『花咲川の異空間』と呼ばれている、姉の弟です。   作:龍宮院奏

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始めましての人は、始めまして。
知っている人はこんにちわ。龍宮院奏です。
この作品はリクエストを受けて制作しています。
他の作品もありますが、ちゃんと更新していくので、よろしくお願いします。


俺の姉ちゃんは最高に可愛い!件について。

「なつき!見て欲しいものがあるの!」

俺と姉ちゃんを眩しくも照りつける太陽の下、その光に照らされて輝く何処まで果てしない青い海。波が歌い、カモメ達が踊る。

 

「お姉ちゃんなに?」

姉ちゃんは何時も俺の前を歩いていた。いや、走っていた。俺はそれに追いつこうと走るが、追いつかない。走っても、走っても、どれだけ走っても、姉ちゃんの速さには追いつけない。

 

「ほら、あそこ」

だけど、姉ちゃんはそんな俺を置いてけぼりにはしなかった。走って、走って、遠くに行ったとしても、また戻ってきて言うのだ。

 

「キレイ……」

 

「『なつきと一緒に見たかったの!』」

大きくて、絵に描いたような真ん丸で、オレンジ色の輝く夕日。その夕日が、何処まで果てしない海に沈んでいく光景を。

 

「私、なつきと一緒ならどんなことももっと楽しいと思うの!」

姉ちゃんに、俺は追いつくことは出来ない…。出来ないけど、出来ないからこそ、俺に出来ることがある。

 

「これからも私の側に居てくれるかしら?」

 

「うん!俺、ぜったいはなれない!お姉ちゃんのことだいすき!」

 

「私も大好きよ!」

追いつけないのなら、迎えに来たときに、帰ってきたときに、最大限の、姉ちゃんを笑顔にするために頑張るんだって。

 

 

 

 

 

 

 

「うっ……、おも、重い……」

スマホの目覚ましでセットしてある音楽で、眠りの淵から意識を引き上げようとする。引き上げよとするのだが、何故かお腹の辺りが無性に重いのだ……。

 その正体を恐る、恐る、確かめるために掛け布団をゆっくり剥がすと、

「すぅ……、すぅ……」

 

「何だ……、姉ちゃんかよ……」

腹から背中に向けて手を巻き付かせて、体を最大限に密着させて寝ている姉・こころだった。

 

「姉ちゃんの寝顔、相変わらず可愛い……」

自分でも判っているのだが、まだ眠気が完全に抜けきっていないようで、膝の上に丸くなる猫を撫でるかの様に頭を撫でる。

 

「髪綺麗だし、何か良い匂いする……」

俺の光を呑むような黒髪と違い、姉ちゃんは太陽を一心に浴びたひまわりの花びらの様な金色。一本一本指を通す度、絡まること無く、すーっとすり抜けていく。

 

「やっぱり、俺の姉ちゃんは最高に可愛い……や……」

ほのかに香るシャンプーであろうオレンジの甘い香りに、姉ちゃんが密着する体温の温もりで、再び睡魔に心を突き動かされてしまった……。

 

 

 

 

 

 

「夏樹…、ねぇ夏樹ってば!」

深い眠りから意識を叩き起こすように、俺を呼ぶ姉ちゃんの声が聞こえる。

 

「な、なに……」

眠たい瞼を擦りながら尋ねる。

 

「何でも無いわ!ただ、夏樹と一緒に居るのが嬉しくて呼んだだけよ!」

そうだ、姉ちゃんは何もなくても、俺の名前を呼んでくるんだ……。その事に何時も何処かで安心して、俺が此処に居ることを教えてくれる。

 

「姉ちゃん……好き……」

半ば虚ろな意識だけれど、未だにお腹の上で抱きつく姉ちゃんの頭をもう一度撫でる。

 

「ふふっ、私も夏樹のこと大好きよ……。それにもっと撫でて欲しいわ」

撫でるたび、気持ちいいようで顔が優しくふにゃふにゃと笑みを浮かべる。この瞬間の顔を写真で保存したいが、そうすると姉ちゃんを撫でることを止めてしまうことになるので、

 

「うん……、良いよ……」

俺自身も、姉ちゃんを抱き寄せながら、オレンジが香る綺麗な姉ちゃんの頭を撫でるのであった。

 

