『花咲川の異空間』と呼ばれている、姉の弟です。   作:龍宮院奏

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コラボ小説も書かなきゃいけなかったりするのですが……。
どうにも上手く書けずに、こちらを書いてみました。


俺と姉ちゃんが姉弟と見られない、一緒に出かける件について。前半

「ねぇねぇ夏樹、これはどうかしら?」

左右両手に異なる種類の洋服を持って、俺に意見を求めくる姉ちゃん。

 

「両方似合うと思うけど、とりあえず試着してみたら?」

それに当たり障りのない返事をする俺。

 

「わかったわ!着替えたら感想を聞かせて頂戴ね」

 

「了解」

楽しそうにはしゃぎながら試着室へと入っていくのを見守っていると、

 

「可愛い彼女さんですね」

お店の店員さんが微笑みながら話しかけてきた。

 

「可愛いですよね……」

適当に相槌をうつが、

 

「俺の姉ちゃん……」

本当に似てないんだよな……、俺たち……。

 

 

 

 何故俺と姉ちゃんが洋服を見ているのか、それは数日前のカラオケの日に遡る。

 

 

 

 あの日姉ちゃんの機嫌は悪かったし、日菜先輩には絡まれるわで、本当に面倒だっだというか。でも、Afterglowの先輩方とカラオケに行って楽しかったことはこの上なかったのだが。

 

「お帰りなさい……」

そう何度も言うが機嫌が悪い中で俺はカラオケに行ったのだ。中学時代に行けなかったのは別に姉ちゃんが機嫌が悪くなるからじゃない、本当に色々あったのだ。それはいずれ語るけど。

 

「た、ただいま……」

物凄い頬をぷっくり膨らませて、『私は怒ってます、機嫌が悪いです』と主張していた。姉ちゃんは滅多に怒らない、というか俺の前以外でこんな顔をしたことが無いのだ。

 

「い、今ご飯作るから……」

靴を脱いで洗面所で手を洗いに行くのだが、無言で睨みながら俺の後を付いて来た。

 

「あ、あの姉ちゃん?」

 

「・・・・・・」

俺が質問しても答える気は無いようで、ずっと黙ったまま。

 手洗いを終えて荷物を部屋に置いて、キッチンに立つ。以前離れようとしない姉ちゃんに、

「今日は姉ちゃんの好きなオムライス作るからさ…。火とか扱うから少しだけ離れられる…?」

危ないので忠告するも、逆に抱きついてきてしまった。

 

「あの姉ちゃん?もしかしてこのまま作れと?」

お腹の辺りに手を回して、背中に体を密着させてくる姉ちゃん。まぁ当たるものも当たるけど、顔を埋めているのか息が掛かってくすぐったい。そのまま顔を縦動かすのが伝わってきたので、

 

「じゃあ気をつけてね…」

一度決めると中々諦めない、ちょっぴり頑固な性格を見せてくるため料理はそのまま続けることとなった。

 

 

「夏樹は私から離れたりしないわよね……」

料理中、開口一番に姉ちゃんが話したのその言葉だった。

 

 

「離れたりしないよ、姉ちゃんの帰る場所を守るのが俺だから」

抱きしめる力が強くなるのを感じて、調理を続けながら返事をする。

 

「じゃあ何で今日は行ったの……」

やっぱりカラオケの事根に持ってたんだ……。それもそうか、電話でもう反対されたもんな。

 

「先輩方に誘われたのと、一回行ってみたかったから」

 

「夏樹は私と蘭ちゃんたちのどっちが良いのよ……」

背中が熱い、抱きついているから熱いのは勿論だけど、これはその熱さじゃない……。

 

「俺は蘭先輩たちも大事だけど、姉ちゃんの方がずっと大事だよ」

調理の手を止めて、巻き付く姉ちゃんの手に自分の手を被せる。

 

「でも今日は行ったじゃない……」

 

「俺だって先輩との付き合いくらいはあるよ。姉ちゃんだって美咲先輩とかと遊んだりするでしょ?」

 

