傭兵のヒーローアカデミア   作:dukemon

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第11話

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……しかし、動きはないな。

 

タウラスはオールフォーワンの襲撃を予想した。

先日、ドクターを逮捕した後、彼の研究室(けんきゅうしつ)から情報を得た。

裏切者(うらぎりもの)とヴィランの協力者のリスト、脳無(のうむ)の工場の位置などもあるから、ここ数日警察とヒーローたちはかなり忙しい。

この場合、オールフォーワンは動かないと逆転できない。

 

オールフォーワンが作ったヴィラン連合という集団はいわゆるテロリスト組織だ。

テロリスト組織は何種類あるが、ヴィラン連合の場合はオールフォーワンをリーダーにして、彼の夢に協力するというものだ

ゆえに、彼を倒すと烏合(うごう)(しゅう)となる。

後継者がいる場合は別だが、今はないと見える。

 

最近、ヴィラン連合が発動した作戦はオレに破った。

最初の一歩で(つまず)いたあの組織の次の狙いは色々な可能性があるが、可能性が最も高いのは雄英体育祭だ。

 

……こちらの戦力が高すぎるから、身を隠した?

確かに、総合的な戦力なら、彼の勢力はこちらには及ばないが、そもそもテロリストが対抗するのは自分より遥かに強い政府だ。

ゲリラ戦、人肉爆弾や大量破壊個性など、色々ある。

 

 

 

 

 

 

ビィィィィィィ、と甲高(かんだか)い警告音に、タウラスの思考は中断された。

プリンセスとオールマイトが持っている端末も同じ音が出した。

スクリーンの文字を見ると、三人は凍り付いた。

 

≪オメガ警報発信(けいほうはっしん)、グラヴィティの反応あり。プリンセス、オールマイト、タウラス三人は各々の判断によって、それを対処(たいしょ)せよ≫

 

「やあ、久しぶりだね。タウラス、オールマイト、ここからはリベンジマッチだ!ハハ!ハハハハ!」

 

一人の少年は体育祭の会場上方に滞空(たいくう)している。

その目には無邪気(むじゃき)な悪意が潜んでいる。

 

 

「これは一体どういうことだ!」

 

「なぜ私たちは会場外にいる!!」

 

ゴールにたどり着いた直前に、緑谷と他の選手たちは全会場の観客たちと一緒に会場の外に瞬間移動(しゅんかんいどう)した。

 

会場に来ている人の中で、これほどの空間個性を持っているものはただ一人、イギリスのトップヒーロー『プリンセス』だけだ。

 

その答えを思いついた途端に、緑谷はさっき全員がいた会場が巨大なブラックホールに飲み込まれるのを見た。

そして、一筋(ひとすじ)閃光(せんこう)がそれを切り裂くのを見届けた。

 

 

「神威抜刀・波砕(なみくだ)き!」

 

暴虐(ぼうぎゃく)を振るい、あらゆるものを吸い込む宇宙現象は断ち切られて、霧散(むさん)した。

もともと、この技はエネルギー、自然現象や不定形な存在などを切ることに特化している。

 

それでも、会場の七割は崩壊した。

 

「流石だね、タウラス。波砕(なみくだ)きの精度はまた上がっているようだ。それに対し、オールマイトは弱くなっているね。普段なら、僕の技が破られた直後に追撃してくるだろう」

 

「くっ…」

 

オールマイトは悔しそうに歯を食いしばった。

彼の言うとおりだ、オレたちの連携(れんけい)を知る相手では、今のオールマイトが全盛期よりはるかに弱っているのを見抜けるであろう。

 

「……誰がお前を呼んできた?」

 

グラヴィティの主な活動範囲は南極戦線(なんきょくせんせん)だ。

彼は戦闘狂(バトルジャンキー)で、毎日そこにいる兵士を殺して回った。

日本のような、安定で平和な国に興味はないはずだ。

 

「貴様たちも知っている人だよ。タウラスとオールマイトのコンビが復活したと聞いてね。だからリベンジマッチに来た」

 

オールフォーワンは狂人(きょうじん)かよ。

確かに、戦力を足す意味じゃ、グラヴィティは最高だ。

なにせ、全盛期のオールマイトとオレ二人がかりで、ようやく周辺被害(しゅうへんひがい)最小限(さいしょうげん)にして撃退した化け物だ。

それでも、都市一つは余波(よは)で吹き飛ばされた。

 

