傭兵のヒーローアカデミア   作:dukemon

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遅くなって申し訳ありません。


第17話

1、

 

「よし、打ち合わせはこれで終わりだ。現場で臨機応変(りんきおうへん)に動こう」

 

タウラスの言葉に龍斗、イーヴァルディ、ホークス、オールマイトが頷いた。

オールマイトは少し不承不承(ふしょうぶしょう)の様子だが、それでも受け入れた。

 

今回のファブニール討伐戦はタウラス、イーヴァルディ、ホークスとオールマイトが参加した。

スカイウォーカーは今でも富士山の上空でファブニールと争っているけど、連絡ができるから連携が取れる。

 

「そういえば、そちらの狼くんはどうしたらいい?ヒーローライセンスを持っていないだろ。誰から個性の使用許可をもらう?」

 

ホークスは至極当然(しごくとうぜん)の質問をした。

 

「心配ない。僕も国際ヒーローだ。むしろ、こちらは本職で、傭兵はただの隠れ蓑だよ」

 

「先に言っておくが、こいつの国際ヒーローライセンスは完全に自分の実力で取ったもの。オレはせいぜい教師を用意するだけだ」

 

「これはすごい、ヒーロー名を教えてくれないか?」

 

「私も気になる。タウラスがヒーローにならないが、彼の息子がヒーローになるのが喜ばしいものだ!」

 

「アイアンパニッシャーだ!普段はリモート操作の鎧で人前に出るから、正体はあまり知られていないけど、そこそこ有名だと思うよ」

 

「「……………………(絶句(ぜっく))」」

 

「いや、たぶん良くも悪くも近年でもっとも有名なヒーローだぞ」

 

 

イーヴェルディ、ことアイアンパニッシャーのモットーは『麻薬滅(まやくほろ)ぶべし、慈悲(じひ)はない』

その点について、タウラスも大いに賛成し、色々と手伝っている。

 

麻薬が根絶するには、簡単ではない。

中毒者(ちゅうどくしゃ)たちが需要を絶えずに生み出したから、麻薬の売人は儲けるためにさらなる供給を与える。

もちろん、政府の取り締まりは厳しいが、金儲けするからその連鎖(れんさ)が断ち切れないし、中毒者も色々な方法で薬を手に入れようとする。

それに麻薬の生産国では国家経済(こっかけいざい)が麻薬に繋がっていることが多いから、供給も止められない。

それに対して、イーヴァルディは的確な行動を取った。

 

『儲けさせないようにすればいい』

 

麻薬(まやく)の原料が育て切って採取する前に、それを焼き払う。

工場が麻薬を生産してからトラックに運びこんだ時、証拠を集めきった工場を爆破(ばくは)する。

高い金を積んで、新しい麻薬(まやく)を開発している実験室(じっけんしつ)を粉砕した。

 

麻薬を生産するために投入した資金をすべて無駄(むだ)になるように行動した。

 

結果的に、世界中に生産している麻薬は過去の半分に下回った。

その代わりに、数か国の経済は破綻し、数万人の難民(なんみん)を生み出した。

 

国連(こくれん)招集(しょうしゅう)()けて、査問(さもん)されたことがあるが、無事だった。

 

それは、イーヴァルディの行動はまさに模範的なものだったから。

人を殺してないし、証拠も揃っている。

周辺の環境も色々と配慮した。

 

それに、アフリカ共和国をはじめに、多くの国が彼の功績を認めた。

 

 

一度、あるマスコミが難民について、彼に質問したことがある。

 

【あなたの行動で数万人の難民を生み出したという論点について、意見を述べてもらえますか?】

 

【国家経済が麻薬に依存しているのが政府の問題だ。難民を生み出したのが政府の無能だと思うよ。僕はこれからも麻薬根絶(まやくこんぜつ)のために、ヒーロー活動を続く】

 

【素晴らしい考えです………では、死ね!】

 

記者が衣装(いしょう)の中に隠された爆弾を起動したが、爆発しなかった。

 

【その爆弾はもう解除したよ】

 

【おのれ……私のヤクを返せ!!】

 

アイアンパニッシャーは悲しそうにその記者を制圧した。

 

【僕はあなたにこのようなことをさせる人を一人残さずに捕まえよう】

 

のちの裁判に、被害者として法廷に立って、中毒者(ちゅうどくしゃ)である暗殺者(あんさつしゃ)被害者(ひがいしゃ)だという意見を発言し、(けい)減軽(げんけい)嘆願(たんがん)した。

