傭兵のヒーローアカデミア   作:dukemon

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第15話

 

1、

 

夜明け前、オレは叔父さんの電話を受けた。

 

『もしもし、タウラスか?』

 

「叔父さん?一体、何の『バン!』……先の爆発はなんだ!今どこにいる!?」

 

電話越しで、叔父さんが激しい戦いの最中にいることを理解した。

 

無理矢理(むりやり)に転移されたから、どこにいるのかは知らないよ。たぶん、あなたと接触したから、私を拉致して情報を聞き出そうとするだろう』

 

「すまない」

 

『別に、大したことじゃないよ。いきなりオールフォーワンが現れたことについてかなり驚いているが、あいつ結構弱くなったな。片腕(かたうで)が失ったし、常時投薬(じょうじとうやく)しないと死ぬような体になった。思わず先制攻撃(せんせいこうげき)して、左足を奪った。まあ、すぐに再生したから、意味がない行動だった』

 

「…………………いや、どこから突っ込むのが分からなくなった」

 

オールフォーワンが弱くなったのは事実だが、それでもかなり強い。

各国の精鋭である国際ヒーローの中でも、タイマンで今のあいつに確実に勝てるものは五指に満たない。

そいつを先制攻撃で、足一本奪っただと?

 

『ん?私の過去を調べたじゃないのか?さて、手伝ってもらえるか?』

 

「当然だ。今はオールフォーワンと戦っているか?」

 

『いや、転移で飛ばされて、手下のギガントマキアと戦っている。とにかく、私の火力(かりょく)が足りないから、そいつを倒せない』

 

ギガントマキアの情報を頭の中に浮かべる。

巨人に変化でき、高い防御力と再生能力を持っているヴィランで、巨躯であるから攻撃力もスピードもなかなかのものだった。

さらに、オールフォーワンが新しい個性を与えた可能性もある。

 

その時、電話越しで波の音が聞こえた。

 

「……叔父さん、海に見えるか?」

 

『……見える』

 

「それなら簡単だ。海に飛び込めば、後はオレは何とかする」

 

『了解した』

 

 

電話を切ると、龍斗は眼前の巨体を見上げた。

 

「……ここから約2キロくらいかな」

 

ギガントマキアを突破して、海に到着すると自分の勝ち。

 

「私が死んだらタウラスが悲しむ。家族にも怒るから、頑張らなきゃ」

 

そして、龍斗は個性を発動する。

体が変形(へんけい)し、伝説(でんせつ)(けもの)に化した。

水色(みずいろ)(うろこ)が全身に覆い、頭は爬虫類(はちゅうるい)のように変化し、背中にある六対の翼が空を切り裂いて、両手が鋭い爪となった。

 

個性『龍化』

かつて、初代異能解放軍のエースで、『ファブニール』という異名を持つヴィランが猛威を振るい始めた。

 

 

2、

 

龍斗の体躯(たいく)はギガントマキアより一回り小さいが、力はほぼ同じだ。

しかし、相手には高い再生能力があるから、龍斗には決定打となる一撃はない。

 

爪でギガントマキアの顔面に攻撃したが、効果はいまいちだ。

 

予想通(よそうどお)りだが、自信がなくすな、これは。が、これで私の勝ちだ」

 

ギガントマキアは力とスピードがあるが、技が足りない。

普段なら欠点にもならないが、龍斗にとって大きすぎる隙だ。

柔道(じゅうどう)の要領でギガントマキアを投げ飛ばしてから、龍斗は空を駆けて、海に飛び込もうとする。

 

「まさか、あなたは『ファブニール』なんて。予想だにしなかったね」

 

「ちっ!」

 

その声を聞くと、龍斗は右側に緊急回避した。

三枚の左翼はオールフォーワンの極大レーザーに焼き尽くされた。

先、オールフォーワンに傷をつけたのが完全にラッキーパンチのようなものだった。

 

龍斗は回旋し、第二射を迎撃する。

口から放たれたブレスはレーザーとぶつかり合い、大爆発を引き起こした。

 

龍斗の体もその衝撃で海に墜落していく。

海に沈む直前に、第三射を見た。

 

《それを禁ずる》

 

オールフォーワンが発射したレーザーは海上で霧散(むさん)した

龍斗は自分が海水に包まれてから、タウラスの個性を理解した。

 

