きます。連絡ありがとう』

キリトに返事を返して僕はトールバーナーに向かった。

 

 

トールバーナーは始まりの街と似た雰囲気ではあるが、商人の数は比べるまでもなく多くて賑わっている。剣や斧、こん棒、ひのきの棒が店内に並び立ち種類も豊富だ。特に回復アイテムのポーションは人気があり、たまに顔を覗かしても¨売り切れ¨ばかりが目立つ。

いつも売れ残るひのきの棒を見ていると『あれはただの棒ではない。他の商品をより高級に引き立たせる効果があるかもしれぬ』、と勝手な解釈をして満足した。

 

「そういえばキリト、どこで攻略会議やるか書いてなかったな。」

 

 前途多難かなと思っていたが、どうやら僕の杞憂(きゆう)に終わった。歩いていたら中央の掲示板に攻略会議の場所が掲載されており、さっそく向かうことにした。

 

掲示板に示されていた場所へ着くと、すでに他のプレイヤーが集まっていた。古代ローマのコロッセオを思わせる風貌に、風化のせいか割れている石柱に石造りの床、広場の間には中央ステージに合わせて階段が伸びている。

 

 とりあえずユズルはメッセージを送った持ち主のキリトを見つけては、声をかけて隣に座ることにした。座って気が付いたが、石造りの椅子は冷たくて小石が食い込んでかなり痛い。地味に痛い。僕はHPが減らないことを確認してからキリトに話しかける。

 

「キリト、久しぶり~」

「おう、ユズル。来てくれたんだな」

「まあね。レベルもだいぶ上がってきたしね。」

 

 キリトはメッセージのやり取りはあるとはいえ、実際に話すとでは気持ちの感じは違う。

何気ない会話はデスゲームとなった以上、いつでも訪れるものではない。ほんの数分ではあるが会話を楽しんだ。……それにしてもさっきから気にはなっていたけど、

 

「なんだか会場全体がピリピリしてるね」

「それはそうだろうよ。ようやくボスの場所が分かって初めての攻略会議だからな。皆が殺気だったり、緊張するのは仕方がない」

 

 キリトの話を聞いて、僕なりに何とか納得した。

 

しばらくしてから中央ステージに青髪のプレイヤーが手を叩きながら壇上に上がってきた。

 茶色の鎧に青色の装束服を着こなした好青年なプレイヤーの印象を受ける。

 

「は〜い!そろそろ始めさせてもらいまーす。今日は俺の呼びかけに応じてありがとう。俺はディアベル。職業は、気持ち的にナイトをやってます!」

 

 ディアベルの冗談とも言える発言に「そんな職業ないだろ」「ほんとは勇者って言いたいんだろー」という批判に聞こえない野次が飛び交う。さっきまでのピリピリはほとんど感じなくなった。

 ユズルはたった一言の言葉でこの場を和らげた彼のリーダーシップに関心すると同時に僕も人と関わるならこういう人になりたいとも感じた。そんな心情とは裏腹にディアベルは言葉を続ける。

 

「よし、早速本題に入ろう。このゲームがデスゲームとなって暫く経った。このまま引きこもっていても何もはじまらない。実は昨日、第一層のボスに通じるマッピングに成功した!」

 

ボスまでのマッピングに成功した――

 つまり一直線でボスに向かうことができるという意味であり、周囲は「おー」と声を上げる。

 

「このガイドブックによればボスモンスター、イルファング・ザ・コボルド・ロードは手下を召喚するらしくて――」

「待たんかい、ダボが!!」

 

 いきなりの怒鳴り声に会場全体は静まり返った。怒声を発したであろうプレイヤーがバタバタと足音をたてて中央ステージに向かっていく。ツンツンした頭をしたプレイヤーがディアベルの隣に並ぶように立つ。

 

「えっと、どちら様?」

「ワイはキバオウちゅうもんや!ボスと戦う前にひとつだけ言わば気が済まん、こんなかに今まで死んでいった2000人に詫びいれなあかんやつがおるはずや!!」

「それって、βテスターの人達のことかな?」

「せや!」

 

キバオウは答え、さらに言葉を続ける。

 

「βテスターどもはこんクソゲーが始まってすぐに、上手い情報を独占して自分らだけ強くなって、後は知らん顔。この中におるはずや!ワレはβテスターがアイテムやら金を差し出してけじめつけるべきと言うとるんや!!」

 

 ユズルは一瞬だけキリトを見ると、キリトの表情は青白くなっていた。明らかに瞳孔(どうこう)は広がり大量に汗をかいている。いま僕が声をかければ、中央にいるキバオウに悟られてしまう。

