導きの青い星と蒼い絆の物語   作:MAMYU9

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再会

 

 全てに飢えていた。喉の渇きに堪えきれず、空腹感に襲われ続け、睡魔が甘い言葉で囁いてくる。それでもなんの希望もない現実に意識をもどしてこられるのはこの止まない痛みのおかげだった。

 空の色は腹正しい程、透明感溢れる水色が長く続いていて、あの悪魔が僕を捜す為に空を巡回していないことを確認すると安堵の息を漏らせた。

 手に触れてくるのはジャリジャリした幼児の歯の大きさにも満たない程の石粒が傷口から溢れている血液を塗装して手のひらに張り付いてくる。この気持ち悪さはやはり慣れないものだ。

 腰に手を当ててぶら下げている瓶を手に取ってもその異様な軽さから中身は予想できる。

 

 「からっぽかぁ……」

 

 分かりやすいよう、うつ向いて力の抜けた瓶を地面に落とし落胆してしまう。

 こんな休息も此処では、いやあの悪魔からは許されないのだ。いくらなんでも苦しい、限界はもうとっくに迎えてるとバゼルギウスに報告してやりたかった。

 あれから幾つか覚えてはいないが夜を数回、乗り越えて悪魔からの追跡を逃れていたのだがソラも時間が経つにつれて疲弊した様子だったので彼だけを逃がして僕は囮役に申し出た。

 あれから一回一回の水分補給や食料の管理にいつも以上に気を配り食事なんて数が少なすぎて味はせず、何を口に放り入れたか分からなくなったがそれでも飢えを凌ぐ為に何回も噛んで空腹感を紛らわした。こうやって試行錯誤した末この状態なのだ。ソラをアステラに帰したのは昨日の昼間だだ。そろそろ着いててもおかしくはないが、もしアステラにいる人達の目に留まらなかったら僕はこのまま飢え死にするかバゼルギウスに見つかって殺されるかのどちらかになってしまう。

 背中は凹凸の激しい岩肌に預けて座ってたせいか立ち上がると同時に滝のように砂が背中から流れて地面に山を築いた。

 けれど今はこんな砂山よりもあのバゼルギウスのことが気になってしまって仕方ないのだ。この静けさは不思議すぎる。先程までの爆発音は一切聴こえなくなり、段違いに周囲の物音が聴こえるようになっていた。

 だから何かが巨大な翼をはためかせて空を駆ける音を察知するのは容易かった。

 

 「くる…!」

 

 居場所がばれたのか理由は知らないが音は確実に僕のいる方へと近付いてきていて、居場所がばれていなくても発見されてしまえばそれは終わりを意味する。

 僕の体力は底を尽きていて走ることなんて到底出来ないだろう。ここは相手より先手を取って動くことが大事だ。

 周りの安全の確保を最優先に少しずつぎこちない歩みを進めていく。

 命がけだ。歩くのも休むのも一切の油断は許されず、地獄を耐え抜く精神力が必要だ。

 欲しいのは食料と水。どちらも此処で手に入る物の筈なのに手に出来ないのがここまで悔しいなんて。

 僕は手すりのように手を置いて老体のような不安定な身体を支えていた壁を殴る。弱かった。あまりにも衰退している。限界が近い証拠だ。

 視線を前に戻すと人のような何かが幻想のようにぼやけて見えて手を振ってるのが分かる。

 助けだ。助けが来てくれたんだ。

 

 「こっちだ!」

 

 ふらつく足を大木の丈夫な枝で地面に突き刺すように一歩一歩に力を入れて歩いていく。

 誰かが呼んでいる。行かなければ、もっと速く。

 僕はいつの間にかその誰かとの距離を素早く詰めていた。いや、相手もこちらへ寄り添いに来てくれたのかもしれない。

 

 「やっと助かる…」

 

