闘神と天空の巫女
「師匠! 師匠!」
ギラギラと太陽が照り付ける砂漠のど真ん中で目を覚ます。師匠と一緒に寝ていたはずだが何処にもいない。唯一信用していた師匠は何処に行ったのだろうか。探しても探しても見つからない。
「師匠! 置いていかないで!」
探しても探しても見つからない。声が枯れるまで師匠を呼び続けた。喉が渇いて痛くても呼び続けた。でも、師匠は見つからない。
「師匠……。何処にいったんだよ……」
師匠を探している内に俺は力尽きてしまった。最愛の師を見つけることは叶わず、このどこまでも広がる無機質な砂漠で死ぬんだ。そう思った時だった。
「おい、坊主どうした?」
大きな手が差し伸べられた。そしてその手をとって…………。
…………懐かしい夢だな。今日はかつてない大仕事に向かうからだろうか。俺が妖精の尻尾に加入する時の事を夢に見てしまった。
「気合入れてくかぁ〜」
顔を洗おうとベッドから立ち上がり、ふと時計を見て気がついた。今からだと多分列車に間に合わない。
「やばいやばいやばい」
急いで顔を洗って昨日準備していたリュックをからって全速力で駅に向かう。俺の魔法を使えば間に合わんこともないが街にも少しばかり被害が出る。妖精の尻尾はタダでさえ街への被害を出し過ぎて上から怒られてるんだ。問題をこれ以上起こす訳にはいかん。
街の時計を見る感じ頑張れば間に合いそうだ。大丈夫、俺はやればできる子!
「ひぃー、ひぃー」
なんとか無事に駅まで着いた。しかし、夏場なのに走るんじゃなかった。全身から汗が吹き出したせいで服が身体に張り付き凄まじく不快だ。
そして、走り過ぎて呼吸音が大変なことになって周囲の注目を集めてしまっている。これから大仕事だってのに締まらねぇなぁ。
荒い呼吸で周囲の注目を引きながら目的地に向かう列車に乗って今回の仕事内容の確認をする。
今回の仕事内容は凄く単純。人里を襲う魔獣の群れの駆除。人物の護衛とか荷物の警護なんかはダルい事になりやすい。それに比べ、駆除や討伐などの依頼は凄く簡単なんだ。魔法でぶっ飛ばすだけだからな。
簡単だけど今回のは規模が大きいんだ。そいつらのせいで小さな村が壊滅状態に陥った事もある程だ。
走ったし腹減ったな。そういや弁当を買って……ないな。焦ってたから。……やばいな。俺は飯を食わねぇと魔法が使えないんだ。こりゃあ、車内販売で弁当を買って補給する必要があるな。
腹を鳴らしながら空腹にひたすら耐えているとお待ちかねの車内販売がやってきた。
「注文をどうぞ」
「かしわ飯弁当を十五個とお水を下さい」
「かしこまりまし…………十五? 食べ切れるんですか?」
「もちろんです」
「返品は受け付けませんよ?」
訝しむ目が俺に突き刺さる。この人美人だから余計ダメージがあるよ。いつもの事だから慣れたけど。仕方ない魔法を使う為なんだ。
「えぇ、大丈夫です」
渋々といった様子で弁当と水をくれる。受け取るとすぐに開いて食べ始める。俺に食レポの能力は無いから表現は出来んが美味いぞ。マスターには何食っても美味いしか言わないから悪食家とか言われてるけど美食家なんだぞ!