今の状況を理解しているオールマイトは顔を蒼褪(あおざ)めた。

オールマイトが欠けた状態で、そいつと戦うとなら、日本はやばい。

 

「それにしても、プリンセスは大したものだね。僕にとって、観客や選手たちはどうでもいい存在だけど、まさか、あの一瞬で全員を外に転移したとは。いやはや、イギリストップヒーローの名は伊達じゃないね」

 

「褒めていただき、感謝します」

 

「あと、僕を転移したいなら、無駄なんだよ。重力で僕の周りの空間を歪んでおいたから」

 

プリンセスはグラヴィティを見つめて、囁いた。

 

「わたくしはサポートします。お二人はできるだけ早くそのオメガを倒してください」

 

オレとオールマイトは頷いた。

そこで、オレは今も隠形(おんぎょう)しているオルフェにある信号を発した。

 

2、

 

オメガ。

それは今の人類文明(じんるいぶんめい)を終わらせるほどの個性を持っている存在。

オメガ認定と戦闘能力(せんとうのうりょく)は直結しない。

戦闘力皆無だが、危険なオメガもある。

 

しかし、オメガで、馬鹿(ばか)げた(つよ)さを持つ人もいる。

眼前のグラヴィティはその一人だ。

 

「これでも喰らえ!」

 

オレは水の刃を彼に目かけて投げた。

音速の壁を突破したそれは、重力のシールドに防ぎられて、明後日の方向に弾きられた。

 

「オールマイト!」

 

オールマイトは転移(てんい)されて、その刃を受け取った。

水の刃はすぐにクローブになって、オールマイトの手を覆った。

間髪(かんぱつ)いれず、プリンセスはオールマイトを再び転送して、グラヴィティに肉薄させた。

しかし。

 

「惜しい。全盛期(ぜんせいき)の貴様は僕に傷を負わせることもできただろうが」

 

見事な体術(たいじゅつ)に蹴り飛ばされた。

幸い、オールマイトは受け身を取ったから、傷はない。

 

反応速度と力は足らない。

反応速度があれば、相手の体術を捌き、カウンターを打ち込めるだろう。

力があれば、グラヴィティの蹴りに動けずに反撃しただろう。

 

「……体術を学んだのか?」

 

「ええ、前のように接近戦で易々倒せると思うなよ」

 

前の戦いでは、彼はそういう技術はない。

欠点を補い、彼はさらなる進化を辿った。

 

「まあ、僕も貴様らのような接近戦の化け物と近距離戦したくはない。これはあくまで保険だ」

 

そう言って、グラヴィティは重力波を放ち、広域攻撃(こういきこうげき)を行った。

会場はまるで大怪獣に何度も踏み込まれたようで、崩壊し、跡形もなく消え去った。

 

プリンセスは全員を集まり、オレは波砕(なみくだ)きで襲ってきた攻撃を切り捨てた。

その時、オレは隠形しているオルフェに囁いた。

 

「まだなのか?」

 

「あと十分」

 

「全員、十分持ちこたえろ!」

 

厳しい持久戦の始まりだ。

 

3、

 

雄英体育祭の観客たちは事件の後、同じことを言った。

 

「そこから生還したことに勝る奇跡はない」

 

 

持久戦と言っても、守勢(しゅせい)になるとすぐに潰されるから、積極的に攻めるしかない。

それをもたらす結果は一つだけ。

 

「神威抜刀・断空(だんくう)

 

「ハハハ、すごい、すごいな。タウラス!また新しい技を作ったのか!」

 

「ブラックホールを八つ使っての新技・重力牢獄(グラヴィティ・プリズン)を事も無げに繰り出したお前だけに言われたくはない!下手すると、地球の自転を止めるかもしれないものだぞ」

 

グラヴィティは戦闘中に成長していく。

彼の進化に対応し、こちらもさらなる飛躍(ひやく)を遂げるしかない。

当然、被害範囲は拡大していった。

現に雄英敷地(ゆうえいしきち)の9割は塵に化した。

下手するといくつの都市より広い雄英でもわずか数分で壊滅状態となったことから、戦いの激しさを物語っている。

 

プリンセスはそれを知ったから、サポート役を引き受けた。

彼女は空間転移個性で、できるだけ戦いの余波を防いだ。

また、周りの人間の避難もやってくれた。

 