 僕はその誰かに倒れ込む形で支えられたがその時、異様さを感じる。

 空気に触れている。いや、見えない何かに触れているのだ。さらに凄く熱い。燃え盛る焚き火に近付いてしまった時のようなそれ以上の熱さを感じる。

 そして熱さのおかげで目を醒ます。

 人のような何かの姿は霧のように姿を消して現れたのはただニヤリと悪魔のような微笑みを浮かべたバゼルギウスだった。

 

 

 

 

 

 

 

 ~~~~~~~

 

 

 「ミコト!何処に居るの!?」

 

 導蟲は小さな古い人の足跡に反応し名前の通り私を導いてくれていたが今は時間が惜しい。こんな古い足跡を追っていては今、彼がいる場所にはすぐには辿り着けない。

 私は声を荒げながらミコトを捜し回っている。

 

 「ミコト!」

 

 精一杯、声を上げて返事を待つが返ってくるのは腹腹正しく感じる静けさだけだった。早く見つけないと大変なことになってしまいそうな気がして止まない。

 早く、早く見つけないと!

 

 『───────────!!』

 

 その刹那、空気を轟かせ、空を斬り、地を割るような物凄く恐怖を感じる咆哮に出逢う。私はこの咆哮の持ち主を知っている。いや覚えれていた。

 

 「バゼルギウス!」

 

 私は嫌な考えが思い浮かぶ。まさかミコトはバゼルギウスと対峙しているのではないか。確証はないが行かなければならない。もしそうだった時、彼を助ける為に。

 意外と近くで聴こえたので素早く辿り着けるとは思うが何故かバゼルギウスが残した筈の痕跡に導蟲達は反応しないのだ。いや反応はしているがバゼルギウスの痕跡レベルは相当高く、一つの痕跡で本体を追えた筈なのに何故か導蟲達は訳の分からないまま霧のように消えていく。

 そうかこのバゼルギウスは通常の個体じゃないんだ。私は咄嗟に理解する。

 導蟲はモンスターを通常個体と特殊個体を別物として区別して反応する習性がある。その通りにいくとこのバゼルギウスは特殊個体と仮定され、私は二通りの狂暴な個体を知っている。

 一つは新大陸にもギルドにも存在が知られている紅蓮滾るバゼルギウス、そして知っているのは極少数、そのことからギルドにも未だに認知されていない蒼紅蓮滾るバゼルギウスの二種だ。

 そして私は紅蓮滾るバゼルギウスの方の痕跡も既に導蟲に教えてる為、たった一体に絞ることができた。

 

 「蒼紅蓮…!」

 

 どのみち最悪な事態に変わりはなかったが蒼紅蓮と紅蓮滾るバゼルギウスとでは天と地の差があることを私は知っている。

 ただひたすらバゼルギウスの居るであろう方向へ走っていくとそこには燃え盛る紅蓮の炎の海と化していた。火柱が全て無我夢中に空へと炎を上げていた。

 炎と煙の中ではバゼルギウスの姿は見えなかった。

 

 「ミコトー!!返事をして!!」

 

 私は必死に呼び掛けるが返ってくるのは炎がパチパチと音を立てているだけだった。

 その時だった。私に向かって火柱達が手を伸ばすように私へ一気に襲い掛かったのだ。その光景はもう目と鼻の先まで迫ってきた火槍を呆然と眺めてるのと同じ絶望しか感じられない。きっと襲い掛かってきた原因はさっき一瞬だけ吹いた強い風が原因だろう。

 

 「あっ……」

 

 終わった思ったその刹那、私に向かって炎の中から誰かがぶつかってきてその誰か諸とも一緒に転がっていき私はなんとか炎の攻撃を避けることができた。

 私助けてくれたのは他の誰でもなかったミコトだった。彼の綺麗な髪は土や煤で汚れてしまっていて服もだいぶ破けていた。

 

 「ミコトっ…!良かった!無事で…!」

 

 安堵は一瞬だった。すぐにヤツは燃え盛る太陽のような炎の世界からその餓えている瞳を現し翼を拡げおぞましく咆哮する。私の背筋は一瞬にして凍え、視線は必死にヤツを見ないよう無意識の内に逸らされている。

