伸ばす腕には鋭利な刃物のように尖った骨の一部が突き刺さっていて、その傷口にさっきから土埃が刺激を与えてきて痛みが増していく。そのせいか少し口元がひきつってしまう。
それでも僕はティガレックスから目は離すことはなく、ひたすら相手を凝視する。
ティガレックスの瞳は青色から汚染されてるようにだんだんと赤く染まっていき、それに伴い前肢も繊維のような赤い線が広がっていき最終的には瞳は真っ赤に前肢には血管が浮かび上がり口から息を荒々しく漏らしていた。
“怒り状態”。これ程分かりやすく変化するモンスターはいるのだろうか、と疑問にも思えてしまうくらい分かりやすくそして恐ろしい姿に変化した。
理性も何処か遠くへ置いてきたのだろう。さっきのような冷静さは失せていた。
ティガレックスはいきなり此方に前肢を乱暴に地面へと叩き付けて突進してきた。落ちている結晶は弾かれたり震動の影響で宙へと飛び交っていた。
僕は急いで右側に回避しティガレックスの荒々しい突進を避けることに成功したがティガレックスはその先に僕がいないことは分かりきってる筈なのに突進を続け、そのまま壁に衝突してしまう。
「……何で…」
その土埃だらけの目の前の光景から目を離すことは出来なかった。
もはや今のティガレックスには僕をただ殺すという殺戮衝動に駆られて無理矢理身体を動かしてるようにしか見えなかった。
まるで雲のような大きさまで育った土埃の中から元は青と橙色だった筈の赤色の前肢がバンっと地面に叩き付けられたところを見て僕は慌てて真後ろへと下がった。
次の瞬間にはティガレックスは疾風の如く突進をしてきて大地を削った。まるで空間ごと削りとられた気分だ。
僕はまた操虫棍を弧を描くように頭上で振り回し、また方向転換してきたティガレックスに対し僕は操虫棍の刃とは反対側の部分を両手で強く握りしめてオレンジ色の刃をティガレックスの頭部に斬りつける。
『──────ッ!!』
ティガレックスは堪らず怯み、突進を中断しその場に止まり、僕はまだティガレックスの頭上にある刃をそのまま真下へ振り下ろした。
攻撃は見事命中しティガレックスの顔に切り傷が付き、そこから血が大量に流れていた。
しかしティガレックスはその自慢の脚力を使い後ろに飛んで下がると地面をえぐるように前肢を振るって扇の形を描いていた。
前に何処かのハンターに聞かされた事があった。
「ティガレックスの地面をえぐるような攻撃…しまっ──!」
そのハンターの情報が正しければこの攻撃は近くの敵対存在を薙ぎ倒す用にもしくは遠くにいる敵対存在に“大きな岩を飛ばして潰す”為に使われる危険な技だった。
僕は対応が間に合わずリスクの高い回避をせざるおえなかった。
それは──
操虫棍で地面を強く突いて飛んでくる岩達よりも高くに跳んで回避するしか他無かった。
操虫棍の刃で地面を突いて僕は宙へと跳ぶと目の前には岩が当たるか当たらないかぐらいの距離まで詰めてきてて足りないんじゃないかと被弾を覚悟したがそれでもやっぱり諦めきれず操虫棍の刃を岩を突き刺して足場にすると操虫棍の持ち手の部分に足を乗っけるとそのまま片手で武器を掴み、もう片方の手で岩を支えにして狭い足場の上で高く跳んだ。その時には岩から操虫棍を抜いて真下へと刃を構えた状態で落下していく。
ティガレックスは目の前から姿を眩ました僕を捜していたが上に居るなんて気づくはずも無く、刃はティガレックスの背中を貫いてそのまま横に傾けられ肉を削がれる。
『─────!!────!!』
ティガレックスは痛みに堪えきれずのたうち回り、理性が追い付かぬまま暴れだした。
こうなってしまえばもう手はつけられなかったがそれは僕の手であって自然の巨大すぎる残酷な手のひらで叩き潰すことはまだ可能であった。
僕は落ちている結晶を拾い上げ、スリンガーにセットすると真上へ腕を掲げ結晶の柱へと撃ち込んだ。
コツンという頼りない音が響いたと思えばティガレックスの頭上からは数え切れない細かな結晶と共に比べ程にもならない大きさの結晶の柱が一日に二度も衝突したのだった。
「ツイてない…ですね貴方は…」
僕はそう言いながら操虫棍で円を宙に描いた後に地面へと突き刺した。
