今日は潮風が一段と強かった。爽やかで気持ちの良い潮風の吹くなか私はミコトに指定された港へと足を運んでいた。あれから体力も回復して一人で歩けるようにもなっていた。明日には完全復帰を遂げるだろう。
私の服装はこの前の夜とはほぼ変わらずおめかしをした格好とは程遠い服装だ。
するとばっと吹いた潮風が私の髪を拐う。
「うわ」
その強さに驚いてしまい、私は両目を瞑る。時々潮風の波に緑の落ち葉も混じり込み何処か遠くへと泳いで行った。
それを横目に眺めていた私の目の前にはハーフパンツを履いて露出している脚を海水に浸して涼んでいるミコトの姿があった。水中に柱を建てて浮かせている木の板に尻餅をついて自分の足元を見続けている。波紋はまるで魚のようにミコトの足を口で吸い付いてるみたいだ。
「気持ち良さそうね?隣、いいかしら?」
「──ミーナ!いつから其処に?」
私は今来たばかりだとミコトに説明すると彼は簡単な言葉で返してきてくれた。青い瞳はずうと先の空の黒と海の青が混ざる地平線を眺めていた。
私はそっとミコトの隣に座ると隣の彼は私の顔を覗いてくる。手のひらに乗せれば水のように隙間という隙間から零れてしまいそうな空色の髪は風に揺らされて、その幼さからは信じられない程の魅力を感じさせていた。
私は不意にも彼の髪が出会った頃よりも伸びている小さな変化に気付いてしまった。後ろ髪は首まで伸びていてそろそろ背中の半分近くを占めようと企んでおり、前髪は目に掛かりもみあげは左右非対称で右の方が少し長い。
「ミーナ、あの時は助けに来てくれてありがとうございました。……心配を掛けてごめんなさい」
彼は視線を地平線へ戻し申し訳なさそうにお礼を告げた。
「ううん。私の方こそだいぶ遅れてごめんね。苦しかったでしょう…」
罪悪感だけが募ってゆく。彼は三日間も地獄を味わい続けたのだ。空腹感に襲われて絶望から逃げ続ける苦しみは私には想像も出来ない。
私は気晴らしに星空を見上げたが星は私の心の穴を埋めてはくれない。
「ミーナ」
「どうしたの?」
ミコトは私の名前を響かせて腕を私の方へと伸ばしてきた。手は何かを握っていて小さくて綺麗な手でも感じれる力強さはやっぱり男の子だと再度、気付かされる。
「これで僕の後ろ髪、結んでくれませんか?」
彼は握り締めていた手を開けて私の手のひらにもうボロボロにほつれている黒色の紐を渡してきた。
「これ、昔に大切な人がくれた物なんです。ずっと仕舞ってて使ってなかったんです」
「そうなの…けど、私不器用なの忘れたの?髪なんて結べるかしら?あなたがやった方がいいんじゃないの?」
私は髪を結ぶのが下手くそでこの前、ミコトに結んでもらったくらいなのに彼はお願いしてきたのだ。意図が分からなかった。
「大切な物だから大切な人にしてほしいんですよ、ミーナ」
「そう……分かったわ。下手だろうけど許してね」
私は恐る恐るミコトの後ろ髪を手のひらに乗せて一つの束にまとめると紐で円を描いて一週させるとキツくならないようにかつ、ほどけないように強く結んだ。不器用ながらも私的には上手く出来た方だと思う。
「……よし。出来たわ、キツくないかしら?」
「全然キツくないですよ。ありがとうございます」
彼はさっきよりも綺麗に見えた。髪をまとめたことで清潔感が増してより男の子らしく、年相応の雰囲気が漂っているが中には魅力も混じっている。
まとめた髪の束かた時折、ちらりと見えるうなじ、髪を後ろへとやったことで好き放題伸びていたもみあげが調った。
私はミコトの後ろで両手を口に当てて驚いてしまった。
似ているのだ。あのカムイに。
彼には弟がいると言っていた。考えたくもない。罪悪感という重圧で押し潰されて壊れてしまいそうだ。
「……ミーナ?」
彼は心配そうに声を掛けてきた。きっと息が急に荒くなった私を心配してくれての行為だろう。今の私は多分、顔色がすごく悪いだろうからミコトを振り返させないように「何でもない。大丈夫」と返した。
心臓は心拍数を上げて変な汗をかかせてきた。
私はゆっくりと怖さを伴いながらも声を出した。
「ミコトってさ…お兄さんとか、いるの…?」
「───いないですよ?どうかしたんですか…?」
ミコトのその言葉を聞いた瞬間、私は大きくため息をついては安心感に浸れた。
「ミーナこそいないんですか?」
「私は──知らないから」
「知らない?」
「そう知らないの。拾われたら身だからさ何処で生まれたのかも分かんなくてさ本当の母親も父親も知らない」
ミコトは驚いた顔をしていた。
