傭兵のヒーローアカデミア   作:dukemon

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第4話

1、

 

今日は人命救助(レスキュー)訓練の日、ウソの災害や事故ルーム(USJ)という施設で授業を行う。

警戒(けいかい)のため、相沢先生、13号先生、オールマイトとタウラスの四人体制となった。

 

……もし自分が朝早く、オールマイトと共に行動しなければ、彼は人助けに活動時間を使い果たし、まともに授業を出られなかっただろ。

タウラスはバスで密かにため息を吐いた。

 

これは護衛(ごえい)の仕事でもあるから、文句を言うつもりはない。

しかし、オールマイトには教師としての心構えが足りないと思う。

タウラスの契約期間(けいやくきかん)は一年しかない。

それからオールマイトは一人で頑張らなければならない。

でないと、クビされるかもしれない。

まあ、彼は普通に一生遊んで暮らせるほどの資産(しさん)を持っているから、無職(むしょく)になっても困ることはないが。

 

「……珍しいな、タウラス。あなたがコスチュームを着るなんて」

 

傍に座っているオールマイトは話しかけた。

普段のタウラスは迷彩服(めいさいふく)やスーツを着ていたが、今日のタウラスは全身鎧を着ているから、生徒と教師たちに物珍しく見られた。

 

「仕事のためだ。雄英の教師がコスチュームを着用しないと変だろう。先日、サポート科の設備と手持ちの装備を使って作ったんだ。電子戦(でんしせん)通信(つうしん)分析(ぶんせき)に特化したものだ」

 

「なるほど、昨日、サポート科の教師がここに来たのはそういうことか」

 

「サポート科の講師(こうし)にならないかと打診(だしん)してきた」

 

「なればいいのに……サポートアイテム企業にスカウトされることがあっただろ」

 

「冗談を言うな。設計理念(せっけいりねん)が違いすぎて、かえって生徒達を混乱させる」

 

拡張性(かくちょうせい)汎用性(はんようせい)とメンテナンス性のことか?」

 

「ああ、ヒーローのコスチュームは個性に合わせて製作したものだから、基本的にオーダーメイドだ。オレが設計したものは拡張性、汎用性とメンテナンス性を重視して、使用者がある程度の知識があれば簡単に改造と修復をできる」

 

戦場で武装が壊れたら死活問題(しかつもんだい)だから、傭兵や兵士たちはある程度の機械工学(きかいこうがく)とプログラミングを学ぶようになっている。

優れている技術者が少ないということも原因の一つだ。

 

オレが作った装備は使用者を要求する分、機械に詳しい者にとって使い勝手がいいのだ。

 

「まあ、使えないオールマイトには無縁な話だが」

 

ワンフォーオールは出力が高すぎるから、サポートアイテムはすぐに壊されてしまう。

 

「………キャラバンの技術者たちが作ってくれたサポートアイテムは使い勝手がすごくいいだが、自分で作る必要があるから、わたしには無理だ」

 

「まったく、あんたが工学を学んでいれば、サポートアイテムの作成も簡単になるだろ」

 

壊されやすいなら、いっそ使い捨てタイプにするがいい。

だから、市販のものを組み合わして、オールマイト用のサポートアイテムを作った。

そのため、コストバランスもいい。

テストした後、価格を見たオールマイトは興奮したのを覚えている。

 

その時、ウソの災害や事故ルーム(USJ)の建物が見えてきた。

 

「そろそろ到着だ。ノートをもう一度見て、授業が始まったら見れないぞ」

 

「ああ」

 

2、

 

USJに入り、13号先生と合流した一行は授業をはじめようとしたが、できながった。

 

空間転移(くうかんてんい)の兆しあり、あと、五…四…≫

 

「オールマイト、空間転移個性(くうかんてんいこせい)による襲撃だ!!全員一丸になって無闇(むやみ)に動くな。これは演習ではないぞ」

 

鎧の中に備えてあった探知機(たんちき)によって、ヴィランの襲撃をいち早く気づいたタウラス。

警告を受け取って、目を閉じて五感を研ぎ澄ましたオールマイト。

即座に周辺を警戒して、応戦態勢(おうせんたいせい)に移った13号と相沢先生。

生徒たちはあっけにとられたが、すぐに指示に従って後ろに下がった。

 

≪…一…空間転移完了≫

 

機械音声と同時に、USJの中央部から黒い穴が出現し、それがどんどん広がっていき、中から人が出てきた。

 

「外に連絡できない!」

 

「ジャミングされたか。だが、オレの鎧は通信妨害(つうしんぼうがい)に耐性がある。ついさっき、校長にヴィランの襲撃を伝え……あれは!」

 

迷彩服(めいさいふく)を着て、仮面(かめん)を被った一人の女性を目にした時、タウラスとオールマイトは絶句(ぜっく)した。

 

「「ファントム!?」」

 

「オールマイト、タウラス、知っているのか!」

 

タウラスとオールマイトは答えない。

全身全霊(ぜんしんぜんれい)で、相手を警戒しているから。

 

「……それほど手ごわい敵なのか?」

 

相沢先生は声を潜めて、聞いてきた。

パニックにならないように、タウラスとオールマイトも小さな声で答えた。

 

「今のオールマイトじゃ、絶対に勝てない相手だ。相性(あいしょう)が悪すぎる」

 

「彼女との戦いは持久戦(じきゅうせん)になるから、時間制限(じかんせいげん)がある今では……そもそも、雄英にいる教師の中でまともに彼女と戦えるのはわたしとタウラスだけだ」

 