なかなかの速さで全部を平らげる。腹減ってたのもあっていつもよりも速く食ってしまったな。俺の食いっぷりを見てあの美人の人も驚いてたぜ。ちょっとしてやったり感がある。
腹ごしらえをしっかり済ませて二十分後くらいで目的の駅に着いた。目的の駅からは一時間くらい歩いた所に依頼者のいる村がある。
駅の周りには小さな町があったが三十分も歩くとすっかり森だ。ある程度ちゃんとした道があるから迷わないけど道がなかったら迷ってたと思う。そのぐらい深い森だった。
そんな森を歩くこと更に三十分、ようやく村についたが村には急ごしらえだと見てとれる大量の頑丈そうな木の柵がある。ただ事でない緊張感を帯びた村の雰囲気を鑑みるに一度襲撃を受けたのだろう。柵の残骸らしきものが見られる。
「あんたがギルドの人か?」
「そうです。俺は妖精の尻尾から来ました」
「依頼を受けてくれてありがとう。早速俺の家まで来てくれ」
村の中でも一際やつれた顔をした男が俺に声を掛けてきた。その男の家に入ると簡素なベッドとテーブルと椅子が二脚しかなかった。必要最低限の物しか無いじゃないか。
「さぁ、座ってくれよ。依頼の確認をしようか」
「はい、失礼します」
「依頼は俺の村を襲った魔獣の群れの駆除だ。紅色の角を持った灰色の狼を見つけたらそいつらを駆除してくれればいい。場所は大抵この村から西に向かった所にいる」
「分かりました」
「駄目そうだったら逃げてくれて構わない。自分の身の安全を第一に考えてくれ」
「ありがとうございます」
優しい依頼主だな。駆除系の依頼を出す人は結構過激な人が多めなんだけど。まぁ、穏やかなことはいいことだ。
西の方角に向かって進んでいく。迷子になってしまいそうだな。しっかりと覚えやすい形の木を覚えたりしとかないと。後、魔獣は知性が高い。背後からの不意打ちだったり、卑怯な手を使ってくるからしっかりと周囲を警戒しながら進もう。
慎重に進んでいると誰かの悲鳴が聞こえる。多分女の子だろう。一人で歩いている所を狙われたか。
悲鳴の方に走って向かう。森を走るのは仕事柄結構得意だが、森が深過ぎて気をつけておかないとこけてしまいそうだ。だからってそんな事で速度を落としたら間に合わないかもしれない。
少し開けた場所には綺麗な藍色の髪の少女が意識を失い倒れていた。その近くには白い羽の生えた気品のある白猫が心配そうに少女に色々と声を掛けていた。あの猫喋れんのかよ。
喋れる羽付き猫というとウチのギルドのハッピーと名付けられた猫を思い出す。奴は青色で気品っちゅうもんが欠けているがな。
「どうした。大丈夫か?」
「見たら分かるでしょ! 大丈夫じゃないわよ!」
怒られてしまった……。確かに少女は見た感じ大丈夫じゃなさそうだ。鋭い刃物で切り裂かれたみたいな傷が全身至る所に走ってる。出血量も酷そうだし大丈夫じゃないだろう。
「すまない」
「すまないじゃないわ! この場所にいると奴らに匂いを嗅ぎ取られちゃう!」
そう言うと藍色の少女を運ぼうとするが白猫の羽が消えた。羽を出す魔力が切れたのだろう。
「白猫、俺が運ぶ」
「その申し出はありがたいけど、私は白猫じゃないわ。シャルルよ」
「シャルル、どこに運べばいい」
「そうね」
シャルルは顎に手を当てて考え出す。気品溢れる感じと相まって凄くさまになるな。ウチの青猫とは大違いだぜ。あいつは口を開いたら魚だからな。
「近くに村とか町はあるかしら?」
「そこに運べばいいか?」
「えぇ、そうしてちょうだい」
少女を背負って走り出す。にしてもおかしいな。あの魔獣は凄まじく狡猾で残虐だ。いくら空を飛べるからって易々と逃がしてくれるかね。
「お前達が襲われたのはどんな奴だったんだ?」
「紅色の角がある灰色の狼よ」
「なら、村に行くのはやめよう」
「どうしてよ! あんた、ウェンディを見捨てる気?!」
「いや、そういう訳じゃない。ただこのまま村に行くと村ごと滅びる」
シャルルは首をかしげている。説明が足りてないんだから当然の反応だよな。
「奴らはお前らをあえて殺さなかったんだ。理由は単純。半殺しにしておけば誰かがお前らの処置をする為にお前らを連れて村や町に戻る。それをつけていって大量の人間を食うためさ」
「という事は私達つけられてるの?」
「あぁ、もう囲まれてる。周り見てみろ」
周りには紅色の角を生やした狼が大量に居た。一目見た感じ聞いてたより群れの規模がでかいな。この群れを駆除するってS級クエストに匹敵するくらいの難易度だぞ。
「ごめんね。ウェンディ。私がついていながら……」
「大丈夫だよ……。私を置いて逃げて……」
少女の意識が戻ったようだ。全身の傷が酷く痛んで辛いだろうに人の事を心配できるのか。なんて並外れた心の優しさだ。
「諦めるな。俺がなんとかしよう」
その自己犠牲の精神は素晴らしいが今は必要ない。俺がどうにかしてみせる。それが恩人への恩返しにきっとなると思うからな。
「ダメです……。逃げてください……」
「俺は魔導士だ。それなりに腕も立つ。出来るだけ守ってみせよう」
魔力を高めて魔獣のヘイトを集める。よしよし、大分俺に集中してくれてるな。
「必ず守るから俺の後ろにいてくれ」
ここまでの大仕事だとは予想もしてなかったがやり甲斐があるじゃないか。
ヒロイン二人目について
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ウェンディだけで十分
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カグラ・ミカヅチ
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シェリア・ブレンディ
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ミネルバ・オーランド
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その他(ブランデッシュなどなんでも)