<Infinite Dendrogram>~魔弾の射手~   作:夜神 鯨

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更新が遅くなって本当に申し訳ありません


〈超級激突〉後

「はぁ、疲れた」

 

火照った体を冷やす為、ジャケットのボタンをはずしながら加奈はため息をつく。そして地面へ突き刺さっているビットへと寄りかかる。

 

『お疲れ様です、マスター』

 

加奈を気にかけ声をかけるヴァルキリアだが、彼女もかなりの重症を負っている。自身の身体を分割して出しているビットは半数近くが大破、残ったビットも戦闘に支障が無いが大小様々な傷が残ってしまっている。そのフィードバックがすべてヴァルキリアの身体へと押し寄せているのだ。

 

彼女の身体をを完全回復させるまでにはそれなりの時間を要することになるだろう。

 

『しかし、マスター《魔弾の射手》を使ってしまってよろしかったのですか?』

 

「仕方ないわ、あれ以上こちらの損害を拡げるのも嫌だったし、これ以上時間をかければ増援がくる可能性もあった。あれでベストよ」

 

《魔弾の射手》は【魔弾姫】の持つ奥義。射手が生涯で6発だけ放つ事の出来る因果逆転の魔弾を手に持った銃から放つ事が出来る。

 

6発しか放つことができないが、その効果は強大で相手に命中した事を確定してから放たれる弾丸は必中とも呼べる効果を持つ。故に回避する事は不可能、どれだけ素早く動いても、どれだけ遠くに行っても1度標的を定めた魔弾は地の果てであろうが標的を追い回し指定した部位を確実に貫く。

 

必中の魔弾は確かに強力だがいくつかの弱点を抱えている。

 

まず1つ、魔弾を放つためには相手を視認する若しくは何らかのマーキング等をする必要があるということ。

 

更に当てる部位を意識する必要があるため目視できていない部位だとその部位を正確に認識しなくてはならない。その為、初見のモンスター等が相手だと効果を十分に生かせない事が多い。

 

2つめは《魔弾の射手》はあくまで弾丸に必中の付与をするだけであって魔弾の威力は弾丸本来が持つエネルギーに依存するということ。

 

その為、命中する前に弾丸が持つエネルギー以上の攻撃に接触すれば弾丸はその存在を維持出来ずに消滅する。更に相手の防御力が弾丸の威力を大幅に上回っていれば弾丸は指定した部位を貫けずに魔弾は効力を失ってしまう。例え心臓や脳を目標にしたところで魔弾の持つ威力を大幅に上回る防御力を持たれると魔弾は目標に到達する前にエネルギーを使い果たして消滅してしまう。

 

そして3つめ、これが最も大きいデメリットで、1発撃つ事にHP、MP、SPを除く全てのステータスが1/6ずつ減少していくということ。

 

たとえ<マスター>であっても減少したステータスは1度死亡しても復活時に回復することは無い。ステータスを元に戻す唯一の方法は6発全ての魔弾を撃ち尽くし復活するしかない。しかし、魔弾は1日最大でも2発までしか撃てない。その為、全弾撃ち尽くすまで最短でも3日はかかる。

 

「さてと、増援に行きたいところだけど…」

 

『その必要は無いみたいですね』

 

加奈とヴァルキリアの視線の先では、巨大な無限軌道で大地を踏み締める陸上戦艦がフランクリンのパンデモニウムから吐き出されたモンスター群を、艦体の両側にある五連装砲塔で若しくは無数の発射管から放たれるミサイルで、それでなければ装甲の各部から現れるセントリーガンのレーザーで砕き、焼き、切り裂いている。

 

そこで行われているのはただの蹂躙。先ほどまでギデオンの街を焼き尽くそうと殺到していたモンスター達は加奈とヴァルキリアが殲滅していた速度以上で消し去られていた。

 

「あぁ、これじゃあシュウの出費が凄いことになりそうね。…こうならない為にわざわざ出張ってきたんだけど無駄になっちゃったかなぁ」

 

『今後の事を考えるとシュウ様の貯蓄が心配ですね』

 

「まあ、最悪の場合<エインヘリャル>から物資の支援をしましょう。彼が全力を出せるか否かはこの国の戦力に大きく関係するしね」

 

