導きの青い星と蒼い絆の物語   作:MAMYU9

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タンスの中の暗い過去

 今でもあの日の事は鮮明に覚えてる。今日みたいな大雨で部屋の中は湿気が多くて、そうとても暑かった。

 ボロボロの机の上に溢れてる火薬、コロコロと転がっている弾薬、ぬるくなってしまった水瓶。

 蝋燭で照らしていても尚暗く、家具の影が背伸びをしていた。

 カタカタと木の床を車輪が動いてる音が家の中に響く。

 そこには車椅子に乗った、金髪の綺麗な女性がいた。名前を“ミルシナ・クリシア”という元ハンターだった。

 ハンターを辞めた理由はモンスターとの戦闘で足に重症を負い立てなくなったことが原因らしい。

 彼女はとても優しくて私と雨の日はさほど広い訳でもない家でかくれんぼをして過ごしていた。

 私がよく隠れていたタンスは子供一人入れるくらいの大きさで、いたるところ傷んでいた。

 

 「おねぇちゃん!ねぇもう一回!」

 

 「もう一回?もー仕方ないなぁー」

 

 駄々をこねるように毎回、私はミルシナにお願いした。ミルシナは仕方ないなぁと言いながらもいつも私と遊んでくれた。

 私には母親や父親という存在はいなかった。私は渓流に近いユクモ村付近に捨てられていたらしい。それを拾ってくれたのが、ミルシナと師匠である“ロジエ”だった。二人は双子らしく、似たような綺麗な金髪、似た顔つき、背こそ師匠の方が高かったが、ミルシナの方が先に生まれ姉の立場にいたらしい。

 私にとって親というのは噂のようなもの。本当の両親は何処かにいるかもしれないが、噂のように本当に存在するかは確かではない。それに私は許せなかった。私を一人にしたことを。けれど、ミルシナと師匠は私を決して一人にはしなかった。師匠が居ない時はミルシナがミルシナが居ない時は師匠が居て遊んでくれた。

 心の底から嬉しかった。こうやって駄々をこねても、それが望んだ返事じゃなくても返してくれる人がいる。遊んでくれる人がいる。

 だから寂しくなかった。一人じゃないと実感できるから。

 あの時のドアから鳴る音は気味悪さを醸し出す嫌な風のせいか、それとも別の何かは分からない。けれどいつも通りの日常では決して鳴ることのなかった音がする。

 ただ恐怖を煽るだけのびっくりするような感じではなく、少しずつ近づいてくる気味悪さ。

 この時私はずっと「昨日、おねぇちゃんに読んでもらった怖いお話しの絵本のせいだ。」と思い込んでいたが、本能的なものが私に身の危険を報せていたのだろう。

 

 「誰かいるのかしら……あっロジエが帰ってきたのかも!ちょっと待っててね。」

 

 ミルシナは車椅子で玄関の方へ私を置いて行った。ちょうどドアの前に着くと違和感を感じたようで、すぐに私の元へと戻ってきた。

 

 「ねぇ……ミーナ、ロジエが帰ってきた時、驚かしちゃお?私は別の所に隠れるから、ミーナはタンスの中に隠れててね?」  

 

 この時の私はいつもの師匠へのイタズラをするんだとワクワクしながら「いいよ!」と答えたが、この時のミルシナの顔は永遠に会えなくなった人へ向ける最後の笑顔によく似ていた。

 もし、私が代わりになれたらなんて今考えて後悔しても過去に喪った者は決して取り戻せない。どれだけ残酷で哀しい悲劇だっただろうか。

 あの時、ミルシナはどんな思いだっただろうか。これから自分が死ぬ運命を悟って対峙した。お世話になった人達に会いたかっただろう、死ぬ前にもう一度師匠に、自分のたった一人の弟の顔を見たかっただろうに。

 

 「……私が…いいよって言ったら出てきて驚かそうね。」

 

 私は何故気付かなかったのだろうか、いいよって言ってしまえば驚かすもクソもないじゃないか。気が付けば一緒に逃げれたかも、いやきっとミルシナは自分は車椅子だから遅れてしまうから此処に残ると言い張っただろ、あの人の性格なら絶対そう言うに決まってる。けど、どうしようもなかったじゃ済まされない。方法は幾らでもあっただろうに。

 幼い私は本当に子供一人入れるくらいの大きさをしたいタンスの中にミルシナの言う通りにして馬鹿正直に隠れた。タンスの中は確かに嫌な暑さだったが、師匠の服が大量に重なり、心地のよい枕代わりになって少し時間が経てばすぐ寝てしまった。

 数時間ぶりにまぶたを開いた時の光景は、タンスの扉は勢いよく開いており、目の前には力強く、私の両肩を掴みながら俯いてる師匠と、いつも皆で食事を囲んだテーブルはバキバキに壊れており、いつもの風景は赤に染まっていて、倒れている車椅子の横には見馴れた白い肌をした女性の腕が無惨に転がっていた──

 

 

 

 

 

 

 

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 きっとドアのきしむ嫌な音を聞いただけでこんな辛い思いをするのはあの過去のせいだろう。自然と太刀を握る手に力が強くなっているが、こんな手汗がだらだらじゃ思う存分には振れないだろう。重いんだよ、この太刀は元々。

 

 ガチャッ──と扉が開くと同時に腕にありたっけの力を入れ、振る準備をする。刃がちょうど首を切り落とせるように角度を微調整しながらここ、というタイミングで斬るために。

 しかし、開いたドアから入ってきたのは青髪の見知った顔だった。

 

 「……ノックでもしたらどうなの…ミコト?」

 

 「しましたよ…数こそ少ないけれど、大きな音でしたよ。」

 

 ノックの音なんて聞こえなかった。よっぽど満身創痍だったのだろう。

 