 

この一連の事件が大いに報道され、彼の名をさらなる高みへと導いた。

今や、国連を代表するヒーローの一人と思われる。

 

 

「これ、話していいことなのか?」

 

「たしか、アイアンパニッシャーは世界中のヒーローの中で、最も多くの暗殺者に狙われてるヒーローだそうだ。大丈夫か?」

 

「一応信頼しているからだ」

 

「それに、僕にとって、狙ってくる暗殺者も大事な情報源だ。まあ、この情報は扱いにくいから無闇に言いふらしたら、かえって命が危ないよ」

 

その言葉に対し、ホークスとオールマイトの答えは

 

「そもそも、守秘義務(しゅひぎむ)があるから言えないよ」

 

「私も言わないぞ」

 

当然なものだった。

 

2、

 

ヘリの中で、一行はスカイウォーカーとファブニールの激闘(げきとう)の映像を見て、思わず感嘆した。

 

「なかなかの実力だな。スカイウォーカー。機動性(きどうせい)とスピードはすばらしい。しかし、破壊力(はかいりょく)がないのが欠点だ」

 

風による攻撃は軽すぎて、ファブニールには傷一つつけられない。

せいぜい、衝撃を与えるだけ。

 

「いや、あれで破壊力がないっておかしいだろ。ヒーローとしては十分すぎるほどの力だ」

 

「空中戦では負けないが、彼の汎用性(はんようせい)が高すぎる。この事件のあと、俺の事務所に来ないかとスカントしよう」

 

オールマイトとホークスはかなり高い評価を下した。

 

「私の息子だから当然だ」

 

叔父さんも鼻が高いようだ。

 

しばらくしたら、全員は富士山(ふじさん)の頂上についた

そして、打ち合わせ通り、叔父さんはまず交渉する。

 

「私は来た!妻を返せ!」

 

『我が名を(だま)(もの)よ。(なんじ)度胸(どきょう)だけが()めてやろう』

 

ファブニールは右腕が捕まえている叔母さんを地面に置いた。

スカイウォーカーは即座に彼女を抱えて、こちらと合流した。

 

「母は気絶(きぜつ)しているだけだ。心配ない」

 

防御態勢(ぼうぎょたいせい)を取るから、スカイウォーカー、龍斗、彼女を抱えて僕の後ろから動かないでください」

 

イーヴァルディは守りの態勢を取り始める。

周りを見ると、記者の報道(ほうどう)ヘリは数機(すうき)、遠くから映像(えいぞう)を取って、生放送(なまほうそう)をしている。

舞台が整った。

 

 

(なあ、叔父さん。僕の弟が演じたファブニールをどう思う?)

 

イーヴァルディは(コスモス)を使って、同じく観戦している龍斗に話した。

 

(下手すぎるんだ……本当の私はこのような強さがあれば、異能解放軍が政府軍を蹂躙(じゅうりん)できるだろう)

 

(ははは、これも策だよ)

 

オルフェは(コスモス)で龍斗の個性を共有した。

そして、慣れない体で戦うため、さらにイーヴァルディとポラリスの個性を使った。

本人ほど使いこなせないが、オルフェと兄弟たちの相性は最高だ。

どちらも本気を出していないという点もあるが、タウラス、オールマイト、ホークス三人と戦っても引けを取らないほど強い。

 

しかし、この戦闘は途轍(とてつ)もない派手だ。

 

ファブニール(偽)とホークスはアクロバットじみた飛行技術を披露して、空中で複雑怪奇(ふくざつかいき)な軌跡を描きながら、戦いを繰り広げた。

羽の射撃と風の弾丸が相殺し、地上から空中へと突き出した針の山が羽の刃に切り捨てられた。

そのまま、ドラゴンに突撃(とつげき)するが、周りの風の壁に阻まれて届けない。

まさに攻防一体(こうぼういったい)

 

そこで、タウラスとオールマイトの支援がきた。

水の鎧を纏ったタウラスは飛んで、空でオールマイトのために水を固定して足場を作った。

 

「デトロイド・スマッシュ!」

 

「神威抜刀・波砕き!」

 

両人の攻撃は風の鎧を破って、ホークスは素早くその隙に突っ込んで羽の刃で最初の一撃を放った。

 

