傭兵のヒーローアカデミア   作:dukemon

7 / 17
第7話

1、

 

翌日(よくじつ)、オールマイトの友人、塚内(つかうち)警部(けいぶ)は雄英に来て、捜査の報告をした。

死柄木(しがらき)の家族も本名も経歴も不明だと言った。

オールマイトは死柄木(しがらき)人物像(じんぶつぞう)が“子ども大人”と言った。

 

「見事な観察眼(かんさつがん)だ。オールマイト、オレもそう思っているぞ。しかし、眼前の問題は死柄木ではない。オールフォーワンだ。死柄木が逃げ出したのは痛い。大事な情報は何も聞き出せなかった。死柄木はどうやって逃げたのか?」

 

攫った犯人であるタウラスは平然と嘘をつき始めた。

 

「当時の状況も奇妙(きみょう)だった。数多くの警察に見られながら、死柄木は警察署から消え去った。監視カメラの映像も消されていた」

 

「……まず考えられるのは空間転移個性。黒霧というヴィランと同じような個性かもしれない」

 

「しかし、それなら監視カメラの映像を消す理由が見当たらない……もしかすると、マインドコントロールの個性かもしれない」

 

オールマイトは即座に正解を答えた。

流石だ。

 

「精神操作の個性なのかよ!」

 

「待て、仮定するのはまだ早い」

 

「いや、オールマイトの考えは正しいようだ」

 

(さわ)教師陣(きょうしじん)たちに、タウラスは情報を流した。

 

「二人の傭兵は今朝、日本からアメリカに行った……名前はレッドとブルーだ。精神干渉の個性持ちだ。アメリカの国際ヒーローからの情報だから、信憑性(しんぴょうせい)がかなり高い」

 

レッドとブルーが洗脳(せんのう)を使えることを知っている人は数人しかいないから、彼らの情報を一部開示(いちぶかいじ)してもいいとタウラスは判断した。

 

「……あの二人なら確実に死柄木を連れ出せるだろ。オールフォーワンはまだこれほどの財産を持っていることは想定外だ。軽々と上位の傭兵を用意できるとは」

 

オールマイトは重々しく口を開いた。

 

「それについて、犯人はオールフォーワンじゃないようだ。情報源(じょうほうげん)は話せないが、異能解放軍(いのうかいほうぐん)の残党が雇ったそうだ」

 

そういう偽装工作(ぎそうこうさく)も万全を期した。

レッドとブルーに追加料金(ついかりょうきん)を出して、今回は異能解放軍(いのうかいほうぐん)の依頼だと彼ら自身の記憶を改ざんするように頼んだ。

さらに、レッドとブルーの口座に振り込んだときは異能解放軍のダミー会社を使った。

彼らのリーダー・デストロは今ころ慌てているであろう。

 

「死柄木からオールフォーワンの情報を得ようとしたか……」

 

(うら)抗争(こうそう)というヤツか!」

 

「私はこの件をすぐに上に報告する。タウラス先生、情報提供ありがとうございます」

 

2、

 

「ほう、オールマイトに言われた通り、雄英体育祭で一位を取るのか」

 

「はい、そうです」

 

午後、緑谷が訪ねてきた。

先日オールマイトが言っていた未来予想をできるだけ叶えたいという。

 

「二週間しかないが、実力を高める方法があるぞ。ついてこい」

 

タウラスは緑谷を訓練場(くんれんじょう)部屋(へや)に連れて行った。

 

「これから二週間、ここで生活してもらおう。保護者の同意を取ってこい」

 

「はい!」

 

「ちなみに、やることはワンフォーオールの制御(せいぎょ)だ。家でやれば壁や部屋を壊す可能性が高いから、ここの訓練場でする。まず、これを着れ」

 

そう言いながら、犯罪者用の拘束衣(こうそくい)を渡した。

 

「え…これは一体」

 

