闘神は踊る   作:カサミノ

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ものすごくピザが食べたいです。


闘神と氷漬けの怪物

「見れば見るほど不気味だね」

「早く閉めなさいよ。あの光を浴びすぎると私達も悪魔になるって村長も言ってたでしょ」

「あい……」

 

 ハッピーと一緒に宿泊用の家から紫の月を眺めていた。しばらく見つめていると魔物の瞳のようにさえ感じられ、ほんの少しグロッキーだ。

 村長曰くこの島の呪いを解くには月を壊さなければならないらしい。はっきり言って無理だ。

 

「それにしても参ったなぁ」

「流石に月を壊せってのはな……」

 

 グレイはともかくナツが弱気になってるのは初めて見た。非常に珍しい光景だな。

 

「一体、何発殴れば壊れるのか見当もつかねぇ」

「壊す気かよ?!」

 

 前言撤回、全然やる気でした。静かなのは弱気なんじゃなくて殴る回数を考えてたのかよ。本当にナツらしいぜ。

 

「何考えてんだよ……」

「そうね、月を壊すのはどんな魔導士にも不可能だと思うわ」

「でも、月を壊せってのが依頼だぞ。依頼をこなさなきゃ妖精の尻尾の名が廃る」

「出来ねぇもんは出来ねぇんだよ。第一どうやって月まで行く気だよ?」

「ハッピー」

「えっ?! 流石に無理……」

 

 月を地上から壊すのはどんな魔導士にも不可能。月まで行ったとしてもあんな巨大な塊を破壊できる魔導士はいない。その上、月まで行くことすら不可能だ。ハッピーやアキレアの(エーラ)で飛んだとしても宇宙に行く前に身体が持たなくなるだろう。更に耐えたとしても魔力が必ず切れる。

 

「月を壊せっていうけど、もっと色々調べれば他に呪いを解く方法があるはずよ」

 

 確かにその通りだ。月の魔力が呪いを掛けているのであれば世界中で同じような呪いにかかる者がいるだろうが悪魔の呪いの話なんて聞いたこともない。きっと、何か訳があって呪いがかけられているのだろう。

 考えられる可能性を探っていると誰かの靴下が頭に引っ掛かった。酷い脱ぎ癖があるグレイの物だろう。

 

「難破して一日歩き続けて流石に疲れたぜ〜」

「何故、脱ぐ?」

「慣れろ。あれがグレイだ」

「嫌よ! ってか、ソルは何で慣れてんの?」

「よく一緒に仕事に行くからな。お前もあと三ヶ月もすれば慣れる」

「絶対、嫌!」

 

 嫌だと俺も最初は思ったさ。でも、気が付いたら慣れてるもんだよなぁ。人間の適応力って末恐ろしい! 

 

「よし、それなら明日は探検だ! 今日はもう寝る!」

「あいさー!!」

「考えるのは明日だ」

「そうね、私も眠いし寝よ」

 

 みんな、疲れてるみたいだな。俺も歩きづらい道を長時間歩いて疲れてるし寝よう。

 

「さぁ、ご主人様一緒に寝ましょう!」

「アキレアは変身魔法を解け、一緒に寝たら完全に犯罪の匂いがするだろう?」

「え〜……」

 

 ミストガン風の格好ではなく、栗毛美少女状態のアキレアは頬を膨らませ、不満を表すがすぐに変身魔法を解いて不貞寝する。俺の布団の中で。一緒に寝ないとしばらくぐずるからな。大人しく寝よう。

 明かりを消して数分後にはナツとグレイが眠りに落ちた。その事を証明するように獣のようないびきとやたら煩い寝息が部屋に響く。いびきはナツのもので寝息がグレイの物だろう。

 

「って、獣と変態の間でどうやって寝ろっていうのよ!」

「慣れろ」

「絶対、いやよ!」

「…………」

「無言で親指を立てないで!」

 

 ルーシィが二人の騒音に堪らず飛び起きる。まぁ、普通はそうなるわな。最初、ナツやグレイと組んだときは俺もそうだったさ。でも、慣れるんだ。どんなに嫌でもな。

 

 そして、翌朝になる。ルーシィはもう既に目を覚まして探索の準備を始めているようだ。

 

「早いな」

「全く眠れなかったのよ。この二人のせいでね」

 

 とても怒っていらっしゃる。顔が東の国でいうところの般若のようになっている。ハッピーがルーシィは怖いと教えてくれたのだが何となく理解してしまった。

 

「それよりあんた、それどうにかしなさいよ。犯罪の香りがするわよ」

「?」

 

 急にルーシィは俺の胸の辺りを指差す。胸の辺りを見るとアキレアがくっついている。あれだけ解けと言った変身魔法を使った状態で。

 あぁ、隙を見せるんじゃなかった……。

 アキレアを無理矢理起こし、準備を始めさせる。何がダメだったのかとむくれている。別に猫状態でくっつくのは構わんよ。ダメなのはウェンディよりも小さい年頃の子になってくっつく事なんだよ。

 