「美咲と遊んだりするけど……」

 

「姉ちゃんと居るのだって幸せだよ、それは誓って言える」

 

「だったら……」

 

「だけど、先輩たちと過ごすのも楽しいしんだよ」

 

「・・・・・・」

 

「今回は姉ちゃんと行けなかったけど、カラオケ今度は二人で行こうよ」

姉ちゃんの巻き付く腕を少しだけ離し、後ろで抱きつく姉ちゃんの方に向き直る。

 

「カラオケ初めてだったけど、もう凄い楽しいよ!姉ちゃんも絶対楽しめるって」

 

「なら今度は私と行ってくれる……?」

 

「勿論、姉ちゃんと俺で一緒に行こう」

ちょっとだけ、ちょっとだけだけど、姉ちゃんが笑い始めてくれた。

 

「それと姉ちゃん、今日カラオケ行く時にした約束憶えてる?」

 

「憶えているわ…。『私の好きな料理を作ってくれる』のと、『私のお願いを聞いてくれる』でしょ?」

 

「そうそう、料理は本当に何でも良いよ?オムライス以外も作るし。お願いに関しては危ないのは駄目ね」

 

「お願いを聞いてくれるのに、どうして夏樹が決めるのよ」

 

「だって……、姉ちゃん偶にとんでもないこと言うんだもん!その所為で俺何度心臓止まるかと思ったことやら!」

 ちなみに、今まで一番怖かったのわ南極に行くっていうのと、スカイダイビングをしながらお空でライブをするの二つだ。

 

「本当にあの時は幾つも神社参拝してお願いしたんだから……」

無事に帰ってきた時は身体の半分の水分が出てたんじゃないかという位に泣いて(生還が嬉しくて)、一週間は同じベッドで添い寝した。俺が姉ちゃんを抱きまくらのように抱きしめて、姉ちゃんがそんな俺を抱き返す感じで。

 

「とにかく、危ないことは俺の体(心)が保たないから駄目。それと先に言うけど、一緒にお風呂も駄目だからね」

 

「駄目なの?」

 

「もしかして入ろうとしてたの?」

 

「うん」

凄いは、一言で頷いたよ!

 

「姉ちゃんはさ、そういうの気にしないの?普通気にするでしょ?」

 

「そうかしら?でも私がこういう事をするのは夏樹の前だけよ」

 

 

「はっはは、それはそうだよ。そうじゃなかったら、見たやつを地獄(パラダイス)に堕とさなきゃだから」

俺以外に姉ちゃんの柔肌は見て欲しくない!でも、自分で見るのは恥ずかしい!だからこそ、他の男が少しでも見たら確実に殺す……。

 

楽園(パラダイス)?それは素敵ね」

 

「そうだね、素敵だね〜」

楽園の意味の認識がすれ違っているけど、姉ちゃんが楽しそうだから言わないでおこう。

 

 でもこういう事をするのは俺の前だけか……。じゃあ俺だけに見せる表情、行動……。

「姉ちゃん……」

 

 この時夏樹の中でこころの言葉がクリティカルヒットを成し遂げ、無意識に抱き寄せて頭を撫でていた。

 突然頭を撫でられて驚いていたこころであったが、自分の最愛の弟に頭を撫でられるのが気持ちよかったので、抱きしめてそのひと時を堪能した。

 幸せを堪能しすぎたせいか料理に手間が掛かり時間は遅くなったものの、二人での共同作業は楽しく、作った料理は何時もよりも美味しいものとなった。

 

 

 

「それで今日から暫くは俺の布団か姉ちゃんの布団で一緒に寝ると?」

夕飯の後に予想はしていたが再びお風呂騒動を起こした姉ちゃん。『水着を着れば大丈夫じゃないかしら?』と、期待半分常識の狭間に突き落とされながら悩んだ末に、やっぱりちゃんと断って一人ずつ入った。

 

 もしもあの場で同意していたら、姉ちゃんは間違いなく『姉弟』を越えることをしでかしていただろう……。ありえないだろうけど……。

 がしかしだ、今はもう終わったんだ。だから、だから今度は目の前の問題について考えよう。

 

