『花咲川の異空間』と呼ばれている、姉の弟です。   作:龍宮院奏

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次は終点、羽丘、羽丘学園。るん♪会長にご注意下さい。
次は終点、羽丘、羽丘学園。猫大好き先輩にご注意下さい。
次は終点、羽丘、羽丘学園。慈愛のお姉さん先輩に癒やされて下さい。
次は終点、羽丘、羽丘学園。機械いじりの得意な素敵な先輩と仲良くして下さい。
次は終点、羽丘、羽丘学園。宝塚、だけど高所恐怖症な儚い先輩に歓声を上げて下さい。
一応先輩シリーズで考えて、使わなかったネタです。
歌詞はご指摘を頂き、サビだけに変更しました。


俺と姉ちゃんが同じ学校じゃない件について。後半

 我が羽丘学園の生徒会長を知らない人は居ないだろう。引きこもりや、余程人の声を遮断できる人で無い限り。

 有名なのには幾つかの理由がある。

 まず一つ、『天才であり天災』だから。何でも一目見ればそつなくこなし、いきなり熟練された者と同等の実力を発揮する点で有名。

 二つ目は、『現役アイドル』だから。俺の姉ちゃんがバンド・ハロー、ハッピーワールド!で活動しているように、現在大ガールズバンド戦国時代と呼ばれているほどのバンドブーム。その波にテレビのお偉いさんが乗っかって生まれたバンド・Pastel*Palette(パステルパレット)、そこに所属してアイドル兼バンドメンバーとして活躍している点。

 そして最期の理由。これは彼女に悪意が無いので、受け取る側の問題なのだが……。とにかく『行動が自由』なのだ。

 生徒会長である前から言動は周りが驚くような事を言ったり、したりしていたが、権力を持ったことで賛否は取るものの殆どが実行されている。

 

 

『なんかね、るん♪って来たの!』

 

 

 この一言でどれだけ人が振り回されてきたことか……。考えただけで頭痛がする。

 

 

 

 

 

「失礼します。弦巻夏樹、御依頼を受けて参りました」

 

「いいよ、はいって〜」

 

 重厚な木目調の扉をノックしてから、返事が来たので部屋に入る。

 

「失礼しまっ!」

 

「な〜つ〜き〜く〜ん〜!」

 

 扉を開けて入った瞬間に、腹のへその辺りに光速で何かが突撃してきた。

 

「ごふぁっ!」

勢いが思ったよりあったせいで、受け止めきれずに床に倒れ込む。後頭部を床に殴打し、腹部からは吐き気が催す。

 

「依頼主でも殴りますよ……。割と本気で……」

殴打した頭をさすりながら、依頼主で生徒会長の氷川日菜を睨みつける。

 

「え〜、私女の子だよ?殴らないでよ」

 

「今の俺には関係ありません、もう少し落ち着いた行動をしてください」

 

「ぶー、ぶー。なつき君の意地悪」

ほっぺを膨らまして言ってくるいるが、こんなの何時ものことだ気にしなくていいや。

 

「それで要件はなんですか?」

 

「ねぇ、今『何時もの事だから気にしなくて良い』って考えたでしょ」

 

「人の心をナチュラルに読まないで!」

本当に何でこんな人が生徒会長なんだろう……。

 

「ちぇ〜、まぁ良いや。それで今日呼んだ理由はね」

 ようやく本題に入る日菜先輩。でも、この前生徒総会で使う部活予算の決済を手伝ったから特に無いような……。

 

 

「何か暇だったから、遊びたくて呼んじゃった♪」

 

 

「アンタ、人の憩いの時間をぶち壊してそれかよ!」

おっと、先輩に対して口の聞き方がなっていなかった。

 

「先輩は馬鹿ですか?人の貴重な休み時間を奪っておいて、それだけですか?」

 

「言い方改めたつもりだろうけど、余計に罵倒が酷いよ……」

ちょっと泣きそうになる日菜先輩だが、

 

「俺だって、明日香や六花やあこと仲良くお昼休憩してたのに、急に校内放送かかるからビックリしてきたんですよ」

理由が馬鹿馬鹿しくて、正直もうやってられません。

 

