傭兵のヒーローアカデミア   作:dukemon

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第3話

1、

 

「よし、これからの方針を決めようぞ。オールマイト、自分の弟子に対してなにか要望があるのか?緑谷も言っていいよ。オレの仕事はオールマイトのサポートだから、弟子の育成にも手伝うつもりだ」

 

保健室で治療を受けた後、タウラスはオールマイトと緑谷を集めて、これからのことについて相談する。

オールマイトの予定(よてい)を聞いてから、タウラスは満面の笑みで言った。

 

「なるほど、体育祭(たいいくさい)で一位を取って、そのタイミングでオールマイトの後継者について公表するか……すさまじく難しいことだが、なんとかなるかもしれない」

 

「さすがタウラス!」

 

「本当ですか!」

 

緑谷は興奮を隠れきれずに身を乗り出した。

 

「まず、緑谷を休学(きゅうがく)してもらおう」

 

「「え」」

 

「そして、傭兵国家(ようへいこっか)キャラバンに送り込み、『教官』の鍛錬を受けよう。大丈夫、オレの紹介があれば、彼は快く引き受けるだろう」

 

「……待て、タウラス」

 

「最後は、南極戦線(なんきょくせんせん)に参戦してもらう。体育祭の前日までに、そこに生き延びれば、絶対にオールマイトの後継者にふさわしい力と(はがね)精神(せいしん)を手に入れられる!」

 

南極(なんきょく)利権(りけん)(めぐ)って(あらそ)ってきた戦争(せんそう)(いま)だに(つづ)いている。

個性の出現で、南極(なんきょく)開発(かいはつ)が可能になってから、各国は豊かな資源と土地を奪うため、壮絶な殺し合いを始まった。

()きるために、そして(かね)(かせ)ぐために、そこにいる戦士(せんし)進化(しんか)しなければならない。

 

泥沼化した戦線はいま魔境(まきょう)となっている。

 

「……冗談(じょうだん)を言うな、タウラス。あそこは本物の地獄だぞ」

 

経験者であるオールマイトは怒りを込めて言った。

 

「そう思うなら、方針について考え直せ。体育祭で一位を取ることはそれほど難しくはないが、後継者(こうけいしゃ)について公表することは無茶だ。世間の目を甘く見るな。世論(せろん)は普通のヴィランより恐ろしい」

 

「すみませんが、先言っていたことは一体なんでしょうか……傭兵国家と南極戦線って、ヒーローの仕事ではありませんよね」

 

緑谷は戸惑いながら問ってきた。

 

「まあ、いつか知ることだから、話してもいいかもな。オレの本職は傭兵で、国際ヒーローというのが今回の任務のために取ったものだ」

 

「え」

 

「彼が受けた依頼は国際的な事件が多いから、ほとんどの国際ヒーローと面識(めんしき)がある。国連平和維持軍(PKF)の雇われエースと呼ばれることもある……君も国際ヒーローになるだろうから、覚えておくがいい」

 

「まあ、そういうことだ、今回の任務はオールマイトのサポートと護衛だから、よろしくな」

 

「ちなみに、南極戦線(なんきょくせんせん)調停(ちょうてい)も国際ヒーローの仕事だ。わたしも何回そこに行ったことがある」

 

「話を戻ろう。オールマイト、あんたは自分が天才であることを自覚しなければならない。雄英で三年、アメリカの大学とインターンで四年、サイドキック期間で一年。あんたが八年で一人前のヒーローになった。実力と実績から見れば、驚くほどの短期間と思う……このことを心に留めてから、これからの方針をもう一度考えて欲しい」

 

「う……しかし……」

 

「平和の象徴を失った後の空白期間(くうはくきかん)は避けられないぞ。そもそも、空白時間を減らすため、現役のヒーローを後継者を選ぶべきだ。あんたが学生を選ぶことは、一時凌ぎより将来の安泰(あんたい)を選ぶことで、正確な判断だ。それに、日本のヒーローは優秀だ。これくらいの困難を乗り越えられるはず」

 

オールマイトは黙ったまま、何十分も考え込んだ。

やがて、緑谷の成長を見た後で判断すると言った。

 

 

2、

 

次の日、オールマイトが非番だから、タウラスは彼の自宅に訪れた。

 

「これは昨日言っていた通信教育(つうしんきょういく)用の教科書で、根津(ねづ)校長が選んだものだ」

 

「ありがとう、タウラス」

 

「そもそも、あんたに教育の単位を取るようにおすすめしたのはオレだ。これぐらいどうということはない」

 

昨日の放課後、オールマイトは通信教育で教育の単位を取りたいと言った。

タウラスは教科書を用意すると言い、根津校長と相談した。

雄英の教師の一部は研鑽(けんさん)のために通信教育を受けている。

先生の研修が補助されるから、根津校長はそういうものについて調べたことがあって、評判がいいものを選んでくれた。

 

「できるだけ、時間を絞り出して勉強するよ」

 

「なら、この一日、あんたのヒーローの仕事をオレがやろう」

 

「………いいのか?」

 

「まあ、オレはワーカホリックじゃないから、すべては無理だが、8割ぐらいカバーできる。残りの2割はほかのヒーローがやってくれるだろう」

 

 

その日の午後、校長からの連絡があって、タウラスはすぐに雄英に向かった。

 

「オールマイトは?」

 

「休憩中です。体の調子が悪いから、このことは伝えていません。侵入者は?」

 

「マスコミたちはもう追い出したが……この有様(ありさま)だ」

 

「たぶん、崩壊(ほうかい)個性(こせい)でしょう」

 