 再び私の前に姿を現した蒼紅蓮滾るバゼルギウスは己の爆鱗を真っ青に染め膨らませ今にも地面に零れそうだ。赤く腫れ上がった目蓋を開けたバゼルギウスは静かだった。そう妙だ。何故すぐに襲ってこないのだろうか?そこにはどんな理由があるのだろうか?まさかこうやって考えさせることも狙いの一つなのだろうか?だとしたら相当達が悪い。

 

 「ミーナ──」

 

 こんなにも近くにミコトが居るのにその声は遥か遠くで聞こえたみたいに掠れて小さい。弱っているんだ。早く安全な場所で介護してやりたいがどうもバゼルギウスはそれを許してくれそうにはない。

 お互いが目を動かすのは互いの動きを観察するため。酷い話だがミコトを助ける為には早く動かなければならないのだが先には動いた方が相手から一発貰う羽目になる。

 動くなと自分に言い聞かせる自分は本当は動いて逃げたい。

 

 「待っててね、ミコト」

 

 必死に言葉を絞って出した。彼を安心させたくて仕方ない信頼の無い言葉だ。本当は絶対助けてやると胸張って言いたいが自分が情けない。

 もっと力があれば──

 

 「すぐ終わらすから」

 

 力のある自分にはまだ出会えない。

 私は華奢な細い腕からは緊張のあまり汗が噴きでているが何もかもが今はふっ切れて堂々とバゼルギウスの前を歩きミコトを岩の陰に隠した。彼はさっきのまでが限界だったらしく気を失っていた。

 すぐに迎えに戻ると約束の指切りをして互いの小指を交わらせた後、バゼルギウスの前に立つ。

 バゼルギウスは私を見るなりその溢れるがままの恐ろしさを周囲に波動として放った。その恐ろしさはイビルジョーすらも喰わないだろう。

 私は柄を握りしめて刃を向ける。時間稼ぎだって撃退だって何だっていい。バゼルギウスはニヤリと笑うかの如く顔を近付けてくる。馬鹿にしているのだろうか。

 今はどんなことも忘れて集中しよう。

 そう思った次の瞬間、絶望する。

 

 「あ──」

 

 口を開けたまま放心しそうになる。バゼルギウスが顔を近付けた理由は馬鹿にするためじゃない。攻撃だった。

 バゼルギウスは近付けていた顔で空を仰ぎ零れそうな蒼い雫を地面へと叩きつけようとしていた。

 今から回避運動は出来ない!あれを喰らえばまともに身体は残るのだろうか?遅かった。気付くのに遅かった!

 助かる道はない。そう思った。

 しかし、こんな絶望の最中、私は一つの走馬灯を見た。

 

 金髪で背の高い男性が不規則かつ何処かおかしいリズムで呼吸をし、剣先が向いているのは地面、刃も決してモンスターに向けてはいなかった。太刀なのに一体どこで斬るというのだろうか。

 その男性はモンスターからの攻撃をもろに喰らってしまった。その筈だった。

 しかし男性は瞬間移動したように太刀を納刀をしていてモンスターの攻撃を避けていていつの間にか後ろへと下がっていたのだった──

 

 意識は走馬灯から戻り覚悟する。

 見よう見まねで私はあの不規則でおかしいリズムの呼吸をし、太刀を構える。

 集中するしかない。今はこの手しかないと言い聞かせて私は息を吸って吐いて吸って吐いてそしてまだ吐き続ける。

 私はバゼルギウスの目を真っ直ぐ見つめた。

 

 

 

 

 

 

 

 




読了ありがとうございました‼️
最近、本当に忙しくなってきてて投稿を第一に考えてるつもりなんですがこの一週間で少し書き貯めようかなと思っています。
よかったらお気に入り登録や評価のほうもよろしくお願いします。
ではまた‼️
導きの青い星が輝かんことを…

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