裏世界(うらせかい)の何でも屋・ファントム、個性は「分身」

自分とそっくりの分身を作り出し、それを操ることができる。

それだけなら、普通な個性でしかないが、彼女の天稟(てんぴん)がすべてを変えた。

あらゆる武器(ぶき)体術(たいじゅつ)を習得し、そのすべてがトップクラスの腕を持っている。

個性の制御もきわめて巧みで、すべての分身の強さがトップヒーロー並み。

さらに、分身も個性が使えるから、一人残したら一瞬で元の数に戻る。

 

広域攻撃はある程度有効なのだが、生徒がいる状況では無理だ。

 

「……馬鹿(ばか)げている」

 

簡単に説明した後、相沢先生は一言絞り出した。

 

「同感です」

 

13号も頷いた。

 

「ファントムがいる限り、援軍(えんぐん)は来れないだろ。オレだったら、空間転移個性(くうかんてんいこせい)で彼女の分身を雄英の各地に送る」

 

そうしたら、教師たちは彼女の対処に手一杯だ。

 

話している間、ヴィランの集団はすべてUSJに伝送(でんそう)された。

 

……ファントム以外、大したヤツはいないようだ。

その脳を剥きだした改造人間(かいぞうにんげん)は気になるが、知性を感じられないから、あしらうことは難しくないと思う。

空間転移個性(くうかんてんいこせい)の所有者は個性自体が面倒だが、本人は大したことはない。

 

「先日頂いた教師側のカリギュラム通り、13号、イレーザーヘッドとオールマイトがいますね」

 

黒いモヤのような空間転移個性のヴィランが言った。

 

「一人増えてるが、まあどうでもいい」

 

全身に手で飾っているヴィランはリーダー格のようだ。

 

死柄木(しがらき)、相手を甘く見ないでください」

 

ファントムはこちらに警戒している。

 

大金喰(たいきんく)いの護衛のくせに、指令を聞かない貴様に言われたくはない」

 

「そもそも雄英のかく乱とあなたの護衛だけが仕事の内容(ないよう)なのですけど……」

 

そのやりとりを見て、タウラスは勝ったと確信した。

オールマイトも同じだった。

 

「これから、オレの名前を言わないでくれ。相手はオレの情報を知らなかった。この優勢(ゆうせい)を失いたくない」

 

タウラスという名前を聞いたら、ファントムはなりふり構わず、生徒を狙ってくるだろ。

そうしないと、死柄木というヴィランが脱出できないから。

 

「私、相沢先生と13号先生三人で、生徒の守りに入る。ヴィランの対処は彼に任せる」

 

「わかった」

 

「分かりました」

 

その時、黒い(もや)のヴィランが宣言した。

 

「はじめまして、我々は敵連合。僭越(せんえつ)ながら、この度ヒーローの巣窟(そうくつ)、雄英高校に入らせて頂いたのは、平和の象徴オールマイトに息絶えて頂きたいと思ってのことでして」

 

「……私を狙って、このような事件を起こしたのか!」

 

「ああ、秘密兵器(ひみつへいき)もあるんだぞ。あいつらをやつけろ!脳無」

 

明らかに怒っているオールマイトに、死柄木というヴィランは後ろにある改造人間に命令し、オールマイトに襲わせた。

 

その進路を阻むのはタウラス。

大振りの殴りを躱して、相手のボディに蹴りを入れた。

だが、全然効かなかった。

 

……なるほど、ショック耐性(たいせい)か。

 

タウラスの鎧の一部が変形し、長い刀になった。

そして、刃を一閃した。

血しぶきを上げて、脳無の両腕が地に落ちた。

 

「無駄だ。脳無はショック吸収、超再生と怪力……」

 

「死柄木、脳無を呼び戻しなさい!このままじゃ(なぶ)(ころ)されます」

 

……さすが、ファントム。よく見ている。

 

タウラスは感心(かんしん)しながら、横薙(よこな)ぎで脳無(のうむ)の両足を切り落とした。

再生したばかりの腕を返り刃で落とした。

もちろん手足はすぐに再生しているが、タウラスの斬撃は脳無の再生速度より早い。

たとえ怪力の個性を持っても。手足がない状態では使えない。

 

次に、タウラスは雷光のようなスビードで心臓(しんぞう)肝臓(かんぞう)腎臓(じんぞう)膵臓(すいぞう)(はら)など、内臓(ないぞう)がある場所を逐次に抉り出した。

 

「……ここか」

 

最後はむき出しの脳部(のうぶ)に手を差し込み、いくつかのチップを抜き取った後、脳無の動きは完全に停止した。

 

 

「……あいつは一体何なのだ!!!」

 

「う……吐きそう」

 

ヴィラン(オレたち)よりヴィランらしいじゃねえか……」

 

内臓(ないぞう)(にぎ)(つぶ)して、無感情(むかんじょう)に地に捨てたタウラスを見て、ヴィランたちは震え始めた。

もし、彼の狙いは自分であれば………

もし、脳無のように生きたまま、内臓をもぎ取られたら……

そう考えて、動揺は瞬く間に広げていった。

 

それは、ヒーローの卵も同じだ。

気が弱い麗日(うららか)少女はもう胃の中にあるものをすべて吐き出した。

他の生徒たちも顔を青ざめた。

 

「……オールマイト、彼は一体何者だ!あれは完全に人殺しの技術だぞ」

 

「今は言えない。ここで彼の名前をいうと、生徒たちはファントムの脅威に晒される」

 

その時、タウラスは広場の真ん中で、ファントムと激突した。

 

 

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