『無駄だ。我の鱗を破れぬと知れ!』

 

ホークスの斬撃でできた微かな傷を見て、ファブニール(偽)はドヤ顔で宣言した。

 

 

「そんな、オールマイト、タウラス先生とホークス、三人掛かりでも勝てないほどのヴィランがいるなんて……」

 

雄英のテレビの前に、緑谷出久とクラスメートたちは食い入るように、実況を見ている。

 

水色のドラゴンはまさに要塞だ。

ドラゴンならではの高い耐久と(うろこ)による防御力、風の個性による障壁、大地を操る個性で作られた壁。

 

攻撃においても、大地と風で繰り出された多彩な攻撃だけでなく、巨躯による物理攻撃も油断できないほどの威力を秘められている。

 

「おかしい……資料によると、ファブニールは風と大地を操る個性を持っていない!」

 

確かに、ファブニールはブレスと体術で戦うヴィランだと知られている。

風と大地の個性を使う記録は存在しないはず。

 

緑谷がそう考えている途中で、戦局が大きく変化した。

 

ホークスの剣はファブニールの首の付け根に深く差し込んだ。

あそこは首の活動を制限しないために、一か所だけ鱗はいない。

まさに伝説の逆鱗(げきりん)

 

【ガァァァァァァァァァァァァ!】

 

ファブニールは激しい痛みでもがいている。

その瞬間、集中力を失ったファブニールは風の防御を失った。

 

【やれ、イーヴェルディ!!】

 

ファブニールの全身はいきなり虚空から現れた鎖で縛り上げた。

 

【ぐっ……このような鎖だど……】

 

【無駄だよ。貴方では僕の鎖は破壊できない】

 

【おのれ!楽に死ねると思うな!!!】

 

この時、ファブニールの体に異変が起きた。

 

【なぜだ……なぜ我の体が砂になっていくぅぅぅ!貴様ら、何をした!】

 

オールマイトは哀れな顔で、ファブニールを見つめる。

 

【何もしていない】

 

【そんな馬鹿な!】

 

【君に風と大地の個性を与えた人は誰だ】

 

その時、頭以外の場所は全部砂になったファブニールは(いか)りと憎悪(ぞうお)に顔を歪めた。

 

【呪ってやる!オールフォーワン!貴様には屈辱(くつじょく)に満ちた未来を……】

 

次の瞬間、ファブニールは完全に砂となった。

テレビの前にいる生徒たちは唖然(あぜん)とした。

 

3、

 

ドラゴンの巨躯が砂になって、風に吹っ飛ばされた。

それでも、オールマイトたちは警戒を続いている。

 

数秒後、富士山の頂上で、オールフォーワンは現れた。

 

「茶番だね。オールマイト」

 

「それでも、貴様が現れた」

 

 

「この作戦の目的の一つはオールフォーワンを誘い出すことだよ」

 

事前の作戦会議で、イーヴァルディが説明した。

 

「だから、隙を作る」

 

 

「私を誘い出そうという魂胆か?しかし、私には有利だぞ」

 

瞬く間に、オールフォーワンは炎、氷、水、稲妻、ブラックホールなど、数十の攻撃を繰り出した。

狙いは龍斗一家だ。

 

タウラスとイーヴァルディがそれぞれ四割の攻撃を防御した。

オールマイトとホークスは残りの二割を処理した。

 

「なかなかやるだね。しかし、これでどうだ?」

 

イーヴァルディの死角から出現した攻撃がスカイウォーカーに肉薄した。

スカイウォーカーは風の壁で防ごうとするが、完全に防御するのは無理だ。

その時、風に吹っ飛ばされた砂から銀色の狼が現れて、より強固な風の壁で全員を守り抜いた。

 

「なるほど、さっきのファブニールは貴様か。オルフェ。あとオールマイト、マスコミについた嘘がバレて、どんな気持ち?」

 

「貴様を引きずり出すために、これぐらいは大したことはない」

 

「いや、オールマイト。マスコミはハイエナのようなものだ。名声を失った後のトップヒーローがどれほど惨めであろう、見ものだな。それに、この作戦には大きな穴がある」

 

「どういうことだ!」

 

「今ころ、私の部下たちは日本中で暴いているだろ。ヒーローたちは果たして民衆を守り抜けられるのか?」

 

「………………っ!貴様!!」

 