『かしこまりました。この騒動が終了したのち、<エインヘリャル>の資材備蓄と資金状況を今一度確認します』

 

「そうなると彼らも招集してどの立場に身を置くかか確認しないとね」

 

『<ワルキューレ>を招集するのですか?』

 

「えぇ、ドライフに所属しているメンバーもいるし参加するのか傍観するのか決めてもらわないと」

 

<ワルキューレ>は<エインヘリャル>の組織内にある上級職の<マスター>で構成される部隊。所属しているメンバーの所属国や組織はバラバラで、一定基準以上の能力があること、<エインヘリャル>の害になる行動をしない事この2点を守れば入ることが出来る。

 

<エインヘリャル>の害になる行動をしない事でティアンを無差別に殺害するような行動はとれなくなるが、<ワルキューレ>に所属するだけで、情報収集や金銭の貸し出し、道具の調達に、人員の貸し出しなど

<エインヘリャル>から様々な支援を得ることが出来る。

 

メンバー達は普段<ワルキューレ>と何も関係のない活動をしている者が多いが、<エインヘリャル>からの要請か隊長である加奈の招集がある時は半強制的に活動をすることとなる。

 

メンバーは要請や招集に対し参加するか傍観するかを選ぶことができる。参加すれば報酬が出る他、任務の達成度合いによっては特別報酬が出る為、参加する者が多い。

自分の所属している国が標的となることもある為、傍観も選ぶことが出来る。傍観を選ぶと報酬を得る事は出来ないが、敵対行為をしなければ特にデメリットもない。

 

しかし敵対した場合はメンバーから除外され<エインヘリャル>からの支援や各国にある拠点等も使用できなくなる。それ以外にも<エインヘリャル>の内部情報を漏らせば、この世界にいる間常に<エインヘリャル>から監視され、クエストの妨害や<ワルキューレ>が追手として報復行為を行う。

 

もしドライフ皇国との戦争が開始された場合、加奈はアルター王国側に立ち参加するつもりであった。<ワルキューレ>のメンバーに参加要請を出すかは決めかねているが、ドライフ皇国側で参加することはさせないつもりだ。

 

今回のギデオン襲撃にドライフ皇国の影があるのはフランクリンの立ち回りから明らかだ。デンドロの世界であるからこそフランクリンの行動は<マスター>の暴走と言い張ること出来るかもしれないが、これは明らかな戦線布告、開戦の狼煙に他ならない。

 

そして今回、フランクリンの目的が王女の誘拐であることは行動から想定できる。上手くアルター王国の士気を砕く事が出来ればよし、そうでなくても王女の誘拐さえ成功してしまえば、彼女を人質にすることもできる、さらに殺してアルター王国の退路を断つという使い方もできる。使いどころがいくらでもある彼女の身柄は持っているだけで強力なカードになりうる。

 

「……他の都市へ攻撃かあるいは第二攻勢でもあるかと思ったのだけれどもそんな気配はないわね」

 

『そうですね、ギデオンの周辺は未だ騒がしいですが、この都市から離れると静かなものです』

 

今回の事件にドライフの影がちらつくならばタイミングをずらしての第二攻勢や、他の都市への攻撃などの可能性が十分にあった。なにせ闘技場の地下に自爆用のモンスターを配置し“物理最強”までもを送り付けているのだ、こんな状況で次の攻撃に備えないほど私は間抜けではない。

 

わざわざデメリットのある《魔弾の射手》を使用してまで【蛮族王】との戦闘を切り上げたのは、《魔弾の射手》が持つもう一つの効果を得るためになるべく残弾を減らしておきたかったと言う思惑と、この後にあるかもしれない第二攻勢に備える為と言う理由があった。

 

前回の戦争でアルター王国の力をそぎ取ったドライフ皇国からすればこれをきっかけに他の都市に対して<マスター>を使った攻勢をかけてもおかしくはない。

 

複数の地点へ攻撃を仕掛け戦力が分散したところで一気に首都を制圧。そうすれば<戦争結界>など使わなくても戦争が起きる前に国が亡びる。

 

