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魔力同士がぶつかり合い緊張が高まると群れの中の一匹が飛びかかってくる。そいつの首を魔法で強化した肉体で蹴り飛ばす。手応え的にあんまり強くはないみたい。
群れを見た感じ一本角の奴と二本角の奴が半々ってとこで一本角は身体が小さくて感じる魔力も弱いが二本角の奴らは身体も大きく感じる魔力も強めだな。
俺が様子を見ているように狼のみなさんも様子を見ているようだな。さっきから一本角の奴しか飛びかかってこない。
「あんた中々やるじゃない」
「中々やるだろ?」
「見た事ない魔法使ってるみたいだけど」
「そりゃあそうだろうよ。俺は力の滅神魔法を使ってんだ」
「力の滅神魔法?! てことはあんた」
「そうそう。『闘神』とかって巷じゃ呼ばれてるソル・グランドだ」
話してる場合じゃなさそうだ。今度は二本角が飛び出して来やがった。拳を頭に叩きつけ地面に落とす。やっぱり割と強いな。もう少し魔力を使うか。
一本が三頭、二本が二頭も飛びかかってくる。どうやらこちらの事を餌ではなく排除すべき敵だと認識したようだ。
「シャルル! しっかりその子を見ておいてくれ!」
「言われなくてもそうするわよ!」
五頭を一気に回し蹴りで弾き飛ばす。更に弾丸のように数頭飛び出す。ちったぁ出来るじゃねぇか。でも、まだまだ遅い。高めた魔力を腕に纏う。
「闘神の豪腕!」
魔力を込めた腕でアッパーカットを繰り出す。拳は何処からどう見ても空を切ったようにしか見えない。しかし、拳から放たれる強い風圧が飛び出した狼を全て吹き飛ばす。
今ので恐れを成したのか狼達はもう飛び出してこない。引き際も見極めてるのか。やっぱり知性が高いな。奴さんも引くみたいだし、俺もウェンディとシャルルを保護するために引くか。討伐は後回しにしよう。
「群レヲヨクモメチャクチャニシテクレタナ。人間」
村に引き返そうとすると怒りの篭った声がどこからか聞こえる。声を発した方へと顔を向けようとするがそれよりも速く何が弾かれたように飛び出してくる。
間一髪で回避に成功したが、速い。これまでの奴らとは比較にならなさそうだ。
飛び出してきたのはやはり狼。だが、角は三本。色は群れのどいつよりも鮮やかで鮮血のよう。全身の毛は深い闇を見ているような気分になる漆黒。サイズは一本角、二本角の奴らの倍以上、纏う魔力に至っては数倍ある。物凄く禍々しい狼だ。
間違いないコイツだ。コイツが沢山の犠牲者を出す原因になっている。あの群れは報告にある被害を出すには弱すぎた。でもコイツがいるなら納得がいく。
「あいつよ! あいつがウェンディをやったの!」
コイツは人語も解することの出来る知性がある。半殺しにして人間を食う作戦もコイツが考えたと見ていいだろう。
ようやく任務の本番だな。拳を構え直し魔力を四肢に纏う。
奴も身を低くしてこちらを狙っている。体格と魔力から考えるにあの速度は直線だけだろう。回避はそう難しくない。
低く三本角が吠えると俺の足目掛けて周りの狼が来る。飛び上がって躱した所に三本角が飛んでくる。三本角の横っ面を殴って吹き飛ばす。
やはりこれまでの奴らとはまるで違う。速度、パワー、耐久が桁違いだ。その上群れを手足のように扱える。
三本角は吹っ飛ばされた方にある木を蹴ってこちらに戻ってきた。それと同時に群れに指示を出して、群れの中の数頭が俺に飛びかかる。絶妙に避けられないタイミングで飛びかかってきているな。なら、全て弾くしかない。
「闘神の戦斧!」
魔力を込めた渾身の回し蹴りは三本角を吹き飛ばすだけではなく飛びかかってきた狼全てを弾き飛ばした。
この群れのボスとさっきの奴らは戦闘不能。群れを見てもボスがやられて戦意喪失と。
「まだやるか?」
多分他の狼には人語は伝わらないだろうけど魔力を限界まで高めておけば脅しにはなるだろう。
魔物はこうやって脅しておくと知性がなまじあるだけ恐怖が強く染みつく。恐らく奴らは人間が怖くて仕方なくなるはずだ。その証拠に今くぅ〜んと情けない声を上げて森の方へと帰っていく。
「本当に強いのね」
感心したようにシャルルは言う。見た目が頼りなさそうと妖精の尻尾内では有名だからな。あんまり役に立たないと思っていたんだろう。
「割と名のある魔導士だからな」
「全然そうは見えないけどね」
「ははは、そうだよな。そうだよな……」
「…………なんかごめんなさい」
「いや、いいんだ……。頼りなさそうだもんな……」
やっぱりそうかよ。もうちょっと頼れるナイスガイになりてぇなぁ。ギルドの見た目が頼れそうな奴に聞いてもロクなアドバイスは授からなかったし仕方ないはず……。
そんな感じで一人と一匹で仲良く? 話していると村についた。女の子も助けられたし、依頼も達成できたな。丸く収まって良かった良かった。
「戻ったのか?!」
依頼者の男は目を丸くして驚いている。お前も頼りねぇと思ってたのかよ! だから、逃げてもいいって事ね。なるほどね! ひでぇな! おい!