「これを着て、体育祭までワンフォーオールを使いながら行動しろ。いいか、ワンフォーオールは解除してはならないし、拘束衣(こうそくい)は脱げてはいけない。全身で発動する感じを掴め」

 

「はい、わかりました!」

 

「あと、日常生活(にちじょうせいかつ)のあらゆる家事(かじ)はあんたがやらなければならない。これも訓練の一部だ。細かい仕事をワンフォーオールを使用した状態でやり遂げられたら、できることは一気広げるだろ。筋トレがしたいときはオレを呼べ、専用の器具(きぐ)を用意してやる。これでいいか!」

 

「はい!」

 

 

「なるほど、そういうことがあるのか。だが、なんで私に頼ってくれなかったのか」

 

緑谷はオールマイトの弟子だから、一応彼に話した。

 

課題(かだい)を出した本人に意見を聞くのが気まずいかもしれないな。それに、緑谷もあんたが指導できる状態ではないと察している」

 

部屋中に散乱している資料を見ながら、オールマイトに言った。

すべては先日の襲撃に関する調査報告だ。

死柄木がオールフォーワンと繋がっていると判明した以来、オールマイトはヒーローの仕事に追われている。

彼と十年以上戦ってきたオールマイトの意見は必要だから、捜査情報(そうさじょうほう)をすべて見なければならない。

そのため、教師の仕事との両立はかなり難しい。

クラスの授業はまだ辛うじてできるが、個人指導(こじんしどう)は流石にできなかった。

 

「……オールフォーワンに関する情報はないし、彼の協力者も判明できない。完全に行き詰っている」

 

「そんなあんたに朗報だ。三日後、脳無(のうむ)製作者(せいさくしゃ)を逮捕する手はずは整っているそうだ」

 

「なんだと!」

 

オールマイトは目を剥いた。

そんな姿はおかしくて、思わず笑いだした。

それから、ドクターに関する情報を見せた。

 

「何という(むご)いことをしたんだ……あの外道(げどう)

 

オールマイトは食いつくように資料を読んでから、怒りを表した。

 

「逮捕を参加してもらうぞ。根津校長にも話を通しておいた。オールフォーワンの出現に備えて、キャラバンにも援軍を要請した」

 

「しかし、どうやって逮捕するのか?こいつはそれなりの社会地位(しゃかいちい)を持っているから、裁判官(さいばんかん)簡単(かんたん)令状(れいじょう)を出すとは思えない。この資料も裏からの物だろ?」

 

「ええ、だから今回はヒーローたちもヴィランたちも恐れるあいつらを頼んだ」

 

「だれだ?」

 

「これは三日後のお楽しみだぜ」

 

3、

 

百人以上の黒服と十数人のヒーローが病院に突入する光景を見て、オールマイトは呆れた。

彼らは国税局査察部(こくぜいきょくささつぶ)の役人とヒーローで、狙った獲物を決して離さない猟犬だ。

 

「よくよく考えたら、研究を続けるのは資金が必要だから、経済警察に任せるのが一番だ」

 

「そうだ。あいつはマネーロンダリングで、資金を稼いでいる。今まで発見できないのは国税庁のスパイがそれをもみ消したから。オレはそのスパイを排除して、マネーロンダリングに関する金融活動作業部会(FATF)に連絡した。国際組織の情報を無視できないから、すぐに行動した。それに、マネーロンダリングで入手した金は雄英襲撃のようなテロ活動に使われたので、早急な対応が必要だ」

 

税金取(ぜいきんと)りは確かにヒーローとヴィラン両方に恐れるものだ。私は脱税(だつぜい)しなかったが、高所得者(こうしょとくしゃ)として何回も調査を受けた……そういえば、キャラバンからの援軍は来たのか?」

 

「姿を隠して潜入している。今はもう相手の実験室(じっけんしつ)に到着したそうだ」

 

「私たちも行くぞ」

 

 