「夏樹が約束したんだから、さぁ今日は私の布団よ!」

枕を抱えて部屋に俺を迎えに来た姉ちゃん。無論パジャマ姿にブランケットを被せているが、何と言うか……姉ちゃん綺麗だな……。透き通るような綺麗な肌、長く華奢な手足、念入りに手入れをされた髪……。

 

「ほら、ぼ〜っとしてないで行くわよ!」

思わず見蕩れてしまっていた。なぁ神よ、俺を姉ちゃんの弟にしてくれて感謝します。こんな素敵な姉ちゃんは他に……、

 

 

「な・つ・き!」

 

 

「うわぁ!姉ちゃん、ちょ危ない!」

神への感謝の言葉を述べていると、ブランケットをマントに見た立てて、たなびかせるようにして飛んできた。首元に華奢な腕が絡みつき、腰に足を巻いて落ちないように完全ロックされてしまった。

 

「早く〜、早く寝ましょう!」

お風呂から上がって時間が立っているはずなのに、良い香りがまだ続いている。

 

「姉ちゃん、シャンプー変えた?」

姉ちゃんのホールドを喰らいながら、部屋に向かって移動する。歩いている際に髪が揺れて匂いがしたのだが、何時もより香りが甘い気がする。

 

「もう分かちゃったの?そうよ、今日は新しいシャンプーを使ってみたの」

 

「へぇ〜姉ちゃんの可愛さが倍増で、俺は良いと思う」

 

「ありがとう夏樹」

褒められてご機嫌な姉ちゃんの声は弾んでいて、ニコニコと笑顔だった。姉ちゃんの笑っている姿を見ていると、俺自身笑顔になって胸の辺りが暖かくなる。

 

 

 部屋に入れば大きな本棚や屋根付きの大きなベッドなどが一目散に飛び込んでくる。俺の部屋はどちらかと云うと『作業場』のイメージになるが、姉ちゃんの部屋は『The・お姫様』のイメージになる。

 

「姉ちゃん、降ろすよ」

姉ちゃん一人だけが寝ても大きなベッドだが、俺が入っても十分スペースの有るベッドに腰掛ける。ふかふかの羽毛の掛け布団が身体を包み込む感触、まさに天国の居心地。

 

「そうだ夏樹。お願い事、もう一つ良いかしら?」

電気を消しに行こうとすると、姉ちゃんがパジャマの裾をクイクイと引っ張って聞いてきた。

 

「え、良いけど?何?」

 

「今度の休日、二人で一緒にお出かけしたいと思うの」

 

「良いよ、どこに行く?」

 

「そうね……、じゃあ二人でショッピンモールを周りたいわ」

随分と近場だけど、姉ちゃんが行きたい所ならいいかな。

 

「じゃあ今度の休みは俺と姉ちゃんのショッピンモール巡りね」

 

「えぇ!姉弟、二人で楽しみましょ!」

両手を上にあげてバンザイポーズする姉ちゃん。

 

「そうだね、姉ちゃんと二人はしゃぎますか」

俺も笑顔で微笑み返す。

 出かける約束を取り決めて、一度姉ちゃんの手が離れたので電気を消す。先に姉ちゃんがベッドに入り、次に俺が隣に入る。

 

「おやすみ、姉ちゃん」

 

「おやすみなさい、夏樹」

俺も姉ちゃんも、互いに向き合うようにし手を繋いで深い夢の中へと落ちていく。眠る途中、姉ちゃんの手から伝わる微熱と甘いシャンプーの香りが心地よく、ベッドの魔力も相まって熟睡できた。

 

 次の日、朝起きると二人して抱きうように寝ていて、やっぱり俺と姉ちゃんは本当に大好きなんだと思った。

 

 

 

 

 

 そして約束を決めたあの日から数日が経ち、今現在ショッピングモールの服屋で洋服を見ているわけだけど……。

「あ、そのごめんなさい…。余りにも…」

俺が静かに答えると店員さんは気まずそうにしていた。

 