「だって、校内放送の方がビックリするでしょ?」

 

「校内放送で遊ばないでください!」

 

「はい……」

三年生で生徒会長の女子生徒を正座させて、一年で唯一の男子生徒が説教している、そんな不思議な空間があった。

 

 

 

「日菜先輩!夏樹くんを呼び出してどうしたんですか!?」

 

 

 

 そんな空間に、生徒会の本当のメンバーである羽沢つぐみ先輩が生徒会室の扉を開けた。どうやら、教室から慌ててやって来たようで、肩で息をする程呼吸が乱れていた。

 けれど、自分の目の間で起こっている状況を目の当たりにしたつぐみ先輩は……。

 

「ねぇ日菜先輩……。生徒会の仕事が無い日に呼び出したったのって……」

何時も笑顔で優しいつぐみ先輩。裏では『大天使ツグミエル』と呼ばれているほどの優しい先輩だが、

 

「あ、いやその……。あははは……、ちょっとるんっ♪て来たから……」

 

「それでは詳しくお聞かせ願いましょうか……」

 

「は、はい……」

怒ると、それはそれは怖いの何の、天使が堕天した姿はサタンも裸で逃げ出すほどの怖さでしょう……。

 

「夏樹くんは後ろで逃げずにそこに居るように」

 

日菜先輩が怒られている間に教室に帰ってみんなと平和な休み時間を過ごそうとしたんですけど……。一応、見捨てたので持ってきたクッキーをお詫びの品にして。

 

「は、はい……」

 

「なつき君が私を見捨てて逃げようとするから……」

 

「俺の場合は完全に巻き沿いじゃないですか!日菜先輩が面倒な呼び方するか」

先輩の隣に並んで正座をし、先程日菜先輩にしていたことが自分自身にかえってきしまった。

 

「二人共、ちゃんと聞いてください!」

 

「「っつ!はい……」」

結局、日菜先輩は後輩を自分の勝手で呼んだこと、俺は制服の下の校則違反でつぐみ先輩にこってりしぼられました。

 

 

 

 

 

 残りの午後の授業はつぐみ先輩の説教で心が疲弊したので、若干寝ていました。

 午後の窓辺に差し込む日の光は、どうにも睡魔を生み出していく。その生み出された睡魔に撃沈、本当に途中から記憶が無いです。

 

「明日香…、ノート貸して…」

 

「え?寝てたの?今日の授業、テスト範囲でよく出るって言われたのに?」

帰りに明日香に頼んで寝ていた分の授業のノートを写すのに借りようとすると、俺は割と重要な時に寝ていたらしい。

 

「まじか…、最悪のときは勉強会しようぜ…」

 

「良いけど、テストで失点しないでよね」

 

「大丈夫だ、中間はクラス内トップテンに入ってるから」

 

「さり気なく自慢しないで…」

明日香が急に目を細めるので、ノートを借りて早く帰ることにした。

 

「そ、それじゃあ大事に借りさせてもらう。明日には返すから」

 

「ちゃんと持ってきてよね」

 

「おうよ、じゃあまたな」

 

「また明日〜」

 

 

 夏樹が教室を出ていった後で、バンド練習で先に帰ったあこ、バイトがあるので同じく先に帰ってしまった六花、そして取り残された自分という状況に気づき……。

 

 

「やっぱり一緒に帰れば良かったかな……」

寂しさを覚えて、ポツリと呟いたのだった。

 

 

 

 

 

 下駄箱で上履きから靴に履き替えて校門に歩き始めると、視界が手で覆い隠されて暗くなった。

 

「だ〜れ〜だ?」

声の主は分かるけど、声が少し遠くに感じる。それにその周りにも数人居る……。

 

「手の主がひまり先輩、声の主がモカ先輩。あと、蘭先輩も巴先輩もつぐみ先輩も居ますよね?」

 

「何で判ったの!」

 

「あ〜あ、バレちゃった〜」

視界に光が戻り、後ろを振り返ろうとすると、

 

「これは引っかかったね〜」

モカ先輩が俺の肩に手を載せて、振り返る俺の頬に指を突き刺してきた。

 

