あと少し書き方を変えてみた
「集まってもらったのは他でもない。あの『蒼紅蓮滾るバゼルギウス』とディノバルド亜種…いや、特殊個体『武神を宿すディノバルド亜種の件についてだ。『蒼紅蓮』の方はまだ本格的な調査が行われていないから今は置いとくとして『武神宿すディノバルド亜種』についてはサシャと学者先生達からの報告が挙がっている。頼むぞサシャ」
清々しく透き通っている青空を背景に調査班リーダーはいつもよりも大人数を会議に集めると、『蒼紅蓮滾るバゼルギウス』と『武神を宿すディノバルド亜種』の件を話しだしてサシャへと議題を投げた。サシャは一瞬だが拍子抜けた顔をしてそれを誤魔化すように咳払いをするとそのまま続けた。
「えー、特殊個体と見なされたディノバルド亜種は現在、瘴気の谷の中層の大穴から空を仰げる広い未発見エリアに居座っている。あそこは出入口の大穴以外からは出入り出来ず、それも今は岩が崩れて塞がっている状況になっている」
サシャの言葉に周りのハンターや学者達はどよめいていた。未発見のエリアなど、散々調査し続けてきたハンターからしてみれば信じがたいことであり、そこへディノバルド亜種という様々な要素が混ざり込んでしまっていた。
そんな疑問やら不満、不安を抱いている大勢にサシャは再び言葉を続ける。
「この状況は私達にとっては絶好のチャンスだ。ヤツにとって崩れた岩なんぞ尻尾の刃を扱えばクモの巣のように簡単に突破できてしまうような防壁だが、今此処でヤツを見逃すような真似をしてしまえば瘴気の谷の生態系は崩れその被害は谷だけではなく、陸珊瑚の台地、古代樹の森と他の環境までにも被害を出すことだろう。私達は何としてもそれだけは食い止めねばならない」
サシャは今までよりも言葉を強調して言い放った。
「何としてでも!ヤツをあのエリアから出す前に仕留めなければならない!!ヤツに此処で終止符を打たないと前回同様に瘴気の霧に姿を眩ませてその刃で生態系を脅かせる事になるだろう!ハンターとして!新大陸に生けるハンターとして!!『武神を宿すディノバルド亜種』を必ず討つ!!」
そのサシャの大声は此処に居るハンター達に火を着けた。彼らは腕を上げて、おおぉーっ!!と声を上げた。
するとそんな中に弱々しい声が聞こえる。
「まぁまぁサシャさん……指揮を上げるのもいいが次は我々の仕事だ…ではまず我々の調査結果の方も聞いてもらいましょうかね…」
その身長はテーブルにも満たない程の小人っぷりは童話を彷彿とさせてた。その学者特有のローブ衣装はてっきり何かの決まり事なのかと妄想を膨らませ、よぼよぼの皮膚とベリオロスの毛のように透き通った白い髭を持った学者がサシャの話の中に割って入ってきた。
「これはすいませんでしゃばり過ぎましたね…」
「いいえ…これ程指揮が上がっているのは悪い事じゃない…人が集まれば次の仕事は我々が彼らに情報を与えてればもう準備は整ってしまう。むしろ、情報の提供よりも指揮を上げさせる方が困難の筈なのに…凄い統率力ですな」
学者はサシャを褒めちぎり疎かにしていた調査報告を再び語り出す。これがなければ間違いなく負け戦と化すであろう。狩りに大切なのは技術に経験、それと情報の三つだ。技術があっても経験が無ければ慣れない状況下の闘いを強いられ、技術はあっても情報が無ければ知らぬ動きに翻弄されて格好の的に成り果てる始末。この三つは切っても切りきれない存在なのだ。
「まぁ…動きも通常のディノバルド亜種との違いも少ない老年の個体でいてくれればよかったのにな…あれは知性も技量も段違いのもの、武神を宿すという表現もあながち間違いではない。その技量と知性に加えてあの武器にさえ使われる鉱石混じりの大岩さえ砂の城を崩すように断ち斬る硫黄の刃。通常個体と違って定期的な手入れもされてる様子もなく、真剣状態を目の当たりにしたハンターは今のところ誰一人しておらん、見つかったのは見せつけるばかりの磨ぎ跡のみよ」
学者は言葉を淡々と続ける。その表情はよく見えないが私達に
彼は、我々はヤツを言葉に表すことすらも恐ろしく躊躇いのあるものなのだ。自然に誰もが想像する。我々に合っていないヤツの目の焦点を。弱き存在を見て吐くようなため息混じりの呼吸を。おぞましい闇を纏って武神が振りかざすあのもうすぐ