 「あら…じゃぁごめんなさい。聞こえてなかったわ。」

 

 軽く謝ると雨で少しとは言い難い程濡れたミコトキョロキョロとは私の部屋を見る。

 

 「前…そう、ジンオウガの件の時、こんなに部屋の中、散乱してましたっけ?」

 

 痛いところを突かれてしまった、あの時は偶然いや、奇跡的に片付いていたが、この部屋の本来の姿というべきか散らかっているところを見られてしまった。

 

 「これがいつも通りなのよ、気分を害したならごめんなさいね。」

 

 「いえ、そんな事はないですよ。むしろ何だか思ってた通りで、フフッ…」

 

 何が思った通りなのか、ミコトは急に笑い出してしまった。一体何が面白いのか私には分からないし、無性に腹立ってきた。

 

 「ちょっと…何で笑うのよ…」

 

 「ご、ごめんなさい。ちょっと想像していたミーナの部屋とそっくりでしたからつい…理想の片付けが出来ない人の部屋みたいな?」

 

 「何が理想の汚部屋よ馬鹿馬鹿しい。困ってるんだからこっちは色々と。」

 

 片付けだって出来ないし、私が納得いく整理が出来ても他人からはまだ散らかっているとため息を吐かれ、憐れな目で私を見つめられるだろう。

 

 「……そういうアンタはどうなのよ?片付け…出来んの?」

 

 「任せてください!一応、幼い時からずっと一人暮らしだったので洗濯、片付け、料理くらいならずっとやってきていますから。」

 

 幼い時から一人暮らしって両親はどうしたのか聞きたいのだがそれよりも、年下の男にこういった面で負けているのはどうなのだろうか。

 

 「けど…こんな濡れてたら部屋には入れませんね。また今度片付けに来ますから覚悟して待ってて下さいね?」

 

 「覚悟ってちょっと怖いわね…」

 

 今度、ミコトが来る前にまで少し片付けおこうと思った瞬間だった。

 

 「それにしても良かった…ミーナ考えて込んでるんじゃないかってサシャさんがずっと心配してましたよ。」

 

 「考えて込んでるって私が…?…冗談じゃないわ…一体何を考えて込む事があるわけ?」

 

 サシャはこういった勘が鋭いから、毎回私の考えてる事を当ててきたりして面倒くさい。

 

 「…アンタの方こそ…もうだいぶ乾いているけど…傷の方は大丈夫なの?」

 

 「えぇ、もうバッチリです。」

 

 ミコトの服は濡れていると言った割には意外と乾ききっており、それでも濡れていたのら傷にさわらないか心配で訊いてみたが明るく返ってきた、元気な年頃の少年の返事的に大丈夫なのだろうと自分を納得させた。いや、本人も大丈夫だ、と言っているのだからそうなのだろう。

 

 「あの…さっきからそのヘアゴム、ずっと握り締めてますけど…これから髪でも結ぶんですか?」

 

 「えっ…?ヘアゴム…?あぁ!そうだった!髪を結ぼうと、やだ私ったら忘れちゃってて。」

 

 もう関係のない事に夢中になりすぎて、本来の目的を忘れるなんて、これを可愛く『ドジッ子』なんて言えたらいいが、生憎さま私は魔性の女でもないし、天然でもない。ただの十六の男っ気も女子力も無い女だ。

 

 「あぁ…もう本当に髪結ぶの面倒くさいわね!何でこうも、失敗し続けるかな…」

 

 毎回、後少しのところで髪がまとまらず、また一からのやり直しになる。こんなにも結ぶのが下手だと失望してしまう程の不器用さ。あぁもう本当にうんざり。

 

 「…ちょっと貸してください。」

 

 「えっ」

 

 ミコトが予想外な言葉を突然言うもので、驚きながら理解しようとしていると、パッと私の手からヘアゴムを取ると器用に髪を束ね、サッとヘアゴムでまとめてしまった。この無駄のない一連の手馴れた動作に呆気を取られてしまった。

 

 「嘘…アンタ髪束ねた事あんの…?その長さなら束ねててもおかしくはないけど。」

 

 「少し…結んでた時期がありましたから…」

 

 「ふーん。」

 

 少しばかり興味はあったが、さりげなく、興味の無いような思春期の男子っぽく返してみた。

 コイツの束ねてた時期なんて相当笑い物だろうに見れなかったのが惜しい。

 

 「そーいえば、すっかり服乾いちゃいましたね…あの…」

 

 「ン?何よ?」

 

 ミコトは少し恥ずかしそうに、もじもじしながら目を下に向けながら話しかけてきた。こういうところが女々しくて、普通に女と見られてしまってもおかしくはないだろう。

 

 「泊めてもらってもいい…ですか?」

 

 きっぱりととは言い難いが私の目を見ながら言ってきた。

 

 「は?」

 

 泊めるって何処にだろう。こんな汚部屋じゃないだろうな多分いやそうに決まってる。

 

 「ぢょ、じゃなかった…ど、何処に?」

 

 「此処ですよ、ミーナの家に。」

 

 もう聞こえてしまった。二回も、同じことを。

 聞きたくないけれど耳栓なんて便利な道具はここにはないし、聞きたくないもの程良く聞こえてしまう。

 

 「もう一体どういう事なのよ…」

 

 私にはとうとう、一人ため息を吐き、ベッドに寝転がる暇すら今日は与えられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読了ありがとうございました‼️
最初の部分はミーナの過去となっております。ミルシナ、ミーナの師匠については今度、何かしらで解説したいとおもってます。
投票などでミーナの人気が凄いですね…正直驚いています。
よければ、感想、評価のほうをよろしくお願いします。
ではまた‼️
導きの青い星が輝かんことを…

第二回 人気投票

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