<Infinite Dendrogram>~魔弾の射手~   作:夜神 鯨

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再会

『なるほどクマね、仕事で半年間INできなかったクマか』

 

『そうよ、しかも久しぶりにINしたらノズ森林でPKに巻き込まれたんだからたまたもんじゃないわよ』

 

『お前さんは昔からPKが嫌いだったからな。全PKを震い上がらせた【PK殺し事件】が懐かしいクマ』

 

『ちょっと、昔の話でしょ、勘弁してよね』

 

 再開の挨拶を交わした2人は近くのカフェへと入り、昔話に花を咲かせながら近況報告を行っていた。

 

『しかし、<SUBM>との戦闘にドライフ皇国との戦争ね....酒場である程度の情報収集はしたけど、まだ知らないことも多かったのね』

 

『相変わらず掲示板なんかは見ないクマね』

 

『そうね、ネットに頼るのは楽だけど、楽しみが減っちゃうからね』

 

 加奈は<Infinite Dendrogram>が大好きだ、そしてこの世界を最大限この楽しむ為に、加奈はこの世界の住民となるべく同じ目線で過ごすように心がけている。その為、この<Infinite Dendrogram>起きた出来事や情報を全てこの世界の内で取得するようにしているのだ。

 

『それにいいのよこっちの方が新鮮で、それにゲームくらいズルなしでやりたいしね』

 

『まあ、楽しみ方は人それぞれクマ。自分が思った通りに行動するのが一番クマ....おっと忘れるところだったクマ』

 

 そう言いながらシュウが取り出したのは2丁の拳銃と大量のリルの入った布袋だった。

 

『あらこれは、私がデスペナルティでまき散らしたアイテムじゃない?』

 

 そこにあったのは【月光】と【陽光】。半ば見つけるのを諦めかけていた加奈の装備品だ。

 

『なぜ、あなたが持っているの?』

 

『弟が<ノズ森林>でPKにあったらしくってな、その復讐をしに行った時に拾ったんだ』

 

『そう、ありがとう。ちなみに復讐はできたのかしら?』

 

 加奈が聞くとシュウは残念そうに首を振った。

 

『いや残念ながら。ただ相手の名前だけはわかった』

 

「誰なのですか<ノズ森林>でPKを行っていたのは?」

 

 それまで、会話に入らず給仕をしてくれていたヴァルキリアが、加奈とシュウの空いたカップに紅茶を注ぎながら会話に入る。先ほどまで机の上を占領していたあった空の皿はすでに無くなり、代わりに3つのティ-カップと紅茶の入ったテーポットが運ばれてる。

 

『ありがとうヴァル』

 

『おう、サンキュークマ。こういう時にメイデンはいいクマね....いやこんなに従順なメイデンもあんまり見ないクマけど』

 

 シュウの言葉に加奈も知り合いのメイデンを何人か思い出すが、シュウの言う通り確かに従順な<エンブリオ>はあまり見たことが無かった。

 

「私の事はいいですから、それより誰なのですか?PKの犯人は?」

 

 記憶を探りながらヴァルキリアの方を加奈がじっと見ていると、ヴァルキリアは恥ずかしそうに顔を赤らめると話題をPKへとそらす。

 

『ハハハ、それよりPKクマね。今回のPKは王都を包囲するように東西南北の四方向で同時に行われた集団PKだったクマ』

 

「<ノズ森林>だけではなかったのですね」

 

『そうクマ。東の<イースター平原>は<K&Rカアル>。南の<サウダ山道>は<凶城マッドキャッスル>。西の<ウェズ海道>は<ゴブリンストリート>。そして北の<ノズ森林>は<超級殺し>と呼ばれるマスターがおこなったクマ』

 

 他の3カ所と違って加奈の居た<ノズ森林>だけは一人のマスターが起こしたPKのようだ。

 

『<超級殺し>ねぇ、ここで優雅にお茶を飲んでるってことはもうPKは滅んだみたいね』

 

『そうクマ、東は“月世界”の扶桑月夜をはじめとしたクラン<月世の会>が、南は“無限連鎖”のフィガロ。西は“酒池肉林”のレイレイ。そして北は“不可視狙撃”の加奈。まあ狙われたPK達もかわいそうだったクマな』

 

