1、
「よし、これからの方針を決めようぞ。オールマイト、自分の弟子に対してなにか要望があるのか?緑谷も言っていいよ。オレの仕事はオールマイトのサポートだから、弟子の育成にも手伝うつもりだ」
保健室で治療を受けた後、タウラスはオールマイトと緑谷を集めて、これからのことについて相談する。
オールマイトの
「なるほど、
「さすがタウラス!」
「本当ですか!」
緑谷は興奮を隠れきれずに身を乗り出した。
「まず、緑谷を
「「え」」
「そして、
「……待て、タウラス」
「最後は、
個性の出現で、
泥沼化した戦線はいま
「……
経験者であるオールマイトは怒りを込めて言った。
「そう思うなら、方針について考え直せ。体育祭で一位を取ることはそれほど難しくはないが、
「すみませんが、先言っていたことは一体なんでしょうか……傭兵国家と南極戦線って、ヒーローの仕事ではありませんよね」
緑谷は戸惑いながら問ってきた。
「まあ、いつか知ることだから、話してもいいかもな。オレの本職は傭兵で、国際ヒーローというのが今回の任務のために取ったものだ」
「え」
「彼が受けた依頼は国際的な事件が多いから、ほとんどの国際ヒーローと
「まあ、そういうことだ、今回の任務はオールマイトのサポートと護衛だから、よろしくな」
「ちなみに、
「話を戻ろう。オールマイト、あんたは自分が天才であることを自覚しなければならない。雄英で三年、アメリカの大学とインターンで四年、サイドキック期間で一年。あんたが八年で一人前のヒーローになった。実力と実績から見れば、驚くほどの短期間と思う……このことを心に留めてから、これからの方針をもう一度考えて欲しい」
「う……しかし……」
「平和の象徴を失った後の
オールマイトは黙ったまま、何十分も考え込んだ。
やがて、緑谷の成長を見た後で判断すると言った。
2、
次の日、オールマイトが非番だから、タウラスは彼の自宅に訪れた。
「これは昨日言っていた
「ありがとう、タウラス」
「そもそも、あんたに教育の単位を取るようにおすすめしたのはオレだ。これぐらいどうということはない」
昨日の放課後、オールマイトは通信教育で教育の単位を取りたいと言った。
タウラスは教科書を用意すると言い、根津校長と相談した。
雄英の教師の一部は
先生の研修が補助されるから、根津校長はそういうものについて調べたことがあって、評判がいいものを選んでくれた。
「できるだけ、時間を絞り出して勉強するよ」
「なら、この一日、あんたのヒーローの仕事をオレがやろう」
「………いいのか?」
「まあ、オレはワーカホリックじゃないから、すべては無理だが、8割ぐらいカバーできる。残りの2割はほかのヒーローがやってくれるだろう」
★
その日の午後、校長からの連絡があって、タウラスはすぐに雄英に向かった。
「オールマイトは?」
「休憩中です。体の調子が悪いから、このことは伝えていません。侵入者は?」
「マスコミたちはもう追い出したが……この
「たぶん、
雄英の大門は
大量な粉が現場に残されるから、崩壊の個性を使ったと推測できる。
もちろん、他の可能性があるかもしれないが、現状で最も有利な仮説だ。
「負傷者も、盗まれたものもないが、何かがあると自分の勘が囁いている」
「ん……まず、考えられるのは情報が盗まれました。閲覧するだけでいいから、盗まれたことも気づいてないかもしれません」
「確かに、生徒と教師の個人情報は価値あるものだ。しかし、それらが見られた形跡はない」
「事件を引き起こすことで、雄英の戦力を偵察する可能性もなくはないです」
「だが、オールマイトがいない状況で、それをやる意味がない。戦力だけなら、オールマイトは負傷しても教師全員より高いよ」
「うーん、情報が少ないから、推測は難しいです」
「君もそう思っているのか」
結局、結論が出ないままだった。
「オレは敷地内を見回ろう。幸い、オールマイトの仕事はほとんど終わったから、今はかなり暇だ」
「ありがとうね」
3、
……侵入者の形跡はないな
タウラスも侵入者がまだ雄英にいると考えていないが、それでもかなり念入りにパトロールした。
「訓練場に誰かがいる?」
今はもう午後8時過ぎだ。それほど頑張っている生徒がいるのか?