「なんで、ここはなんで知られた!ここにはワシとオールフォーワンの夢が詰まっておるじゃ。決して忌まわしいヒーローなどに好きはさせぬぞ。少し時間を稼げれば、オールフォーワンは助けてくるはずだ」

 

《そうか。なら早く彼を呼ぶがいい。こちらはあいつを半殺(はんごろ)しにする準備が整っている》

 

ドクターは振り返ると、そこには一匹の(おおかみ)が立っている。

銀色の毛と金色の目を持つ獣は首輪型(くびわかた)機械(きかい)で喋り始めた。

 

《ちっ、怨念が多すぎる。ここで弄ばれたものは何人いるんだ》

 

「き、貴様!どうやってここに入ったんだ」

 

《そんなことはどうでもいい。さっさと投降しろ。オイラたちはそろそろ耐えられない》

 

「バカか。ワシのかわいい脳無たちに殺されるがいい、この畜生め!」

 

周りの培養槽(ばいようそう)一斉爆裂(いっせいばくれつ)し、その中から多数の脳無が湧いてきた。

 

「貴様が投降など血迷った話をしているとき、ワシはもう脳無の起動準備が終わった!ここで死ね!」

 

《レギオン発動(アクセス)。報いを受けるがいい》

 

 

オールマイトとタウラスは眼前の光景を見て絶句した。

黒服もヒーローも唖然とした。

 

大量の脳無(のうむ)が地下から湧いてきた。

ここまではいい。脳無の製造工場(せいぞうこうじょう)が地下室にあると把握していた。

抵抗するため、犯人はそれを解き放つということは予想された。

だから、突入した者たちは即座に病院内の患者、医者と職員を外に搬送した。

オールマイトとタウラスの協力があるから、わずか5分で一般市民の退避を完成した。

 

だから、脳無の出現を見て、全員は戦闘態勢に移行した。

次の瞬間、トカゲ人間の姿をして全身が黒い鎧を着ている者は五人、大剣を持ってそれを細切(ほそぎ)りにした。

通路から突進してきた脳無たちも十数人のトカゲ人間に切り捨てられた。

 

謎の軍勢の強さを見て、黒服とヒーローたちは警戒を表した。

 

「こいつらは味方だ!交戦するな!」

 

「タウラス、これはキャラバンの援軍なのか?」

 

「……魔狼王(フェンリル)の個性で引き起こした現象だ。ん?その兵は……」

 

一回り小さいトカゲ人間はオールマイトを見つめている。

タウラスは彼に話しかけた。

 

「君、名前は?喋れないなら地面に書いて」

 

彼は手持ちの大剣で地面を刻み始めた。

ツバサ。と書いた。

 

「いくつ?」

 

10と書いた。

 

「……そうか、辛かっただろ」

 

タウラスはその子の頭を軽く撫でる。

 

「タウラス……まさか……」

 

オールマイトはもう思いついたようだ。

 

「これは死者たちと交流しその力を借りる個性だ。レギオンと呼ばれている。見ての通り、捜査などにも使える。外見と戦闘能力は魔狼王(フェンリル)と彼らの相性や友好度で変化する」

 

タウラスの説明を聞いたヒーローたちはようやく状況を理解した。

 

「10歳の子供に手を出したなど、許せぬ」

 

「まて、この数から見れば、ここにはすでに百人以上の犠牲者(ぎせいしゃ)が出たということか!」

 

「いや、もっと多いかもしれません。外の監視役(かんしやく)からの情報によると、外に出ようとする脳無たちも彼らに抑えてくれました」

 

目の前の異形(いぎょう)がもともと自分が救うべき者だと理解しているヒーローたちは、正しい怒りをもって、この悲劇(ひげき)を終わらせると決意した。

 

「これ以上死者たちの手を煩わせるわけにはいかない!彼らの安寧のために、我らは絶対に殻木球太(がらききゅうた)を逮捕し、正しい裁きを受けさせるんだ!」

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。