「先輩やめてくださいよ」

 

「なんで〜、な〜くんのほっぺ柔らかいよ〜」

離れる気は無いようで、人の頬をおもちゃのようにつついてくる。

 

「モカ、そのくらいしておきなよ。夏樹も怒るよ」

 

「え〜、仕方ないな〜」

 

「蘭先輩、助かります」

面倒くさい、と言わんばかりの顔でモカ先輩の制服の襟を掴んで引き離してくれた。

 

「でもな〜くんも美少女なモカちゃんにほっぺ触れられて嬉しかったでしょ?」

引き離されてなおも、人の頬の話をするか。

 

「別に。姉ちゃんはまだしも、日菜先輩然り、俺のこと弄って楽しいですか?」

 

「そんな冷たいな〜、な〜くんは。モカちゃんは寂しいな〜」

出ても居ないのに、嘘泣きはやめて下さいよ。

 

「それで俺に何かようですか?」

モカ先輩は一度放っておいて。

 

 

「モカちゃんを放っておかないでよ〜」

 

 

「アンタもか!人の心を読むのは!」

奇想天外担当は日菜先輩と姉ちゃんと、香澄先輩とおたえ先輩で十分足りてるわ!

 

「えっとだな、今日私達バンド練習も無く珍しく全員が放課後暇なんだよ」

苦笑いを浮かべながら、ようやく本題を話してくれる巴先輩。

 

「それでね、みんなでカラオケに行こうって話になってね」

やたらとテンションが高いひまり先輩が後に続く。

 

「これから行こうって時に夏樹が見えたからさ」

どうやら事の発端はそんな事だったのか、先輩たちで普通に楽しいんで来て下さ。

 

 

「夏樹くんも一緒に遊ばない?」

 

 

「えっ?つぐみ先輩、今なんて?」

おかしいな、日菜先輩のせいで幻聴が聞こえる能力でも付与されたか?

 

「だから〜、な〜くんも遊ぼうよ〜ってお誘いしにきたの〜」

俺が聞き返すと、蘭先輩から開放されたモカ先輩が再び俺によって来て言ってきた。

 

「先輩たちの放課後に俺混ざっていいんですか?中々揃わないんでしょ…」

 

「そう何だけど、何か夏樹君見えたから『誘ちゃえ〜』て感じで」

 

「ひまりが提案したんだけど、私達も夏樹とだったら良いかなって」

俺だから良い?そこの所詳しく聞きたいところだけど、

 

「せっかくのお誘い、謹んでお受けします」

 

「やった〜、な〜くんとカラオケ初めてだから歌声気になる〜」

了承の返答を返すと、モカ先輩が今度はくっついて来た。

 

「先輩、熱いから……。あと、今から姉ちゃんに帰り遅くなるって電話するから離れて」

 

「本当にな〜くんはこころん好きだよね〜」

 

「好きですけど?俺の姉ちゃんですよ?マジで可愛いくて女神ですよ」

 

「夏樹のシスコン久しぶりに見た……」

 

「蘭先輩、聞こえてるから」

 

「わざと言ったの」

この赤メッシュ先輩は何故か姉の話題を出すとツンツンしてくる。何でだ?

 

 カバンから赤い下地に黒の装飾の携帯を取り出す。姉ちゃんの電話番号で電話繋げると、

『夏樹、どうかしたの?』

わずかワンコール掛かる前に繋がった。

 

「あ、姉ちゃん。あのさ、今日帰りちょっと遅くなるけど良い?」

聞いてから気づくとはつくづく自分が馬鹿に思えたのだが、今朝姉ちゃん機嫌悪っかったんだった。

 

『何でかしら?』

 

「あの…先輩たちと遊んできます…」

 

『へぇ……。そうなの……』

あ、これ完全に積んだな……。

 

「いや、あのこれは……」

 

 

 

 

 夏樹がこころに電話して不穏な空気が漂い始めた頃、誘った先輩たちの間では。

 

「夏樹君ってガラケー何だね……」

 

「でも、私夏樹のライン持ってるよ?」

ひまりの発現にすかさず、蘭が携帯を取り出して夏樹のラインを見せる。

 