「大丈夫ですよ…、慣れているので…」

しかしこのままにしておくのも不憫なので、毎度の挨拶をする。

 

「すみません……。でも、本当に可愛らしいお姉さんですね」

 

「そうですね、俺の姉ちゃんで居てくれるのが本当に嬉しいです。優しくて、賢くて、勇気があって、笑顔が素敵で、本当に…嬉しいですよ…」

自分で姉ちゃんの事を褒めているはずなのに、大好きな姉ちゃんを褒めて嬉しいはずなのに……。どこか少しだけ寂しいような……、胸がモヤっとするような気がした……。

 

「でも、その弟さんである貴方も素敵ですよ?」

 

「ふぇ…?」

え、今なんて言った?この店員さん何て言ったよ?というか、俺も何て返事してんだよ。

 

「姉さんとは確かに対象的な真っ黒な黒髪に、瞳。ですが、身長が有る分、細身ながらに服を着ているせいで判りにくいですが鍛えられているようですし。手足も長いですし、きちんと身嗜みも整えていらっしゃる様子」

 

「え、あ、いえ、本当にこれはその、姉さんと一緒に居るから少しは気を付けないとって……。服はそのネットの記事を参考に……」

 

「ほら、そういう所ですよ。お姉さん為に気を回せる所とかも、素敵なとこですよ」

 

「は、はぁ……」

そういうものなのか?普段通りにしていることなのだが?

 

「もしよろしければ、弟さんもコーディネートしましょうか?」

見る人が見れば、『この店員さん…ヤバイ…』と云った目つきをしているに違いないのだが……。

 

「えっと…姉さんが帰ってくる前に終わるようにお願いします……」

断るほどの気力も無く、折角だから姉ちゃんに褒めて貰いたいという思いもあり、コーデーをお願いすることにした。

 

 

 今回、俺は多くの事を学んだ。オシャレが凄い大変だっていうこと……。お金のやりくりもそうだけど、あれとあれが駄目、あれとコレはどうだとか、RPGの装備を考えているみたいだった。

 そして、店員さんにコーデを任せると徐々に熱をまして手が付けられないということ……。

 色んなコーデを考えてくれるのは有り難いんだけど……、目が血走ってくるんだよ……。

 

「やばい…姉ちゃん絶対に終わってるよ…」

店員さんの『プライドに掛けて』コーデしてもらった服を着て、姉ちゃんが入った試着室の近くに行く。

 

 

「姉ちゃん、ごめぇんっ!」

いきなり試着室から手が伸びてきて、俺を引き摺るように試着室へと連れ去っていった。勢いよく入ったせいで、壁に頭をぶつけてちょっと痛い……。

 

 

「どこに行ってたの…」

 

「っつ……、ごめっ……ん……」

打った部分を抑えながら、声が不機嫌な姉ちゃんの方に視線を向ける。向けたのだが、言葉が出てこなかった……。

 

「何であそこに居なかったのかしら?」

顔をグイッと近づけて、頬に吐息が掛かるが……、

 

「姉ちゃん……それ……」

 

「夏樹に見せようとしていたの。ちゃんと着てからどっちを買うか、感想を聞いてからにしようって思って待ってたのよ」

ぶぅ〜っと、頬をふくらませる姉ちゃんだが……。

 

「すっごく似合ってるよ……。うん、凄く似合ってる!」

肩が出るようなっている白のワンピースで、膝下まである丈、肘に掛かるか掛からない程の長さの袖。お腹の部分をリボン上の紐で結んでいるようで、後ろの方に蝶々結びの形になっていた。

 姉ちゃんが選んだ服を着た、マジで可愛い。もう一着ある、きっとマジ可愛い。

 

「そうかしら?やっぱり夏樹に感想を言って貰うのが一番ね!」

やめて、もう神を魅了しそうな姿なのに笑顔を向けたら俺死ねるから!(今現在テンションがおかしい……)

 

「それじゃあもう一着着てみるわ。二つとも買おうとは思うのだけど、夏樹が一番好きな方を」

 

