<Infinite Dendrogram>~魔弾の射手~   作:夜神 鯨

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すいません遅くなりました。
次はすぐ投稿します。


因縁

 □■<ジャンド草原>

 

「はぁ……冗談だろう」

 

フランクリンの目の前では悪夢のような光景が広がっていた。

 

<ジャンド草原>に展開していた“スーサイド”の全滅。

 

それだけではなく、パンデモニウムから吐き出し続けている後続の“スーサイド”達も放出される端から殺され続けている。

 

「……まったく、大赤字だよ」

 

本来ならば5000体でも十分ギデオンに打撃を与えれるはずだった。その筈だったのにその倍以上の損害を出し【DGF】すら撃退された。

 

それだけの損失を出しておきながらこちらの戦果としてはギデオンの街をかき乱し、<マスター>を中心に幾ばくかの死体を拵えただけ。当初の目標を完遂する程十分な戦果を挙げられていない。

 

こちらにまだ戦力が残っていると言っても、この調子で殲滅され続ければ目標を完遂するどころか、これ以上ギデオンや<マスター>にダメージを与える事すら難しいだろう。

 

「やはり、彼女は厄介だ」

 

未だ前線で“スーサイド”を殲滅しているスーツ姿の女性、その戦う姿はまるで舞踊、屠った命を神に奉納するかのように彼女は舞う。踊るように途切れることなく動き回るその動きは見ているだけで魅了されてしまいそうになる。

 

一瞬そのような思考に陥ったフランクリンは首を横に置きく振り、思考をクリアに保とうとする。

 

加奈の動きなんかはどうだっていい。問題はこの前線に<超級>が3人もいること、しかもそのうち2人は敵側。

 

【破壊王】を名乗る男は未だ動いていないものも、2人が揃って暴れ始めたら手が付けられなくなる。

 

……だから

 

「だから、頼むよ」

 

「あぁ、任せてきな」

 

誰も居ないはずのパンデモニウムの甲板でフランクリンがそう問うと、虚空から返事が返ってくる。

 

そして、その男はまるで、最初からそこにいたかの様に、当たり前に自然とそこにいた。

 

「アンタには恩もあるし、それに…」

 

男はそこで言葉を止めて戦場で戦う加奈をジッと見つめた。

 

「……アイツには恨みもあるしな」

 

そう言い残すと男はパンデモニウムから姿を消した。

 

「さあ、これで全部だ!!今の私に出せる手はすべて見せた!」

 

フランクリンは両手を広げ大空を見上げて叫ぶ。

 

「……かかってこい」

 

そして<ジャンド草原>を見下ろすパンデモニウムの上から再び宣戦布告をしたのだ。

 

 

☆☆☆☆

 

「かかってこい、ねぇ…フフ、随分と笑わせてくれるわ」

 

未だパンデモニウムから排出され続けている増援を逐一駆除しながら、フランクリンから二度目の宣戦布告を聞いた加奈はニコニコと笑う。

 

地の底から湧き上がるような冷徹で低い声、フランクリンに視線が固定され一切動かない瞳。表情はニコニコと笑ってはいるものの、その姿を見た者が笑えなくなるような雰囲気を醸し出している。

 

気の弱いものなら意識を失ってしまうのではないかという程の重苦しい空気の中をパンと乾いた音が響く。

 

「おい、加奈。言葉とは裏腹に目が全然笑ってないぞ」

 

「おっといけないわね」

 

シュウに頭をハリセンで叩かれた加奈はすぐに気配を変えて、自分を叩いたシュウへと向き直る。

 

「その様子だと要件は終わったようね」

 

「あぁ、だから交代だ」

 

そう言うとシュウは静かに、しかし迅速にその巨大な存在感を隠しながら接近してきた【KOS】を殴った。

 

おそらくは【オキシジェンスライム】を強化したであろう【KOS】ならばこそ、闘技場で見せたように物理攻撃は効かないはずだが、シュウの攻撃を受けた【KOS】は大きく吹き飛ばされると同時に砕け散った。

 

「その様子じゃ大丈夫みたいね、私のビットも一度下げさせてもらうわよ」

 

「構わないさ」

 

加奈は短く「そう」と返事をするとシュウが戦闘を開始した方向とは反対、フランクリンの元へと向き直る。

 

『やあ、ドクターフラミンゴ聞こえてるかしら?』

 

『……ああ、聞こえているよ』

 

『そう良かった。ならこれは見えるかしら?』

 

そう言って加奈は上空へある装置を投げる。

 

装置は空中で停止し、フランクリンが使っていた道具の様に空中に半透明のスクリーンを展開した。

 

