傭兵のヒーローアカデミア   作:dukemon

10 / 17
第10話

1、

 

時は過ぎ、体育祭(たいいくさい)の前日に迎えた。

タウラスは教師の仕事を果たしている。

 

「……ん、まずまずだな」

 

タウラスは緑谷の成長を見て、そう評した。

全身で使うワンフォーオールの出力は5パーセントに維持することができた。

これで、副作用なしで20パーセントの出力が使える。

 

「あ…ありがとう……ござい……ます……」

 

息が上がっている緑谷は感謝の言葉を伝えた。

彼はついさっき、タウラスが作ったロボットと組手をしていた。

 

「まあ、これからはもっとも困難な課題だ。あんたは自分の戦闘スタイルを考えなければならない。普通なら師匠の戦い方を参考して作るが、あんたとオールマイトの体格差が大きいから参考にもならないぜ。方向を決めたら、オレとオールマイトはアドバイスができるが、その前にあんた自身が考えなければならない。今回の指導はここまでだ」

 

はっとした緑谷はぶつぶつと何かを言い始めたが、タウラスはもうそこから離れた。

次の仕事が待っている。

 

 

障害物(しょうがいぶつ)制作(せいさく)はどうだった?」

 

「あ、タウラス先生」

 

タウラスはサポート科のビルに行き、先生たちに尋ねた。

自分が供給した技術だから、使い方を聞きたいのは当然だ。

 

「ばっちりだ」

 

「そのロボットの拡張性(かくちょうせい)が高すぎるから、どのようなサポートアイテムも装着できます。あと、OSも素晴らしい出来栄えですよ。おかげで、生徒たちだけでなく、私たち教師も色々な新しい発想が生まれてきた。いやはや、恐れ入ります」

 

先生たちの反応はよいから、安心した。

順調でない場合は、オレも障害物の作成に手伝わなければならないから。

 

「納期に間に合ってよかった……よくよく考えたら、あれはかなり急な提案かな。前の職場はかなり厳しいところだから、一般的な考えと少し離れたようだ」

 

ちなみに、キャラバンの技術者たちは一晩でフルアーマーを作り出したことがある。

まあ、あれはいくつかの強力な個性が協力し合って為せた離れ業だから、キャラバン以外では再現できない。

 

「いいえ、サポートアイテムの制作に関わった私から見れば、二週はそれほど厳しい納期ではありませんよ。生徒たちには厳しいと思うが、これもいい経験になるはずです」

 

「うちの生徒が三日前にテストを済ましたから、製作期間(せいさくきかん)について心配ないと思う」

 

「そうか」

 

少し意見を交換してから、タウラスは明日の準備のために帰宅した。

 

次の日、後ほど最大(さいだい)放送事故(ほうそうじこ)と呼ばれる雄英体育祭が幕を開いた。

 

2、

 

「なぜこうなった……」

 

眼前の悲劇(ひげき)は完全に自分のせいだと理解している。

 

「………これはひどい。HAHAHA」

 

オールマイトは乾いた笑いしかできなかった。

 

『………』『………』

 

プレゼントマイクとイレーザーヘッドは絶句した。

 

「えーと、タウラス先生。正直に申し上げると、わたくしはこの体育祭の難易度がいささか高すぎると思いますが」

 

そして、オレの弟子、イギリスのトップヒーロー・プリンセスは発言した。

 

彼女の目の前にあるのは、出発点から踏み出せない生徒たちと、彼らを出発点に追い込んだ色とりどりのロボットたちだ。

 

 

事の始まりは開幕式の前だった。

観客がもう観客席に入って、教師たちは周りの警戒か、あるいはVIPの客人たちに雄英体育祭の紹介をしている。

 

タウラスに分けられた仕事は観客席の警備だったが……意外な人物を見つかった。

 

《ねえ、父ちゃん……あれ、プリンセスさんじゃないのか?》

 

「はあ!?………うわ、本当だ」

 

大気操作の個性で隠形したオルフェは知り合いの変装を見抜いた。

あちらも目を見張って、こちらを見つめている。

 

「タウラス先生はまさかここの警備(けいび)をしていますとは。雄英の警戒体制は恐るべきものですね」

 

「オレを買いかぶりすぎる。ファントムほどの相手が現れたら、さすがに観客全員を無傷に済ませることはできないだろ」

 

「彼女ほどの実力者はそうそういませんよ。わたくしから見れば、先日の襲撃で教師と生徒が全員無傷で帰れることについて偉業と言っても過言ではありません」

 

イギリスの有力(ゆうりょく)議員(ぎいん)は数名、二年前にファントムに暗殺(あんさつ)された。

彼女と直接交戦したプリンセスは伝説の何でも屋の恐ろしさを身をもって知ることになった。

 

「彼女が受けた依頼は護衛だから、やりやすかった。依頼はオールマイトの殺害なら、さすがに犠牲者が出ることになっただろ」

 

その仕事の場合はたぶん色々な追加料金があるけど。

少し計算してみよう。

 

「リカバリーガールと教師二人の殺害……オレの足止めと生徒数名の殺害……二十億ドルぐらいかな」

 

「……気が遠くなるほどの金額ですよね」

 

「ちなみに、彼女は後払いの契約ばかりしたから、付け入る隙がある。依頼人をなんとかすればいい。オールマイトもそうした……あ、一緒にVIP席に行かないか?知り合いに会えてオールマイトも嬉しいだろ」

 

彼女は頷いた。

 

「そうしよう」

 