「好きな方を?」

 

「内緒よ、ふふ」

 

「え、何するの!」

俺に褒めて貰えて嬉しかったようで、満足げな笑顔を見せてくれた姉ちゃん。本当にあれは反則だ……。

 というか、最後のは一体何よ!あれは何よ!超絶に気になるんですけど……。

 

「あ、弟さん。どうでしたか?お姉さんから感想言って貰えましたか?」

試着室から出て、姉ちゃんの言葉を考える暇もなく、先程俺のコーデをしれくれた店員さんが聞いてきたのだが……。

 

「すみません…、姉ちゃんの方に夢中で……」

 

「そうですか……、今度はちゃんと聞いてみて下さいね」

 

「はい……」

何故か少しばかり怒られているような気もしなくないが、お膳立てはしまくって貰ったんだ…当然か…。

 

「それでは会計の際にまた」

 

「あ、はい。有難うございました」

他のお客さんの相手もしなくてはならないようで、店員さんは風の速さで飛んでいってしまった。正確には獲物を見つけたという表現の方が正しいか……。

 

 

 店員さんが獲物を見つけ、接客を初めた数分後……。

 

「夏樹!今度の方はどうかしら!」

試着室のカーテンが勢いよく、シャーと音を立てながら開いた。スマホから顔を上げると……。

 

「そうだね……」

先程のは何と言うか『天から舞い降りし女神』という様な感じで、本当に『綺麗』その一言に尽きるのだった。がしかし、今着ているのは姉ちゃんが好むズボンのコーデ。

 上は赤と白のチェック柄のシャツ、普段着ているオーバーオールと思ったけれど短めのジーンズ。本当にシンプルで、先程とは打って変わっているきているが……、

 

「姉ちゃんらしくて、とっても似合ってるよ」

正直あのワンピース姿の方が新鮮というか、大人びて見えるのだけれど……。結局、何時ものコーデが一番似合うのだと思う。

 

「そう云えば、夏樹」

忽然と何かを思い出したように俺に尋ねてきた。

 

「何姉ちゃん?」

 

「いつの間に洋服をコーデして貰っていたの?」

 

「……さっき姉ちゃんが一着目を着ている時に」

今気づいてくれたのか…、もう少しだけ早く気づいて欲しかっ……。

 

 

「やっぱりそうだったのね。どうりで夏樹の雰囲気が違うと思っていたのよ」

気づいてた!え、本当に、さっきので気づいてたの!

 

 

「姉ちゃん、気づいていたなら感想頂戴よ……」

店員さんとあれこれ相談して考えたんだから。

 

「そうね、私に感想を言ってくれたんだものね。夏樹にも感想を言ってあげなくちゃ」

そう言うと、俺の事をまじまじと見て、時々何かを嗅ぐように近づいてきたけど……。

 

「夏樹、まず二つ言っておくわね」

 

「あ、うん……」

何だろう急に改まって……。

 

「まずは、その洋服のコーデはとっても似合っているわ。だから、その洋服は勝手着たままお出かけの続きをしましょう」

バシッ!と俺に指さして、満足げな笑みを浮かべる姉ちゃん。顔から察するに姉ちゃん受けは上々。

 

「でも良いの?おか」

 

「夏樹様、そちらはもう既にお支払いが済んでおります。あとはこころ様の洋服の会計だけですので」

 

「そうですか……。親父にはその…宜しく言っておいて下さい……」

 

「分かりました、では……」

いきなり現れて会計を済ませたと言っていたの、弦巻家の黒服である。本当は一人一人に名前があるのだが、『名前を教えてしまっては、お二人に危険が及ぶ可能性がありますので。申し訳ございませんがお答え出来ません』と言われたので、黒服さんと呼んでいる。

 端的に言って『ボディーガード兼姉ちゃんの望みを叶える工作員』。

 黒服さんと言うからには、本当に全身真っ黒なスーツにサングラスで、ほとんど会わないのでだけれど……。親父が心配しているのはこういう所で伝わってくる……。

 

