『花咲川の異空間』と呼ばれている、姉の弟です。   作:龍宮院奏

2 / 5
暗い話が蔓延しているので、明るい話を読んで明るい気持ちに。
私には此処での活動しか出来ませんが、笑顔になってくれたら嬉しいです。


俺と姉ちゃんが同じ学校じゃない件について。前半

 甘酸っぱいオレンジの香り、人肌の温もり。記憶の断片を辿ると、最後に見たものは目からハイライトを無くし、俺に覆いかぶさるように迫っている……。

 

 

「姉ちゃん、それ以上はダメ!……って、夢か?」

 

 

 朝から姉ちゃんが俺にキスを迫ってくるを夢を見るとか、俺も末期かな?

 ここ最近姉ちゃんからのスキンシップは激しくなった。俺と二人きりの時はそれこそ〘恋人〙がするような事をしようと迫ってくる。

 正直、そんな事何処で覚えたんだよ!って、頭を抱えるほどに。もしかして、俺が買ってる漫画やラノベから?いや、貸してるのは割と明るいやつだし……。

 

 そんな事を悩みながら起き上がろうとするのだが、新たな疑問が二つほど現れてきたのだ。

 

 

「何で俺姉ちゃんの部屋で寝てるの?しかも何でパジャマに着替えてるの……」

 

 

 だって、昨日はハンモックの上で……。あ、夢じゃなかった。で、でも、キ、キスは迫られてないから。そこは夢とは違う部分だし、いやでも襲われているような気はしたけど……。

 

「あら、夏樹。起きたの?」

俺が必死に悩んでいる間に、俺の最愛の姉・こころが起きてしまった。

 

「お、おはよう……。姉ちゃん……」

別に姉ちゃんに恐怖を覚えてる訳じゃないけど、昨日の事と今日の事があるので何時もみたいに笑うことが出来ない。

 

「あ、あのさ、姉ちゃん」

 

「何かしら?」

 

「昨日さ、俺と姉ちゃんって何処にいた?」

まず俺が本当に書庫に居たのか、いや居たんだけど、そこから此処に移動した方法を聞いてみる。

 

「書庫のハンモックに居たわよ」

さすが姉ちゃん、曇りない瞳でちゃんと真実を言ってくれる。けど、それは今ちょっと怖い……。

 

「それから夏樹が寝ちゃったから、黒服さんに協力してもらって部屋に運んでもらったの」

 

「夢だと思いきや現実だった!」

否定したいよ、否定したいけどさ……。現に俺、姉ちゃんのベッドに居るし!あぁ、もう!よくわからないし、怖すぎだよ。でもこのベッド、姉ちゃんの匂いで包まれて最高だな!

 

「そうなんだ……」

 

「そうよ、最近夏樹と一緒に私のベッドで寝てなかったから」

 

「そう言えば、そうだったね……」

ここ最近は俺も姉ちゃんとの距離について改めて考えるために、互いに自分のベッドで寝ているわけだが。結局、姉ちゃんが俺のベッドに来るから、今も昔も変わらないんだけど。

 

「どう?幸せでしょ?」

俺の真横で笑顔で問いかけてくる。この横顔、見てて飽きない。

 

「うん、最高に幸せ……」

このまま俺昇天できる。

 

「そ、それでさ。もう一つ良いかな?何で俺パジャマ姿なの?俺、寝てたんでしょ?」

けど、それにはまだ早い。天に召される魂を引き止めて、次なる疑問を聞き出さなくては。

 

 

「あぁ、それなら私が夏樹を着替えさせたからよ」

 

 

「……うぅぅぅ!」

姉ちゃんの枕を拝借し、顔を蹲らせて声に成らない叫びを最大限に上げる。

 

「ねぇ、ホントに?ほんとに俺の服脱がして、着替えさせたの?」

ぷるぷると肩を震わせて、顔が真っ赤にしながら聞いたたと思う。

 

 がしかし、それに対しての姉ちゃんの反応は、

「えぇ、そうよ。私がちゃんと脱がして着替えさせたわよ!」

何故か物凄い、今まで見た中で五本の指に入るほどのキラキラした笑顔を見せていた。

 

 