「そんな事よりもこの子を頼む」
内心悲しみでいっぱいだが、そんな様子を一切出さずになるべく冷静に頼れる感じを装って言ってみる。我ながら頼れそうな感じだぜ。
「……声まで頼りないわ」
「酷い怪我だな。こっちに来てくれ」
カッコつけたら、声まで頼りないと言われてしまった……。俺、頼りないのかな? 頼れそうなのは二つ名だけなのかな? 考えてると悲しくなってくるが今は我慢だ。いつか頼れる漢になれるはず。そう信じて依頼者の男が案内してくれた場所に進む。
「ここに寝かせてくれ。これでも医術の心得があるんだ」
ウェンディを指定されたベッドに寝かせると傷の手当てをテキパキと進める。その手際は素晴らしい物で見惚れてしまう程のものだった。
男はあの大量の傷の手当てをほんの数分でしてしまったようだ。なんて頼りになる技術なんだ。……それに見た目も頼りになりそうだ。
「ところで君達はこれからどうするつもりだ?」
「俺は依頼を達成したのでギルドに帰ろうかと思います」
「私はウェンディの回復を待ってから帰るわ」
「ギルドの人はそれでもいいかも知れんが、嬢ちゃんと猫ちゃんはやめといた方がいい」
「猫?! …………まぁ、いいわ。でも、どうして?」
「紅角狼が色んな動物を喰い荒らすせいで森の獣は気が立ってんだ。この村自慢の狩人なんかがいれば二人を無事に送り届けることも出来たんだが……。申し訳ないが件の狼のせいで狩人達はみんな療養中だ」
なるほど。つまり、安全に帰るには狩人達の回復を待つ必要があると。結構時間がかかりそうだな。この二人にそれを待つだけの時間があればいいんだけどな。無ければ少し面倒だけど……。
「私達、早くギルドに帰らないといけないんだけど、どうにかならないの?」
「狩人達は村を守る為に戦って大怪我を負っている。すまないが待ってもらうしか」
「……そうね。ウェンディの回復を待つ必要もあるから仕方ないわね」
「いや、回復を待つ必要は無い。俺が二人を送りましょう」
「いいの?! ギルドの魔導士が依頼以外のことをしてもメリットはないのよ。私達お金払えないし」
「今月はある程度大きな依頼をいくつかこなしてる。このぐらいなんてことないよ」
「あんた、相当人がいいのね」
「そういう訳じゃないが、そう思ってもらえるなら嬉しいよ」
この申し出は好意が九割で街への被害で評判がちょっと悪い妖精の尻尾の評判を少しでも上げようなんて全然考えてないんだからねッ!
でも、今ちょっと考えて気付いたんだけども依頼から相当遅れて帰ってくるって怖い怖いミラさんから怒られるのでは……?