「これ、チートだな」

 

次の瞬間、龍斗の姿が消えた。

 

 

《海洋王》タウラス・アステリオンの次子、イーヴァルディは仲間と共に屋敷(やしき)の庭でバーベキューをしている。

狼の姿だから肉を焼くことについて不得意だが、物質創造(ぶっしつそうぞう)の個性でA5牛肉やほかの高級食材などを無限に供給できるから、焼き肉好きの傭兵(ようへい)たちに神のように(あが)められた。

 

全員がバーベキューを楽しんでいる時、庭の真ん中にいる噴水(ふんすい)が突然に爆発した。

 

「敵襲か!」

 

傭兵国家キャラバンはテロリストにとって不俱戴天(ふぐたいてん)の敵だから、度々に襲撃(しゅうげき)を受けている。

ゆえに、そこにいる傭兵たちは即座に戦闘態勢(せんとうたいせい)に入った。

 

それに、このパーティーには『王』が出席している。

冥王(ハデス)はすでにパワードスーツを纏い、フルアーマーを呼ぶ準備をしている。

 

眼前にいるのは片翼をなくした水色の(うろこ)を持つドラゴンだ。

冥王はデータベースにアクセスして、相手が日本のヴィラン“ファブニール”ということを知った。

次の行動を移ろうとしている時、傍から声が聞こえた。

 

「みんな、落ち着きなさい。彼はタウラスが招いた客人よ」

 

長い金髪(きんぱつ)が風になびかれながら、傭兵国家キャラバンの頭領である少年は傷ついたドラゴンを撫でている。

 

 

3、

 

昔のことを頭に浮かんでいる。

それは、友人デストロが政府を反逆(はんぎゃく)すると決めて、行動を開始する前のことだった。

 

「なあ、一つ教えてほしいことがある」

 

「なんだい?」

 

「どうして政府を反逆すると決めたのか?」

 

デストロは聡明(そうめい)で、カリスマ溢れている人物だった。

政府の方針を反対しているが、なぜ異能を制限するのかをよく知っている。

 

そもそも、生来の異能のせいで迫害される人々を組織した自救団体(じきゅうだんたい)異能解放軍(いのうかいほうぐん)の前身で、デストロはただ多くの人に支持されてから、リーダーをやっているだけ。

もともとはただの構成員に過ぎない。

 

これまで、デストロはやや過激派(かげきは)に寄る穏健派(おんけんは)で、不当に扱われた異能所有者のために警察と衝突することがあっても、ことを荒立つのを望まなかった。

義侠心(ぎきょうしん)があるアウトローだと言われている。

 

法整備(ほうせいび)による異能に対する規制が厳しくなる一方、デストロは悩みながら、最後の一歩を踏み出せずにいた。

 

しかし、海外から帰ってきた彼は晴れやかな様子で、どこか吹っ切れた感じだった。

反逆者になると決めたのがその後だった。

 

「俺は本物の異能を目にした。それを打ち勝って、世界に自由をもたらした人も知った。あの偉業(いぎょう)に比べて大したことがない反逆について悩むのが馬鹿馬鹿しいと思ってきたからだ」

 

「本物の異能?」

 

「ああ、前はオールフォーワンの力を見て、あれこそ最高の異能だと思ったが。あの人に比べたら、オールフォーワンはただのまがい物だ」

 

デストロと一緒に一回、オールフォーワンに会ったことがある。

私たちは自分の力に自信があるが、あいつはまさにバケモノだ。

生き延びるのが精いっぱいだった。

幸い、オールフォーワンがこちらに興味を持っていないから、それ以来襲撃を受けていないけど、それでもかなり警戒している相手だ。

 

「オールフォーワンより強い?そんな人いるのか?」

 

「そもそも勝負が成立していない」

 

あの時の私は笑った。

さすがに信じられないから。

 

「じゃあ、そいつは誰?」

 

「傭兵団キャラバン双頭領が一人、ミスラ。ミスラに勝ったのは双統領のもう一人、アストラ」

 

 

 

 

……本当にこの人を倒せる者なんて存在するのか?