「いや、私も持ってるけどさ」

 

「もしかしてあれじゃないのか、家族内専用携帯とか?」

 

「確かにありそう、でもそしたら携帯二個持ち?」

 

「スマホとガラケー、流石な〜くんの家はお金持ちだね〜」

モカは驚きもせず何時もどおりでいるけど、

 

「「「「お金持ちの考えはわからん(ない)」」」」

蘭、ひまり、巴、つぐみは密かに思った。

 

 

 

「わかった、じゃあ帰ったら姉ちゃんのリクエスト作るから」

 

「え?えっ……、うん。そうするから……、うん、うん、じゃあ帰ったら」

 

 

「大丈夫だったの?何か喧嘩してない?」

電話が終わるとひまり先輩が尋ねてきた。

 

「喧嘩じゃないですよ、ただ最近姉ちゃんの行動が読めなくて」

 

「私達からみたら普段でも読めないぞ」

 

「長い時間いれば凡そ何をするかはわかりますよ。巴先輩だって、あこの行動はだいたいわかるでしょ?」

 

「確かに……言われみればそうだな……」

 

「いや、納得するんだ」

 

「でも蘭、そこは姉弟の仲だからさ」

暗黙の了解に踏み入れてしまってはいけない、と首を振って止めるつぐみ先輩。本当に俺と姉ちゃんてなんて思われてるんだよ。

 

「で、結局カラオケは行けるの〜?」

モカ先輩は早く遊びたいようで、答えを急かしてくる。

 

「帰ってからが戦争ですけど、取り敢えずOKです!」

 

「な〜くん、グッド!」

親指を立てるモカ先輩。

 

 

「それじゃ、みんなでカラオケに行こう!えい、えい、お〜!」

 

 

「俺、カラオケ行くの初めてなんですよ」

 

「そうなの?友達といったりしなかったの?」

 

「中学時代はまぁ色々と……」

 

「なら、今日は初カラオケだな」

 

「な〜くんに先輩たちが沢山教えてあげよう。ねぇ、蘭?」

 

「え、あ、うん……。楽しんでいけば良いから」

 

「今日はよろしくお願いします」

 

 ひまりの号令は虚しくも誰も賛同せずに、夏樹の初カラオケに話題を咲かせて先に歩き始めるのだった。

 

 

「ねぇ、ちょっと置いてかないでよ!」

 

 

 

 

 

 初めてカラオケに来て俺だが、二つ学んだことがある。

 まず一つは、何で漫画やラノベでカラオケで勉強したり仕事をしたりするシーンがあるのか。カラオケルーム自体広いし、防音性がとにかく高い。実際、歌を歌っていて隣の部屋の人に聞こえたら嫌なわけだけど。

 それにしても、部屋に入る時隣でも歌ってるのが廊下で少し聞こえたけど、部屋に入った途端に聞こえないのは凄いと思った。

 それからもう一つ。この先輩たち、歌が馬鹿上手い。あ、言い方が悪かった。超絶的に上手いし、俺の存在感が消えていく。

 確かに先輩たちは『Afterglow』というバンドを組んで、商店街やライブハウスでライブをしているけど。何回かは見に行った、姉ちゃんのバンドのライブと被ったから。

 メインボーカルの蘭先輩は言わずもがな、モカ先輩然り、ひまり先輩然り、巴先輩然り、つぐみ先輩然り……。

 全員がハイレベルな歌声で歌う中で、初心者にどうしろと……。カラオケ怖い……。

 

「夏樹くん、大丈夫?顔真っ青だよ……」

 

「自分が今置かれている状況を再認識して、場違いだったのでは無いかと……」

 

「もうそんなこと無いよ〜、ひ〜ちゃんだってはしゃいで何時もよりテンション高いし」

 俺の両隣に座る先輩が心配して声を掛けてきた。

 因みに席は、中央に俺、左にモカ先輩、右につぐみ先輩、俺の席のお向かいに蘭先輩、左に巴先輩、右にひまり先輩という席配置。

 

「そうじゃなくて、先輩たち歌上手すぎですよ…」

 

「まぁ、モカちゃんたちはバンドやってるからね〜」

 