対話を交わしながら、双方は攻防を続いている。

オールフォーワンが繰り出した個性の数々は雨のようにホーローと傭兵に襲っている。

普段ならこのような攻撃を掻い潜って、直接にオールフォーワンを攻撃するアステリオン父子だったが、守るべき親族と護衛対象が後ろにいる今ではできないことだ。

 

《レギオン発動》

 

「無駄だ」

 

オルフェは数十体の亡者を呼び出したが、オールフォーワンが放ったビームによって一瞬で駆除された。

オールフォーワンの顔に笑いが浮かんだ。

 

「オルフェが呼び出した亡者の強さについて、ドクターが作った脳無との戦いで見抜いた。そして、グラヴィティを倒した《(コスモス)》の組み合わせは私との戦いでは使えない!いや、私は使わせない!」

 

『う……』

 

オルフェは悔しそうに顔を歪めた。

 

 

「あいつが現れたら、とにかく耐えろ。これはこの作戦において最も大事なものだ」

 

作戦を話していたイーヴァルディはかなりの無理難題(むりなんだい)を言っている自覚がある。

 

 

そして、三十分が過ぎた。

最初に膝をついたのはオールマイトだ。

時間制限が来たからだ。

マッスルフォームが解けて、トゥールフォームになった。

 

オールフォーワンはこの好機を逃しはしない。

即座に、オールマイトを狙ってきた。

 

空から、隕石(いんせき)火玉(ひだま)が落ちてくる。

地面が爆発し、無数の針が射出した。

虚空に現れたブラックホールがオールマイトの周りに配置される。

さらに、攻撃はワームホールを通して、複雑怪奇な軌道を描いているため、回避するのは極めて難しい。

 

その窮地からオールマイトを救ったのはイーヴァルディだ。

物質変化と物質創造個性を駆使して、ありとあらゆる攻撃を無に化した。

しかし………

 

「チェックメイトだ」

 

極大レーザーがイーヴァルディの体を飲み込み、それを蒸発した。

 

「そんな、私のせいでイーヴァルディくんが!」

 

「兄ちゃん!!!」

 

「イーヴァルディ!」

 

「ああ……」

 

オールマイトが友人の息子の死を嘆いた。

家族と戦友たちも呆然とした。

 

「彼の個性は面倒だね。ここで処理するほうがいいから、最優先的に狙った。だが、あっけないね」

 

「殺してやる!!」

 

「叔父さん。駄目だ!イーヴァルディの犠牲を無駄にしちゃいけない!!」

 

その時、オールフォーワンは違和感を感じた。

 

タウラスは家族思いで有名な傭兵だ。

義兄弟たちの傭兵が雇い主に不当に扱われたことがあれば、烈火(れっか)のように怒る。

彼の怒りを受け、身を滅ぼした裏社会の人物は計り知れない。

 

………そのような人物が息子の死を目にして、冷静(れいせい)にいられるのか?

 

《オールフォーワンの手下はすべて捕縛した。作戦は完成した》

 

オルフェが静かに言い放った。

次の瞬間、オールフォーワンの攻撃は全部タウラスに迎撃された。

空気の中の水気を操り、空からの隕石を切り裂き、火玉が凍結(とうけつ)された。

オールフォーワンが放った氷の弾丸が操って、大地から突き出した槍を撃砕した。

 

さらに、オールフォーワンの防御個性(ぼうぎょこせい)は貫通され、左足が切り飛ばされた。

超再生で回復したが、彼は自分がタウラスの実力を完全に見誤ったと理解した。

彼は数年前より、遥かに強くなっている。

しかし、一つ理解できないことがある。

 

「私の部下を全員逮捕できるほどの戦力はどうやって調達できた!」

 

「オレの息子オルフェはね。個人戦力はかなり強いんだ」

 

「それは知っている」

 

「が、総合的な戦力はたぶんオレの養父だけが彼に勝てるだろう……おや、懐かしい、呼ばれたのはあなた方でしたのか?」

 

タウラスはオールフォーワンの後ろに見つめている。

オールフォーワンは振り返って、相手の顔を見て寒気がした。

 

「90年ぶりだ。オールフォーワン」

 

アフリカ系の男性が槍を持って、後ろに佇んでいる。

 

「…………ナデル。なるほど、私は確かにオルフェの個性を舐めていたようだ」

 

アフリカを征服(せいふく)した偉人(いじん)は怒りを込めて、かつての敵に告げる。

 

