傭兵のヒーローアカデミア   作:dukemon

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第8話

1、

 

「タウラス、魔狼王(フェンリル)はどれぐらい強いのか?」

 

そういえば、オールマイトは彼に会っていなかったな。

タウラスはそう思いついた。

 

「かなり強い。ちなみに、素直でいい子だぞ。まあ、時々みんなにドン引きされるような行動を取るが」

 

話している間、二人とヒーローたちは地下に降りていく。

亡者たちに先導されたから、攻略速度は凄まじく速い。

 

「しかし、ここの脳無はUSJに戦ったものより弱いな」

 

「それはたぶん私対策に特別に製造されただろう」

 

「あのトカゲの兵士たちはそれなりに強いが、あれを相手には力不足だ。特別製は相手の実験室にいるだろ……避けろ!」

 

轟音(ごうおん)(とも)に、天井(てんじょう)(くず)れてきた。

タウラスは大気(たいき)水分(すいぶん)(あやつ)り、全員(ぜんいん)頭上(ずじょう)(たて)を張った。

お陰で、負傷者はない。

 

そして、崩落の原因は………

 

「これは、ロボットの手?」

 

巨大なロボットアームが上から地底に向かって突き刺して、崩壊を引き起こした。

地面上の建物は悲惨な状況になっただろう。

 

「…………タウラス、これはフルアーマーだろう」

 

「…………………ああ、魔狼王(フェンリル)の専用機《フィンブル》だ」

 

フルアーマーはキャラバンの上級傭兵の兵装の通称だ。

最先端の技術と超弩級の個性の合わせ技はもうオーパーツの領域に至った。

ちなみに、設計者によると、フルアーマーは星間戦闘(せいかんせんとう)宇宙戦(うちゅうせん)にも適応している。

最近は宇宙開発(うちゅうかいはつ)視野(しや)に入れて作ったそうだ。

 

もう傭兵の仕事から離れたとツッコミしたいが、本人たちはやる気が十分にある。

 

 

「で、最近作り出したのはこのテラフォーミング専用環境改造特化機種(せんようかんきょうかいぞうとっかきしゅ)、《フィンブル》だ」

 

「スケールが大きすぎて、とにかくやばいものだとわかっている」

 

フルアーマーについて、援軍の武器だと他のヒーローと役人に説明した。

オールマイトだけが詳しく話している。

 

「テストした時、一時間足らずにうちの本拠地(ほんきょち)サハラ砂漠(さばく)がサハラ雨林(うりん)になったのを見て乾いた笑いしかできないぜ……まあ、親父がそれを元に戻したから大きな騒ぎにならないが」

 

「十分にやばい状況じゃないか!」

 

「だから、地球上で出力を制限をかけた。テラフォーミング機能の中で、使えるのは物質操作(ぶっしつそうさ)大気操作(たいきそうさ)だけ。今回たぶんオレたちの道を作りたいから、機能を使わずに物理攻撃だけを使っただろ」

 

「…………もういい、頭が痛くなる」

 

言いたいことが分かる。オレもツッコミしたいのだ。

思考は完全に飛躍している。

直行道を作りたいのが分かるが、なんでフルアーマーを使った。

完全にオーバーキルだろ。

 

だが、もうやってしまったことに文句を言っても無駄だと、全員は足場を探してロボットが作った道を飛び下した。

そして、オールマイトはタウラスと共に、研究室に着いた。

 

2、

 

魔狼王(フェンリル)》オルフェはかなり怒っている。

生者と死者、どちらが大事なのか?と聞かれたら、オルフェは間違いなく生者と答えるだろ。

生きていることはそれだけ素晴らしいことだ。

たとえ死者たちと話し合える個性を持っているが、彼の価値観では死は悲しむべきことだ。

 

だけど、死者の尊厳は生者に汚されていいものではない。

 

《悔しいだろう》

 

……僕はヒーローなのに、人を守るために鍛え上げた個性が悪事のために利用されたなんて。

 

……我が子を守れぬ。さらに仇に利用されて、息子と同じ年の子供を殺させた。

 

悔しい悔しい悔しい悔しい、周囲の怨嗟、怒り、懺悔を聞き及んだオルフェは咆哮した。

 

《なら、もう一度立ち上がれ、今度こそそいつらに正しい裁きを下せ!》

 

まさに、亡者を地上に連れていくオルフェウスの如く、《魔狼王》の周りは死者の影が蠢いている。

次の瞬間、影は異形となり、実験室の脳無と科学者に襲い掛かった。

 

「わしのかわいい脳無(のうむ)たちよ。あのけだものを殺せ!!」

 

《やれるならやってみろ!》

 

ドクターというマッドサイエンティストは死者を呼び出す《魔狼王(フェンリル)》を殺し、無限に湧き出す亡者の軍勢を止めようとしたが、できなかった。

死者の兵士は数名、個性を発動し、それを止めた。

 

白い雲は出現し、脳無の視覚を遮りながら、味方の足場にもなった。

二人の兵士はそれに飛び上って、炎と氷で脳無を攻撃した。

 

雲の個性によって、亡者たちの動きは三次元的(さんじげんてき)になった。

生前より強化された身体能力と地利によって、ハイエンドの脳無でさえ簡単に彼らを捕らえられない。

 

しかし、ハイエンドの脳無は高い身体能力と優れている個性を持っている。

亡者の軍勢でも殺しきれないのは実情(じつじょう)だ。

 

両者の戦いは膠着状態となった。

 

《いや、膠着(こうちゃく)などありえない。貴様らに裁きを下すまで、オイラたちは止まらない》

 

オルフェは自分が持っている最大最強(さいだいさいきょう)の装備を使った。

日本政府には許可されたと聞いていたから、躊躇いはない

 