 

 

 

 

 

「それにしても、すっかり寝過ごしたな……」

お互いにパジャマから着替えて、リビングに行く頃には10時を過ぎていた。

 

「でも、今日はお休みなんだから。偶にはこういう日も良いじゃない!」

姉ちゃんは寝起きにも関わらず、元気ハツラツだ。

 

「それもそうだな……、ふわぁぁぁ……」

が、俺は朝が苦手なので、寝起きのままである。

 

「全く夏樹ったら、朝が苦手なことは変わらないのね!」

小気味良い足音が背後からしたと思ったら、案の定助走をつけてからのジャンピングハグだった。

 

「っつ!姉ちゃん、危ないから」

 

「えへへ、大丈夫よ!」

いや、本気で危ないから。俺が少しでもずれていたら怪我す……。

 

「だって、夏樹は絶対私のことを受け止めてくれるって分かっているから!」

 

「……、ハンソク」

本当にこの姉ちゃんは卑怯だ、本当に卑怯なんだから……。あぁ、何だよもう、耳元で囁くな!そのままその声で俺は死ねるぞ!

 結局、姉ちゃんのジャンピングハグの危険さ、二重の意味での危険さから目が覚めました。

 

「じゃあ、朝ごはん作るから待ってて」

 

「は〜い!」

今日も、今日とて、俺の姉ちゃんは本当に可愛い……。

 

 

 

 

 

 

「姉ちゃん、今日はバンド練?」

朝食を終えて、コーヒを飲みながら今日の予定を聞く。

 

「そうね、今日は家でみんなで練習をする日だったわ」

 

「へぇ〜、何時から?」

 

「もうすぐよ」

 

「もうすぐって?」

ちょっと姉ちゃんの言葉から不穏な空気を感じざる負えないんだけど……。

 

「そのままの意味よ、だってほら!」

 

 

〘こころ〜ん!練習しに来たよ〜!〙

 

 

「今行くわ!」

玄関の設置されたカメラから、映像と音声が出される。それを確認するやいなや、椅子から風のごとく玄関へと去ってしまった。

 

「まだ、洗濯物とか掃除終わってないのに……」

俺の休日の数少ない家事の状況を考えながら。

 

 

 

 

 

 

 

「なっくん!おはよ〜」

 

「おはようございます、はぐみ先輩」

 

「お、おはよう。夏樹くん」

 

「おはようございます、花音先輩」

 

「おはよう夏樹くん、今日も良い朝だね」

 

「おはようございます、薫先輩。そうですね、日差しも丁度いい感じにさして。洗濯日和ですね」

 

「夏樹君さ、それ主夫の台詞だよ……。あと、朝からごめんね」

 

「別に主夫は間違ってないですよ、だって姉ちゃんのご飯とか作ってますから。それと、何時ものことですので大丈夫です」

 

「そっか、なら良かった。あと、おはよう」

 

「はい、おはようございます」

 

「それじゃあ夏樹、私達は練習しているから。何かあったらすぐに呼んでね!」

 

「分かったよ、じゃあ姉ちゃん練習頑張ってね」

 

「えぇ、今日も一日頑張るわ!」

姉ちゃんの掛け声にノリノリなはぐみ先輩と、薫先輩。そんな姉ちゃん達三人を見守る、花音先輩と美咲先輩。

 

 

「そういえば、ミッシェルはまだ来てないの?」

 

 

「こころ…、ミッシェルは遅れてくるって…」

 

 

「そうなの…、なら早く会いたいわ!」

姉ちゃんは『ミッシェル』=『美咲先輩』だと云うことを信じていないため、本当に美咲先輩には姉ちゃんがお世話になってます…。心の中で感謝を送りながら、食器の片付けを始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 姉ちゃんが先輩たちと練習をしている間に、差し入れ用のお菓子を作る。

 最初の頃は『夏樹、これ凄く美味しわ!』と言っていたクッキーを『また食べたい』言うので作り始めたのだが、

「案外、お菓子作ってる時とかが気が楽なんだよな…」

姉ちゃんが美味しそうに食べる顔を想像しただけで、微量の鼻血が出そうになるが血が入っては台無しだ。

「後は、型に入れて……」

 