私は笑顔を作って話を続けた。本心でこの話の最中に笑ったことはない。笑われたことが無いのは当然だと思うが私にとっては否定したい話。これが作り話だったらと今でもその妄想は止めていない。
「…僕にはよく分かりません。捨てられた気持ちは。けれど苦しかったでしょう?その事を知った時は、いや今でも苦しいんじゃないですか?」
痛いところを突いてくると思った。全部が全部、図星で実はミコトが私の心を見透かす超能力者じゃないかと思ったが冷静に考えてこれぐらいのことを見透かすのは容易いかという判断に至った。
私は遠くを見つめながら自分の過去の事についてボーッと考えていると私の手に暖かい指が絡んできた。声を上げて驚いてしまう。
「あっ──ごめんなさい…」
ミコトは慌てた様子で私の手に絡めていた指を離して頬を赤らめながら私とは反対の方向を向いてしまった。
「あ、べ、別に嫌な訳じゃないけどちょっと驚いちゃってね」
「ご、ごめんなさいぃ…」
彼は夕陽の如くうずめた顔を紅色に染め上げて蒸気を噴火させながら言葉を続ける。その仕草はまるで小動物のような愛らしさがあった。
「その…ミーナの手って意外と小さいんですね…嫌味で言ってる訳じゃないですよ!」
「分かってるわよ…けど初めてだな小さいって言われるのは、ちょっと嬉しいかも」
私はこの身長のせいであまり女性らしい扱いはされず、そこへさらにハンター稼業という過酷な仕事が拍車を掛けていた。
そして私はその扱いを受け入れていたのだ。自分はハンターだと言い聞かせて差別的な扱いを。
私は自分の手のひらを掲げてじっくりと観察をする。時折、手首の角度を変えてみたり拳を握ったり広げたりする。
自分の手は武器を握ったり様々な土地での狩りのせいで血豆ができていたり傷が多かった。やっぱり女性の手じゃない。
けれども私はこんな手が欲しかったのを思い出す。苦労して生き抜いた証、努力家の証、誰かを守ってあげれる手が欲しかった。
似てきた。師匠やカムイの手に。
「頑張ってきたんですね」
ミコトは私の手を両手で持ち上げると月光に照らさせて彼と私の小指を絡ませた。
「えっ……」
「約束してくれます?もう強がらないって、無理しないって」
「あはっ…なんだ結局あなたに見透かされてたじゃない」
私は本心で笑えた気がした。彼の手は暖炉のように暖かくて冷えていた私の手だけではなく心までも鳥が卵を温めるが如く温めてくれた。これが幸せなんだなと実感する。もう忘れてしまった心地よさは私を癒してくれた。
私は小指に力を入れてミコトの小指をぎゅうと絡めつけると彼は驚いた顔をして頬を赤らめさせれいた。視線は私達の小指付近を凝視し続け飛び出しそうだった。
「じゃあ私からも約束、絶対に居なくならいで、何かあったら私が絶対に助けてあげるから」
「──はいっ」
彼は笑いながら答えてくれた。
本当に優しい子だ。
「ねぇさミコト、私は誰かを守れるようなそんなハンターになれる…かな…?」
「変なの。ミーナはもう既に僕を救ってくれたじゃないですか。もう立派なハンターですよ」
ミコトはそのまま言葉を続けた。まるで憧れの人を嬉しそうに自慢しながら話してるみたいに。
「英雄になれますよ。きっとミーナなら皆に応援されながら誰かを助けるためにモンスターを狩る英雄になれます。僕が言うんですから大丈夫ですよ!」
「ふふ、ありがと、ミコト」
私は彼にお礼の言葉を告げると「そろそろ帰って寝なきゃね」と続けてミコトとその船着き場で別れを告げた。彼の後ろ姿は幼い少年の筈なのに少しばかり私よりも大きく見えたのだった。それが彼の優しさが溢れ出て後ろ姿を大きく見せたのか、はたまたただ目が疲れているからなのかは分からないままだった。
私は誰もいない静かな自宅の扉を開けて中に入ると闇の沈んでいる足元に注意しながら何とかベッドへとたどり着き休眠を取ることに成功した。
そして次の日の朝、私とミコトはサシャと調査班リーダー、総司令達に呼ばれて会議に出ることになった。
その会議の内容はバゼルギウスとディノバルド亜種の件だった─────。
読了ありがとございました‼️
いよいよですよ❗迫って参りました‼️ディノバルド亜種戦❗
戦闘シーンを書きたくてしょうがない‼️って感じでテンションが上がっちゃってます。はい。
ディノバルド亜種とか他の細かい話してない設定はまた後日ということで……
今回でミーナ以外にも票が入って欲しいのですが厳しいかな…
まぁ評価やお気に入り登録の方もよろしくお願いします‼️
ではまた❗
導きの青い星が輝かんことを……
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