大気圏外に待機している宇宙船は高速に地表へと落ちながら、変形を始める。

神話の人狼(じんろう)をモチーフとした無骨(むこつ)機体(きたい)右拳(みぎこぶし)を握りしめて、狙いを定めて振り下ろした。

 

病院(びょういん)天井(てんじょう)(ゆか)地面(じめん)研究室(けんきゅうしつ)外壁(がいへき)を突き破り、無数の残骸と共に、暴虐(ぼうぎゃく)は訪れた。

一瞬で、脳無の半数はぺしゃりと潰された。

一部の脳無は再生して元の姿に戻ろうとしたが、怒る狼はそれを許さない。

脳無が再生し始めた筋肉は灰色に変えて、その色はだんだんと広がり、やがて石像となった。

 

「なんじゃ!わしのかわいい脳無になにをした!!」

 

《死体は土に還るべきだから、そうしただけだ。まだ終わらないぞ》

 

フルアーマーはの手が触れた場所から研究室の地面は土に侵食し始めた。

その土に触れた脳無は触れた場所から崩れ始め、土になっていく。

拡散し続ける物質操作(ぶっしつそうさ)攻撃は、死者の尊厳を犯した忌まわしき兵器を決して許さない。

 

勝ち目がないと理解したドクターはすぐに逃げようとするが……

 

《逃がすと思うのか!》

 

研究室の中心に竜巻(たつまき)がいきなり現れた。

螺旋(らせん)(かぜ)は周りの物を吸い込み、粉砕していく。

ドクターを守る脳無たちは一体、また一体吸い込まれて、粉砕されたかあるいは土になった。

小柄(こがら)のドクターは空に浮かぶと、叫んだ。

 

投降(とうこう)、投降じゃ!やめてくれ!!!」

 

あまりの徹底(てってい)ぶりに、死者たちでも唖然となった。

 

────やべーな、この狼。

 

死者でさえその無慈悲なコンボに引いた。

 

 

タウラスは実験室に入って、ドクターが投降して脳無が動きを停止したのを見てから、《魔狼王(フェンリル)》オルフェの頭に鉄拳を下した。

 

《痛い!父ちゃん、何やっているんだ!》

 

涙目をしていてもかわいいな、オルフェ。

どうでもいいことを考えているタウラスは顔が思わず緩んだ。

だが、すぐに顔を引き締めて叱り続ける。

 

「バカ息子!なんで《フィンブル》を起動した!!」

 

《ええ─、フルアーマーが使えるじゃないのか?》

 

「あれは緊急事態(きんきゅうじたい)が起こった時だけ使えるものだ!お前なら、これぐらいの脳無を容易く蹴散らせるだろ!」

 

《無茶を言わないで!兄さんたちが護衛任務(ごえいにんむ)に行った。オイラは一人で何にもできないよ》

 

「……(コスコス)を使うという発想はどうやらあんたの頭から完全に消え去ったようだ。最高の適性を持っているのに」

 

《あ》

 

その時、オールマイトは耐えずに聞いてきた。

 

「タウラス、キミたちの関係は……」

 

《「親子だ」よ》

 

「はあ?」

 

「まあ、色々複雑(ふくざつ)なことがあるんだが、こいつは正真正銘(しょうしんしょうめい)、オレの血を分けた息子だ」

 

とにかく、これで一件落着だ。

タウラスはそう言って、ドクターを捕獲(ほかく)した。

 

《父ちゃん、あいつはオールフォーワンが助けに来るんだって》

 

いつも思うが、オルフェは戦闘中と素の性格が違いすぎる。

 

「警戒は必要だが、彼はたぶん来ないだろ。ここに来るのは自殺行為(じさつこうい)だ」

 

「オールフォーワンは狡猾(こうかつ)だから、このような馬鹿(ばか)げた戦力(せんりょく)が集まった場所に踏み込まない」

 

全盛期の私でもやらないよ。とオールマイトは言った。

 

《そっか、それじゃオイラは手紙の準備を始めてもいいのか?》

 

「手紙って?」

 

「いいよ、オルフェ。それが契約(けいやく)なんだから、早めにやるがいい」

 

「タウラス、それは?」

 

「死者から生者の手紙だ。オルフェは一部の死者たちとそういう交換条件(こうかんじょうけん)をかわした。力を貸してあげる、その代わりに俺たちの手紙を送れ……まあ、そういう感じかな」

 

死者の兵士たちは紙とペンを持って、思考しながら手紙を書いている。

これは二度とないチャンスだと、亡者たちはよく理解している。

だから、言いたいことのすべてを手紙にしたためた。

 

 

 

 

「全員、犠牲者(ぎせいしゃ)たちに黙祷(もくとう)せよ!」

 

数時間(すうじかん)を経て、やがて彼らは自分たちの思いを伝えることができた。

 

指揮官(しきかん)は大声を出して命令した。

現場検証(げんばけんしょう)をしている役人(やくにん)とヒーローたちは手元の仕事を止め、手を上げて眼前の亡霊に敬礼する。

そして、異形たちは光の粒子に変えて、空に昇っていく。

その幻想的(げんそうてき)荘厳(そうごん)な光景を目にした人々は、この景色を決して忘れないだろう。

 

 

 




魔狼王(フェンリル)》オルフェ
オルフェウスにちなんだこの名前は、父タウラスが与えたものだ。

個性《レギオン》。
死者たちと交流し、その力を借りることができる個性だ。
異形の肉体と戦闘技術を与えて、死者たちを一時的に戦場に立つことが許される。
オルフェと相性がよい死者なら、生前の個性は使える。
最高の相性を持つ死者なら、オルフェは相手の個性が使えるようになる。

『オルフェの戦いはたぶん、オレが真似ることはできない。あれは誠と絆の強さだ』というのはタウラスの評論だ。
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