 

 

「ふぇぇ〜……、ここどこ〜……」

 

 

 

「はぁ……またか……」

生地を型に入れるのを中止して、声のする方に走る。

 

「また迷ったんですか?」

少し廊下を走ったところに、花音先輩が涙を浮かべて蹲っていた。

「うん……。今日は大丈夫だと思って、美咲ちゃんについて貰わずに来たんだけど……」

「先輩、せめてそこは覚えてください」

そう言って、先輩に手を差し出す。一瞬、先輩が驚いたような表情を見せるので、

「何してるんですか?姉ちゃんのとこまで、送り届けますよ」

要件を言って、こちらから手を取った。

 

「な、夏樹くん…!」

 

「何ですか?」

何故か顔が茹でだこみたいに真っ赤な花音先輩。

 

「そ、その手……」

真っ赤にした顔をゆっくりと握った手の方に動かすので、

「あぁ、だって先輩に道だけ教えても迷いそうなので。この方が迷わず、早いですから」

「そ、そうなんだ……」

何かおかしなことを言った訳でもない筈なのだが、花音先輩は依然として顔が真っ赤だった。

 

 

 

 

 

 

「姉ちゃん、花音先輩の配達だよ」

 

 

「あら、花音!遅かったわね」

バンド練をしている防音の部屋には、楽器を持った先輩たちが演奏をしていた。

 

「ミッシェル、花音先輩が大丈夫って言っても付いていてあげて下さいね」

 

「わ、私?……わ、分かったよ」

今若干素の美咲先輩が出ていたような、姉ちゃんにバレるぞ。なぁ、姉ちゃん……。

 

 

「夏樹、何で花音とそんなに手を繋いでいるのかしら?」

 

 

「ね、姉ちゃん……?」

連れてきてからも無意識に手を握っていたままだった……。あの姉ちゃん、姉ちゃんの目のハイライトは何処へ?

 

 

「花音も着いてから何も言わなかってけど…」

 

 

「ご、ごめんね……。何か、あまりにも急な展開だったから、私頭の中パニック状態で…」

姉ちゃんが花音先輩に向ける目が何時もと違い、まるで親の敵を見るような目だ。

 

「あの姉ちゃん……、俺が先輩が迷子にならないようにしたんだよ……。だから、あんまり怒らないで……」

俺自身、こんな姉ちゃんは初めてだけど……。あんまり、見ていて気分が良いものでもない。

 

「そうなのね……」

姉ちゃんの中で何かの整理が着いたようで、目に光がただいましてきた。

 

 

「花音、もしまた家の中に出るときは誰かと一緒にね」

 

 

「う、うん……。分かったよ、こころちゃん…」

何時にもまして先輩の涙腺崩壊が近くなっているような……。

 

 すると姉ちゃんが俺の側に駆け寄ってきて、

「夏樹はあとでお話ね……。ワカッタ……?」

 

「あ、わ、わかった……」

耳元で明るい姉ちゃんじゃなくて、少し冷たい恐怖を感じさせる姉ちゃんが耳元でそっと囁いてきた。きっとこれは普通に考えれば『死亡フラグ』なのだろうが、俺には。

 

 

「こころん!なっくん鼻血出てる!」

ギャップ萌で、ご褒美なので、耳が幸せで、理性が少しばかり土に帰りました。

 

 

「全く、こころ。君は何を言ったんだい?」

薫先輩が落ち着いた様子を演じながら姉ちゃんにポケットティッシュを渡す、めっちゃ足震えてるからビックリしてるのだろう。

 

 

「う〜ん?姉弟の秘密よ!」

お、俺、今姉ちゃんに止血されてる……。姉ちゃんの手、姉ちゃんの手が、俺の頬に……。

 

「ね、姉ちゃん……、あとは自分でやる……」

これ以上は理性どころか、生命の危険に達する。

 

「だめよ、せめてこれだけはちゃんとやらせて」

 

「うぅ……」

結局、理性と生命の崩壊の狭間に揺れながら止血されるのであった。お話って何だろうな……。

 

 

 

 

 

 