「しかし、おかしいな。貴様はなんで(コスモス)を使わないのか?」

 

「被害を拡大してどうする。オレが使うと広域攻撃にしかならない」

 

「そうか、ならば死ぬがいい」

 

「お前はなぜ自分が勝勢(しょうせい)だと思っているのか?」

 

オレは懐から一つのボトルを取り出した。

 

「お、海水か……で、何を使う?飲んで自分を強化するか?装備して、最強の鎧と刀にするか?それでも、仲間たちを強化するのか?」

 

険しい顔で、グラヴィティはかなり警戒している。

残念だが、そのすべては外れだ。

 

「どれも違う。ついさっき、思いついた新技(しんわざ)だ………」

 

ボトルの中に、海水は激しく光を放っている。

一瞬で超高温に加熱したから。

海水はそういう温度にならないはずだが、個性のお陰でやり遂げた。

 

「…………待て!タウラス。何をしている!」

 

「フュージョン!!」

 

この瞬間、ボトルの中に、重水素(デューテリウム)三重水素(トリチウム)が融合し、熱核反応を引き起こした。

 

「消し飛べ。オーシャンリアクター!」

 

制御された核の炎がグラヴィティに襲いかかる。

重力の魔人は素早くブラックホールを展開し、それを飲み込もうとしたが……

 

「ハハハ!面白いよ!なんだこの出力、恒星(こうせい)でさえ余裕で消し飛ぶじゃないのか!」

 

今の状況は完全に拮抗状態(きっこうじょうたい)だ。

ブラックホールは完全にエネルギーの奔流(ほんりゅう)を飲み込んでいるが、破裂そうになる。

 

ただの核融合なら、グラヴィティは簡単に処理して、タウラスに反撃しただろう。

問題は、それは《海洋王(オケアノス)》が海水で作り上げた現象だ。

威力は個性の増幅で数千倍、数万倍に上がっている。

もっとも恐ろしいのは、タウラスが完全にそれを制御している。

高熱、放射線など、あらゆる破壊はすべてグラヴィティに向かっている。

周りに対する影響は一切ない。

ゆえに無駄はない。その恐るべき光はただ一人を殺すために放たれた。

 

その結果は……

 

 

「……どうやら、僕の勝ちだよね。いや、さすがに冷や汗がした。もしここは海上なら、あの一撃で蒸発(じょうはつ)したよ。で、次の一手はあるのか?」

 

右腕を失ったグラヴィティは下の敵たちを俯瞰(ふかん)している。

力が使い果て倒れ込んだタウラス。

左足が切断されたオールマイト。

まだ立っているのはプリンセスだけだが、彼女だけではグラヴィティを倒せない。

 

「熱いバトルだったよ」

 

辛うじて、オーシャンリアクターを防ぎ切ったグラヴィティだったが、その直後に目にしたのはオールマイトの拳だった。

プリンセスとオールマイトのコンビが繰り出した直近距離(ちょっきんきょり)からの攻撃を、消耗したグラヴィティは避けるも防ぐもできなかった。

できることはただ、右腕でオールマイトの攻撃を受けると同時に、共倒れを覚悟してオールマイトの左足にブラックホールを投げただけだ。

 

幸運なのは、オールマイトの弱体化(じゃくたいか)が想定以上だ。

でなければ、そのまま気絶してしまって痛み分けにあるだろ。

 

 

とどめの一撃を下そうとするグラヴィティの耳に、タウラスの声が聞こえた。

 

 

「きっちり十分だ。後は頼む、息子よ」

 




以下はオメガに関する独自設定です。

現存文明を滅ぼすことができる個性所有者はオメガと呼ばれる。
年に二、三回、オメガによる世界崩壊の危機が訪れるが、国際ヒーローと傭兵国家キャラバンに解決された。

主人公は十二歳にオメガ認定されてから、単独で二十人のオメガを討伐した。
個人討伐数は一位だ。

オールマイトは単独で十二人のオメガを逮捕した。
()()()()()は一位だ。
言われるまでもない、逮捕は討伐よりはるかに難しい。
ゆえに、オールマイトは周りのヒーローと傭兵たちに畏怖の目に見られている。

プリンセスはチームでオメガを一人討伐した実績がある。
ちなみに、これはかなりの偉業だ。
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