私もミコトもサシャすらも立ち尽くすだけだった。もうこの場に居合わせる誰もが立ち尽くす。ヤツを表す言葉にさせ。恐れを抱く。
「注意を払うのは通常個体同様に強力な腐食性の体液だが、あの通常よりも長い年月を掛けて作られた硫黄を纏う尾からの攻撃を喰らえば腐食性の体液を浴びていなかろうとも一発で防具ごと真っ二つだろうな。体液に当たれば防具は徐々に溶けて行く。体液は本当なら原種にとっての錆び同様切れ味を落とす邪魔な存在でしかない筈なのにヤツにとっては己を強化するためのものになっとる」
容易に想像出来る。自分があの尾に斬られる姿を。
綺麗な横線を入れて断面を作り上半身と下半身が別々の場所へと崩れ落ち、そのまま息を引き取る姿を。
姿をそのまま残す死は望めない。かつてカムイがそうであったように。
「もちろん、対抗手段が無い訳ではない。一回り大きいディノバルド亜種だからこそ距離は空いてしまい必ずヤツは己のリーチをそこで活かす。だから我々はヤツのリーチを殺して距離を詰めた闘いをしなければならない。だが、こんなの自殺行為のようなものだ」
皆、息を呑む。その行為ですら咎められるような静寂の場でを垂らし息を呑む。一人がそうすればそれは連鎖反応のようにして皆に拡がる。
そして学者の低い声が響く。
「して……誰が最前線に、ヤツと刃を交えるのだ?」
誰も挙手はしなかった。己の名を出さなかった。あれほどサシャの言葉に火を着けられた威勢も自ずと消えていった。此処はまた静寂に戻る。
「私がやる」
私はその静寂をうち壊すように声を出して前へ出る。辺りは意外な行為に驚きを隠せずどよめき始めた。
そしてそのどよめきの中から自殺行為という言葉が聞こえた。
「確かにそうかもしれない。けれどもしディノバルド亜種を倒さなければいずれこの大陸の生態系は好き放題荒らされ、耐えるのも限界を迎えてしまう。それだけは避けなければならない事態。一緒に闘ってくれとは言わない。それでも私一人では絶対に勝てない。だからどうか!私に協力して!あの大岩だって私ではどかせないし、大岩をどうにかするだけの物資も運べない。だから!どうか!どうかお願い…!!」
私は頭を下げて頼み込む。答えは慈悲の無い静寂だった。私は歯を食いしばりながら更なる返答を待つことしか出来なかった。
返答を待つ時間は永遠のようにも感じた。だからこそ私にとって都合の良い返答が聞けるまで待てると思ってた。
けれどその安堵の空間を切り裂いたのは学者の言葉だった。
「一人だったな……名を挙げたのはたったの一人のハンターだ。まぁそれが答えというのならよいが……さて、まだライダーの返答を訊いていなかったな?」
学者は冷たい視線をミコトへと向けて彼に注目を集めさせた。まるで彼を威圧で殺すかのように学者は仕向けた。
ミコトは唇を噛んで威圧に堪えながら答えた。
「行かない訳無いじゃないですか。僕は彼女のパートナーです。一緒に闘い必ず此処へ戻ってきます」
「ほぉ……そんじょそこらのハンターよりもよっぽど勇ましいわ…顔負けだぞ、おぬしら…」
学者の視線はキッパリと断言したミコトから、集まるハンターに向かった。また重たい空気を纏わせ威圧を放つ。
黙り混むハンター達はどうすればよいか分からず隣り合わせで顔色を伺う。もはや自分達は協力も出来ない臆病者だと認識しあった。
「私だって行くさ」
サシャは腕を組ながら自慢気に言ったがそれはすぐに調査班リーダーによって消された。
「いや駄目だ。サシャ、お前は此処に残れ。あの二人に行かす」
「おい待ってくれ!何でだよ!?」
「あの円形の狭い場所ではお前にとっては不利な闘いを強いられる。それにもしあの二人が負けた時、誰が『武神を宿すディノバルド亜種』を討伐するんだ。サシャ、お前はこのアステラのいや俺達の最終兵器のようなものなんだ。自覚を持ってくれ」
調査班リーダーはサシャの両肩を掴みながら頭を下げ頼んだ。
「だからってあんな場所に二人だけで行かせるのかよ!?納得出来ねぇ!私も──」