 鼻血を止める為にリビングで少し休んだあと、手を止めていたお菓子作りを続ける。

「姉ちゃん、今日は何であんなこと言ったんだろうな……」

花音先輩が迷子にならないように、手を繋いで案内しただけなのにな……。生地を型に入れて、オーブンで焼いたり、油を張ったフライパンで揚げたりしながら考え込む。

「まぁ、姉ちゃんのことだから『ゲームで遊びましょう!』とかそんな感じだろうな」

あははは、と笑っていると差し入れのお菓子が完成した。お菓子と飲み物を台車に乗せて、姉ちゃんたちの部屋に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

「姉ちゃん、午後の甘い一時のお誘いだよ。まぁ、差し入れだけど」

 

 

「夏樹のお菓子!」

 

 

「なっくんの手作りお菓子だ!」

判ってはいたけれど、反応早いな。すでに姉ちゃんはクッキーを手に持ってるし、はぐみ先輩は見てるだけじゃなくて食べて良いんだから。

 

「姉ちゃんたちでどうぞ、バンド練大変だろうから」

お菓子と飲み物を載せた台車を部屋に置き、部屋を後にする。後は夕飯を作るまで、書庫で買った漫画でも読み直すかな……。

 

「夏樹くんは食べないの?」

部屋を出る直前に花音先輩が尋ねる。

 

「えっと、俺作り専門なので。それに差し入れですし…」

少し驚ろき、チグハグながらに答えるも、

 

 

「夏樹、みんなで食べたほうが美味しいわよ。だから、夏樹も一緒に食べましょ!」

 

 

「姉ちゃんが女神過ぎる件について……」

血涙は出せないものの、腰の辺りから抱きついて上目遣いで言われればもう断るのが罪と言えるだろう。

 

「じゃあ一緒に食べる……」

俺の姉は本当にズルい……、がしかし、結果みんなで午後の甘い一時を過ごせるのだから結果オーライだろう。ちなみ、ちゃんと床(カーペット)にシートを敷いて雰囲気も出して。

 

 

 

「そう言えばさ、前から聞きたかったんだけどさ」

自家製クッキーとはちみつレモンティーを堪能する美咲先輩から、

「これ全部一人で作ってるの?」

目の前に広がるクッキー、マカロン、ミニケーキ、スコーン、ドーナッツ、カップケーキなどのをお菓子を見ながら聞いてきた。

「逆に先輩、休日に家から出ず、姉と過ごすことに幸せを感じている、しがない高校一年生に他に何をしろと?」

「うん、私の聞き方が悪かった…」

「いえ、俺の方こそすみません…」

先輩との間に微妙な空気が生まれしまったので、自分で弁明をする。

「書庫で本を読みふけっていても、段々と飽きてくるので。それにこっちのほうが、姉ちゃんの笑顔が直接的に関係してみれるので」

「おぉ、流石シスコン……」

「ねぇ美咲、『しすこん』って何かしら?」

「姉ちゃん、それは覚えなくて良いよ」

「うん、こころにはその内わかるよ……」

姉ちゃんへの過激な情報は極力避けることには、俺と美咲先輩それに花音先輩は特に注意している。でないと、姉ちゃんがとんでもない事をしでかすので。

 

「でもさ、本当に仲良いよね。こころんとなっくん」

 

「そうですか?普通ですよ」

 

「そうよ、夏樹と私は何時もこんな感じよ」

はぐみ先輩の言葉に同じタイミングで首を傾ける俺と姉ちゃん。

 

「えっと、夏樹くん……。多分、普通高校生の姉弟はそんなべったりくっついたりはしないと思うよ」

俺と姉ちゃんを見て、苦笑いを浮かべ花音先輩。

 

「そう言うもんですか?」

 

「そうだよ、だって『夏樹君があぐらかく』でしょ。その間に『自然にこころが座る』状況が出来ているんだから」

花音先輩に続いて美咲先輩まで。

 

「別に姉ちゃんが落ち着いてるので」

 

「そうよ、夏樹のここ落ち着くのよ」

俺の足の上に乗る姉ちゃんを、後ろから手を回して抱きしめる体勢で姉ちゃんはお菓子を食べている。

 

「仲が良いことは良いことだよ、あぁ儚い……」

 

「ほら、薫先輩だって言ってるんですから」

薫先輩のフォローに感謝しつつ先輩たちをみると、美咲先輩と花音先輩は苦笑していた。

 

 

「でも、なっくんの方が背が高いから『お兄ちゃん』に見えるけどね」

 

 

 俺の作ったチーズケーキを食べながら、今さらっと凄い事がはぐみ先輩の口から出てきたけど。

 俺が姉ちゃんの〘お兄ちゃん〙?

