傭兵のヒーローアカデミア   作:dukemon

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第9話

1、

 

《うわ、大事件(だいじけん)になったな、父ちゃん》

 

「当然だ。ドクターとオールフォーワンが直接に手を下した犠牲者(ぎせいしゃ)は百人以上で、死体が利用された者は万人を超えたから、話題にならないほうがおかしい」

 

オルフェはオレが買った高級アパートの一室にくつろいでいる。

 

テレビの番組(ばんぐみ)連日(れんじつ)報道(ほうどう)して、新聞(しんぶん)何面(なんめん)もこの事件(じけん)話題(わだい)を取り上げた。

さらに、死者からの手紙も凄まじい反響を引き起こした。

 

死者の手紙について、オルフェの名前は出なかったが、死者と交流できる個性があるという簡単な説明をした。

 

オルフェは許可したからオレも気にしなかった。

それでも、彼の素性を口外さないように念入りに言っておいた。

 

《しかし、オールマイトおじさんのことは何もなかったね》

 

「わざと隠蔽(いんぺい)を頼んだからな」

 

オールマイトの今の状況は、あまりメディアに露出しないほうがいいと思って提案したことだ。

彼があと数年で引退するから、民衆にオールマイトがいない社会を段々と慣れてもらわないと困る。

 

「そして、他のヒーローたちの功績(こうせき)を持ち上げて、社会(しゃかい)平穏(へいおん)をアビールして、プロパガンダで治安(ちあん)維持(いじ)する……うん、普通のやり方だな」

 

《でも、相手もそれを予測したよね》

 

「ああ、だからこそこちらのアキレス(けん)を守る必要がある。特に、オールマイトが負傷したということは民衆知られたら、かなりまずい」

 

治安の悪化は政府の抑止力(よくしりょく)が弱くなることによって引き起こされたものだ。

犯罪者は警察を恐れなくなると、罪のない平民を傷つける。

政府が自分たちを守れないと思い込んだ人々は自分の力で自分を守ろうとする。

両方の衝突はやがて社会(しゃかい)情勢(じょうせい)混沌(こんとん)にするだろう。

 

日本の最大の抑止力はオールマイトに他ならない。

今はそれを失うと、大変なことになる。

 

《なんというか、歪んだね。ここの社会》

 

「別に、ある意味完成された社会だよ。オールマイトは不老不死(ふろうふし)であれば、こんなことは起こらないだろ」

 

皮肉を言っているが、良くも悪くもオールマイトは百年に一人があるかどうかの英傑だ。

社会の構造を一人で支えてきたと言っても過言ではない。

 

だからこそ、世代交代(せだいこうたい)(とき)(かなら)動乱(どうらん)が訪れる。

その時、オールマイトからの電話が入った。

 

2、

 

「……こ……これは本当なのか!お師匠が」

 

「DNA鑑定の結果だ。間違えないだろう」

 

自分の恩人で、第二の師匠グラントリノからの緊急連絡を受けて、オールマイトは彼の事務所に訪れた。

そして、恐るべき真実を知った。

 

「死柄木が持っている手はお師匠と彼女の家族の手。死柄木はお師匠の孫……」

 

「彼女の家族は全員死んだから、警察はパートナーである俺に連絡した。いくら本人の願いで彼女の家族と接触(せっしょく)しないと決めたからといって、迂闊(うかつ)だった」

 

「オールフォーワン……なんということをしたんだ!」

 

沈んでいる気持ちを、オールマイトは無理やりに奮起させる。

志村一家の殺人事件を読み解け、事件解決の糸口を探さなければならない。

さもないと、誰も救えない。

なくなったお師匠も浮かばれない。

 

その時、オールマイトの頭に一つの考えが閃いた。

 

 

「なるほど、それでオルフェの力を借りたいか……どうする、オルフェ?」

 

狼は首を傾けて、答えた。

 

《……………できない。相手(あいて)交流(こうりゅう)を拒否した。話すのは俺一人だと言った。父ちゃん、オールマイト、グラントリノと話したくはない。えーと、ナナさんの息子はヒーロー大嫌いから、オールマイトとグランドリノとの対話を拒否した、ナナさんは息子の気持ちを察して、同じく拒否した。あと、全員は父ちゃん大嫌いと言った》

 

仕方なく、オルフェが彼らと話している間、三人は事務所の外で待つ。

 

「タウラス、あなたは一体なにをしたんだ?お師匠の家族全員はあなたが嫌いって……待て、まさかアレをやったのか!!だから、ドクターの身分と居場所が分かったのか!」

 

勘が良すぎるだろ。タウラスは呆れた。

 

俊典(としふみ)、何のことだ」

 

「……死柄木を攫った犯人は異能解放軍(いのうかいほうぐん)ではない。タウラスだ。そうだろ」

 