 シュウの口から出てきた名前は加奈からすればずいぶんと懐かしい名前だ。あまり覚えてはいないが全員、癖が強かったイメージがある。

 

『まあ、彼らのことはいいわ、それより裏にはどこがいるのかしら?順当にいけばドライフ皇国でしょうけど』

 

『それは、分らないクマ。ただ、ほかの国が関与している可能性もあるクマ』

 

「あんまり考えたい話ではないですね」

 

 ヴァルキリアの言葉を聞いて加奈は深く思考をする。たしかにあまり考えたくはない戦争の話だが、このままでは再び戦争は起こるだろう。話を聞く限りドライフ皇国はカルディナの侵攻によりやむを得ず撤退をした。つまり敗北して撤退したわけではない。戦力の損耗は多くないだろう。

 

 それに対しアルター王国は力を持っていたティアンの多くが倒され、<マスター>も離反をしている者が多い。カルディナの参戦がなければ前回の戦争で滅んでいたはずだ。

 

『しかし、そうも言ってられないわ、敵は必ず攻めてくる。一度滅ぼしかけた国を生かしておく必要もないもの。むしろ、諸外国が共闘してアルター王国を滅ぼす可能性すらあるわ』

 

 今回のPKによる狩り場封鎖、否、国境封鎖も王国の対応を見て戦力の確認をしただけかもしれない。そう考えれば、一度刃を交えてるドライフ皇国というよりも他の国、それこそカルディナが介入している可能性も高い。

 

『しかし、現段階ではすべて憶測の域を出ないクマ。今はやるべきことをやるだけクマ』

 

 そう、シュウの言う通りすべては憶測にすぎない。正確な判断をするためには多くの情報が必要になってくる。

 

「たしかに今はやれるべきことをやるしかありませんね。ところでシュウ様?」

 

『別に様をつける必要はないクマよ』

 

「いえ、そういうわけにはいきませんので」

 

『そういうところは固いんだな.....それで、どうしたクマ』

 

「いえ、先ほどはPKの話で流れてしまいましたが、<ノズ森林>はどうなったのかが気になりまして」

 

 情勢の話に区切りをつけ、ヴァルキリアは週に対し<ノズ森林>の質問をはじめた。彼女は加奈が大暴れした<ノズ森林>のその後が知りたかったのだ。通常であれば加奈が《終末の時来たれり》を使ったとしても、ヴァルキリアをはじめとする人形達に自我は残る。しかし激高して怒りに飲まれていた加奈がスキルを発動したことで、ヴァルキリア達もその怒りと同調し我を忘れてしまっていだのだった。

 

『ハハハ、なるほど<ノズ森林>の話クマね。まあ確かに俺が着いた時には<ノズ森林>は消滅してたクマ。遠目からみただけでも分かったが、あれじゃあもう、<ノズ森林>とは呼べないクマね』

 

『あら、やっぱりそうなっちゃうわよね。まあむしろあの一帯が吹き飛ばなかっただけでもマシかしらね』

 

『まあ、俺だったらあんなきれいに消すのは無理クマね。むしろよくもまあ、あそこまで綺麗に壊せたもんだクマ。後学のためにのぜひ教えてもらいたいぐらいクマよ』

 

 シュウの言う通り<ノズ森林>はもはや森林では無くなっていた。初めから森林では無かったかのようにキレイさっぱりと木々だけが無くなってしまい、まるで<イースター平原>かのような平原が続いていたのだ。

 

『ごめんなさいね、企業秘密なの』

 

『そうかクマ....まあ、ならしょうがないクマ』

 

 シュウは大げさに両腕を上げ首をかしげる。初めから返答をもらえるとは思っていなかったのだろう。

 

『さてと、楽しい話をありがとう、そろそろ私達は行くわ。探し人もいるしね』

 

 あらかた話をし終わり、情報の整理もできた為、加奈は話を切り上げようとする。懐かしい思いでに浸る心地よい時間もすごし、更にやらなければやらない事もいくつかできた。切り上げるには良い頃合いだろうと加奈は判断した。

 

『そうクマか、いや俺も楽しかったクマ。お前が帰ってくると楽しいトラブルも増えるだろうしな。それはそうと、次はどこに行くクマ?そんな体で』

 

