此処に来てから見馴れないモンスターや、環境、生態系ばかりだ。決して現大陸では見れない物の方がうんと多い。足元に落ちてるこの結晶達だってそうだ。
結晶達は時々、天井と言うのは間違っている気がするが空も五割くらいは巨大な結晶に覆われていて、そこから落ちてくる結晶は僕の頬当たったりして少し痛い。これでは歓迎されているのか僕がこの地へ侵入するのを拒んでいるのか分からない。
リオレウスのソラとはずっと一緒にいたからお互いのことは知らないことなんて無いくらい知っているのだが、この結晶はずっと一緒にいたって多分、どうして出来たのかぐらいしか分からないんだろう。
しかし龍結晶の地というのは僕が想像していたものとは随分と違っていた。
こう、もっとあちらこちらに結晶が生えていて、天井は無粋な灰色で狭苦しい場所だと思っていたが実際は空は綺麗な青色を何処までも拡げ続けていて、至るところに結晶は生えていたが洞窟なんてのは此処のほんの一部でしかないのだか、それでも今まで見てきた洞窟と変わらない程、広くてこの地の広さを実感させられた。
「広い……」
声に出てしまうほど圧巻だった。
この地で僕は大自然に無謀にも足を踏み入れ、死に抗い、モンスターを狩らなければならない。
時々、足元から奏でられる氷を砕くような音は静かすぎる空間によく響いた。
うるさい。と思った時もあったけれど段々聞き慣れてくると自然の演奏のように感じとれてきた。
上から降ってくる砂の微かな音は大自然の優しさを表していて、結晶が踏まれ砕ける音は大自然での命の呆気なさを表しているように感じる。
壮大さは時に人を感化させ、時に人をその底知れない広さで絶望という深い谷に落としてしまうこともある。
谷に落ちないようにしなければと僕は常に美しい大地には警戒を怠ることはなかった。
首にかけた絆石を強く握る。不安になったとき、いつもこうやって絆石を握って勇気を分けてもらってる。僕を強くしてくれるおまじないのようなものだった。
今回のターゲットはティガレックス。橙色と青色の縞模様が特徴的でリオレウスのような空を飛ぶ為に特化した訳ではないその翼は飛ぶ力の退化と引き換えに強靭な前肢として機能し岩も撫でるように粉々に砕く力を手入れ、強力な咆哮は轟竜の名の通り凄まじく離れていても鼓膜を破りにくる。
その荒々しさと強さから「絶対強者」なんて呼ばれている。そんなおぞましい二つ名を聞いただけでも鳥肌が立ってしまう。
怖くて仕方ないけれど一人じゃないと思うと心の底から安心出来る。
僕は少し歩き疲れたので後ろの巨大な結晶の柱を背もたれにして休憩した。
久し振りに持ち歩いた武器は背中と足にずっしりとだるさを感じさせるような重さをしていて、いつも常備している投げナイフとは別物だった。
腰のポーチから水の入った瓶を取り出すと蓋を開けて入っていた半分くらいの量を喉に無理矢理流し込む。
瓶は透明だから中の水の量や小規模の波が見えて飽きない物だったからこんな緊迫した状況の中でもついつい、見続けてしまう。
小さな波達がお互いにぶつかり合っているのを見ていると瓶の中の水が今までよりも大きく揺れて水が暴れだした。
少しそのまま見届けたが、揺れているのが瓶の中のの水だけじゃないことを理解すると背中に手をかけて警戒体制を取る。
よく目を凝らせば奥の大きな穴からまるで鉱石の鎧を身に纏ったかのような全身金色の獣竜種であるウラガンキンがこちらに何かから逃げてるように走ってくる途中で行き倒れてしまう。
そして動けなくなってしまったウラガンキンの頭上から巨大な生物が降ってきてウラガンキ目掛けてダイブした。
その瞬間に発生した土煙は霧のように濃くて何も見えなくなるが、それは驚いたことに風とかそういうのではなくて信じられない程の“轟音”でかき消されたのだった。
そしてその特徴的な色合いをしたリオレウスと同じ飛竜種とは思えない骨格をしたモンスター、ティガレックスの姿が目の前に現れた。
~~~~~~~~
恐ろしい。何かに飢え続けてる目が僕のことを凝視していて身体が動かない。どれだけ動こうと思っても自由は許されずにいたままだった。
背筋が凍えてるように戦慄して僕は圧倒されていた。
──こんなにも恐ろしいなんて。けれど何だかこれはティガレックスのものではない気がしてきた。
「……ッ!」