『それは私たちが作った物とおなじ…』

 

『そう、まあこれは機械というよりかは魔道具に近いものだけど、さて、ドクターフラミンゴこの光景に見覚えは無いかしら?』

 

加奈が展開したスクリーンには一つの建物が映っている。その光景を見ていた多くの人たちにはその建物が何かまでは分からなかったが、その建物の周りの景色、スチームパンクを連想させるその風景から映像の先がドライフ皇国であることだけは理解できた。

 

『その建物は私のギルドじゃないか』

 

『そう、その通りそして……これがこの戦争の代償よ』

 

加奈がそう言うと映像の先、<叡智の三角>が所有するホームは連鎖的な爆発を繰り返し、内側に崩れ落ちる様にして崩壊していく。

 

『………』

 

『相変わらず素晴らしい腕だね、どれだけ建物に防備を用意しようとも、内側から主要部位を壊されれば後は自壊していく』

 

一言も言葉を発しないフランクリンとは対比するように、加奈は手を叩き拍手をして見事に爆破解体された建物へ喝采をしている。

 

『よくできた映像だけれどもそれが、どうかしたのかい?』

 

『まあ、信じるも信じないも好きにしなよ、この戦闘が終われば嫌と言う程わかるんだから』

 

本当に映像だと思っているのか、それとも動揺を隠すための虚言か、表情を変えず余裕を見せるフランクリンに加奈は淡々とそれだけを言い放つ。

 

『……』

 

『これが私の宣戦布告よ、後悔しなさい安易に戦争なんかを始めたことに』

 

「そうやって、お前は平然と大事なものを壊していく」

 

加奈が言葉を言い切ると同時に立っている場所へ片手斧が飛んでくる。

 

「!?」

 

いち早く反応したヴァルキリアが飛来してきた片手斧を撃ち落としたことによって被害は無かったが、加奈の宣戦布告を台無しにするには十分であった。

 

「まるで自分が正しいかのようにふるまいやがって…そういうところがきにくわねぇんだよ」

 

片手斧が飛んできた方向を見ると、筋肉質の男が4mもあろう巨大な槍を担ぎながら加奈達へと近付いて来ていた。

 

「あら、情報が無かったからてっきり消えたものだと思っていたけど、まだこの世界にいたのねジョニー」

 

「あぁ、お前さんがインしていないって聞いていたからな復帰していたのさ、フランクリンに匿ってもらってたから気付かなかっただろう」

 

ジョニーと呼ばれた男は間合いに入るやいなや、担いでいた槍を加奈へ向かって突き出す。音速を優に超す速度で突き出された槍は空中で僅かに撓りながら、加奈の腹へ向かって進む。

 

突き出された槍をいとも容易く回避した加奈はお返しとばかりに両手に構えた拳銃(ヴァルキリア)を発砲した。

 

しかし、ジョニーは向かってくる弾丸を槍の柄で弾くと再び槍を振るう。

 

「腕は鈍ってないのね」

 

「お前さんこそな、忌々しい」

 

しばらく攻防が続いたが、槍の間合いから近づけないことを嫌った加奈は、後方へステップを踏み、間合いを取ろうとする。

 

「甘い、そうはさせない」

 

しかし、加奈が後方へ飛び退いた分ジョニーは間合いを詰め、自身の間合いを保ち続ける。

 

「ならばこうね」

 

間合いが取れないと悟った加奈は瞬時に武装を第五形態《レギンレイヴ》へと切り替えジョニーの死角から攻撃を加える。その隙に間合いを取ろうと再び後方へと飛び退いた加奈の頬を槍の穂先が掠った。

 

「なッ!」

 

『マスター!』

 

加奈の口から驚愕の声が漏れ、ヴァルキリアが叫ぶ。

 

なんとか間合いを取ることには成功したが、加奈の頬からは赤い血液が滴るように垂れ、火照るような熱が傷口に宿る。

 

「おいおい、覚えてねぇーって無理もないか。お前さんには何回も殺されたが、しっかりとした接近戦をやるのはこれが初めてだもんな。」

 

ジョニーは「ならしっかりと名乗らねーとな」とぼやくと槍を構えなおし加奈へと向き直る。

 

<CCC>(カタストロフィック・カオス・コーズ)のリーダー、【蛮族王】ジョニーだ。俺たちの楽しい略奪ライフの為にお前を殺すぜ」

 

「ならば<ヴァルハラ>の党首として【魔弾姫】加奈が貴方へ再び引導を渡しましょう」

 

互いに口上を述べ終わると同時に再び戦いの火蓋が落とされるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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