狙うならば確実にこのタイミングだと思う、フランクリン一人に対し複数の<マスター>も疲弊し<超級>が3人もこの地に拘束されている。

 

私ならばこのタイミングで一度威力偵察を行うのだけれども、本当にフランクリンの独断なのか、はたまたドライフ皇国内の派閥争いでもあるのかそれを知るすべが無い今、判断する事は出来ないが、少なくとも現段階では第二攻勢が始まる兆候はない。

 

まあ、最悪の場合を警戒して<エインヘリャル>の即応部隊には既に戦闘配置の指示している。ここ以外で騒動が起こればばすぐに駆け付けて時間稼ぎくらいはできるはずだ。

 

『この後、次の攻撃があると思いますか?』

 

「どうでしょうね、ここまで念入りに立てた作戦。王女の誘拐が目的だったとしても。私なら他の都市に対して同時に攻撃を仕掛けてるところだけど……何らかしらで手を出せない理由があるのかもね」

 

偶然にもこのギデオンには王国側の超級が3人も集まっている。私やシュウはそれなりに損害を出しているし、王国側の戦力を削るのならこのタイミングを逃すのは惜しい。

 

しかし、私やシュウが居合わせ、フランクリンの計画を邪魔しているのはあくまでも偶然であり、フランクリンの反応からもこの作戦が囮だと言うことは無いだろう。だとすればこの後に他の都市に攻撃を加える可能性は非常に低いとも思える。

 

「ここまで待て増援が来ないのなら恐らくは次は無いでしょうね。私達が現れたのはあちらにとっても誤算だろうし、こちらが優勢になりつつある現状で不用意に戦火を広げれば、他の戦力が介入する隙を見せる事になる。自国の事を考えるのならこれ以上の冒険は避けるでしょう」

 

『そうだといいのですが、正直な話、私も今から連戦するのはきついですから』

 

「それは、同じくよ。まあ、でももし次の攻撃があるようならドライフ皇国に潜伏している<エインヘリャル>構成員にもう一仕事頼みましょう」

 

『次は城壁でも壊しますか?』

 

「いえ、城を落とすわ。全損無理だろうけど、その為の準備は既に終わっているしね」

 

フランクリンのホームを爆破したのも皇王宮を破壊しようとするのもすべて全国に散らばる<エインヘリャル>の構成員のおかげだ。

 

大衆に紛れ加奈の合図で行動を開始するティアンを中心とした戦士達。彼らと<ワルキューレ>が居るからこそ<エインヘリャル>は孤児院の運営から商売まで手広く活動できているのだ。

 

『ドライフに居る構成員には負担がかかってしまいますね』

 

「そうね、今夜が終われば彼らにはしばらく退避してもらうことになることだしかなりの無理をさせる事になりそうね。まあ、それはアルターにいる者達もだけど」

 

この事件を皮切りに戦争ムードは両国共に高まることになろうと加奈は予測する。アルター王国がどれだけ戦争を避けようともこの戦争は始まる。そしてドライフ皇国がこういったアクションを起こしてくるとなると開戦までの猶予はそれほど長くない。

 

なるべくなら<エインヘリャル>に関わるティアンは戦争に関わることなく他国へと避難してほしいものだ。

 

『それにしても戦争ですか……嫌ですね』

 

「えぇ、本当に嫌になるわ」

 

「……」

 

人の命も物資も、資金さえもが簡単に失われてしまう人類で最も愚かな消費行為。現実だろうがこちらだろうがやらなくて良いのならばやらないに越したことはないのだ。

 

数秒の沈黙が流れる。ギデオン外壁部ではいまだに戦闘の光と戦闘音が鳴り響いていた。

 

「さて、まだ戦闘は終わってないわ。ヴァル行けるかしら?」

 

『もちろんです』

 

この後に訪れるであろう戦争の足音を微かに聞きながら、加奈とヴァルキリアは戦闘が続く戦場へと戻っていくのだった。

 

□■<ジャンド草原>

 

<ジャンド草原>での戦いは、終結を迎えようとしていた。

 

 五万五千を数えたフランクリンのモンスター軍団は【破壊王】の手によって半数を倒され、残る半数も態勢を整えた<マスター>と未だ健在の【破壊王】によって徐々に掃討されている。