僕は精一杯、恐怖に打ち勝とうと力を振り絞り背負っていた自分の身長よりも少し大きいであろう長い棍棒のような武器を手にとって構える。
先端は夕焼けのようなオレンジ色をした鋭利な刃になっていて反対側は黒色の鎌に似た形をしており、素材はベリオロスの物を使って作られた操虫棍、アンバーハーケン改の刃をティガレックスに向けた。
一瞬、ティガレックスは首を傾げたような動作をしたように見えたがその後に大きく後ろに下がると地面に落ちた結晶をも吸い込む勢いで息を吸い、爆音を周囲に放った。
「あがッ……!?」
武器を片手で持ったまま僕は耳を押さえる。近くで爆音を浴びてしまったせいか耳鳴りが凄く、自然に涙が出るほど脳が震えてしまった。
途中から催した吐き気は今まで感じてきた中でもトップを争うものだった。
「ッ……」
ようやく耳鳴りと吐き気が治まったと思えば目の前からティガレックスの姿が土埃を残して消えており、上を見上げると太陽を背にティガレックスがこちらに速度をつけて落ちてきていた。
僕は慌てて横に回避したがティガレックスが地面とぶつかった衝撃で僕は離れていても吹っ飛ばされてしまった。
「──!」
宙に浮いてしまった身体を無理矢理ねじって背中を空に向けてうつぶせになる。
操虫棍の刃を地面へと突き刺して地にゆっくりと足をつける。
視線の高さをやっとティガレックスと同じくらいになり、恐怖のあまり冷や汗が出てきて頬に垂れていく。
絶対強者のあだ名は伊達ではなく、そのうち荒々しさがティガレックスの全てを物語っていた。
「くッ……!」
足の震えを何とか止めようと大きくティガレックスの真似事のように息を吸い、呼吸を整える。
───恐がってなんかいられない。
ティガレックスは覚悟を決めた僕をその生物らしさを全く感じさせない青一色の小さな目で見つめてくる。あぁ、こんなことはあまり思いたくないがなんて恐ろしい目なんだ。ソラとは違って無機質なその青い瞳からは何も感じれなかった。
僕も操虫棍を構えてティガレックスに刃を向けて威嚇をしていると彼か彼女かは分からないが驚いたことにティガレックスは死んでしまっているウラガンキンの死体を貪り始めたのだった。時々、見せてくる口元はベッタリと付いた血で汚れていて吐き気が込み上げてくる。
僕はティガレックスが何をしているのか分からないまま傍観していたその時だった。血まみれの顔をこちらへと動かしたのは。そして僕はまたもや戦慄してしまう。
口の中に何かを含んでいるのだ。肉かと思ったが明らか発せられる音は硬い物同士がぶつかり合ってる音であってティガレックスは以前同様、大きく後退りした。
「──ッ!?しま──」
もうティガレックスは息を吸っていたのだった。
そしてハンターの扱うボウガンから発射される散弾に似た白い大小様々な固形物が咆哮と同時に放たれた。
~~~~~~~~~~~
ティガレックスは仕留めたと思った。その無機質すぎる青い瞳でただぼんやりと目の前の土埃だらけの光景を見ながら思った。
彼が飛ばした固形物はウラガンキンの骨でそれを口の中で砕いた後、咆哮と共に自然に足を踏み入れた愚か者に骨の散弾という鉄槌を下したのだった。
土埃が晴れていくと露になっていく地面に突き刺さった骨達。ウラガンキンの骨はとても頑丈で人は武器に加工したり建築の時に使ったりするほど重宝されていた物を彼は何も思わず、ただ目の前に佇んでいた人間を殺すことだけを考えて噛み砕いていた。
彼は自分の巣に帰ろうと背を向けた時だった。
スコンと何かが宙をよぎり、当たった音が響く。ティガレックスは困惑した。
その時の彼の脳には『上から巨大な結晶の柱が落ちてくる』なんて予想もしていなかったのだ。
彼が音の異変に気づき、空を見上げた時にはもう遅く、ティガレックスは巨大な結晶の柱の下敷きになってしまった。
柱はぶつかった衝撃で粉々に砕け散ってしまうがティガレックスには壮絶な痛みが走り、思わず転倒してしまう。
彼がその無機質な瞳で睨んだのは、土埃の中から腕を伸ばし、自分の瞳の色とおんなじ青色の長髪をなびかせた。ハンターの姿だった。
ティガレックスは久し振りに〈好敵手〉に出逢えてこれほど喜ばしいことはなかった。
再び、彼の闘志に火が灯った。
読了ありがとうございました‼️
待望?のミコト回です。やったね(?)
次回も同じミコト回です。
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