雄英の大門は無残(むざん)に壊された。

大量な粉が現場に残されるから、崩壊の個性を使ったと推測できる。

もちろん、他の可能性があるかもしれないが、現状で最も有利な仮説だ。

 

「負傷者も、盗まれたものもないが、何かがあると自分の勘が囁いている」

 

「ん……まず、考えられるのは情報が盗まれました。閲覧するだけでいいから、盗まれたことも気づいてないかもしれません」

 

「確かに、生徒と教師の個人情報は価値あるものだ。しかし、それらが見られた形跡はない」

 

「事件を引き起こすことで、雄英の戦力を偵察する可能性もなくはないです」

 

「だが、オールマイトがいない状況で、それをやる意味がない。戦力だけなら、オールマイトは負傷しても教師全員より高いよ」

 

「うーん、情報が少ないから、推測は難しいです」

 

「君もそう思っているのか」

 

結局、結論が出ないままだった。

 

「オレは敷地内を見回ろう。幸い、オールマイトの仕事はほとんど終わったから、今はかなり暇だ」

 

「ありがとうね」

 

 

3、

 

……侵入者の形跡はないな

 

タウラスも侵入者がまだ雄英にいると考えていないが、それでもかなり念入りにパトロールした。

 

「訓練場に誰かがいる?」

 

今はもう午後8時過ぎだ。それほど頑張っている生徒がいるのか?

 

……全裸(ぜんら)で訓練ロボと組手をしている変人がいる。

いや、あれは透過の個性で服が着られない。難儀なものだな。

 

タウラスはその生徒の訓練風景(くんれんふうけい)をしばらく見ていた。

やがて、訓練を終わった彼は見られたことに気づいた。

 

「えーと、たしか臨時教師のタウラス先生でしたよね」

 

「ああ、通りかかって、思わず見とれてしまった。透過の個性は扱いにくいことで知られている。それを使いこなした君はもう一流のヒーローに等しい力を持っている」

 

「あ、ありがとうございます」

 

目の前の学生は三年生の通形(とおがた)ミリオという。

今はナイトアイの事務所でインターンをしている。

 

臨時教師として、いくつかのアドバイスを彼にあげるが、まだ足りないと考えている。

通形は逸材だ。

透過の個性をこれほど磨き上げてきた精神力。

誰かのために頑張って立ち上がる意思。

ヒーローとしての心構えは完璧としか言いようがない。

 

たとえオールマイトのサポートと護衛が主な仕事だとしても、タウラスは教師の仕事を疎かにするつもりはない。

その時、彼は一つの名案を閃いた。

 

「通形、海外研修に興味があるのか?」

 

「え」

 

眼前の少年はかなり戸惑っている。

 

 

「ナイトアイ。あんたは通形の師匠で、もっとも彼のポテンシャルを理解している人だ。オレの提案についてどう思うのか?」

 

考えついた瞬間、タウラスは即座に通形と共にナイトアイの事務所に行った。

昔の知人からの提案を、彼は興味深く聞いていた。

 

「数ヶ月の海外研修か……悪くないが、受け入り先はどこなのか?キャラバンだったら、さすがに許可できないぞ」

 

「キャラバンに送るのも考えたが、時期尚早(じきしょうそう)だな。イギリスの国際ヒーロー・プリンセスのところだ。彼女はオレの弟子で、万年人手不足と言っているから、通形のような即戦力を歓迎してくれるはず」

 

イギリスNo.1ヒーロー・『プリンセス』

世界最大の事務所を持ち、数万人のヒーローを率いている女傑(じょけつ)だ。

イギリスの王位継承権第三位(おういけいしょうけんだいさんい)の姫でもある。

世界屈指の知名度を誇るヒーローの名前がいきなり飛び出したことに、通形は唖然とした。

 

「なるほど、人の扱い方について、彼女より優れているヒーローはいない。ミリオにいい刺激となるだろう。ミリオが行きたいなら、私は反対しない」

 

「しかし、インターンの仕事は……」

 

躊躇う通形に、ナイトアイは背中を押した。

 

「ここはインターン一人欠けたら潰れるほど、やわではない。それに、私もオールマイトと一緒に多くの国に行ったことがある。その時の経験は大変貴重なものだった。このようなチャンスは逃がすべきではない」

 

それを聞いた通形は意を決めて、タウラスに一礼した。

 

「よろしくお願いします。タウラス先生!」

 

4、

 

翌日、職員室に一騒ぎが起こっている。

 

「通形くんはイギリスに研修!?」

 

「それもあの『プリンセス』のところ!?彼女の事務所はインターンを受け入れませんよね」

 

「一体どのような魔法を使ったんだ!!!」

 

質問攻めされたタウラスは涼しい顔で爆弾発言を言った。

 

「『プリンセス』はオレの弟子だから」

 

「「「え」」」

 

「ちなみに、インターンを受け入れる可能性がある国際ヒーローの一覧表を作った。条件は厳しいが、推薦したい学生がいれば言ってくれ」

 

教師たちは食いつくように、タウラスが渡した資料を読み始めた。

 

 

「オールマイト、校長から昨日の事件を聞いたか?」

 

昼休みの時、タウラスはオールマイトと破壊事件について話し合った。

 

「ああ、確かに何かがあると思う。教師たちも警戒している」

 

「オレもフルアーマーを持ってきた」

 

「………ちょっと待て、あれは日本で使えるのか?よく覚えていないが、

条約などの問題があるだろ」

 

「国の許可を得たから大丈夫だ。それに非殺傷性武器しか搭載していない」

 

「大丈夫じゃない気がする……」

 

オールマイトは心の中でまだ見ぬ敵のために祈った。

 

 

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