そして、彼女は仮装を脱ぎ、ヒーロースーツを表した。

周りの観客が一瞬凍てついて、そして大歓声を上げ、サインを求めてくる。

数十分後、プリンセスは支持者を捌いてから、VIP席に着いた。

 

3、

 

プリンセス、オールマイトと根津校長(ねづこうちょう)は話に花を咲かせた。

 

「なるほど、うちのミリオくんのおかげで、あなた方は来日しましたのか」

 

「ええ、ルミリオンは素晴らしい逸材ですよ。わたくしの社員たちも彼のことを褒めていますわ。入社の誘いを断れたことに残念です。話によると、先生であるナイトアイ先輩のところに行くつもりだそうです。だから、今回は雄英体育祭を観戦して、日本のヒーローの卵を見定めようとします」

 

「私は直接にミリオ少年と会えなかったが、彼の活躍を聞き及んだことがある。海外に行くと聞いた時は少し驚いた。ちなみに、彼はイギリスでの生活に慣れたのか?」

 

「最初は少し不慣れなところがあるけど、今は大丈夫そうですよ。現在は週に三度のパトロールをしながら、透過の新しい使い方を探していますわ。うちにはそれに似ている個性を持っているヒーローが所属しているから、彼の助言(じょげん)を得て何かを閃いたようです」

 

その時、選手宣誓(せんしゅせんせい)が始まった。

爆豪の宣戦について、威勢がいいなと思った。

プリンセスも苦笑をした。

 

そして、プレゼントマイクの声と共に、生徒たちは一斉に駆け出した。

 

まず手を出したのは轟だ。

氷の個性で、周りを凍り付いた。

 

それに対し、緑谷はワンフォーオールを発動し、難なく避けた。

今の彼は5パーセントの力を長時間維持することができる。

反射神経、思考速度や五感などが著しく上げた。

 

今のところ、先頭は轟、爆豪と緑谷だ。

プリンセスも賞賛(しょうさん)の目で、選手たちを観察している

 

「さすがオールマイト先輩の母校です。才能あふれる若人がたくさんいますわ……けど、ルミリオンのように、わたくしが自らスカントしたい者はいないようです」

 

「ミリオくんは三年生の中でも最も優秀な生徒ですから」

 

話している間、先頭陣は第一関門についた。

設置したロボットが起動した。

 

須臾の間、先頭の三人は色とりどりのロボットたちに殴り飛ばされた。

 

緑谷は即座に衝撃波(しょうげきは)を出して、空中で体勢を取り直しながら反撃した。

しかし、別のロボットが射出したゴム弾に命中され、動きは一瞬止まった。

反撃のタイミングが逸らされた緑谷は追撃を躱す為に、後退を余儀なくされた。

 

爆豪も爆発で体勢を取り直そうとしたが、ロボットたちの一斉射撃を受けた。

爆発で迎撃したから無傷だったが、進路は封じられた。

 

轟は氷で足場を作り、上空からロボットたちを凍り付こうとしたが、ロボットたちはいきなり空を飛んだ。

複雑な軌道を描きながら、ロボットたちは轟が作った氷の足場を破壊し始めた。

空中戦をするため、轟は足場を確保しながら戦わなければならない。

それは攻撃の手を緩んだ結果と繋がり、轟の戦いは膠着状態(こうちゃくじょうたい)となった。

 

追いついた選手の数に応じて、ロボットの性能が上がる。

それに、統制が取れたロボットたちと連携が取れないヒーローの卵は差が大きい。

戦線はだんだんに後退し、選手たちは出発点まで退いた。

 

 

そして、今の状況となった。

 

「タウラス……あれはキャラバンの訓練用ロボットだろ?」

 

「ええ、オレが設計図(せっけいず)とOSをサポート科の教師にあげた……たぶん団体戦の設定をオンにしただろ……」

 

「先生。団体戦の設定はたしか、AIの性能は相手の数と共に上昇するものですよね」

 

プリンセスはそれを利用したことがあるから、性能を把握している。

 

「たぶんサポート科は小人数でテストしたから、性能の上昇具合に気づいていなかっただろ。幸い、安全装置が働いているようで、生徒たちの安全について心配は必要ない」

 

「……タウラス先生。あれを止める方法があるのですか?」

 

タウラスは手持ちの端末を操作し、ロボットたちの設定をいじった。

団体戦の設定をオフにする。

 

団体戦(だんたいせん)の設定をオフにした。これで突破できる生徒が出てくるだろ……あ、轟が突破した」

 

「緑谷少年、爆豪少年も突破した」

 

「モード切り替えの隙を見抜いたでしょう。見事です」

 

設定を調整した時は一瞬の隙があるから、それが狙われているでしょう。

 

「校長先生。これぐらいはどう?」

 

「生徒にとって厳しい戦いになるけど、悪くはありませんね。サポート科の武器をスポンサー企業見せるいい機会ですし」

 

AIの性能は現在、先頭三人を殴り飛ばした時と同じだ。

難しいが、先のような無理ゲーではない。

頑張ればなんとかなるだろと、タウラスはそう思って、9割以上の生徒が出発点から踏み出せない光景を見下ろしている。

 




プリンセスは昔、自分の部下たちとともに、キャラバンの団体戦訓練ロボットたちと戦い、見事に勝利した。
『統率に取れた部隊なら、勝つことは難しくはありませんが。取れない部隊は地獄を見るでしょう………オールマイト先輩なら一人で戦うほうが効率がいいかもしれません』というのがプリンセスの感想です。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。