1、
先手を取ったのは、ファントムだった。
「
指示を下しながら、彼女の手から五本のナイフが投げられた。
それぞれ、目、
それに対して、タウラスは刀一本で応戦した。
四本のナイフを撃ち落としたが、最後の一本は空中で軌道を変化した。
よく見ると、ナイフの柄には細い糸がある。
タウラスは半歩退いてそれを躱し、地面に差し込んだナイフを繋げている糸を断ち切った。
「………アタシの攻撃を
タウラスは無言で刀を構い直した。
★
生徒たちにはまだ早い。とオールマイトが思う。
だが、トップヒーローがいつか直面すべきものだ、とオールマイトは理解している。
眼前のタウラスは分身の
タウラスの刀は
しかし、彼にとって、周りのすべては武器だ。
たとえ相手の死体でも、最大限に利用する。
その点について、ファントムも同じだ。
彼女は自在に
自分の体の使い方は誰よりも知っているから。
あと、
接近戦では、眼前の敵には勝てない、だから分身の屍を
銃、弓、クロスボウや投げナイフなど。
見ているオールマイトも舌を巻くほどの腕前だ。
「私と先輩はたぶん
13号は目の前の戦闘を見て、溜息を吐いた。
「ああ、私はあのような体術の達人の前に無力だ、動きさえ見えない」
「……昔、私の
「どれほど?」
「一般的な
相沢先生と13号は絶句した。
……タウラスのギャラはそれ以上だと、さすがに言えない。
2、
先攻を譲ったが、タウラスの有利は揺るぎはない。
ファントムは相手がタウラスということは知らない。
死柄木の情報は
今日の彼は
もう一方、タウラスはファントムの情報をよく知っている。
何度も
何度スカントしたこともあるから。
偶然で手に入れた
それでも、タウラスは思っている。
……やっぱり、つよいな。ファントム。
戦いの発想は自由で、予測するのが難しい。
投げてきた分身の頭に
地面に切り落とされた手足に糸を巻き、トラップとして活用した。
積み上げた死体を崩し、こちらを
単純な
針のような孔を正確に射抜いて、こちらの死角を突こうとする。
接近戦では毒を仕込んだ単分子ブレードを使い、幻惑な動きでこちらを殺そうとする。
恐るべき敵だ。
★
……これほどの
一体、誰なのですか?
眼前の戦士は自分の本性を隠している。
アタシの知り合いか、有名人に違いない。
おかげで、分析しながら戦うしかない。
色々な戦術を使い、相手の対処方法によって正体を探ろうとする。
今はある程度、絞り切っている。
相手は絶対に
そこに
その中で、自分とこれほど渡り合える人間は約数十人。
体格が大き過ぎると小さ過ぎる対象は
あと一息だと思っている時、
★
「なんなんだ、あのチートどもめ」
死柄木は今回の作戦に自信がある。
雄英のセキュリティは大したものじゃないから、オールマイトのスケジュールを把握できた。
さらに、対オールマイト専用の脳無も用意してある。
あの高いくせに、
しかし、蓋をあけたらどうだ。
頼りの
無能だと思っていた何でも屋はいきなり出てきた化け物と対等に渡り合える化け物だった。
集めた戦力は二人の戦いを見て、
「なんだこのクソゲー……俺は悪くない!!」
「悪いのは当然貴様だ。無能」
化け物は嗤った。
★
「あのさ、これほどの戦力を揃いながら、勝ちを逃すなんて無理だろ」
煽る。
「
正常な判断を奪う。
「雄英のセキュリティが悪いなら、貴様の頭がもっと悪い。
「キサマァァァァ!!!!」
「貴様はどうやら自分の作戦が完璧だと信じているようだが。オレから見れば隙だらけだ。それも、クジラが通せるような隙だぞ」
「落ち着いて、
「なら、さっさとあいつを殺せ!」
「……………」
今回の仕事は
下手に刺激すると、どのような行動を出るのかが知らない。
しかし、ファントムは
ゆえに、彼女は何も言わない。
「どうやら、そちらの
「そうなのか!」
「………アタシの仕事は雄英のかく
「この…無能!!」
飛び出そうとする死柄木の左手を、ファントムは掴まえた。
「待てください」
「邪魔だ!」
そして、死柄木の右手がファントムの腕を触れた。
ファントムの腕は
…………馬鹿なのか。あいつ。
戦っているすべてのファントムは動きを止めた。
「これはあなた方の狙いなのですか?