「ウェンディ、ウェンディって言って落ち込んでるから代わりになってあげようかと」

「やめてよ! いらない優しさ! 余計に悲しくなるだろ!」

「妹さん、ウェンディって言うのね」

 

 そういえば、ナツたちにもウェンディの事はあまり詳しく話していなかったな。にしてもやけに兄妹の話題に食いつくな。

 

「妹って言っても義理なんだがな」

「でも、大切な人なんでしょ?」

「あぁ、かけがえの無い大切な妹だ」

「いいなぁ〜。私、ずっと一人だったからさ。そう言うのが羨ましくて」

「今は違うだろ?」

「えっ?」

「ギルドって言う家族が出来たじゃねぇか」

「……そうね!」

 

 …………一見、元気そうだけど悲しいって顔をしてるな。特に『ずっと一人だった』と言った時。彼女も辛いことがいっぱいあったんだろう。人には言えないような。その苦しみが妖精の尻尾で少しでも癒えることを願う。

 

「まぁ、破門されそうですがね……」

「それを言うな、アキレア……」

 

「さぁ、それじゃあ出発するわよ!」

「あい……」

「あい……」

「あい……」

 

 それから大体三十分後にナツ達は叩き起こされ、探検に駆り出されることになった。寝起きということもあってか三人ともテンションの低いハッピーみたいになった。本物のハッピーも一人にカウントされているのだが。

 ブーたれながらも三人は森の奥に進んでいく。ルーシィは時計座の星霊であるホロロギウムを呼び出してその中に入っている。

 

「ところでよ。星霊の使い方合ってんのか?」

「だって実体が無いものって怖いじゃない……と申しております」

「心配すんな、呪いなんて炎で焼いてやる」

「恐れるこたぁねぇよ。呪いも凍らしてやる」

「やっぱ、あんた達馬鹿ね……と申しております」

 

 ルーシィがホロロギウムに入っている時は会話はホロロギウムが代行して行うようだ。中々にシュールな光景だな。

 急にアキレアが杖を構え、全員に注意を呼びかける。彼女はミストガン直伝の珍しい魔法を使える。そのうちの一つに索敵系の魔法があったはず。ということは敵意を持った者がいる。

 

「前です!」

 

 前方には馬鹿みたいに大きい緑色のネズミがいた。身に纏うメイド服が絶妙に似合っている。可愛い訳ではないのだが別に拒絶感もない感じだ。

 

「なんだコイツ!」

「ね、ネズミ!? っていうか何であんたも中にいるのよ! あい! と申しております」

「メイド服の似合うネズミ……腹立たしいですね! 私だって似合いますとも!」

「張り合うなよ! そしてアイツ美少女なのか?!」

 

 全員が突如現れた巨大ネズミに驚いている。アキレアだけはメイド服が似合うというところで張り合っているが。

 ネズミは俺たちが驚いている間に息を吹き付けてきた。

 

「く、くさい!」

 

 なんて匂いだ! 腐臭に近い感じだ。この酷い匂いの中じゃナツは戦えないだろう。まぁ、ナツだけではなく俺たちも戦えそうにないし、ルーシィの星霊も臭すぎて帰ったみたいだ。

 ネズミから逃げるが執拗に追ってきて息を吹きかけ続ける。嫌がっている俺たちを見て喜んでいるようだ。

 

「こうなったら、アイスメイク・(フロア)!」

 

 グレイがネズミの足元を凍らせて滑らせた。そのおかげでネズミはこけて行動不能になる。

 ルーシィは遺跡を見つけ、今のうちに遺跡に入ろうと提案するがナツとグレイとアキレアは話を聞くことなくネズミをボコボコにしていた。数分後に気が済んだのかルーシィに従い、月の紋章を掲げる遺跡に入っていった。

 遺跡内部は風化が進んでおり柱や床はボロボロでいつ崩れてもおかしくなさそうだった。注意して行動しなければ床が抜けるかもな。

 

「これ床とか大丈夫なのか?」

「おい! ば」

 

 制止の声を出すよりも速くナツが踏んで確かめていた床が抜ける。重力に従って勢い良く地下に落ちていく。

 相当な高さから落ちたみたいだが全員無事だ。この高さではハッピーとアキレアの力でも全員を上に上げるのは厳しいだろう。

 

「遺跡の地下みたいだな」

「秘密の洞窟だーっ! せっかくだし、探検しよーぜ!」

「おい、また後先考えずに暴れるんじゃねぇーよ!」

 

 ナツが嬉しそうに奥の横道に走っていく。また床ぶち抜いて地下の地下とかに行かないことを願う……。

 

「な、なんだ?!」

 

 ナツが奥の方で驚愕の声を上げる。続いて俺を含めた全員も同じように驚愕の声を上げた。

 横道の奥には氷塊があった。ただの氷塊ではない。中には怪物が閉じ込められていた。人型だが膝は逆関節、身体中にトゲが生えていて爬虫類のような尻尾を持っている。おまけに大きく開かれた口には大量の牙が生えている。

 

「デリオラ?!」

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