「いやぁぁぁ……!」

最大限の女子ボイスで悲鳴を上げる。

 

 

「も、もうお婿に行けない……」

確かに俺と姉ちゃん、小さい頃は一緒にお風呂入ったりしてたけどさ……。流石にもう裸は見ないで……、ね、姉ちゃんでも恥ずかしい……。

 

 

 

「何でそんなこと言うのかしら?」

 

 

 

「へぇ?」

ちょ、姉ちゃん…。

 

 

 

「夏樹は私の大切な、大切な弟よ……」

 

 

 

「あ、あの姉ちゃん……」

 

 

 

「それなのに、ソレナノニ、ソレナノニ、ドウシテソンナコトヲイウノカシラ……?」

何故かまた姉ちゃんの瞳のハイライトが、家のリムジンを出張査定に申し込む為に出かけてしまった。家のリムジン最近燃費悪いから。

 

 

 

「キノウアレダケオシエコンダハズナノニ……マダタリナイノカシラ?」

 

 

 

教え込んだって?

「姉ちゃん……、俺の体に何かしたの?」

 

 

 

「シリタイノ?シリタイノナラオシエテアゲルケド……コウカイシナイ……?」

ちょっと待って、それどういう意味!まさか、お、俺の……。

 

 

「あ、あの……姉ちゃん、俺の体ってまだ清いまま?」

思わずダイレクトにど……ゲフンゲフン、と言おうとしたけれど、姉ちゃんがその言葉を知って聞いてくるのは面倒なので言うのはやめた。

 

「?夏樹の体はキレイだけど?」

あ、確信した。姉ちゃんの目に車を買いに行ったハイライトさんが帰ってきたから、多分俺が思うような危ない展開は無いのだろう。良かった……、俺だってせめてちゃんと交際した人とが良かったから……。

 

 

「姉ちゃん……、俺本当に姉ちゃんのこと好きだわ……」

姉ちゃんの一言と、瞳のハイライトに安心して思いっきり抱きしめる。姉ちゃん、一瞬驚いたように目を丸くしたけれど、

 

「もう夏樹ったら…、私のほうが大好きよ!」

姉ちゃんの方からも抱き返してきて、恐怖なんて地球の裏側に吹き飛んでしまった。

 

「じゃあ姉ちゃんさ、取り敢えず俺風呂に入ってくるわ」

昨日あのまま寝ているんだ、流石にお風呂に入ってさっぱりしたい。

 

「なら、偶には一緒に入らない?」

 

「は、入らないから!もう、年を考えて!」

 

「むぅ……別に何歳になっても姉弟なんだから良いじゃない……」

ほっぺたを膨らませて、拗ねる姉ちゃん。

 

「だとしても駄目だから、もう……姉ちゃんはもう少し自覚を持ってよ……」

姉ちゃんは女の子なんだから、俺にとっては複雑なの……。

 

「夏樹がそこまで言うなら仕方ないわね……」

 

「分かってくれてありがとう……、直ぐに上がるから。その後、姉ちゃんも入るでしょ?」

 

「えぇ、私も入るわ」

 

「じゃあ、俺が早めに終わらせるから」

ベッドから体を起こし、しがみついて離れない姉ちゃんを一度離して部屋に着替えを取りに向かう。

 

 

 

 

 

 

「そう言えば、俺の体に何したんだろうな?貞操が奪われて無いなら……」

着替えを取り出し脱衣所で先程の疑問について、もう一度考えていたのだが……答えはあっさりとわかった。

 

 

 

 

「ね、ねね、ねねね、姉ちゃん!」

 

 

 

 

「夏樹、どうしたの?」

脱衣所から慌てて姉ちゃんの部屋に直行し、

 

「こ、ここ、これって姉ちゃんがやったの!?」

俺今は上半身しか見せてないけど、

 

 

「えぇそうよ、ワタシガワタシノ’’モノ’’ッテイウショウメイニネ……」

また、瞳のハイライトさんが消えてしまったけど、もうそんな事はどうでも良い。

 

 