「カラオケ経験なし、歌基本歌わ無い人の実力差を見せられいるようで……」

 

「そんな緊張しなくて良いんだよ、ひまりちゃんみたいに楽しんで歌えば良いんだから」

 

つぐみ先輩の笑顔が不安に沈む心から、引き上げてくれる。

 

 

「はい、次は夏樹君の曲だよ」

ひまり先輩が丁度歌い終わり、マイクが回ってくる。

 

 

「な〜くんの歌楽しみ〜」

 

 

「どんなの歌うのかな〜」

 

 

 モカ先輩とひまり先輩のプレッシャーが凄いんだけど……。

 

 

「まぁ、気にせず頑張れ!」

 

 

「そうだよ、楽しめばいいんだよ」

 

 

「何時もどおりに、自分らしく歌えば大丈夫…」

巴先輩、つぐみ先輩、蘭先輩からのエールを受け取り、プレッシャーに負けないように気合を入れる。

 

 

「それじゃ、弦巻夏樹歌います!」

先輩に機械の操作方法を教えてもらい、悩みに悩んで選んだ曲が……。

 

 『ピースサイン・米津玄師』

                ***

 「もう一度 遠くへ行け 遠くへ行けと」

 

 「僕の中で誰かが歌う」

 

 「どうしようもないほど熱烈に」

 

 「いつだって目を腫らした君が二度と」

 

 「悲しまないように笑える」

 

 「そんなヒーローになるための歌」

 

 「さらば掲げろ ピースサイン」

 

 「転がっていくストーリーを」

                ***

 

 「君と未来を盗み描く」

 

 「捻りのないストーリーを」

 

 歌いきった……、なんとか声続いた……。歌に緊張していて、途中から記憶が曖昧だけど、意外とストレートに歌えていた気がする。

 自分のことと、姉ちゃんのこと、少し照らして合わせてたから……。

 

「な〜く〜ん……、凄い……」

 

 マイクをテーブルに置き、どっと座り込んでからしばらしくてモカ先輩が開口一番に褒めてくれた?

 

「夏樹君、今のすっごく上手だったよ!」

 

 今度はひまり先輩がテーブルから身を乗り出してきた。

 

「あぁ、夏樹、お前歌うまいじゃんか!」

 

「こころちゃんと違った雰囲気だけど、カッコよかったよ」

 

 巴先輩、つぐみ先輩まで……。

 

「夏樹、今の良かった…」

 

 蘭先輩が顔を合わせてくれないものの、ちゃんと褒めてくれた。どうやら、俺の歌声は先輩たちから認められたと言うことで良いのかな?

 

「これは私達も負けてられないよね」

 ひまり先輩がやけに張り切りだしたが、何か嫌な予感がする……。

 

「だな、先輩としての底力を見せてやるか」

 

「さんせ〜い〜、モカちゃんももっと頑張る〜」

 

 え、嘘でしょ……。俺、もしかして先輩たちの導火線に……。

 

「私も夏樹くんに負けないくらい頑張って歌うから!」

 

「バンドボーカルとして、此処は腕を見せないと…」

 

 火を着けてしまったようです……。先輩たちの目、メラメラ燃えてるのがわかります。でもそうなると、〘先輩たちのクオリティー高い〙が〘先輩たちのクオリティー超高い〙に成るってことでは……。

 

「俺……頑張らなきゃいけなくしたのか……」

 自分で自分の首を締めるという、今日はどうやらあまり運が向いてこないらしい……。

 

 

 

「時間ギリギリだけど、最後に何歌う?」

カラオケルーム貸し切り時間的に、曲を歌えるのラスト一曲くらいの時間だ。

 

「モカちゃんは疲れたので、どうぞ〜」

 

「え〜、モカちゃんダウンって……」

あれからモカ先輩、気合入れて歌ってたから……、でも凄くカッコよかったです…。

 

「じゃあ此処は夏樹のリクエストで終わらせる?歌ってもいいし、誰かに歌って貰ってもいいし」

 

「蘭が珍しいこと言うね〜。今日はどうしたの〜」

椅子でぐで〜っとしているモカ先輩が、じっと蘭先輩を見つめる。

 