 え、俺と姉ちゃんの立場が逆転するの?姉ちゃんが、「夏樹」じゃなくて、「夏樹お兄ちゃん」って呼んでくるのか?

 いやでも、姉ちゃんは姉ちゃんで、今までもこれからも姉ちゃんな訳であって。だから俺は弟であることには変わりなくて、だからお兄ちゃんと言われることは……。

 

 

「でも、それも面白いかもね。ね、お兄ちゃん!」

 

 

 こころがその言葉を発すると、一瞬にしてこころを抱きしめていた夏樹君の目が虚ろになり……。

「こころ!やばいよ、夏樹君の思考が止まってる!」

何かが消えたようにピクリとも動かなくなった。

 

「俺が姉ちゃんの……姉ちゃんの弟じゃない……」

何やら小さい声で、ポツリ、ポツリと言っているようだが……、本人には相当ショックだったようだ。

 

「もう、夏樹ったら。大丈夫よ」

こころはそう言いながら、夏樹君の方に体を向き直す。

 

「さっきのはあくまでも冗談よ。夏樹は私の大事な弟、それは変わりわしないわ」

 

「ね、姉ちゃん……」

意識が有るのか無いのか不安定な夏樹君の目に光が戻る。

 

「だからね……、そんな悲しい顔しなくて良いんだから。ほら、笑顔が一番よ」

そしてなだめるようにそっと頭を撫でると、夏樹君の手が動きこころを抱きしめていた。

 

「俺、姉ちゃんの弟が良い……。姉ちゃん……」

 

「もう、本当に夏樹は私のこと大好きなんだから」

こころはそれを優しく受け止め、夏樹君が正常運転に戻るまで続いた。

 

 

 

 

 

正常運転に復帰した夏樹君は、〘お兄ちゃん〙発言のきっかけを作ったはぐみに少し怒り、

「それじゃ姉ちゃん、練習頑張ってね。俺、書庫にいるから」

 

「わかったわ、お姉ちゃん頑張るから」

出ていく時もこころとハイタッチをし、ハグをしてから出ていった。

 

「ねぇ、美咲ちゃん……」

 

「なんですか?花音先輩」

 

「夏樹くんってさ、こころちゃん以外を好きになったりするのかな?」

 

「さぁ…、あの重度のシスコンなら難しいんじゃないですか?」

 

「そ、そうだよね……」

 

 一瞬、花音先輩が夏樹君に好意を向けているのかと思ったが、

 

「夏樹くんはこころちゃん一筋だもんね」

実の姉に対する夏樹君の愛をしって、少しは考え直しているのだろう。だけど、花音先輩。

 

「でも、いつかは他の誰かと付き合うこともあるんじゃないんですか?」

 

「ふぇ?それってどういう……」

 

 

 

 

「さぁ、みんな!練習の続き行くわよ!」

 

 

 

「自分で考えて見てください、それじゃ私は着替えるので」

部屋を後にして扉により掛かり、深く溜め息をつく。あの重度のシスコンがどれだけ難しいのかは、私だって理解している。

 

 けど、

「その感情は花音先輩、あなただけじゃないですよ」

私で同じ様に、悩んで居るんですから。

 

 

 

 

 

 

 

「夏樹〜、何処に居るの〜」

 

 書庫に俺が勝手に取り付けたハンモックで買った漫画や家の蔵書を読んでいると、下の方から姉ちゃんの声がする。

 

「姉ちゃん〜、俺二階の西のステンドガラスの所。あの天使像の」

 

「わかったわ〜、じゃあそっちに今から向かうわ」

家の書庫は東西南北に目印の天使や伝説の聖獣が象られてたステンドガラスがある。それを目印にして、目的の本などを探す。ちなみハンモックをおいたのは、日当たりが良くて気持ち良いから。