 だって、だって……、

「だからって、〘キスマーク〙と〘歯型〙を付けることは無いでしょ!どうするのこれ、学校でバレたら社会的に死ぬよ」

首筋に〘キスマーク〙が三ケ所、胸元からお腹にかけて〘キスーマーク〙四ヶ所、〘歯型〙二ヶ所もついている。

 

 

「だって、こうでもしないとホカノオンナガヨッテクルデショ?」

俺の体を見つめて、首筋のキスマークを真っ暗な瞳をして舐めてくる。唾液の生温かさと、舌のザラザラとした感触が肌を伝う。その感触に体が跳ね、姉ちゃんは満足そうに俺を見つめてくる。

 

 

「ダカラツケタノ……、ワタシダケノア・カ・シ……」

本当に何処で覚えたんだろう、これ多分しばらくは消えないだろうな……。

 

 

「あ、そういえば。夏樹、あんまり裸でいると風邪ひくわよ」

悩んでいる俺の思考を姉ちゃんの一言で一蹴された。そうだった、俺脱衣所で上着脱いで気づいて……。

 

「いやぁぁぁ!姉ちゃん、判ってるなら早く言って!」

姉ちゃんには理不尽だと思ったけど、ちょっとだけ文句を叫びながら再びお風呂場に向かった。

 

「夏樹は偶におっちょこちょいなんだから」

部屋に残らされて、ぼそっと呟くこころだった。本当に我が家は今日も平和です。

 

 

 

 

 

 

「あ、美咲!花音!おはよう!」

 

「姉ちゃん、そんな急に走らないで」

 

 朝、学校に向かう途中で今日も迷子になりかけていた花音先輩を拾って歩いている途中に、

「おはよう、こころ。夏樹君」

我がバンドリーダーのこころと弟の夏樹君が、恋人繋ぎをしながら走ってきた。

 

「お、おはよう…。こころちゃん、夏樹くん」

ほら、花音先輩動揺しないの。毎日のことでしょ、こころと夏樹君が恋人繋ぎをしているのは。

 

「あれ、夏樹君?」

夏樹君の何時もと違う服装を見て、つい聞いてしまった。

 

「はい?」

 

「何で制服の下にパーカーなの?」

 

「あ、確かにパーカー着てる」

花音先輩も私に続いて夏樹君に聞いてみる。

 

「・・・・・・ぷい」

今無言の沈黙からわかり易く自分で、そっぽ向く時の効果音着けたよこの子!これは気になる……、そして可愛い……。

 

「ねぇ、夏樹君。羽丘の校則はあんまり分からないけど大丈夫なの?」

まずは簡単な揺さぶりを始めよう。学校という大きな物からなら少しは反応が期待できるはず。

 

「大丈夫なはずですよ…、前にモカ先輩も学校にパーカー着て来てましたから」

そうだった、パーカーなら青葉さんが着て行ったことがあったんだった。まさか、先に前例を出してくるなんて……。

 

「でもさ、学校の先生とかに言われたら大変じゃない?」

だけど、流石に先生というキーワードなら何かボロが出るはず。

 

 

 

「俺、学校じゃ本当に空気みたいなんで…。姉ちゃんは居ないし、男子も俺一人だし……。だから気配を消せばバレないかと」

 

 

 

「ごめん…何か本当にごめん…」

ボロを出させるはずが、傷を抉ってしまった!もう、私の馬鹿……。ほら、後悔している先から遠い目線になってるし。

 

「良いですよ、姉ちゃんとの学校が最も近いのが羽丘なので……。それに漫画とか持っていってるので、まぁ読む時間は殆どあの人達に消されてますけど……」

 

「夏樹くん、学校に漫画は持っていちゃだめじゃない…」

 

「花音先輩……、周りに異性しか居ない空間で、何もせずただ窓の外を眺めてられますか……」

 

「えっと、でもね…。やっぱり校則が…」

 

「毎日、毎日、何時間も孤独と戦うんですよ……。心の安息くらいは許してください……」

 

「そ、そうだよね…」

花音先輩の言うことは正しいけど、今の事を想像してみる……。自然と夏樹君の肩に向かって手が動き、

 

「大変だよね……、お互いに……」

 

「はい……」

私の手を取って両手で握りしめてくれた。やっぱり、苦労人同士だからかな。

 