「そうだ。で、そいつから聞き出した情報によって、前のドクター逮捕に繋がった」

 

「なんでそんなことをした」

 

「オレが攫わないと、彼はいつかオールフォーワンに救出されただろ」

 

「彼に何をしたんだ?」

 

「情報を聞き出した後、解放したよ。今頃(いまごろ)はオールフォーワンのところに行っただろ。ああ、拷問(ごうもん)はしなかったよ。レッドとブルーの力で情報を吸い上げただけ」

 

洗脳(せんのう)のことを教えたら絶対に敵対するから、話さない。

運が悪かったな。タウラスはそう考えた。

まさか、死柄木(しがらき)祖母(そぼ)はオールマイトの師匠だったとは。

 

「……………………次はないぞ。タウラス」

 

「わかっている。あと、死柄木を救出するのを諦めるほうがいい。たとえ助けられても、彼は普通にタルタロスに何十年入獄するか、終身刑になるぞ」

 

後から調べたことだが、死柄木が殺害した人間の数は二桁に上る。

オールフォーワンがわざと彼に人殺しを慣れさせたと見える。

 

「それでも……彼を助けたいのだ」

 

「わかった。最善を尽くそう」

 

甘すぎる友人を見て、タウラスは計画を修正し始める。

 

3、

 

《……聞き出した情報は以上だ》

 

 

正直、使えない情報ばかりだ。

死者たちは何にも知っているわけではない。

よほどの強い思いがない限り、普段意識(ふだんいしき)朦朧(もうろう)しているし。

死柄木の家族は自分が殺されることについて彼に恨んでいないから、意識はかなり薄い。

オールマイトのお師匠はオールマイトがオールフォーワンを倒したのを見てから、執念が消えた。

 

「過去の事件を解明したのが、大きな一歩と言える。それに、死柄木の家族が彼に恨まないと知って、ほっとした。ありがとうございます。オルフェ。」

 

《……先に言っておくけど、あの人たちが彼に許したのは家族だから、他の犠牲者は彼を許しはしないだろ》

 

それを聞いたオールマイトは静かに頷いた。

 

「だから、罰を受けさせる必要がある。自分が犯した罪を自覚させなければならない」

 

次に、オレはこれまでの情報を整理した。

 

「今回の調査で判明したことだが、志村一家殺害事件の原因は死柄木の暴走(ぼうそう)だった。家族全員の証言(しょうげん)が正しいと仮定(かてい)したなら、間が悪かったとしか言えない。意外によって引き起こされた惨劇(さんげき)だった。で、何か疑問(ぎもん)があるのか………いや、疑問しかしないな、これは。」

 

「……偶然(ぐうぜん)過ぎる。なにもかも」

 

グラントリノは絞り出したように、言い放した。

 

「…………オールフォーワンがお師匠の手を持っている時点でおかしい。彼はそういう戦利品(せんりひん)が収集する趣味はないはずだ。たぶん、とっくに計画したことだろ。師匠の命だけでなく、誇りでさえ踏みにじろうとする」

 

苦しげに、オールマイトが言った。

 

「とにかく、オールマイト、あんたは友人たちと連絡してこい。なにか異常があれば言ってくれ、オレの方が調べよう」

 

「……調査は私がやろう。いや、これはきっと私がやらなければならないことだ」

 

「わかった。なら並行してやろう。別々の視点から見たものは違うから」

 

これからの方針を決めて、ここにいる四人は一旦解散した。

 

 

家に帰ると、長男の連絡がきた。

 

《今のところ、異常はないようだ》

 

「そうか。引き続き、警護をお願い」

 

《あと、なんというが、叔父は弱いな》

 

「そりゃそうだろう。彼はオレたちのように魔境(まきょう)で生きてきたわけではない」

 

長男・ポラリスはオレの頼みを受けて、弟を警備している。

彼の隠蔽技術はキャラバンの中でも突出しているから任せた。

 

《ちなみに、叔父は今、インターンをしている。場所は……》

 

「ああ、それはもう知っている。インゲニウムのところだろ。こちらの学生の中であいつの弟がいる」

 

《彼は今、ヒーロー殺しというヴィランを追っている。叔父もサポートしている。俺の見立てでは十日間で接触できるだろ》

 

相変わらず、凄まじい情報処理能力(じょうほうしょりのうりょく)だな。

 

「まあ、危険があれば逃げてもいいよ。これは依頼じゃない。ただのお願いだから」

 

弟と息子なら、オレは迷いなく後者を選ぶ。

 

《……心配ない。それじゃ》

 

ポラリスとの会話が終わったあと、オルフェはオレに近づいた。

 

《父ちゃん。兄さんは何かをやると決めたようだ》

 

………何なのだ。この言いようがない不安は!

 

 

 

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