 

デストロとの対話を思い出した龍斗は自分を撫でているミスラを見つめている。

直接に会うと分かる。

格が違う。

 

髪の毛の一本がこれまで全人類の英知を上回る情報量を保持している。

動きの一つ一つが世界を砕く力を秘められている。

最も恐ろしいのはあの両目だ。

それを通して、なにか途轍もない存在の一端を覗き込んでいるようだ。

 

眼前の神王が龍斗の疑問を答えた。

 

「本当だよ。アルトラに負けたから、ここにいる。それじゃ、パーティーを楽しめ」

 

そういうと、ミスラの姿が掻き消えた。

そして、周りの人々が動き始めた。

 

「僕が傷を治します」

 

イーヴァルディは近付いて、龍斗の傷をなめた。

すると、新たな細胞(さいぼう)が増え、傷口を塞いだ。翼も元通りになった。

 

「これでいいんだが、数日あまり動かないでください。あと、個性も解除しないでください」

 

「ありがとう。すまない、パーティーの邪魔をした」

 

一目で、彼らが庭でバーベキューをしていることが分かった。

 

「いえ、父ちゃんの客人なら無碍にはできません」

 

「父……あなたはまさか、イーヴァルディ?」

 

タウラスの子供は三人いる。

長男ポラリス。

次男イーヴァルディ。

三男オルフェ。

その中で、一番応用性が高い個性を持っているのはイーヴァルディだ。

物質創造と操作という個性は万能すぎる。

 

「ええ、そうですよ」

 

「……そうか」

 

全身に外骨格装甲を覆われている狼は龍斗の反応に戸惑っているようだ

やがて。

 

「そうだ!一緒に焼き肉を食べましょう。ミスラ爺ちゃんも言った。パーティーを楽しめって」

 

「そうだな。でも途中参加はいいのか」

 

「いいのです。そもそも、ここは父ちゃんの屋敷だから、父ちゃんの客人をパーティーに招かわないほうが問題です」

 

彼はそう言いながら、ドラゴン用のバーベキューグリルを創造した。

さらに、超巨大な牛肉を作り出した。

 

「パーティーを楽しんでくださいね」

 

 

 

 

「ウィスキーを造ってくれ、イーヴァルディ様!」

 

「むぐむぐ……いいよ」

 

「ここに良作年のロマネ・コンディがあります。どうかこれに基づいて、奇跡のワインを増産してください!イーヴァルディ様!」

 

「むぐむぐ……百本作った」

 

「野菜が足りない!」

 

「むぐむぐ………二トン作った」

 

焼き肉を食べながら、次々と望まれた食材と飲み物を生み出したイーヴァルディ。

龍斗は思わず言った。

 

「世界中の食通(しょくつう)がこの景色を見ると卒倒しそう……」

 

一生に一度食べられるかどうかの珍味(ちんみ)は食べ放題メニューに並べているようだ。

 

「三年前から、うちのパーティーはいつもこんな感じだぞ、ファブニール。呼吸のように食料を生み出せるイーヴァルディが入団したことで、こちらの食糧問題は完全に解決した」

 

眼鏡をかけている男は龍斗に言った。

さきほど、最初にパワードスーツを着た男で、タウラスと同格の《冥王(ハデス)》だと紹介されている。

 

「海外に輸出しないようにしたかな?」

 

「当然だ。ロマネ・コンディなどを無闇に輸出すれば、あそこのワイン作りは絶滅するだろう。これはキャラバンだけが許される天上の宴だ」

 

「私から見れば、まるでヴァルハラのようだ」

 

「はは、タウラスも同じことを言ったぞ。流石、あいつの叔父だ」

 

「……知っているのか?」

 

「タウラスは自分の屋敷に客人を呼んだことはかなり珍しいから。データベースにアクセスして色々調べた。隠し方は結構うまいな。タウラスとファブニールの関係という手掛かりがない限り、隠し通せるだろう」

 

「オールフォーワンにもバレた。正直、日本に帰れないかもしれない」

 

龍斗はかつて死を偽装して。異能解放軍から離れた。

幹部たちもそのことを知って、死ぬまで秘密を守った。

しかし、彼の正体はよりにもよってオールフォーワンに知られた。

 

龍斗が元ヴィランで、タウラスの叔父という身分はオールフォーワンにとって、かなり有利な情報だ。

 

「心配するな。タウラスとオルフェはすべてを解決するだろう…………被害が大きいかもしれないが」

 

「え」

 

 

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