 

「むぅぅぅ……」

あ、そうだった。こころが……って、すごいこっちを睨んでる。流石に怖いんだけど……。

 

 

「あの姉ちゃん、どうしたの?」

夏樹君も慌てて握ってくれた手を離して、こころの元へと行ってしまう。もう少し握ってて欲しかったな…。

 

「別に何でも無いわ…」

そうは言っても拗ねているの一目瞭然、夏樹君に目を合わせないし、私には何故か圧を感じる視線を向けてくるし。

 

 

「ねぇ、もしかして俺が何か怒らせるようなことしたの?」

 

 

「夏樹は直ぐに忘れるんだから…」

 

 

「いや、忘れた訳じゃないよ」

 

 

 忘れた?忘れたって何?ねぇ、こころと夏樹君の間に何があるの。姉弟の間に、そこまで何かがあるの…。

 

 

「じゃあさっきのは何」

 

 

「いや、こう…苦労人の傷の舐め合いと言いますか…。互いに労うと言いますか…」

夏樹君、必死に弁解しようとするのは分かる、それは物凄く嬉しい……。けどね……、言葉のチョイスがおじさんだよ!

 

 

「舐め合い……。美咲と夏樹はそんな事までするのかしら?」

おっと…、こころの目から光が消えたんだけど…。ねぇ夏樹君、これはどういう…。

 

 

「姉ちゃん、これはその言葉の表現でさ。実際にはしてないから、いくら俺が美咲先輩と仲が良くても実際の怪我舐めないよ…」

え・・・?私が怪我して血を出しても・・・消毒で舐めてくれないってこと・・・?それに今の言い方は何・・・『いくら仲が良くてもしない』って・・・。

 

「み、美咲ちゃん……?どうしたの……」

花音先輩が私の肩をそっと叩くので、胸のあたりにモヤモヤとした黒い感情渦巻く中で振り返る。一瞬驚いたように『ひぃ』と声を上げるが、「夏樹くん、今のはこころちゃんを落ち着かせるためだと思うよ」と次第に怯えながらこちらを見て言うので、

 

「そうですよね……」

黒い感情が消えはしないものの、少しだけ和らいで夏樹君に向き直ることが出来た。でもやっぱり今の言い方は傷つく。

 

 

「なら良いわ…」

こころは夏樹君の答えを聞くと、瞳に光が戻りどうやら落ち着いたようだった。

 

 その後は何事もなく、何時もと変わらずこころと夏樹君が手を繋ぎ登校。そんな二人を眺める私と花音先輩。

 ほんの一瞬だったけど、夏樹君の手温かかったな……。

 

 

「じゃあ姉ちゃん、学校頑張ってね。あ、何か遭ったら電話してね」

 

「分かったわ!夏樹の方も学校頑張ってね」

 

「あ〜やっぱり姉ちゃんと同じ学校が良い…」

 

「仕方ないよ、花咲川はまだ共学化の方針が決まってないんだから」

 

「まぁ、それが判って近場の羽丘に入学したんですけどね」

 

「理由が夏樹くん過ぎるよ…」

 

「それじゃあ、行ってきます」

 

「行ってらっしゃい。夏樹!」

こうやって、毎日姉ちゃんと花咲川女学園に姉ちゃんと先輩たちと登校して、姉ちゃんを学校に送り届けてから、

 

「残り時間十分か……、階段二段飛ばしかな……」

少し距離が離れた羽丘学園までのジョギングが日課だ。

 

 

 

 

 

 

 

 羽丘学園、少子高齢化に伴い私立女子校であったのだが経営悪化を防ぐために共学化を決意。

 しかしまぁ、元はお嬢様系の進学校。そんな簡単に共学化なんて無理な話ですよ、だから試験段階で男子を少数入れることとなった。

 俺がその決意によって入学を許可された、唯一の男子生徒だ。

 

「はぁ……、間に合った……」

教室の扉の前に着くも始業チャイム二分前。ほんと、幸せの代償は大きい。息を整えて、汗を拭いて教室の扉を開ける。概ね授業が始まるの自分の席につき、近くの生徒と喋ったり、自主的に勉強したりしているのだが……。

 