「貴様に逃げられたのは俺の数少ない心残りだった。わが国でおびただしい犠牲者を生み出す罪、安く済ませると思うな」

 

ナデルは全身から稲妻を放って、雷速でオールフォーワンとの距離を詰めた。

 

「あのような屈辱を受けた後、私が雷の個性に対して対策を取らずにいると思っているのか?雷電反射」

 

槍がオールフォーワンの体を触れると、ナデルは弾かれた。

ナデルの個性は雷電。

稲妻を放射するのはもとより、体を雷化し攻撃を避けることも、雷速で移動することも、極めに人体の生体電流を操ることもできる。

オールフォーワンは90年前、生体電流が乱され、10年ほど半身不随になっていた。

 

オールフォーワンはそれからナデルとの争いを避けてきたが、万が一のために数多の対策を取った。

それでも、この戦いは互角だった。

 

何にもしてこないタウラスを警戒しながら、ナデルと戦うという絶望的な状況で、オールフォーワンは自分なら逃げ切れるという自信がある。

そういう切り札がある。

彼がそう考えていると、タウラスが防御態勢に入ったことに気づいた。

 

二秒後、富士山(ふじさん)の半分が消し飛ばされた。

 

 

「ふ、富士山(ふじさん)が………」

 

「心配ない、オルフェとイーヴァルディは直せる。しかし、《天の杖》はやはり強いな」

 

イーヴァルディが所有している戦略兵器(せんりゃくへいき)の一つ・天の杖。

地球軌道(ちきゅうきどう)上から大質量の物体を高速で射出するという極めてシンプルな兵器だが、破壊力が核に近い。

 

「イーヴァルディ?彼は死んだはず……」

 

「僕を呼んだか?」

 

オールマイトは疑問を覚えた途端、無傷のイーヴァルディが現れた。

 

「一体、どうやって……」

 

「死んだのは僕が作った身代わり……相手も同じ手を使ったな」

 

土煙が散っていくと、それが人々の目に映った。

 

「あれは確か、叔父さんが言っていたギガントマキアだった?」

 

巨大だった体が天の杖の直撃を受け、下半身が跡形もなく消し飛ばされた。致命傷だ。

あれを受けてなお人の形を留まっているって、なんという頑丈さだ。

 

「すまない、また逃げられた。たぶん、事前に指定した対象との位置を交換する個性だ」

 

ナデルは申し訳なさそうに謝ったが、仕方ないことだ。

 

「いや、あなた方のせいではありません。息子の呼びかけに答えたことに感謝いたします。お疲れさまでした」

 

ナデルは一礼した後、消え去った。

 

 

 

それじゃ、ギガントマキアはどう処理するかな……

 

「オルフェ、そいつは死んでいるのか?」

 

「死んでいないよ。心臓(しんぞう)と頭が動けている。このままじゃ死んでしまうから、助けてもいい?」

 

「イーヴァルディは人を殺したら面倒な書類をたくさん書かなければならないからな。前と同じやり方で行こう」

 

オルフェの周りから黒い(もや)が現れ、それがギガントマキアの傷口に集まり、新たな下半身を形成した。

 

「あれは何なのか?」

 

ホークスがそう聞いてきた。

 

「ナノマシン。だいたい100年後の技術かな」

 

「はあ?」

 

「オルフェは星を使い、優れた科学者たちの思考を加速させて、何百年後の機械の設計図を完成してから、物質創造(ぶっしつそうぞう)の個性でそれを作り出す」

 

まあ、グラヴィティの時はブラックホールをなんとかする機械を発明するのが千年以上かかったから、隙はないわけではない。

 

「グラヴィティとの戦いの後、失った内臓(ないぞう)も作ってもらった。オルフェには本当に感謝しかない」

 

オールマイトにはグラヴィティとの戦いの後で説明した。

オルフェはそのついでに、オールマイトの内臓(ないぞう)を作った。

筋肉とかが衰えたから全盛期の力を取り戻すのは無理なんだが、普通の生活を過ごせる。

 

しかし、彼はしばらく秘密にしてほしいという。

傷が治ったのを知った緑谷は個性を返すと言い出すかもしれないから。

 

タウラスから見れば、緑谷はかなり優秀な生徒だ。

オールマイトの才能が比類なきものだとしても、未来ある若人(わこうど)の夢を断つのは流石に忍びない。

それに、オールマイトがワンフォーオールを取り戻しても、以前のような戦い方をするのが不可能なんだから、隠すのを同意した。

 