 

「こっちも大分片付いたわね」

 

草原を蹂躙している陸上戦艦の甲板へと降り立った加奈とヴァルキリアは大量の重火器で蹂躙されている

<ジャンド草原>を見てため息を漏らす。

 

「まあ、お前たちが大暴れしたお陰もあるし、コイツも出したのもある」

 

「あら、シュウ調子よさそうね」

 

「そっちはずいぶんとボロボロになったな」

 

加奈達が後ろを振り向けば頭の上半分を覆うように熊の頭部の皮を被った長身の男、シュウ・スターリングが立っていた。

 

「まあね、ちょっと相性が良くなかったみたい。それに圧倒的な戦力差を見せおかないと繰り返しになりそうな感じもあったしね」

 

「おお、怖い怖い。ってかそこまで追い込むお前が悪い」

 

爆発と熱線が降り注ぎ、人々の熱狂とモンスターの悲鳴が響き渡る<ジャンド草原>とは違い陸上戦艦の甲板上では線上にいるとは思えない緩やかな空気が流れていた。

 

「それは酷いわ。私は彼らに決して無理なお願いはしていないはずだもの」

 

「ハハハ、まあそうだろうな。俺やお前からすれば大したことない要求だったろうよ。まあ、そんなことはどうでもよくて、お前さんが爆破した建物は本物か?」

 

先ほどまで雑談をしながら緩やかに流れていた筈の空気がシュウの言葉が進むと同時に重くなっていく。気の弱い者ならその空気に当てられただけでも意識を失ってしまうほど重厚な空気が甲板上を支配している

 

「勿論、本物よドライフにいる<エインヘリャル>工作員に指示をして爆破してもらったのよ」

 

この重苦しい空気の中、加奈は何事もないかのようにシュウの質問に答える。

 

「それじゃあフランクリンのやってることと何も変わらねぇだろ!!」

 

先ほどまで笑顔で笑っていたシュウは怒りを露わにして加奈の胸倉を掴む。

 

シュウの突然の行動に対し、加奈は一切の抵抗をせず、ただなされるがままに胸倉を掴まれ身体を宙に浮かせる。

 

「もちろんシュウの言いたいことも分かる。しかし目には目を歯には歯をよ。こちらが報復もせずに守ることだけを貫き通せばドライフ皇国は調子づき、勢いのままこの国は蹂躙されるだけになるわ」

 

「だからと言って無関係な市民を巻き込んでいいわけじゃない」

 

ヴァルキリアが心配そうに加奈を見るが加奈はヴァルキリアに一度だけ視線を向けてシュウへと向き直る

 

「私だって無関係な人々を巻き込みたいわけじゃない。けれど今回の作戦がアルター王国攻略に有効であり、しかも被害も<マスター>とその資材のみだと分かればドライフ皇国は繰り返しこの戦術を使うでしょう」

 

今回の襲撃事件にドライフ皇国が明らかに関与していると分かっていてもそれを関連付ける証拠がない。いくらクランクリンやその他<マスター>を尋問して情報を吐かせてもドライフが関与の否定を続ければそれ以上問い詰める事も出来なくなる。

 

そうなればこの戦術が使えなくなるまでドライフは繰り返し同じようなことを繰り返すだろう。アルターに見切りをつけた<マスター>達にドライフへの移住を条件に様々な街で暴れさせてもいい。失敗した者は切り捨てて成功した者だけを迎え入れれば自分たちへの関与も否定でき、戦力の強化にもなる。

 

そうさせない為にもドライフには知っていてもらわないといけない。アルターにも確固たる証拠が無くても攻撃を仕掛けてくる頭のネジが外れかかっている<マスター>が居ると言うことを。この戦術には大小なり被害が生じるものだと言うことを。

 

「力を見せなければ繰り返しやられるわよ。ドライフもそうだしそれ以外の国も人員を割いて来ている。ただ守るだけじゃ更なる被害を生むことになる」

 

「チッ、わかってる。わかってるさ、ただの八つ当たりだ気にしないでくれ。」

 

加奈の言葉を聞いたシュウはバツの悪そうな顔をしながら加奈を掴んでいた手を放す。約1M程の高さまで持ち上げられていた加奈は重力に従って落下し、華麗に両足を甲板へと着けた。