「あ、おはよう弦巻くん」

 

「おはよう、弦巻くん。今日は遅かったね」

 

「弦巻くん、もしかして今日もお姉ちゃんと登校デートですか?」

 

 学校唯一の男子、しかももと女子校の中で……。さっき先輩には空気と言ったが、

『居ても居なくても気づかれない』ではなく『居ても居なくても大差は無いが、居ないと不便な存在』と言う意味だ。

 

「おはよう、姉ちゃんと登校デートじゃなくて。送ってるだけ」

最初の頃は緊張したよ、まわり全員女子だから。だけど、考えてみたら『姉ちゃんの知り合いのバンドメンバー合計人数がクラスの人数とほぼ一緒』という事実に気づき、そうなると普通に話せている自分がイメージ出来たので会話は普通に出来るようになった。

 

「本当に仲が良いよね」

 

「もう普通に恋人以上だよ」

 

「はいはい…、恋人じゃないから」

だから割とクラスでも、冗談で笑い合うこともできる。

 

 

 

「夏樹、おはよう」

 

「おはよう、明日香…」

俺が席につくと、前の席に座る戸山明日香が朝の挨拶をしてくれた。

 

「また今日は一段と疲れてるけど?」

 

「姉ちゃんの言動にビックリしたのと、誤解を生まずに説明する難しさを知った…」

バックを机の横に掛けて、そのままうつ伏せに倒れ込む。

 

「二つ目の方は良く分からなかったけど、お疲れ様っていうのは分かったよ……」

 

「ありがとう……。俺しばらく寝る……」

 

「あのさ…寝るって言っても…」

明日香の言いたいことは大体察しがつく、だって寝ようとした瞬間に始業のチャイムがなり始めたんだから。

 

「今日は久しぶりのクルシミマスかな?」

 

「それだけの屁理屈が言えるなら、頑張ってね」

明日香なりの応援がやってくると、前に向き直ってしまった。

 

 明日香も真面目に授業を受けるんだ…、俺もやるしか無いか……。

 

 授業中、姉ちゃんから着けられた〘キスマーク〙と〘歯型〙を隠すために着て来たパーカーが先生にバレるか不安だったが……、

「弦巻、その服装どうしたんだ?」

やっぱり簡単にバレました。

 

「えっと…、ワイシャツをクリーニングに出されてて、取り敢えずに着てきました」

 

「そうか、次からはクリーニングに出すタイミングはちゃんと考えておけよ」

 

「はい……」

バレたんだけど、まさかの注意だけで済んだ!え、マジですか…、先生神ですか!ほんとその場でついた嘘なのに、先生ありがとう御座います……。

 

 

 

 

 

「夏樹くん、さっきのあれって?」

 

「あぁ、嘘だよ。こっちにも事情があってな」

午前の授業が終わり、昼休みになると自然と俺と明日香の周りに集まりが出来てくる。その一人が、朝日六花。あだ名『ロック』、六花・ろっか・・・ロック。わかり易いだろ。

 

「でも、夏樹が校則違反するだなんて。もしかして、そのパーカーの下にはには漆黒の龍の封印が……」

 

「え、バレたか……。そう、この体には千年のも間を封印されてきた邪竜の刻印が、って違うから!」

 

「違うの?」

 

「あこ、流石に夏樹がちょっとそういうのが大好きな痛い人でも、学校でそういう事はしないよ」

 

「おいこら、人を厨二病患者にするな!俺は本当に成れると思うから言うだけだ」

 

「え、じゃあ今のは本当に!」

そして俺のこういう漫画とかのネタを拾ってくれるのが、宇田川あこ。『Roselia』というガールズバンドのドラマーで、その姉もまたバンドのドラマーである。

 

「いや、さっきの冗談だから」

 

「何だよ〜……」

少しばかりカッコいいを極めたいが為に、何故か厨二の道へと走る所がある。

 

「まぁ、そう落ち込むな。信じていれば、いずれ道は開ける」

 

「例えば、手から焔を出して『魔神鑑』ってやったりすることが?」

           

             ダーク・フレイムマスター

「そうそう…、かの有名な『闇の炎の使い手』のように!って何で知ってるの!」

 