~~~~~~~~~~~
静かにベリオロスの刃を使われたオレンジ色の刃は半分申し訳程度に地面から刀身を出して吹き荒れる風を裂いていた。
僕の青色の長髪は風に好き放題されてずっとなびいたままだ。
虚ろを向きかけているティガレックスだがまだ確かにちゃんとした息があり、苦しそうに呼吸をしながらうつ伏せになったティガレックスは前肢を動かそうとしていた。しかし力はもう入らないのかバタリと崩れ落ちてしまう。
見ててこっちも苦しくなってしまうような顔をしたティガレックスの瞳は赤色から青色へと戻っていて痛みを苦しみを訴えかけていた。
───楽にしてあげなくちゃ。そう思ってしまう。
苦しんでるから助けてあげなくちゃとかじゃなくて殺してあげることも救いの一つだとこの大自然に足を踏み入れてから理解した。
今まで無駄な殺生はしてこなかったつもりだ。小型のモンスターとの戦闘も極力避けて、大型モンスターは精々撃退止まり。そうやって生き延びてきたけど今回は違う。
ここまでやったのなら自分で終わらせないと。
僕はローブの右の袖から二本のナイフを落として手に取ると瓶に容れてあった毒液をナイフの刀身に掛けてティガレックスに投げようとする。
その時だった。空から何かが爆発するしているような音と灰色の煙を引き連れてティガレックスに衝突したのだった。途端、周囲にとんでもない爆風と火の粉が飛び散り、阿鼻叫喚な光景へと様変わりした。
結晶は灰になって風に乗って飛んでいき、天変地異でも起こったかのように黒焦げていた。
僕はティガレックスとあの隕石のような何かが衝突する前に確かにこの目で見た。
金属のような独特の色合いと形をした甲殻、蒼白く輝いていた鱗達、そして悪魔のような顔を確かにこの目で捉えたのだった。
一つ思い当たるモンスターがいた。
今見た特徴を全て持ち合わせていて、自分の鱗を人々に爆鱗と呼ばせる凶悪なモンスター、バゼルギウスだ。
黒く染色されていく煙の中から太陽のような赤い瞳が浮き出ていた。それを見た瞬間、脳が今すぐ逃げろと命令した。
僕は服の中にしまっていた絆石を取り出すと祈るように待機させていたソラを呼び出して、背中に乗ると急いでその場を離れた。
空中に逃げてもあのバゼルギウスはきっと追いかけてきている。そう確信出来たのは後ろからなる怒涛の爆発音のお陰だった。
「────ッ!!もっと…速く!」
ソラを急かすつもりは無かったのだが無意識の内に急かすような言葉を発してしまった。
僕達は真上へ飛んだのではなく、溶岩流れる洞窟の方へと進んでいた。あの巨体ならば入り口をソラの火球で岩を落として塞いでしまえば通ることが出来ないとふんだからだ。
「ソラッ!火球!」
洞窟の入り口をくぐり抜けるとソラに火球を放ってもらい、入り口を岩石で塞ぐ事に成功した。
隙間は確かにあったがソラでも通れないような小さな隙間をあの巨体で潜ることは不可能だ。
────逃げ切れた。そう思った。
『─────!!』
『──────────!!』
『────────────────!!』
近づいてくる悪魔のうなり声。
「まさか!?突っ込んで──」
急いで入り口から離れると蒼い光が隙間から漏れだしたと思えば隙間と言うよりは塞いでいた岩石達が瞬きした間に消し飛び、辺りに蒼色の火の粉を煙りのように纏ったバゼルギウスがまた姿を現した。
『─────────────────!!』
この洞窟に響く悪魔の咆哮は何もかも震わせて、バゼルギウスの爆鱗は再生を初め、一瞬にして蒼白くなる。
間違いない。このバゼルギウスはあの時、この新大陸に来て初めて出逢ったあの個体だ。
僕は覚悟を決めた。生き延びる覚悟を。
読了ありがとうございました‼️
忘れてる人もいるんじゃないかと蒼紅蓮バゼルギウスというオリジナルモンスターの再登場です❗
もう久し振りすぎて色々設定忘れてたけど…
ミコトの回がこのまま続くかと思うと思いますが次はサシャの回です。やった❗
次回も楽しみにしておいてください❗
ではまた‼️
導きの青い星が輝かんことを…
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