治療(ちりょう)が完成したよ!こいつの個性を解除する」

 

そう考えている途中で、オルフェはギガントマキアの修復(しゅうふく)を完了した。

そして、ナノマシンを操作し、相手の個性をオフにする。

巨人はみるみると縮めて、数メートルの高さになった。

 

「それじゃ、そいつを連れて帰ろう」

 

「待て、まずは契約の変更をしよう。見届け人はオールマイトでいい」

 

タウラスはこの場から撤退すると言うと、イーヴァルディは契約の変更が先だと言った。

 

「俺は首相から、この契約の変更権限(へんこうけんげん)をもらったから、ここで変更できる。見届け人の人選は問題ない」

 

ホークスも同意した。

 

「イーヴァルディがそう言うなら、ここで変更するぞ。オレと日本政府の契約を」

 

戦う前の相談で、契約の変更を決めた。

 

イーヴァルディは叔父さんに、キャラバンに移民(いみん)するように勧めた。

叔父さんも家族と一緒に住みたいから、普通に受け入れたが、できるだけ合法的に移民したいと思っている。

従兄はヒーロー活動をしているし、弟もヒーロー志望だから、彼らの生活を壊さないようにしたいのが当然だ。

 

が、問題なのは叔父さんの身分だ。

犯罪者が合法的に移民するのが普通に不可能だ。

 

だから、スカイウォーカーは《ファブニール》という身分を殺し、龍斗が海外に移民するという計画が立てた。

 

「日本政府が龍斗が犯した犯罪をすべて『なかった』ことにする。その代わりに、タウラスは契約期間の変更を受け入れる……これ、本当にいいのか?」

 

「「いい」」

 

「この契約の期限はオールフォーワンが逮捕する時までに変更する……本当に本当にいいのか?」

 

「「いい」」

 

「………双方の合意によって、契約の変更が成された。ミスラの名のもとに、新たな契約に祝福を」

 

オールマイトはこのことを聞いた時はかなり驚いた。

日本政府とタウラスの契約は彼から見れば破格的なものだ。

一千万ドルという金で、護衛という名義で一年間日本の犯罪組織を抑えるというのが安すぎるぐらい安い。

 

しかし、オレから見れば、バカンスのつもりで受けた依頼にしては難易度が高すぎる。

ファントム、グラヴィティ、オールフォーワンの残党など、面倒極まりない。

さらに、拘束期間が長すぎる。

 

日本政府から見れば、雇った傭兵が自国の恥部を国際組織にバレて、不愉快になるのが当然だ。

さらに、契約にはそういう禁止事項は書いていないので、オレを処罰することができない。

お互いにこの契約をさっさと終わりにするという共通な目的があるだから、事はスムーズに進んだ。

 

 

 

「色々迷惑をかけて、本当に申し訳ありませんでした」

 

叔父さんはオールマイトに謝罪した。

 

「いや、これは大したことではないよ。オールフォーワンとの戦いは私の本望でもあるから。それと、あなたも本当にいいのか?《ファブニール》という名を捨てて、大事な思い出でもあるだろう」

 

「あれは妻が出会って、異能解放軍を離脱した時にすでに捨てたものだ……あなたの方は本当にいいのか?俺を見逃すなんて」

 

「今の異能解放軍に参加しているならともかく、昔の異能解放軍には情状酌量(じょうじょうしゃくりょう)すべきだと思うから」

 

「……正直、今すぐあのリ・デストロというデストロの名を汚す小僧をミンチにしたいが、それはあの小僧のやり方と同じだと思うから思いとどまった。自分の思想を賛同(さんどう)しない人をその場で殺すなど狂っている」

 

「………………待て、人が殺された?その話は詳しく話してもらえるか?」

 

「オルフェから聞いたことだ。信憑性(しんぴょうせい)が高いと思う」

 

オールマイトはホークスを連れて、オルフェに話しを聞きに行った。

イーヴァルディはギガントマキアを運搬(うんぱん)している。

従兄と叔母さんはこれからのことについて話している。

つまり、叔父さんはオレと話すチャンスを得た。

 

彼は声を潜めて、そう聞いてきた。

 

「タウラス……イーヴァルディはもう死……いや、もともとの体を失っているのか?」

 

 




次は断章です。
後数話で完結予定です。よろしくお願いします
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