まぁ、なんとかなるでしょ!! ……………………多分。
もしかしてこんな風にカッコつけても先を考えて焦るから頼れるナイスガイになれないのかも知れない。
「…………守れなくてごめんなさい、シャルル」
「いいのよ、ウェンディ」
「すみません。守ってくれてありがとうございます」
「謝る必要はないよ」
「でも、私、滅竜魔導士なのに、全然戦えなくて……」
「もう、ウェンディ泣かないの」
ウェンディは何故かもう泣き出してしまいそうだ。やばいぞ。俺に女の子を泣き止ませるテクニックはない。ギルドにそういうの得意そうな奴いるから聞いとけば良かったぜ。
って、そういう場合じゃねぇよ。今、滅竜魔導士だって言ったよな。なら、聞かなきゃいけないことがある。結構心の傷になってるかも知れないから頼れるおっさんの退室を待って聞こう。
「急なことで申し訳ないんだが君はドラゴンに育てられたのか?」
「そうですが、どうしてそんな質問を?」
「いや、友人に滅竜魔導士がいるんだ。ソイツが滅竜魔導士に会ったら聞いてほしいって言ってたからな。あと一ついいか?」
「あっ、はい。構いませんよ」
「X777年7月7日にそのドラゴンは姿を消していないか?」
「どうしてそのことを?! もしかしてグランディーネが何処にいるのか知ってるんですか?!」
弱々しげなウェンディがありえないほど強い口調になった。あいつや俺と同じく心に大きなしこりが残ってるか。
「すまない。何処にいるかは知らないんだ。不躾な質問をしてしまい申し訳ない」
「いえ、私も熱くなってしまって……」
不味い質問をしてしまったみたいだ。凄まじく気まずい沈黙が三人を包む。正確には二人と一匹だけど……ってそんな事どうでもいいわ。なんとかしてこの沈黙をどうにかしないと流石に居心地が悪すぎる。
「あの、あなたを育ててくれたドラゴンはどんなドラゴンだったんですか?」
どんなドラゴンか。師匠はれっきとした純正の人間なんだけどな。ドラゴン見たいなもんだからいいか。
「俺の師匠はドラゴンじゃない。人間だよ」
「ご、ごめんなさい……。つい、早とちりしちゃって……」
「でも、ドラゴンみたいに強かった。山を砕いて、海を割る。そんな感じだった」
「や、山を? 一体どんな魔法を使うんですか?」
「滅神魔法ってのを使う。細かくいうと力の滅神魔法だな」
「滅神魔法ってことは神様なんですか?!」
師匠の話をするとウェンディは目を見開いて俺の顔を見つめている。さっきからリアクションが物凄く可愛いな。なんか、こう、言い表し辛いけど凄く庇護欲がかき立てられるというか、なんというか。
いやいや、そんな事を考えんなよ。これで新しい扉を開いてしまったらギルド内で頼りないだけじゃなくロリコンもおまけで追加されちゃう。それだけは、それだけは回避しなければ。
「う〜ん……。神様じゃない人間……………………だと思う」
あの師匠、神様かどうか聞かれると神様である事を否定しづらいんだよな。化物じみた強さに加えて、無限にも思えるほどの魔力、ありとあらゆる魔法に精通する知識…………。考えれば考えるほど神様っぽいよな。
「とっても凄い人なんですね」
「あぁ。ところで傷は大丈夫なの? 結構深めだったと思うんだけど」
「滅竜魔法は竜の体質に体を変える魔法なんです。だから魔力がある限りは普通の人よりも回復が速いし、身体も丈夫なんですよ」
「なるほど」
通りで我がギルドが誇る滅竜魔導士はどんなにこっぴどくやられてもすぐに元気ピンピンになるのか。謎の復活の早さの理由は滅竜魔法によるものだったとは。ならば、奴の酷すぎる乗り物酔いもそのせいだったりするのか。
「もしかして乗り物酔いとかする?」
「しませんけど?」
「そうかそうか。なるほどね。乗り物酔いは滅竜魔法と関係ないのね……。これはいい事を聞いた」
乗り物酔いは滅竜魔法の副作用ではなかったらしい。もしかしたら奴は街を依頼の度に破壊したせいで乗り物の神様に嫌われて乗り物酔いの呪いを何重にもかけられたのかもな。
「なんだか悪い顔になってますよ……」
「ごめんごめん。友達に面白い話が出来ると思ってな」
「あんた、何を話すつもりなのよ」
「乗り物酔いの下りだよ」
「そんなもの話して何になるのよ」
「いいお灸になるのさ」
「不思議な話ね」
我らの滅竜魔導士は乗り物酔いを滅竜魔法の副作用だと最近言い張ってるからな。そのせいであいつの相方の青猫は困ってんだ。これを教えてやりゃあ、少しは青猫のストレス軽減にも繋がるだろうよ。それにリアクションと新たな言い訳もきっと面白いだろう。
「すまんね。付き合わせてしまった」
「いえいえ、私は大丈夫ですよ」
「俺はここいらで失礼するよ。滅竜魔導士であっても傷を治すには十分な休養が欠かせない。ゆっくり眠るといい」
「ありがとうございます」
「シャルルは一緒にいるのかい?」
「当然よ」
リュックを背負って部屋から出ようとすると後ろから声をかけられる。
「あ、あの名前を聞いてませんでした。お名前を教えてもらってもいいですか?」
すっかり名乗るのを忘れてしまっていたようだ。滅竜魔導士がいるということでそちらにばかり興味を持ってしまった。
「俺はソル。ソル・グランドって言うんだ」
依頼者の大きい家の外に出ると村長さんやら色々な人がわざわざ俺のところまでお礼を言いに来てくれた。その内の一人がウェンディを送るまでの間家に泊めてくれるらしい。野宿をしようと思っていたからありがたい申し出だ。
ヒロイン二人目について
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ウェンディだけで十分
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カグラ・ミカヅチ
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シェリア・ブレンディ
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ミネルバ・オーランド
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その他(ブランデッシュなどなんでも)