……
いや、あれは透過の個性で服が着られない。難儀なものだな。
タウラスはその生徒の
やがて、訓練を終わった彼は見られたことに気づいた。
「えーと、たしか臨時教師のタウラス先生でしたよね」
「ああ、通りかかって、思わず見とれてしまった。透過の個性は扱いにくいことで知られている。それを使いこなした君はもう一流のヒーローに等しい力を持っている」
「あ、ありがとうございます」
目の前の学生は三年生の
今はナイトアイの事務所でインターンをしている。
臨時教師として、いくつかのアドバイスを彼にあげるが、まだ足りないと考えている。
通形は逸材だ。
透過の個性をこれほど磨き上げてきた精神力。
誰かのために頑張って立ち上がる意思。
ヒーローとしての心構えは完璧としか言いようがない。
たとえオールマイトのサポートと護衛が主な仕事だとしても、タウラスは教師の仕事を疎かにするつもりはない。
その時、彼は一つの名案を閃いた。
「通形、海外研修に興味があるのか?」
「え」
眼前の少年はかなり戸惑っている。
★
「ナイトアイ。あんたは通形の師匠で、もっとも彼のポテンシャルを理解している人だ。オレの提案についてどう思うのか?」
考えついた瞬間、タウラスは即座に通形と共にナイトアイの事務所に行った。
昔の知人からの提案を、彼は興味深く聞いていた。
「数ヶ月の海外研修か……悪くないが、受け入り先はどこなのか?キャラバンだったら、さすがに許可できないぞ」
「キャラバンに送るのも考えたが、
イギリスNo.1ヒーロー・『プリンセス』
世界最大の事務所を持ち、数万人のヒーローを率いている
イギリスの
世界屈指の知名度を誇るヒーローの名前がいきなり飛び出したことに、通形は唖然とした。
「なるほど、人の扱い方について、彼女より優れているヒーローはいない。ミリオにいい刺激となるだろう。ミリオが行きたいなら、私は反対しない」
「しかし、インターンの仕事は……」
躊躇う通形に、ナイトアイは背中を押した。
「ここはインターン一人欠けたら潰れるほど、やわではない。それに、私もオールマイトと一緒に多くの国に行ったことがある。その時の経験は大変貴重なものだった。このようなチャンスは逃がすべきではない」
それを聞いた通形は意を決めて、タウラスに一礼した。
「よろしくお願いします。タウラス先生!」
4、
翌日、職員室に一騒ぎが起こっている。
「通形くんはイギリスに研修!?」
「それもあの『プリンセス』のところ!?彼女の事務所はインターンを受け入れませんよね」
「一体どのような魔法を使ったんだ!!!」
質問攻めされたタウラスは涼しい顔で爆弾発言を言った。
「『プリンセス』はオレの弟子だから」
「「「え」」」
「ちなみに、インターンを受け入れる可能性がある国際ヒーローの一覧表を作った。条件は厳しいが、推薦したい学生がいれば言ってくれ」
教師たちは食いつくように、タウラスが渡した資料を読み始めた。
★
「オールマイト、校長から昨日の事件を聞いたか?」
昼休みの時、タウラスはオールマイトと破壊事件について話し合った。
「ああ、確かに何かがあると思う。教師たちも警戒している」
「オレもフルアーマーを持ってきた」
「………ちょっと待て、あれは日本で使えるのか?よく覚えていないが、
条約などの問題があるだろ」
「国の許可を得たから大丈夫だ。それに非殺傷性武器しか搭載していない」
「大丈夫じゃない気がする……」
オールマイトは心の中でまだ見ぬ敵のために祈った。