「大丈夫よサシャ。私達はそんなに弱くないし必ず此処へ戻って来るから大丈夫。心配しないでいいからあなたはあなたの仕事に集中して」
「僕とミーナで必ず勝って来ますから!」
私達はサシャへそう声を掛けると彼女は下を向いてしまった。まるで子供みたいだ。
「……………もう仲間を喪うのは嫌なんだ……」
「何か言った?」
「───いや、何でもないさ。必ず勝って戻って来いよ!」
サシャは顔を上げて私とミコトの肩を強く何度も叩いた。その力強さには私もミコトも顔をしかめてしまう。
「頼むから……!」
気付けばサシャは泣いていた。雫を煌めかせながら掠れた声で力強く言い放つ。
「────死なないでくれっ!!」
「えぇっ!!」
「もちろんですよ!!」
調査班リーダーはその様子にいち早く気付き他のハンター達に解散するように促してくれた。そういった面では彼はすごく紳士的だ。普段の彼女を知っている人間であればサシャが泣く姿なんて想像も出来ないからそういった印象を崩さない為の行動だろう。サシャも人間なんだからと彼らに再認識させるのも悪くはないと私は思うがサシャは調査班リーダーの言う通り私達の最終兵器的な存在。希望の一つなのだ。もしかしたらサシャは想像以上に厳しい生活を送っているのかもしれない。
丁度、この場からハンター達が立ち去った頃に調査班リーダーは学者の顔色を伺いながら尋ねた。
「それで学者先生。例の『蒼紅蓮滾るバゼルギウス』の調査の方は順調ですか?」
誰も居ないから訊けたのかもしれない質問だった。次に恐ろしい古龍級のモンスターの異常な個体の話も先程持ち込めばいよいよアステラから出ていく人もいるかもしれない。だからこの話は後に持ってきたのかもしれないと想像する。多分、この予想はあっているだろう。
「なんだ…?ディノバルド亜種よりもそっちの方が気になるのかい?まぁ…結果として完全に姿を消されて手の出しようが無いんだよ。これといってヤツの痕跡も見つからない厳しい状況だ。いわゆる…御手上げってやつさ」
学者は言葉の通りカサカサの皮膚の手を上げた。
「そうですか……分かりました。引き続き調査をお願いします」
調査班リーダーは何処か不満げな顔をして私達の所へ歩いてくる。
「ミーナ、ミコト、すまないな。お前ら二人だけで行かせることになってしまって…どうかあいつらを恨まないでやってくれ」
「別に恨む気なんてさらさら無いよ」
「そうか…ありがとう、ミーナ。だが…大岩の件はどうするんだ?報告で聞くと相当な物資を運ばないと破壊で不可能みたいだが…」
すっかり忘れていた。肝心の所が抜けてしまってる。私には正直に言ってあれをどうにかするのは無理だ。
私も調査班リーダーも指を顎に当てて悩み込む。とそこへ───
「空から、はどうですか?」
空を飛べるリオレウスをオトモンにしているからこそのミコトにしか出来ない提案だった。
「それよっ!!」
「わっ!?け、けどその分危険度が増して危ないですよ?」
「けれどそれしか彼処へ行く方法は無いわ!さぁ決まったわ!後は各々準備を済ませましょう!」
私はミコトの腕を取り頼んだと言わんばかりにブンブンと上下に激しく振った。
「ちょっとミーナ!痛いですよ!や、止めてください!」
ミコトが目を瞑りながら私へ訴えかけてくると調査班リーダーは大声で笑い出したのだ。
「お前らが負けるなんて想像も出来なくなってきた!無事に戻って来いよ!」
「えぇ!」
「はい!」
もう守れなかったと後悔しない為に私は、私達は前を向く。
お互い拳をぶつけ合った。約束である。絶対に二人、また此処へ生きて戻ってこようとゆう約束を交わして──。
彼に、私達に導きの青い星が輝かんことを──
読了ありがとうございました‼️
最近、お気に入りが20いったと喜んでいたらいつの間にか18まで下がってたりと色々ありましたがこの調子でいけば1章は難なく終わりそうです。
もしよろしければお気に入り登録や評価の方もよろしくお願いします。
ではまた‼️
導きの青い星が輝かんことを…
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