後日談的なものとしてとらえてもらっていいです。
信幸は鼻歌交じりに、嬉しそうに自宅へと歩いていた。
それもそのはず、長く続いた仕事、異世界派遣が終わり、国から三か月もの休暇を言い渡されたからだ。
「さーて、三か月間何しようか...。」
信幸はそんなことを呟きながら家の扉を開ける。
冷蔵庫の中には3年以上持つ保存食しか入っていないため、何かが腐っていることはなさそうだ。
「ただいまー...あ?」
信幸は家の中に入り、一つの違和感に気が付いた。
明らかにきれいなのだ。
半年以上は家を空けていたため、信幸は掃除するつもりでいた。
だからこそ気が付けたのだろう。
また、リビングからはテレビの音が聞こえる。
家の中に誰かいるようだ。
信幸は警戒しながらリビングへと入っていく。
リビングに入ると、スー...スー...と、一定のリズムで何かの音が鳴っている。
「...寝息?」
音を聞いて、信幸はそう呟いた。
とりあえず、ソファに人影が見えるため、誰か寝ているのだろう。
信幸はゆっくりとソファを上から覗き込んだ。
18歳程度の少女が毛布にくるまって眠っていた。
腰まで伸びた黒髪に、信幸がよく着ていた、縫い目やチャックが赤色の、黒のパーカー。
信幸はその少女に見覚えがあった。
「...
信幸が言ったその言葉に反応するように少女は目を覚ました。
少女は目をこすり、信幸の方を見る。
「...兄貴、久しぶり...。」
信幸を兄貴と呼ぶ少女の名前は、織田 雪。
信幸の妹である。
「おう、久しぶり...。って、なんでお前がここにいるんだよ、合鍵とかないぞ。」
信幸は一瞬普通に返事しかけるが、何とか気を持ち直して彼女に突っ込みを入れた。
「んー...ピッキングした...。」
まだ眠いのか、雪は目をこすりながらとんでもないことを言った。
「お前...マジかよ...。とりあえず起きてくれ、何かと邪魔だ。」
信幸は彼女の発言に少し引きながら、起きるように言った。
別に起こす意味もないのだが、ソファの近くにはカーペットなどを敷いていないため、落ちて万が一にでも怪我をされたらたまったもんじゃない。
「むう...わかった。」
彼女は渋々といった感じで毛布から体を出す。
彼女のすらっとした白い足が毛布から顔を出した。
「ちょっ、下はどうした?」
信幸はそれを見て、慌てながら後ろを向いた。
「んう、さっきお風呂入ったから、全部洗濯機の中。流石に替えの下着は持ってきてる。」
彼女は少しふらつきながら、ソファから体を起こし、床に立った。
そして信幸のほうへと歩いていく。
「...やっぱり、眠い...。」
雪はその言葉を最後に、信幸の方へと倒れ込んだ。
「うおっ...。」
信幸は少し驚きながら、彼女の体を支えた。
そのころにはすでに、寝息を立てながら彼女は眠っていた。
「はぁ...はてさて、どうしたものか。」
信幸はため息をつきながらそう言った。
その目は、優しい兄の目になっていた。
はーい、お疲れ様でーす。