 

「夏樹〜、今日の練習終わったわよ!」

はしごを登り、通路を走ってきたようで、また飛びついてくる時に助走がつけられていた。

 

「お疲れさま、今日はどんな感じだった?」

姉ちゃんを受け止め、朝のベッドの光景を思い出させるように、仰向けの俺にのかってきた。

 

「えっとね、今日はね……」

姉ちゃんからのバンド練について聞くのは日課で、俺の知らない姉ちゃんの一面も見れるし、姉ちゃんの中では何かアイデアが浮かぶそうで一石二鳥なのだ。

 

 

「それはそうと夏樹……」

 

 

「な、何かな姉ちゃん……」

何故かまた姉ちゃんの瞳のハイライトが旅に出ていったんだけど!姉ちゃん、それはそれで良いけどさ、圧が怖いから戻って!

 

「もう一度聞くわ、何で花音と手を繋いでいたの?」

昼間の一件のこと、まだ根に持っていたのか……。いや、でもちゃんと理由を話してないからいけないのか。

 

 

「いや、実はさ……」

事の発端を懇切丁寧に、わかり易くまとめて話してみる。こと細かくね。

 

 

「へぇ〜……、じゃあ手を取ったのは夏樹からだったのね……」

やべ、こと細かく言い過ぎた……。

 

「いや、だってその方が確実に迷わなくて済むでしょ」

 

「言い訳はいらないわ、私はそんな夏樹は好きじゃないもの」

 

「は、はい……」

姉ちゃん、確かに行動はメチャクチャな面もあるけど、以上に人を見てるんだよ。だから、俺が嘘をついて一瞬で見抜くし。内心、白旗を挙げてこれから起こることに覚悟を決める。

 

「夏樹はどうしてそう花音や皆に優しいのかしら……」

姉ちゃんらしからぬ、大きな溜め息が溢れる。

 

「でも、今日は皆もう帰ったの。だから……」

 

「待って、姉ちゃん何する気……」

瞳のハイライトが旅行状態の姉ちゃんの顔がどんどん迫って、もう少しでキ、キス……しそうなほど……。

 

「怖がらなくても良いわ、ただちょっと教え込むだけよ……」

俺の首筋を姉ちゃんの細く綺麗な指でなぞる、くすぐったい様な、ゾクゾクと変感覚に襲われる。

 

「ま、待ってよ、も、もしそういう事ならさ、俺と姉ちゃんなら犯罪だよ……」

 

「別に、私がお父様に頼めばすぐに法律だって変わるわよ……」

一向に姉ちゃんは止める気配は無く、依然首筋をなぞり、今度は耳たぶを唇で甘噛みしてきた。

 

「ふぁ……、ね、ねぇちゃん……。ほんとになにするの……」

耳に姉ちゃんの微熱と、柔らかな唇の感触が伝わり思わず声を上げてしまう。声を上げても止まることはなく、甘い香りと唇の感触で意識が蕩けていく。

 

「安心して……、夏樹は何も考えなくていいの……」

意識を留めなくては何か大事な物を失いそうだけど……、

 

「そうよ、良い子ね……。後は私に委ねてくれて大丈夫だから……」

ねぇちゃんがそういうならば、きっと……。

 

「痛いの一瞬だけだから…、アトハラクニナリナサイ……」

 

「ちょ、ねぇ…ちゃ…ん…」

こうして俺は何かの催眠に掛かったように眠りにつき、姉ちゃんの本性を知るすべもなく堕ちてしまった……。

 

 

 

「アイシテルワヨ…、アナタノエガオガワタシノシアワセナンダカラ…。ダカラワタシダケニミセテチョウダイ……」




こころの口調が上手く書けているのかは不安ですが、頑張りました。
私のヤンデレ系作品の中では珍しく?最初からヤンデレを発動させていってます。
実を言うと、こころがヤンデレ化した小説を読んで、こころが更に好きになりました。
ぽぽろさんの小説でしたね、あの作品を読んだから今の私が居ます。
ぽぽろさん、いつも小説楽しみにしています!
それでは、感想などお待ちしております。
ご閲覧していただきありがとうございました。
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