「気づいているのか?」
「クジラのあたりで正体を気づいた」
「……ああ、なるほど。いや、護衛対象が勝手に動けば、あなたは不利になると思った。まさか、攻撃するなんて思わなかったよ」
「そうですか……死柄木、オールフォーワンの依頼はこの場で破棄いたします。
「な、なんだと!?」
「護衛対象に攻撃されたら、当然契約を解除するだろ。傭兵はヒーローほどお人よしではない」
「だけど、このまま離れると、少し不義理だと思って、最後は大技を使います。お互いにとって、よい
「いいよ。受けて立つ」
百名以上の分身は同時に単分子ワイヤーを取り出し、襲い掛かってきた。
「え」
傍らに観戦しているヴィランは一人、頭が落ちた。
彼はまだ意識があるようで、呆然と自分の躯体を見ている。
「キャアああああああ」
次の瞬間、あるヴィランの両手は同時に切り落とされた。
彼の後ろにある壁は崩壊して、その下にいるすべてのヴィランを埋めた。
数百、数千の糸は逃げ遅れたヴィランの体を壁ごと切り刻んで、死という花を咲かせた。
飛び回る血肉はまるで風に吹かれた桜のようだ。
対して、タウラスは個性を発動した。
透明の刀は彼の手に出現した。
「
一閃。
ただの一撃で、USJの半分を消し飛んだ。
広場にいる、
そのに残されたのは、
「流石です。まさか、ヴィランを一人も殺していないで、アタシの大技を破ったとは思いませんよ」
彼女はふっと思い出すように、タウラスに聞いた。
「……そういえば、我が弟子はどうなりましたか?」
「元気に世界中を飛びまわしているよ。やんちゃだけどかわいいやつだ」
「そうですか。それでは、また
彼女はオールマイトとオレに一礼して、その場から消え去った。
「全部、分身なのか……」
相沢先生はぽつりと言った。
「彼女は本体を出すことはない」
だから、何年手配されても、掴まえられない。
オレは手を振った。
次の瞬間、水の
これで、終わりだ。
3、
「さて、話を聞かせてもらいましょう。タウラス先生。あなたは一体何者ですか?」
やはりと言ったが、死柄木一行を警察に引き渡した後、報告を見た校長先生にオールマイトと共に呼び出された。
「最近、
「彼が言うことは本当です、校長先生。
「……待て、オールマイトの国際ヒーロー時代?」
「少年兵ですので、10数年のキャリアを持っています」
「………傭兵としての
秘書室でプリントした履歴書を見た校長先生は仰天した。
「何なのだ、この馬鹿げている
「オールマイトの
「今回の事件と同じ、オールマイトを狙うヴィランがいるということか?」
「依頼人の日本政府は詳しく話してくれませんでした……まあ、たぶんオールフォーワンは生きているということを薄々と勘づいたでしょう。だから大金を積んで、オレを依頼しました」
「……タウラス、あなたは確かオールフォーワンと戦ったことがあるよね」
「痛み分けだったよ。フルアーマーと『
あと一歩のところで、
「……校長先生、私はやはり教師の仕事を辞めます。オールフォーワンが生きていると判明している今、生徒たちを危険に晒すわけにはいきません」
「
「落ち着いて、オールマイト。
「オールマイトが辞める必要はありません。もともと、オレの任務は雄英の生徒を守るということも含まれています。もし、一人で手を回せない時なら、援軍を呼ぶ用意もあるから、心配はいりません」
実際、オールフォーワンと対抗するため、すでに本国と連絡した。
今、手が開いているメンバーは教官、親父と
ついさっき、二人の傭兵を雇い、作戦を伝えた。
「誰を呼ぶのか?タウラス」
「親父はいつでも来れるそうだ」
「…………………戦力過剰だ」
「そうしないと、あんたは安心して、教師の仕事に励むことができないだろ」
「これで決まりだぜ。タウラス先生、早速だが、雄英のセキュリティについて話し合いたい」
「もちろんいいですよ。しかし、教師を集めて会議を開くほうがいいです。雄英体育祭のこともありますし」
「確かに、じゃあ、明日で会議を開こう……ああ、一つ聞きたいことはあるんだが、オケアノスという個性は何なのですか?」
「……………正直、オレも把握していません」
「………共に戦った私もあまり理解できないよ。水を操るのがいいが、
まあ、強い個性なので、体への負担も高い。
オールマイトもこのことを知っているから、無闇に話さない。
それに、彼はもっとも大事なことを知らない。
その時、根津校長の電話が鳴った。
相手と短い対話と交わしてから、彼はオレとオールマイトに告げた。
「逮捕された死柄木は奪われた。幸い、死者はないそうだ」
オールフォーワンに繋がる手がかりは断たれた。
三人は暗い
タウラスは教師たちに自分が元軍人ということを伝えた。
傭兵も軍人だから、間違っていない。
そして、家に帰ったあと、タウラスは自分が雇った傭兵に連絡した。
『死柄木を奪ったな。よくやった』
『海洋王は金払いがいいから。私たちもつい奮発した』
『追跡されているか?』
『今のところはない』
『わかった、尋問は任せる』
作戦が成功したと知ったタウラスは、次の一手を考え始める。
「やはり、敵を待つのは性に合わぬ。こちらから叩き潰す」