「べ、別に…。私達は何回も来てるんだし、それに先輩としての…」

 

「「ふ〜ん〜」」

そんな発現を他所に、ニヤニヤと口元に笑みを浮かべるひまり先輩とモカ先輩。

 

「まぁ、ここは蘭の言うことも一理あるな。私はそれで良いぞ」

 

「巴ちゃんも良いって言うし、私もそれが良いかな」

 

「私も私も!」

 

「モカちゃんもさんせい〜で〜す〜」

先輩方で満場一致の回答が出揃ったので、

 

「じゃあ夏樹、あとは頼むよ」

 

「俺ですか…」

決定権は俺の元へとやって来た。

 自分が歌っても良くて、先輩たちにリクエストをしても良い……。これって誰かにリクエストして、そのリクエストされなかった方から何かされないよね……。そっちの方が心配なんですけど……、でもあんまり考えてると時間無いし……。

 全員で歌える曲がベストアンサーなわけで、六人が全員で歌える曲って……。

 

 

「先輩、よろしくお願いしますよ」

結局、考えに考え抜いた曲は六人で歌えるかは別だけど、盛り上がることは間違いないと思う。

 

 

夏「次は〜、終点、羽丘、羽丘学園。お荷物のお忘れにご注意ください〜」

 

蘭・モカ・ひまり・つぐみ・巴「1,2,3、4!」

 

 選んだ曲はナユタン星人さんの『ダンスロボットダンス』!

 

                ***

夏・モ・つ「ときめく心のモーションが」

 

蘭・ひ・巴「あなたに共鳴して止まないの!」

 

夏「合理とは真逆のプログラム」

 

蘭・モカ・ひまり・つぐみ・巴「知りたい 知りたい」

 

夏・蘭・モカ・ひまり・つぐみ・巴「ねぇもっと付き合って!」

 

夏・蘭・モカ・ひまり・つぐみ・巴「ダンスロボットダンス」

 

夏・「もーいいかい?」

 

夏・蘭・モカ・ひまり・つぐみ・巴「ダンスロボットダンス」

 

蘭・モカ・ひまり・つぐみ・巴「まーだだよ」

 

夏・蘭・モカ・ひまり・つぐみ・巴「ダンスロボットダンス」

 

夏・「もーいいかい?」

 

夏・蘭・モカ・ひまり・つぐみ・巴「ダンスロボットダンス」

 

蘭・モカ・ひまり・つぐみ・巴「もーちょっと!」

 

                   ***

夏・蘭・モカ・ひまり・つぐみ・巴「ダンスロボットダンス」

 

夏・「もーいいかい?」

 

夏・蘭・モカ・ひまり・つぐみ・巴「ダンスロボットダンス」

 

蘭・モカ・ひまり・つぐみ・巴「まーだだよ」

 

夏・蘭・モカ・ひまり・つぐみ・巴「ダンスロボットダンス」

 

夏・「もーいいかい?」

 

夏・蘭・モカ・ひまり・つぐみ・巴「ダンスロボットダンス」

 

蘭・モカ・ひまり・つぐみ・巴「もーいいよ!」

 

 先輩たちと初めてのカラオケは、先輩たちの歌の上手さに驚いたり、初めてながらに歌たった曲で褒めらりたり、凄く楽しかった。

 

 だから、

「先輩、また今度誘ってくれますか?」

 

「「「「「良いよ!(けど)」」」」」

 

 俺と姉ちゃんは学校が違う、けれどそれも案外悪いことばかりじゃない。

 だって、仲の良い友達、少し面倒な先輩とこうして楽しい先輩がいるんだから。




夏樹とAfterglowの皆さんとのカラオケ回という。
六人で何を歌えば盛り上がるのか、夏樹には何を歌わせるのか、この二つは悩みました。
つぐみ先輩は『ツグミエル』のままで…、裏版は怖いのでご勘弁を…。
でも、バンドリメンバーとのカラオケは体験したいものですね。
蘭先輩にちょっと可愛い系とか歌ってもらったりして。

今回もご閲覧していただきありがとうございました。
感想などお待ちしております。

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