「えっと、それでもう一つは何かな?」

黒服さんと会話で途切れてしまったが、姉ちゃんが俺に言いたいことはもう一つあったのだ。

 

 

「それはね、夏樹……。貴方、どうしてそう私がいるのに他の女と話すのかしら?」

 

 

 予想はしていた……。だって、最初の服の感想を聞くのに試着室に連れ込まれた時に、姉ちゃんの瞳に光が灯ってなかったもん。不味いなぁとは思っていたけど、今になって来るとは……。

 

「いや、最初は店員さんが姉ちゃんの事を『彼女』と間違えて話しかけてきたからさ」

ここでもしも言い訳でもしたら、きっと帰ってから何をされるか分らない。

 

 

「私が夏樹の『彼女』?それってつまり『恋人』ってことかしら?」

 

 

「まぁ…言葉通りにいけば…。でも、俺と姉ちゃんは姉弟だからさ。いくら外見が似てないとはいえ、ちゃんと『弟』ですって言っておいたから」

 

「そうなのね……」

あれ?光が帰ってきたけれど…何で元気が無いんだ。

 

「やっぱりあれなのかな?俺の髪の毛が黒いのが駄目なのかな……、姉ちゃんはその点かなり譲り受けてるからね……」

実際、何度か染めることを考えたのだけれど。

 

「私は今の夏樹が好き。だから、他の人の言葉で無理に変わらないで……」

姉ちゃんが、それを必ず嫌がるので、

 

「わかってる、染めないよ。正直、黒髪の方がヒーローには多いし」

染めることはしていない。実際に自分が金髪にしたのを想像したことがあったけれど、余りにも似合わないのだ。

 因みに、先輩方と明日香達にも聞いてみたことがあったけど、『染めないほうが良い』と断言されたので止めた。

 特に、有咲先輩と沙綾先輩、紗夜先輩とリサ先輩、蘭先輩とひまり先輩とつぐみ先輩、彩先輩と千聖先輩、美咲先輩と花音先輩、それに明日香にも厳しく『染めないで、絶対に!』と断言された。何故だ……。

 

「ふふ、そうね。夏樹の大好きなヒーローも、格好良い黒髪の人が大勢だものね」

元気が無いと思った姉ちゃんだったけど、それは杞憂だったみたい。

 

「でしょ、やっぱり『ハードボイルド』を目指すなら黒一択だね」

 

「夏樹は『ハードボイルド』?よりも、優しいお兄さんとかだと思うわよ」

 

「頭の中で今一瞬『体○のお兄さん』のイメージが出てきたんだけど…」

 

「確かに夏樹には似合いそうね」

笑いながら先程俺が『似合う』と言っていたワンピースを手に持ってレジへと歩き出し、

 

「でも夏樹は夏樹が『成りたい者』が一番似合うと思うわよ」

ただ一点に俺の顔を見つめて、太陽に負けないほどの笑顔で言うのだった。

 

「それもそうかもね……」

 

姉ちゃんが言うなら案外、自分の『成りたい者』が一番似合うのかもしれない。

 

 

 

「夏樹、ポイントカードって言うのが有るみたいなんだけど。これは作っておいたほうが良いのかしら?」

 

 

「すみません、ポイントカードの作成をお願いします」

 

 でも今日はそういう難しいことより、姉ちゃんとのお出かけを楽しむとしますか。俺の洋服を買った時にポイント付いたのかな?あ、服のタグ切らなくちゃ。




夏樹の言う『ハードボイルド』のイメージは、
『俺は自分の罪を数えた…。さぁ、お前の罪を数えろ』人だったり、
『てめえの願いはオレが叶えてやる、「弾丸(願い)」は込められた』の人や、
『この街の掟破る馬鹿と女大事にしねぇ糞野郎ってなァどっちも大好きなんだよ…俺らは』の人です。
最初の人以外は、同じ声優さんのキャラですがわかりますか?
この人たちの影響で、余計にカッコつけたい年頃なんですよ……。

今回もご閲覧していただきありがとうございました。
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