そう思い、キリトの背中に軽く触れて目配せをした。気持ちが伝わったか、深呼吸をするキリトの姿があった。

 

「発言いいか?」

 

会場の空気を割って身体の大きい黒人のプレイヤーが声を上げる。背中に斧を担いたスキンヘッドではあるが、落ち着いた口調のおかげで威圧感はない。他のプレイヤーの視線がある中で彼はキバオウに話しかける。

 

「俺の名前はエギルだ。キバオウさん、あんたの言いたいことは、βテスターが面倒を見ないせいで、新参者がたくさん死んだ、その責任を取って謝罪しろ、と言うことだな?」

「せや!」

「このガイドブックは無料で配布されているものだ。これには、第一層の情報が詳しく書かれている。このガイドブックを作成し、配布するように手配したのは、βテスターだ」

「……は?」

 

どうやらガイドブックの存在を知っていてもその情報はどう集まったかは知らなかったらしい。キバオウは表情を歪めて押し黙った。

 

「手に入れようとすれば、情報は手に入っていたんだ。それを怠り、死んだのは、そいつの責任だ。新参でもβテスターでもだ」 

「すまない、まだ納得がいかないかもしれないが、キバオウさん、ここは俺に免じて抑えてくれないか?今は、第一層を攻略することが最優先だ」

 

 キバオウは、舌打ちをして石造りの椅子に座った。一連の流れを見ていた僕はβテスターが思っていた以上にヘイトを受けている現状を危険と感じた。確かに情報を集めている時に『βテスター=強者、その他=弱者』の根拠のない定義を聞いたことがあった。情報のアドバンテージがあっても、自分で考えずに思考を停止した人は慢心して死。それを分かっていなければ、ここにいる人達は生きていなかっただろう。それでも誰かに八つ当たりしなければいけない――。自然とヘイトがアドバンテージのある方に向くとなれば行きつく先はβテスターだったか。ユズルは危機感を感じつつ、今は、ディアベルの話を聞くようにした。

 

 「皆、すまない。時間を取ってしまった。話の続きだが、ボスを叩くチームと雑魚を押さえるチームに分けたいと思う。各自2~4人のペアを作ってくれ」

 

 キリトはすぐに僕をチームに誘い、他の人を誘おうと周囲を見渡す。同じ列の隅に誰にも声をかけられていないプレイヤーがいた。女性と思われるが赤いフードを深く被っているせいか顔は良く見えない……。

 

「あの‥よかったらパーティを組みませんか?」

「………は?」

「あぁ、いや、誰とも組んでなければ俺達と一緒に、と思って…」

「…いいわ、組みましょう」

 

どこか怪しいナンパ師のような声のかけ方ではあったが、通報されず、無事にパーティを組めた。顔までは最後まで分からなかったが、パーティ申請の時に彼女の名前は¨アスナ¨とだけ分かった。

 

 その後はSAOで基本的かつ必須のテクニックである≪前後交代(スイッチ)≫や≪ポットローテーション≫を知らない僕と女性に集団(パーティ)戦闘の基本をキリトに教えてもらい、風呂つきの宿に泊まっているというキリトの紹介でアスナと僕は同じ宿に泊まることにした。

 

 

 ユズルは個室のベットで寝そべりながら考えた。今日のキバオウのβテスターを良く思っていない発言。たまたま、彼が発言したが、同じ様に同調している者は少なからずいる――。彼はそう考えていた。

 

これからの攻略でβテスターの風当たりが厳しくなれば情報屋経由で作られているガイドブックの完成が遅れる。そうなれば、情報不足でレベル上げをしているプレイヤーの死亡率が上昇し、人材を増やせず攻略どころではなくなってしまう。ただでさえ『GMを見つけ出せばクリアとなる』という条件が、色々なやり方で殺し合いを誘発させており、あまりのんびりとはできない状態だった。

 

「打開策としてはどうするべきかねぇ」

 

 考え事をしている時はとにかく集中。隣の部屋から、誰かの絶叫や物が落ちたような大きい音が聞こえたが僕は気にしない。おそらく、発情した人が暴れているだろうと結論付けた。数分間、考えて彼のだした答えは――

 

「分からん!明日に備えて早く寝よ。朝食はどうしよう…」

 

答えは定まらず、布団の暖かさに包まれて眠ることにした。

 

エピソードゼロ:投稿優先の期待値調査

  • 孤独な少女(シリカ編)
  • 人の温かさ(リズベット編)
  • 働くAI(ユイ・ストレア編)
  • 超食べたい(ヒースクリフ編)
  • 受け継がれる幻影(???編)
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