 

「もう、この戦争は止められないわ。元より前回の戦争でこの国を亡ぼすつもりだったドライフもちろん。この事件でアルターも引けなくなったでしょう」

 

「だろうな」

 

シュウは大げさに両手を上げながらやれやれといった様子で返事を返す。

 

「それで、貴方には今回の出費なるべく抑えて欲しかったのだけども、どうかしら?私の介入で少しは出費が抑えられた?」

 

シュウに持ち上げられたことで乱れた衣服をヴァルキリアに整えてもらいながら加奈はシュウに問いかける。

 

闘技場に紛れている化け物達の問題も含めこれから起こるであろう戦争で全ての戦線を抑えきる自信が加奈にはなかった。【獣王】を始めとしたドライフ<超級>達彼らを抑えるにはシュウの力が必要不可欠だ。その為にシュウにはなるべく消費を抑えて貰いたいという思いが加奈の中にあった

 

「さあ、どうだろうな。お前さんが参加してない場合の物資消費量が分からんから何とも言えんが。物資の補充をしなくても戦争はギリギリ耐えられるぐらいには抑えられたと思う」

 

「そう、ならよかった」

 

闘技場に居る厄介者に対処できるのはシュウだけだ。奴がどう出るかによってはシュウは物資の補給に向かえない可能性もある。

 

「そういうお前さんはどうなんだ?かなりMPを消費したんじゃないか?正直のところ戦力は1人でも多く欲しい俺が消費を抑えてもお前が戦えなければ意味がないぞ」

 

「……幸いMPの消耗はかなり抑えられているわ、ヴァルの損傷が激しいだけでMP自体は1週間程の時間をくれれば全快する。問題があるとすれば中央大闘技場にいる厄介者がそれを許してくれるかだけれど」

 

せっかく〈墓標迷宮〉でドラゴン達を狩って得たMPは既に大半を消費してしまっている。残った指輪は3つと少し、ヴァルキリアが自身のMPを使用したという事もあって今回はMPの消耗が少ない。

 

「こんなことなら【ゴゥズメイズ】との戦闘で遊ばなきゃよかったわ」

 

「まったくだ、レイから話は聞かせてもらったが、お前さんが本気を出せばあんな個体者の数分で塵になってただろ。久々にこっちの世界に来たからって遊び過ぎたな」

 

シュウの言っている事は最もで《ブリュンヒルデ》を最大稼働させていれば【ゴゥズメイズ】なんてすぐに撃破できた。しかしそうしてしまえば中にいた子供たちごと山賊団の拠点も消してしまっていただろう。

 

「少しレイ君の眩しさにあてられたかもしれないわね」

 

「まあ、それは少し分かるな。最後はレイに譲っちまったしな」

 

 

シュウがそう言うと同時にそびえたつパンデモニウムへと視線を向ける。それにつられて加奈もそちらへと視線を向ける。そこでは今まさに半壊した<マジンギア>と満身創痍のレイ・スターリングが最後の戦いに身を投じていた。

 

「どうやらお姫様の奪還は無事に済んだようね」

 

「そのようだな。あっちもじきに終わるだろう」

 

半壊したとはいえカスタムされた<マジンギア>との戦闘だ、レイが負ける可能性も十分にある。しかしシュウの顔はレイが負ける事など一切考えていないような不敵な笑みを浮かべている。

 

「貴方も随分と甘いようで」

 

「…かもな」

 

そんな会話をしている内にパンデモニウムを上部が一瞬光り、次の瞬間には光の塵となって消え失せる。

 

 

「どうやら闘技場の方は問題ないみたいね。これからの事を考える方が嫌だけど」

 

「あっちはフィガ公達が上手くやったんだろう。しかし、やっと終わりだな」

 

フランクリンが放った最後のモンスターが<マスター>達によって倒されたことでアルター側の勝利が確定する。

 

ギデオンの内部も街の周辺でも特に目立った動きはなく。援軍や更なる攻撃が開始される兆しもない。

 

これにて 決闘都市大規模テロ計画“フランクリンのゲームは終結したのだった


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