「この前貸してくれた漫画で読んだ」

 

「あー、おけ」

明日香は別段あこや俺のように厨二に惹かれる事は少ないが、漫画は貸すと読んでくれて感想をくれる。

 

「な、夏樹くん…、手から炎だすの!?」

ロックがこうして、冗談を真に受けてくれるのも日常茶飯事。本当に楽しい限りだよ。

 

「出さない、だって熱いし、火傷するから。出すなら氷が良い」

 

「え〜、あこなら焔の方がカッコいいと思う」

 

「あこちゃんと、夏樹くんが超能力を……」

 

「はいはい、二人共。六花がまた誤解するから、そこでストップ」

 

「「は〜い……」」

俺とあこが主にこういうボケを話し、それに六花が戸惑い、明日香が六花を保護して俺とあこをお説教。

 

「明日香が六花のお母さんに見えるのは俺だけか?」

 

「あこも偶に思うよ。ロックが明日香にお世話されているの見ると」

 

「「ちょっと二人共」」

でも、あこも見えるんだ。やっぱり好きな漫画とかのジャンルが近いと、感性も似てくるのかな?

 

 

 

『え〜っと、生徒会からの連絡で〜す。一年A組の弦巻夏樹君、至急生徒会室まで来てください。

 繰り返します、一年A組の弦巻夏樹君、至急手作りのお菓子を持って生徒会室に来てください』

お昼時で賑わう昼休みに、突如として訪れる終末の鐘の音。

 

 

 

「ねぇ、あれって?」

明日香が放送を聞いて、苦笑いを浮かべる。六花もあこも同じように。本当に何であの人が生徒会長なんだか……。

 

 でも昼飯は食い終わって、手作りクッキー食べてた所だし。一人で食うやつ、一応持ってきて正解だったよ。

 

「多分、面倒事の依頼だろうな……」

 

「夏樹くん、生徒会じゃないのに何で何時も頼まれてるの?」

 

「そうだよ、それに先生にも頼まれごとよくされてるし」

六花もあこも言っての通り、俺は生徒会に所属していない。まだ入学して二ヶ月だぞ。けど、俺はどうしてか面倒事を頼まれる。

 

「俺もよく解らないけどな。まぁ、依頼は依頼だからな、報酬も出して貰ってるし」

 

「先生から何貰ってるの?」

明日香がすごい怪しいものを見る目で見てくるが、

 

「精々校則違反の免除と、成績がミジンコの大きさ分くらい上がるだけ」

隠すような報酬は貰ってない、綺麗な報酬だから堂々言える。

 

「それでパーカーはお咎め無しってこと?」

 

「イエスdeath!」

 

「何で英語なの急に」

 

「ノリだな」

 

「じゃあ、生徒会の報酬は何を貰ってるの?」

明日香の次は六花か。

 

「漫画、画集、シナリオ集。その時期によってオーダーするものは違うけど」

 

「もしかして、この前あこに貸してくれたゲームのシナリオ集も?」

 

「当たり、先輩からの報酬だよ。俺は正当な対価で貰ってるから」

 

「一体どんな仕事をしたらそんなに報酬が貰えるんですか……」

驚きを隠せない六花、表情豊かで見てて飽きない。

 

「理由は二つ……」

時計を見て、そろそろ行かないと依頼主がキレそうなので持ってきたクッキーと、ポーチを持つ。

 

「一つは、『依頼主に不利な利益は与えないこと」

机を元に戻して、次の授業の準備を整える。

 

「そしてもう一つは、『依頼は絶対に完遂させること』の二つだけだよ」

準備が終わりったので、

 

「うんじゃ、行ってくるわ」

依頼主の待つ生徒会室に向けて、明日香達に見送られるかたちで教室をあとにした。




こころのヤンデレを書いたり、読んだりして思ったんですが、
こころって、やっぱり闇が深いんですかね?個人的な見解ですけど。
でも、こころの色んな顔が見れて楽しいです。
次回の方では、厄介事、面倒事の処理ですね。
羽丘のメンバーは出来るだけ出します。
今回もご閲覧していただきありがとうございました。
感想などお待ちしております。

評価、有難う御座います!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。