 不意に投げかけられた質問に再びヴァルキリアに支えられながらゆっくりと立ち上がった加奈は少し考えてから質問に答える。

 

『そうね...次は決闘都市にでもいこうかしらね』

 

『なんで決闘都市クマ』

 

『アルター王国で活動していた時の拠点がギデオンにあるのよ。そこで装備のチェックとこの体のならしでもし直そうと思うわ』

 

 もともとCIAの指示で<Infinite Dendrogram>内の情報を集めていた加奈は各国に拠点を構え、自身の装備や財宝などを分散して保管している。そしてここアルター王国には王都も含め3つの拠点が置かれているがメインとなる拠点はギデオンに構えているのだ。

 

『なるほどクマ...そういえばギデオンには今ちょうど弟がいるクマ。もし会ったらよろしくお願いするクマ』

 

『始めたばかりかしら?貴方が付いていないってことはパワーレベリングをしないんでしょ?私が手伝っちゃってもいいのかしら?』

 

 この世界ではレベルだけでは無くプレイヤー各人の技術や工夫が必要となってくる。自身が持っている<エンブリオ>はもちろん、超級職ともなればそれぞれ個性が違う。その職、<エンブリオ>にあった選択が必要となってくる。

 

 だからこそ強者に付いていきレベルだけを上げるパワーレベリングをおこなえば、見た目だけは強くなった風に感じるが、自分より強い相手との闘いや、相性が悪い相手との戦闘で勝つことが出来なくなる。

 

『いや、眼をかける程度でいいクマ、初めてまだ数日だから見かけたらアドバイスでもしてあげてほしいクマ』

 

『分ったわ、落とし物を拾ってもらった恩もあるわけだしね』

 

 加奈は迷わず了承をする、しかし同時にシュウの提案に疑問を持つ。

 

 シュウは【破壊王】の超級職を持つマスターだ、取得時期は覚えてはいないが、たしか私よりも少し遅い程度だったはずだ、その彼が身内につかずにいるということはおそらく自身の身分を明かしていないのだろう。しかし、身バレの危険性もあるため目立つのが好きではなかった彼のことを考えればわからない話ではないが。

 

『それで、その弟、何て名前なのかしら?』

 

『ああ、言ってなかったなレイ・スターリングだクマ』

 

「.....」

 

『.....』

 

 加奈とヴァルキリアは驚きのあまりに絶句する。

 

『...どうしたクマ?』

 

『いえ、何でもないわ、少しびっくりしただけよ、まあとにかく、弟くんの件は了解した。貴方の代わりになるかどうかはわからないけれど、面倒を見ましょう』

 

『そうかクマ、助かるクマ』

 

『ええ、じゃあ私たちはそろそろ行くわ。それじゃあまたね』

 

『バイバイクマー』

 

 加奈はヴァルキリアに支えられながらカフェを出る。シュウに断られたお代は既にヴァルキリア経由でお店側に支払い済みになっている。シュウが追加注文しなければ代金を払う必要はないだろう。

 

「しかし、マスター驚きましたね、あの時の少年がシュウ様の弟君でしたなんて」

 

『そうね、しかし考えてみればシュウ・スターリングにレイ・スターリングなんて、関係者ですって言っているようなものじゃない。気づけなかった私たちが間抜けね』

 

 シュウの居たカフェから離れ、加奈たちは現在ギデオン行き馬車へと向かっていた。普段なら走ったほうが早いのだが、今の状態ではギデオンにつく前に死んでいしまう。その為今回は馬車での移動をすることにしたのだった。

 

「久しぶりですね、馬車で移動するのも」

 

『そうね、ヴァルに乗って移動する方が断然はやいし、それじゃなくても自分で走ったほうが速いんだもの。こんな状態じゃなければ馬車になんて乗らないわ』

 

 馬車に乗った場合、ギデオンにつくまで概ね1日かかる。それに対し、ヴァルキリア乗って移動すれば2、3時間ほどで到着することが出来る。荷物も収納できるので、わざわざ時間をかけて移動する必要もなかったのだ

 

『まあ、いいじゃない。こんな経験あまりないんだから2人でのんびりと行きましょう』

 

「そうですね」

 

 こうして二人はギデオン行きの馬車へと乗り込んだ。目的地は決闘都市ギデオン。先ずはレイ少年に謝罪する為に。

 

 

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